<広がる「外部」との交流>
・スマートフォン(スマホ)と呼ばれる高機能携帯端末のような第二世代の携帯技術の登場で、個人の力はますます強くなります。特に、こうした技術が発展途上の国々に導入されたときの影響力は図り知れません。
・2030年までにはイスラム社会に住むさらに多くの女性がソーシャル・メディアを通じた情報交換に参加することになるでしょう。そうなれば、保守的なイスラム教社会やそうした価値観を標榜する政府などが変革を求められる可能性があります。
<人類は、より健康に>
・2030年までに、人類の健康問題はより改善するでしょう。特に、高齢者の生活の質はますます向上するはずです。
・最新の医療が届きづらいサハラ砂漠以南アフリカでも。2030年ごろには感染症による死者数と、(心臓病のような)感染症以外の死者数が逆転するとみられています。
・幼児の死亡率も劇的に減っています。ただ、豊かな国と貧しい国の間にある寿命の格差は、2030年になってもなくなることはないでしょう。
<「イデオロギーの衝突」が不安材料>
・経済のグローバル化に伴い、欧米流の考え方が世界のあらゆる地域に浸透していきます。例えば、「科学的な立証」「個人主義」「政教分離」「法の順守」などが欧米を代表する価値観ですが、西欧的な豊かさを求める非・西欧国の多くがこうした理念を取り入れようと試みることでしょう。同時に、地元独自の文化や政治風土と相容れないと分かった場合に、こうした欧米化を拒否する可能性もあります。
・ナショナリズム(国家主義)の高揚にも注意が必要です。特に、未解決の領土問題が多く、急速な経済発展が進む東アジア地域の動向などが懸念されています。
『私は宇宙人と出会った』
秋山眞人 ごま書房 1997年4月30日
<宇宙人の未来予測(世界編)>
(中国)
・「中国はこれからの地球の変化の大きなポイントになっていく。とくに内乱が起こる可能性が強く、それが引き金となって第3次世界大戦へと進むかもしれない。香港の返還によって思想的・経済的な大きな遅れがあり、アメリカとの対立構図が更に強くなる。これは東洋文明対西洋文明の対立といってもいい。また、2015年から2030年の間に4つの国に分割される可能性もある」。
『世界を見る目が変わる50の事実』
<50の事実>
- 日本女性の平均寿命は84歳、ボツワナ人の平均寿命は39歳
- 肥満の人の3人に1人は発展途上国に住んでいる
- 先進国で最も妊娠率が高いのは、米国と英国の10代
- 中国では4400万人の女性が行方不明
- ブラジルには軍人よりも化粧品の訪問販売員のほうがたくさんいる
- 世界の死刑執行の81%はわずか3カ国に集中している。中国、イラン、米国である
- 英国のスーパーマーケットは政府よりも多くの個人情報をもっている
- EUの牛は一頭につき1日2.5ドルの助成金を受け取る。年額にすると世界旅行が可能だ
- 70カ国以上で同性愛は違法、9カ国で死刑になる
- 世界の5人に1人は1日1ドル未満で暮らしている
- ロシアで家庭内暴力のために殺される女性は、毎年1万2000人を超える
- 2001年、何らかの形成外科手術を受けたアメリカ人は1320万人
- 地雷によって、毎時間1人は死傷している
- インドでは4400万人の児童が働かされている
- 先進国の国民は年間に7キロの食品添加物を食べている
- タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は、1日当たり5万5000ドル。その帽子を作る工場労働者の年収分の38年分
- 米国で摂食障害を患っている女性は700万人、男性は100万人
- 英国の15歳の半数はドラッグ体験済み。4分の1は喫煙常習者
- ワシントンDCで働くロビイストは6万7000人。連邦議員1人に対し125人
- 自動車は毎分、2人を殺している
- 1977年以降、北米の中絶病院では8万件近い暴力事件や騒乱が起きている
- マグナルドの黄色いアーチがわかる人は88%。キリスト教の十字架はたった54%
- ケニアでは家計の3分の1が賄賂に使われる
- 世界の違法ドラッグの市場規模は4000億円ドル。製薬市場とほぼ同じ
- アメリカ人の3人に1人は、エイリアンがすでに地球に来たと信じている
- 拷問は150カ国以上で行われている
- 世界では7人に1人が日々飢えている
- 今日の米国に生まれる黒人新生児の3人の1人は刑務所に送られる
- 世界で3人に1人は戦時下に暮らしている
- 2040年に原油は枯渇するかもしれない
- 世界の喫煙者の82%は発展途上国の国民
- 世界の人口の70%以上は電話を使ったことがない
- 近年の武力紛争の4分の1は天然資源がらみ
- アフリカのHIV陽性患者は約3000万人
- 毎年、10の言語が消滅している
- 武力紛争による死者よりも自殺者のほうが多い
- 米国で、銃を持って登校し退学になる生徒の数は、平均して週に88人
- 世界には「良心の囚人」が少なくとも30万人いる
- 毎年、200万人の女性が性器切除される
- 世界中の紛争地帯で戦う子供兵は30万人
- 英国では総選挙の投票者数よりも、テレビ番組でアイドル選びに投票した人のほうが多い
- 米国のポルノ産業の規模は年間100億円ドル。海外援助額と同じである
- 2003年、米国の防衛費は約3960億ドル。「ならず者国家」7カ国の防衛費総計の33倍
- 世界にはいまも2700万人の奴隷がいる
- アメリカ人が捨てるプラスチック・ボトルは1時間に250万本。並べると、3週間分で月に達する
- ロンドンの住民は、監視カメラで1日300回撮影される
- 毎年、西欧向けに人身売買される女性は12万人
- 英国で売られるニュージーランド産キウイは、その重量の5倍の温室効果ガスを排出している
- 米国は国連に10億ドル以上の未払い金がある
- 貧困家庭の子供たちは、富裕家庭の子供たちに比べて、3倍も精神病にかかりやすい
<「50の事実」に何ができるか>
・読み進めていくうちに、いくつかのことが明らかになるだろう。何より、世界を取り巻く問題の多くは、富める先進国と貧しい途上国との、醜い不平等に起因していることだ。
<私は、これら50の事実が世界を変えると確信している。>
・「思いやりがあり、行動力のある人々は、たとえ少人数でも世界を変えられる――それを決して疑ってはなりません。実際、それだけがこれまで世界を変えてきたのですから」
<中国では4400万人の女性が行方不明>
・2002年10月、中国の新華通信社は最新の国勢調査を発表した。それによると、2000年には女児100人に対し、男児は116.8人生まれていた。そこには、かすかだがはっきりと警告の響きが感じられた。過去2回の国勢調査と比べても、この男女比は拡大している。『上海スター』 紙は、こうした傾向が続けば、約500万人の中国人男性が結婚相手を見つけられなくなると伝えた。そうなれば、家庭、経済、社会的サービスにも問題が生じるだろう。ある専門家は、自暴自棄になった男性による女性の誘拐が増えるとさえ警告している。
・この不均衡は、中国やインドをはじめ、東アジアや南アジアにおいて男の子を望む傾向が強いために生じた。女の子を望まない親たちは、性別診断で胎児が女児とわかると、中絶に走る。実際に生まれても、女児の多くは生後数日から数週間で殺されてしまう。親たちはそれを自然死に見せかけるために、手を尽くして警察や衛生当局の目を欺く。幸いにも生き延びた女児も、出生届は出されない。その結果、教育や福祉ばかりか、充分な食事さえ与えられない日陰の生涯を歩む。
・インド、中国、台湾の出生率は着実に下がりつづけて西欧並みになりつつあるが、それでも女児への偏見は根強い。
・出生登録をされない子供たちには、どんな運命が待ち受けているのか?法律的には、彼らは存在を認められていない。だから学校に行くこともできず、公的機関の診療も受けられない。彼らの生活条件は、ひどく限られている。
<アメリカ人の3人に1人は、エイリアンがすでに地球に来たと信じている>
・30%の人々が「これまでに報告されている未確認飛行物体の一部は、他の文明からやってきた本物の宇宙船」だと答えており、45%のアメリカ人が地球外知的生命体はすでに地球に訪れていると回答している。
・実際、軍の発表と目撃者の言い分には食い違いがあった。エイリアンの死体が、いまやすっかり有名になったロズウェル空軍基地の「エリア51」に運びこまれるのを見たという人々もいる。1994年には、「エイリアン検死」の様子であるとのふれこみの怪しげなビデオも出回った。
『世界を見る目が変わる50の事実』
<70カ国以上で同性愛は違法、9カ国で死刑になる>
・同性愛が死刑の対象になる国が9カ国ある。モーリタニア、スーダン、アフガニスタン、パキスタン、チェチェン共和国、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE),そしてイエメンである。
・1979年のイランにおけるイスラム革命以来、4000人以上の同性愛者が処刑されたと推計されている。
・世界で70カ国以上がレズビアン、ゲイ、同性愛者、あるいは性倒錯者を差別する法律を有している。
・社会においては同性愛は「病気」として扱われ、ゲイやレズビアンは精神医療による「治療」を強いられてきた。
・しかし、多くの国々で事態は変わりつつある。2003年6月、米最高裁判所は、同性カップルの性的行為を禁じるテキサス州法に違憲判決を下した。この判決は、テキサスだけでなく、他の13州における類似の法律を一挙に無効にすることになった。
・さらに同性愛のカップルも異性愛のカップルと同じように子供を育て、家族の絆を持ち、結婚に関する判断を下すことができるとした。これらは米国憲法に保障された権利と確認したのである。
・米国市民自由連合はこの判決を「LGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、性倒錯者)にとって、これまでで最も有意義な判例」と呼んだ。
・国際人権団体も同性愛を公言する人々の保護を求める働きかけで注目を集めており、おそらくはそれがまた保護手段になっているだろう。
『熱誠憂国』 日本人に伝えたいこと
<イノベーション>
・経済成長の原動力になるのは新しい技術、イノベーションである。例えば、すべてのモノがインタ―ネットと繋がる「IoT」の時代では、日本と台湾が共同して世界を制覇することが可能なのである。台湾はIoTの生産でアベノミクスを強力にバックアップすることができる。
<アメリカ一極集中の終焉>
<戦争放棄は生存放棄>
・繰り返し指摘しておくが、戦力を保持することは即、戦争をするということではない。混沌とした国際社会の中で、いじめられないために、自分の身を自分で守るために、すなわち、抑止力のために戦力を保持することが必要であり、それは国際社会共通の認識である。
私が総裁在任中も、軍備の充実には気を配った。台湾の存在を維持するためには、自分で国を守らなければならず、日本やアメリカに頼るわけにはいかなかったからである。
・台湾がF-16戦闘機をアメリカから購入した直後のことであった。当時の社会党の故・土井たか子党首が台湾に来たことがあった。彼女は、台湾が戦闘機を購入したことがよくないと考えていたようで、「なぜ戦闘機を買ったのか」というような質問を執拗にするのである。
私は「国を守る、これは総統の責任である。自分の国は自分で守らなければならないという原則を知っていますか。あなたが台湾を守ってくれるのですか」とこんこんと説明すると、彼女は一言も発せず帰っていったが、それ以来、彼女は台湾へ来なくなってしまった。
<日本が生き抜いていくための改革を成し遂げる>
・日本が真の自立した国家として歩むことを私は心より期待している。
<お金が商品になる時代>
・ところが、日本では円相場が上昇し、ついにはバブルを引き起こした。そして1991年にバブルが崩壊すると、銀行の経営破たんが続いて、結局は国民の税金を使って銀行を助けるほかなかったのである。それは、インフレーションからバブルになることを分からなかったのか、分かってやったのか、いずれにしても優秀な人材がたくさんいるにもかかわらず、日本の政策の失敗であった。
その後はご存じの通り「空白の20年」などと言われて、日本経済は青息吐息の状態が続いた。政権が猫の目のように変わり、政治も経済も漂流するばかりの状態であった。かつて北宋の学者の蘇老泉が「一国は一人によって興り、一人によって亡ぶ」といったが、この20年の間、日本にはこの「一人」というべき深い哲学的思索に裏打ちされた叡智を持つリーダーがいなかった。
<第3の矢はイノベーション>
・私の考えでは、経済が延びるためには4つのファクターがあり、第1は国内消費を伸ばさなければならない。第2は投資、第3が輸出である。
ところが、この3つのファクターは、為替を下げたり日本円を下げたりすると、それによってある程度促進できるが、肝心の経済がそんなに伸びなくなる。
・私に言わせると、いま日本がやるべきことは第3の矢、すなわち成長戦略に全力をあげるべきであろう。そのためには、もう本当にイノベーション以外方法がない。第4のファクターは「イノベーション」である。
<原発問題は第3の道を選べ>
・これらの問題を解決するのが、水素を燃料とする「核融合」の原子力発電である。水素はナノテクノロジーで海水から取れるし、ウランを使わないから爆発も再臨界もメルトダウンも起きない。日本の故・古川和男博士が、長年研究を続けてこられた「トリウム原発」がその代表である。
<日本のインテリジェンス力>
・中国大陸の影響力は、いまやアジア中に急速に広がっている。ところが、こうしたアジアの実態を伝えるレポートと質とレベルが非常に低い。また、現地で実務を行っている人たちの伝える情報も誤りが実に多い。
・ある人の話では、在外日本国総領事館やJETRO(日本貿易振興機構)、さらには日本政府の意向で「前途有望」という報告を出すことが暗黙の了解になっていたというが、それではアジアとの本当の付き合いはできない。当面はそのほうがいいという判断が働いたのだろうが、長期的には、企業は有効な対応ができないだろう。
・いまアジア諸国の経済回復に力を貸そうと思っても、個々の投資家や会社は前述したように実態をはっきりつかんでいない。それができない要因はいくつかある。一つはこれらの地域や国で行われていることがはっきりしない。つまり透明度が低いということである。実質的投資をしようと思っても、融資対象がどれくらいの支払い能力を有するかが分からない。信頼に値する会計組織や監査手続きは、実際には存在していないといったほうがよいであろう。
・次の要因は政治のあり方である。確かに、アジアに起こった金融危機が2次的に実体経済に影響を与えている現在では、経済回復を促進するためには、金融体制の調整がかなり必要であろう。この調整はただでは行われない。そのためにコストは必ず分担しなければならず、これは政治抜きでは決められない。不良債権を持った銀行、合成の誤謬を犯した官僚、独裁者の一族の不正等の諸問題が政治的に解決されなければ、投資家や援助する諸外国も二の足を踏んでしまうことになるだろう。
<北朝鮮への近視眼的な対応>
・同じことは、北朝鮮問題についてもいえるだろう。日本で報道されていることは、すべてが間違いとはいわないが、非常に部分的なものが多い。なぜあの国が現在のような状況に置かれているかをアジアの構造全体から考えてみてもいいのではないだろうか。
・これまでは、中国のコントロールがきつすぎて、なんら新しい方向を見出せないというのが北朝鮮問題の実情であった。いま世界にとって必要なのは、北朝鮮の内部で何が起こっているかを正確に把握するということだ。そのためには、しっかりとした情報を収集することが不可欠だろう。
<アジア向け援助システムの構築>
・また、日本に期待したいのはODAを通じて、アジア諸国に長期資本の貸し付けを検討することである。貸金の友好的な分配、そして受益国がそれによって資本蓄積できるようなシステムを作ってもらいたい。
<アメリカを理解していない日本>
・アメリカを理解し、アメリカに日本を理解させる独自の方法とルートを持たなければ、結局マスコミで報道されたことを信じるしかなくなるが、マスコミに流されている「アメリカの意図」や「日本の意図」が正しいとはいえない。
<中国を世界の舞台に引っ張り出す>
・中国のリーダーも、しばらく前に、ゴルバチョフが何を行ってソ連をつぶしてしまったかは、よく分かっていることだろう。「エンゲージメント」などという言葉につられて、おいそれと無防備に世界の政治舞台に出てくるわけはない。
<台湾を制する者は中国を制する>
・しかしながら、アメリカの中国に対する「エンゲージメント」は戦略的にいくつかの欠点を残している。中国のリーダーはアメリカの国益をよく把握しており、現在のグローバル・スタンダードに同意することには絶対に反対である。
・また、中国内部の体制が矛盾に満ち満ちていることは承知しているが、絶対に政治の自由化や民主化を取り入れて、アメリカ的「エンゲージメント」によって自己生存を脅かすことはしないであろう。
・台湾は日本にとって、単なる製品の輸出先の、南に浮かぶ島の一つではない。台湾は、日本にとっても生命線なのである。
<信仰とは神との出会い>
・学徒出陣で戦争にも行った。東京大空襲にも遭った。理論的に考えるだけで生きてこられたわけではないのである。鈴木大拙の本や『臨済録』をよく読んだのは、そうして生きている自分を見つめるためであった。読んだどころか、その教えを実践した。
・特に『臨済録』の「お互いのこの生身の肉体上に、何の位もない1人の本当の人間、すなわち「真人」がいる。いつでもどこでも、お前たちの眼や耳や鼻などの全感覚器官を出たり入ったりしている。まだこの真人が分からない者は、はっきり見届けよ」という一文の「無位の真人」とはいったい何なのか、それを自分で確かめようとしてきた。唯心論的にはそうして自己の研鑽をすればよかったのである。
<死んだら自然に還るだけ>
・人間は死んだら自然に還るだけである。自然の主宰者は神であるから、神様のところへ還るだけだ。
<「日本精神」を失うな>
・日本経済はイノベーションなどを通じて、経済成長率を少なくとも3、4パーセントくらいまでもっていけるだろう。その前提として、いま内閣府では恐らく予算問題が非常に深刻になっているけれども、例えば消費税の軽減税率の問題、あるいは年金問題とか、こういう問題を着実に処理していく必要がある。ギリシャ危機のような事態に陥ったら大変だから、経済成長率をいかに高めていくかということに真剣に取り組む必要がある。
<「日台」と「日韓」の違い>
・私は家内からよく笑われる。「あなたは台湾の総裁を12年もやったくせに、日本のことばかり心配している」と、確かに日本からのニュースを毎日気をつけている。なぜ日本を気にしているかというと、日本がしっかりしてくれないと、台湾が立ちゆかなくなってしまうからである。台湾を発展させるためには、日本の動向を熟知しなければならないのである。
<尖閣諸島は日本のもの>
・東シナ海の南西部に位置する尖閣諸島は、日本のもの、過去をひもとけば、すぐ分かることだ。それなのにいまになって中国が問題にするのはおかしいことである。
日本人もそうだが、実は台湾の人も尖閣問題は何が問題なのか分かっていない。
尖閣諸島は台湾のものではなく、台湾とは関係がない。ただ日本時代に尖閣諸島の辺りは魚が大変捕れるところだったので、慣習的にその漁場で魚を捕っているだけである。美味しい魚が捕れるいい漁場であった。
<先の大戦に従軍して>
・旧制高校から京都帝国大学に進み、学業半ばにして陸軍に志願した私の配属先は、高射砲部隊であった。
私が経験したのは、大戦末期の熾烈な戦闘である。1945年3月10日、東京大空襲の際は部隊の小隊長が戦死。私が代わりに指揮を執った。焼夷弾の破片が鼻をかすめ、傷を負った。先の大戦で命を落とすことがなかったのは、運がよかったともいえるし、神の導きとしか思えない。
・「やらなければ、こちらがやられる」
当時の心境をあえて表現すれば、このような言葉になろう。それは人間が持つ「生」への本能的な欲求であった。かといって、私はひたすら生き延びることを望んでいたわけではない。誤解を恐れずに言えば、求めていたのはむしろ「死」である。身体検査のときに最前線の歩兵を志願して苦笑されたのも「死」に、できるだけ近づくためであった。そうすることで、少年期から私を悩ませた「死とは何か」「自我とは何か」という命題に決着をつけたかったのだ。だが、学徒出身の私の願いは叶えられることはなかった。
・1945年8月15日、私は名古屋の第10軍司令部にいて終戦を迎えることになった。玉音放送も聴いた。辺り一面、焼け野原であった。
<「日本人」として戦った兄と私>
・私は陸軍に志願し、兄・李登欽は海軍に志願した。当時われわれ兄弟は、紛れもなく「日本人」として、祖国のために戦ったのである。
・だが、われわれ兄弟が日本人として戦い、マニラで散華を遂げた兄が靖国神社に祀られているのは、歴史の事実である。歴史の事実を捻じ曲げることは誰にも許されない。
また、馬前総統は台湾に慰安婦の記念館を作ることを発表した。「約20年前から台湾の元慰安婦を支援している」などと、馬前総統は述べたそうだ。20年前といえば、私の総統時代である。当時、馬英九氏は私の英語通訳だったのでよく知っている。だが、彼が台湾の元慰安婦を支援している、という話は聞いたことがない。はっきりしているのは、すでに台湾の慰安婦の問題は決着済みで、いまさら蒸し返すことは何もないということだ。
<平和を実現する方法>
・自国に脅威を与える国家を外交交渉などで飼い馴らすのではなく、戦争によって取り除くことが可能になるからだ。それどころか、戦争に訴えることによって初めて理念の貫徹した秩序を作ることもできる。平和を優先する時、国家間の交渉や合意によって平和を保とうとすれば、自国と価値観も文化も異なる相手との妥協を避けることはできない。戦争をすることで実現できる変革に期待をかける時代への変化が、歴史的に表れることになる。それが現実の国際政治の変化であり、リアリスト的な状態である。
・これは国際環境の変化とは無関係ではない。世界経済をこれまでダイナミックに拡大させてきたグローバル資本主義には本質的と思われる諸欠陥を内包しており、適切な処方箋が処方されない限り、国際政治に安定的な局面をもたらすことはできない。グローバル資本主義の本質的な欠陥とは何か。次の3つの事項が挙げられる。
- 世界金融経済の大きな不安定要素となる。
- 所得の格差拡大を生む。その結果、健全な中流階層の消失という社会の2極化現象を生み出す。
- 地球環境汚染を加速させ、グローバルな食品汚染の連鎖的反応を作り出す。
・国境を越えて自由に経済資源が移動できるような世界がベストだ、というグローバル資本主義の基本的思考には問題が多い。いままでの通説である経済の総体理論は間違っていると、多数の経済学者によって次のように検討されている。
- 金融市場は商品市場にあらず。貪欲な利己心と理性的でない行為のもとに市場のメカニズムを放任すれば、金融資産価格はますます基本面から離れていく。
- 物価の安定は、金融の安定を保護することができない。資産価格の膨張を放任すれば、金融危機を招く結果となる。
- 極度に資本の自由移動の有利性を誇張すれば、資本移動に伴う危機が拡散するだけである。資本移動の管理は、正統性があり、また友好的政策を深めなければならない。この経済上の理論の修正は、グローバル化の過程における個別国家が深く検討し、採用すべきであると思う。
・現在のようにリーダーシップ国家がいなくなった国際的環境において、グローバル資本主義を強調する力のある国は、力の現実として、その力の行使を行うだろう。そうして正義を高く掲げて戦闘行為を正当化するような政策や言動をとるだろう。
国際的環境の変化によってもたらされた戦闘を正当化するような理念の先走った戦争を前にして、より現実を踏まえた慎重な政策が可能でないかと考えざるを得ない。人間の幸福な立場からして平和を模索すべきであろう。
<国際政治の主体は国家>
・国際政治の安定を考えるうえで、各国間の抑止、威嚇、「力の均衡」を無視することができない限り、政策の手段としての武力の必要性を排除することは考えられない。はっきり言えば、戦争が国際政治における現実にほかならないからこそ、その現実を冷静に見つめながら、戦争に訴えることなく秩序を保ち、国益を増進する方法を考えるのが現実的見解といえるだろう。政策の手段としての軍事力はあくまで最後の手段であり、戦争によって状況を打開する選択に対しては、常に慎重な判断が必要である。
・古今東西の別なく、歴史の発展とは組織や共同体の盛衰と交代の記録、よりミクロに捉えれば、組織を掌握する権力者の盛衰と交代の記録である。時代の断面を切り取れば、組織や共同体の幸、不幸、繁栄、滅亡は指導者によって強く影響されていることが分かる。同時に、指導者の持つ力と背負っている条件が組織の盛衰を左右し、興隆と滅亡を決定づける鍵となることが多い。
・民主国家の指導者という限定で言うならば、指導者たる者は、素質と能力に加えて「誠意をもって民意を汲む」「個々人の幸福のために長期的計画を策定し、絶えず短期・長期におけるバランサーの役目を果たし得る」という条件を持たなければならない。