日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

アジア風邪、香港風邪、ラッサ熱、鳥インフルエンザなどの伝染病はすべて、「彼ら」が流行させたものだ。中世ヨーロッパで猛威をふるった黒死病も陰謀の産物とみなされている。(1)

 

 

『世界の陰謀論を読み解く』  

ユダヤフリーメーソンイルミナティ

辻隆太郎  講談社現代新書   2012/2/17

 

 

 

 

フリーメーソンの象徴や儀礼

・メーソン・ロッジには、加工前の粗石と、整えられた切石が置かれている。これは粗石が加工され美しい切石になるように、徳を磨き人間の完成をめざす、というフリーメーソンの目的を表すシンボルである。第三位階=親方となるときには、死と再生をモチーフとした儀礼劇が存在する。

 

・同時に、こうした象徴や儀礼陰謀論者たちの格好の餌となる。

 例えば彼らはこう主張する。フリーメーソンは、バビロニアやエジプトの魔術と悪魔崇拝を組み合わせて生まれた、邪悪な結社である。勇気ある告発者が暴露した、彼らの極秘儀礼の詳細を見ればそれは明らかである。

 あるいはこうだ。フリーメーソンには33の階級があり、下位のメーソンは上位のメーソンに絶対服従しなければならない。逆らった者、秘密を漏らした者は容赦なく殺される。世界を裏から動かしているのは最上位のメーソンたちであり、メーソンの真の目的は上位階級だけの秘密である。最初の三つの階級には何も知らされず、メーソンの偽りに騙されて入会した彼らは、儀礼を通して徐々に洗脳されるのである。

 フリーメーソンの象徴や儀礼の基本は、キリスト教と石工組合の伝統によるものである。そのうえで、さまざまな神秘主義的潮流から取り入れられる要素も多い。

 

・さらに言えば陰謀論には、西洋あるいはキリスト教から見た、「東洋」あるいは「オリエント」に対する明らかな偏見が根づいている。フリーメーソンは(基本的には)キリスト教団体ではないのだから、非キリスト教的要素を取り入れたところで何の問題もないはずである。しかし一部の偏狭なキリスト教的視点からすれば、それは神への明らかな反逆である。何度か述べているように、近代の陰謀論は中世キリスト教秩序擁護の立場からの、近代主義への反発として出発したので、こうした視点が色濃く残っている。そして現代の陰謀論は、非キリスト教徒や日本人の手によるものを含めて、その当時の言説を基盤においているのだ。彼らにとってオリエントのイメージは邪悪で怪しげな魔術、無慈悲な専制支配であり、オリエントとの関係は正義に反する陰謀の証拠になりうるのである。

 

フリーメーソンの33階級

・上位位階についても見ておこう。

 しばしば言及されるフリーメーソンの33階級とは、「古式公認スコットランド儀礼スコティッシュ・ライト)」という上位儀礼のことだ。しかしこれは数ある上位位階のひとつにすぎず、そもそも基本3位階と上位位階は必ずしも上下関係ではない。

 例えばスコッティッシュ・ライトは彼ら独自の管轄組織を作っており、基本3位階のブルー・ロッジに干渉することはない。少なくともイギリス連合グランド・ロッジに連なる正規のロッジでは、メーソンとしての位階はあくまで基本3位階のみである。

 

・にもかかわらず、なぜ陰謀論者が口にするのがスコッティッシュ・ライト33位階ばかりなのか、疑問をもつべきだろう。スコッティッシュ・ライトは、アメリカでもっとも普及している上位儀礼。現代の陰謀論の主戦場はアメリカなので、33位階が話題に上りやすいのは不思議ではないが、それだけでは他の上位位階を無視する理由にはならない。

 ひとつの理由は、彼らがメーソンと上位位階の関係を理解していない、ということである。もうひとつの理由は、ユダヤ教の『タルムード』に関しても述べたが、陰謀論者同士が相互参照をくりかえしているからである。

 

・メーソンの儀礼は比喩的・象徴的なものだ。しかし陰謀論者はたいていの場合、見たままでしか理解しない。死のシンボルは死を崇拝している証拠だし、王冠を踏み潰す儀礼は国家転覆を企んでいる証拠である。メーソンがそれらの象徴をどのように解釈しているのかなど、彼らには関係ない。陰謀論者はつねに、自分の価値観でしか物事を判断しない。

 

<「新修正パラディオン儀礼」の騒動

フリーメーソン儀礼についての、反メーソン言説のよく知られた失態に、「新修正パラディオン儀礼」をめぐる騒動がある。19世紀フランス、元メーソンのレオ・タクシルなる人物が、メーソンの恐るべき実態をつぎつぎと暴露しはじめた。彼の言説はカリックの反メーソン論者たちから歓迎され、教皇レオ13世への謁見をも果たした。彼によれば、フリーメーソン全体を操っているのはアメリカの新修正パラディオン儀礼のメンバーであり、彼らはルシファー(悪魔)を崇拝し肉欲にまみれた黒ミサをおこなっている。かつての女司祭ダイアナ・ヴォーンは改心し、パリに逃れ身を隠しているが、パラディオン派は裏切り者を許さず、いまも彼女を探しているのだ。この話は大きな評判を呼び、パラディオン派についてのさまざまな著作が反メーソン論者によって発表された。ダイアナ・ヴォーンは一躍ヒロインとなった。数年後、その後もメーソンの真実を暴露しつづけていたタクシルは、最後の秘密を公開するために講演会を開いた。そして登壇した彼は、これまでの話がすべて完全なでっち上げだったという「最後の秘密」を暴露したのである。

 

組織としてのフリーメーソン

1717年イギリスで成立した近代メーソンは、1730年から50年にかけてヨーロッパ大陸に広まり、メーソンを名乗る結社がヨーロッパ中に乱立した。すべてのメーソンに対し権限をもつような中央集権的な統治機構は存在しなかったから、「本物」のメーソンと「偽物」のメーソンの区別は容易ではなかったし、「本物」と「偽物」の基準自体が曖昧だった。いわば各地のメーソンは、それぞれに好き勝手にやっていたのである。各種「メーソン」結社同士の統合や自然な淘汰によって、それらは少しずつ整理され現在にいたっている。しかしメーソンに関する資料は、その起源についても含めて、断片的な記録でしか残っていない。したがってここまでの説明も、じつのところ「どうやらそのようだ」といった程度のものだ。

 

もっとも有名かつ有力な「非正規」派のフリーメーソンは、フランス大東社である。1773年イギリスのロッジの承認を受けて設立されたこのグランド・ロッジは、憲章から神の信仰義務を削除し、無神論者の入会を認めたことによって、1877年に承認を取り消された。しかし彼らは独自の相互承認の網の目を形成し、フランスやラテン諸国では正規派より強い勢力をもっている1893年には、女性の参加を正式に認める「人権」という分派が生まれている。正規派とこれらの分派は現在も互いに承認していない。

 アメリカでは「プリンス・ホール・ロッジ」という黒人ロッジが独立したグランド・ロッジとなることを宣言し、分派した。

 

「パイクの予言」という都市伝説

1871年に、アメリカの大物メーソンであるアルバート・パイクが、イタリア転覆を目論む革命家マッツィーニに宛てた手紙がある。そこでは世界征服のために、三度の世界大戦を意図的に引き起こす必要があると記されている。一度目はロシアを無神論共産主義の砦に帰るために。二度目はファシストのあいだの不和を利用して。最終的にナチズムが破壊され、シオニズムイスラエル建設にじゅうぶんなほど、また国際的共産主義キリスト教に拮抗するにじゅうぶんなほど強力になるように。そして三度目の大戦では、キリスト教徒とイスラム教徒を互いに滅ぼし合わせる。その他の諸国も巻き込み、すべてを消耗しつくさせる。さらに、残虐性と血なまぐさい混乱の源である無神論の効果によって、諸国に恐るべき社会変動を引き起こし、また、文明の破壊者たる革命主義者からの防衛を強いる。そしてキリスト教に幻滅した人びとは、ルシファー崇拝を受け入れるだろう。一度目と二度目の大戦は、パイクの筋書きどおりになった。これはメーソンの陰謀が真実である何よりの証拠である。彼らの世界統一陰謀の完成、第三次世界大戦はすぐそこまで迫っているのだ――。

 フリーメーソン陰謀論の著作を読むと、三回に二回はこの「パイクの予言」が登場する。

 

イルミナティ――陰謀論が世界を覆う

世界は陰謀に満ちている

陰謀論者たちのイルミナティ

ユダヤフリーメーソンはしばしば同一視されてきた。イルミナティもその両者と密接に関係づけられる。ヨーロッパの保守反動主義者たちにとって、この三者は排除すべき近代の象徴として容易に結びついたのである。

 ユダヤフリーメーソンイルミナティは多くの場合、このように結びつけられる。イルミナティの頂点はロックフェラー家とロスチャイルド家であり、カバラとタルムード思想がその中心にある。イルミナティに中枢を乗っ取られたフリーメーソンは、ヨーロッパ全土に広がるそのネットワークを活用して、イルミナティの指示どおり陰謀を遂行していったのだ。イルミナティは陰謀の中枢機関、フリーメーソンは手足となる実行部隊、そしてユダヤがすべての黒幕、というわけである。

 

・したがってイルミナティ陰謀論の語りの多くは、ユダヤフリーメーソンのそれと重なりあい、その内容も多岐にわたる。しかし、イルミナティ陰謀論に典型的に見られる特徴を、いくつか挙げることはできるだろう。

  • 五つの目的

イルミナティの活動は一貫して、つぎの五つの行動理念にしたがっている。

・秩序ある政府の破壊

・私的所有権、相続権の破壊

愛国心国家主義民族意識の破壊

・あらゆる宗教の破壊

・家族制度、結婚制度の破壊

 

フランス革命以降のあらゆる革命運動は、この目的に沿って扇動された。多くの陰謀論者は共産主義社会主義を区別しないが、これらもイルミナティの発明によるものだ。累進課税社会保障制度、先進国から発展途上国への援助などは、明らかに「共産主義」の陰謀である。文化相対主義多文化主義は、民族の尊厳を貶め、国家の統合を崩壊させるためのものだ。移民の受け入れ推進、一国主義の批判と国際協力の重視など、民族や国家の枠組みを曖昧にさせるような主張はすべて、イルミナティが流布させた欺瞞である。

 理神論や無神論は当然として、教会一致運動や宗教観対話、ニューエイジや「カルト」問題なども、「正しい」宗教的真理に対するイルミナティの攻撃だ。フェミニズムや同性愛、あるいは親から子どもを取り上げる児童養護施設や社会全体で子どもを育てようと志向する政策などは、伝統的な家族制度を破壊し、社会道徳を崩壊させるための陰謀だ。

 「彼ら」はあらゆる秩序の破壊を目論んでいるのである。これまで社会を正しく律してきたすべての伝統的秩序や道徳が疑問に付され、疑わしく邪悪な「新しい価値観」なるものが大手をふるようになったのは、ひとえに「彼ら」の仕業なのだ。そして「彼ら」の最終目標は、このようにすべてが失われた廃墟のうえに救世主として唯一の秩序を打ち立てること、全人類を一元的に支配する統一的世界政府を樹立することなのである。

  • 数々の関連団体

  ・フェビアン協会

  ・ビルダーバーグ会議

  ・三極委員会

  ・外交問題評議会

  ・ローマ・クラブ

  ・国際連合

公的には消滅したイルミナティはしかし、実際にはまったく力を失うことなく現在まで生きている。ある論者の主張にしたがえば、フランスのジャコバン党も、イタリアのカルボナリ党も、イルミナティの別称にすぎない。現代においても当然、イルミナティはその名を隠し、さまざまな名称のもとで暗躍しているとされる

 

イルミナティの組織は他にもあり、下部組織やフロント組織も数多く存在している。それらは社会のあらゆる局面に関わっている。「彼ら」は名称を使い分け、さまざまな集団に偽装して、裏から世界を操ってきたのである。それらの組織のなかには当然各種メディアも含まれ、情報操作がおこなわれている。

 陰謀論者たちの考えでは、イルミナティは消滅したのではなく、有名になってしまったのでその名を公には使わなくなっただけなのだ。したがって、「イルミナティ」の名称がいっさい見当たらなくても、ある集団がイルミナティの目標を推進しているとみなすことができれば、それはイルミナティなのである。

  • 内部から

イルミナティは各国政府をはじめ、あらゆる重要組織を内部から侵食し、乗っ取っている。「彼ら」は賄賂、性的誘惑、高い地位といった餌で重要人物を篭絡し、本人や家族に対する脅しによって縛りつける。イルミナティにしたがうかぎりは社会的成功が約束され、裏切れば破滅が待っているという飴と鞭で、人びとを手先としているのである。

  • 長期的陰謀

普通、何らかの計画を立てる者は、その完成を自分の目で見ることを望むだろう。しかしイルミナティの陰謀は幾世代にもわたって受け継がれる超長期的計画である。その視点から見れば、陰謀に携わる個々の人物や集団は、大規模な全体像を完成させるための陰謀の意志の乗り物にすぎない。

 

 イルミナティの手足

・望む結末を実現させるため、イルミナティは長い年月をかけて準備をおこなってきた。そしていままさに、その陰謀の完成は間近に迫っているのであるーと、何十年も前から陰謀論者は主張しつづけている。

 

 ・かくして、保守派の人びとにとってイルミナティは、世の邪悪な「自由主義者」どもの背後で糸を引く、すべての秩序を破壊せんと目論む悪魔崇拝集団と、容易にみなすことができたのである

 

 ・一方で陰謀論のなかのイルミナティは、緻密で完璧な命令系統を備えた超大規模組織だ。ある論者は、イルミナティは経済、政治、市民生活、オカルトと宗教、芸術と文化の五部門に分かれていると述べる。別の論者は麻薬・ポルノ部、政治部、事業経営部、カルトの儀式部、世界通信部、マインドコントロール部に分かれていると主張する。いずれにせよイルミナティの陰謀は社会のあらゆる分野に浸透している。

 

例えば、イルミナティの目的は世界統一政府の樹立であるから、あらゆる国際的な組織、越境的な活動はイルミナティの仕業、となる。

 

 すべての黒幕は・・・・爬虫類的異星人

陰謀論におけるイルミナティの肥大化は、横方向=組織の規模や支配範囲だけではなく、縦方向=歴史・起源についても見られる。イルミナティはヴァイスハウプトによって創始されたのでも、彼の組織の解散によって消滅したものでもない。そのはるか以前からあり、現在でも変わらずつづいている。

 

 ・ヴァイスハウプトのイルミナティは、その連綿とつづく、「イルミナティ」のごく一端が、たまたま表に出ただけにすぎない、というわけだ。

 

一方でそうした風潮は、保守的なキリスト教的秩序を絶対とする立場からは正気の沙汰とは思えない事態だったのである。そういった人びとにより、エジプトから中国・日本までを含む「東洋」の宗教文化は、同一の根をもった悪魔崇拝として十把一絡げにされ、イルミナティのなかに放り込まれていった。イルミナティ」の意味する「光」はルシファーを表すもの、すなわち悪魔崇拝だとする解釈は、イルミナティ陰謀論でよく見られるものである。

 

 「どこで世界はまちがったのか」を際限なく遡っていった結果、イルミナティの起源を古代文明どころか人類誕生以前にまで求めるものもある。イギリスのデーヴィッド・アイクによればすべての陰謀の黒幕は爬虫類的異星人である。地球上の文明のほとんどは、彼らが地球人類を奴隷化するために作り上げたものだ。彼らは自らと人類の混血種を生み出し、その者らに奴隷管理者として地球人類を支配させている。この混血種がロスチャイルドら地球エリートの正体である。そして地球はブラザーフッドと総称される各種秘密結社により支配運営されており、その頂点にあるのがイルミナティだ、ということである。

 

 新世界秩序の陰謀

 世界を覆う陰謀の網の目

 ・以上のような、あらゆる出来事・集団・領域に陰謀の存在を見出し、それらすべてが「統一世界政府の樹立」といった目標のもと統一された陰謀の一大ネットワークを形成しているとみなす陰謀論は。「新世界秩序」の陰謀論と呼ばれている。これまでバラバラに語られていたような各種の陰謀説、さらにはUFO、オカルト、疑似科学など種々雑多なマージナルな言説を統合する、いわば最上層のレイヤーとして機能するのが新世界秩序陰謀論

 

その典型にして先駆となったのが、イギリスのネスタ・ヘレン・ウェブスターが1920年代から展開したイルミナティ陰謀論だった。彼女によれば、イルミナティは秩序と文明そのものを破壊し、反キリスト王国を形成しようとするサタンの陰謀として、世界革命陰謀を進行させている。ドイツ人の汎ゲルマン主義ユダヤ人の国際独占資本主義は、イルミナティの計画のもとで動いている。彼らは国際共産主義社会主義アナーキズムを広め、ヨーロッパ中の革命、とくにボルシェビキ革命を実現させたのである。ウェブスターは、イルミナティユダヤに立ち向かう指導者として、ヒトラーを熱心に支持した。

 

 「黒い貴族」「三百人委員会」「悪魔の十三血流」・・・

・現代の陰謀論の多くでイルミナティは重要な地位に就いているが、必ずしも陰謀の頂点に立っているわけではない。あらゆる集団の陰謀を統合する「黒幕」の役割は、陰謀論者によって、さまざまな集団に与えられている。

例えば、ユースタス・マリンズやデーヴィッド・アイクらが言及するのは「黒い貴族」だ。マリンズの説明では、「黒い貴族」とは古代より白人文明に寄生する「カナン人」の末裔であり、フェニキアからヴェネチアにわたった彼らはヨーロッパの貴族階級と混血して勢力を広げ、イギリス王室を乗っ取り、世界を支配しているとされる。

 

・これらの集団の多くは、実在するのかどうかすら外部的な論拠では証明できない。主唱者の「ある」という主張を信じるか否かだけに判断を依存せざるをえない存在だ。マリンズは「黒い貴族」の血統をたどり、イギリスのウィンザー王朝は「黒い貴族」だとして陰謀の支配を告発する。しかし、そもそもヨーロッパの王室・諸侯は政略結婚をくりかえし、ほぼすべて血縁関係にある。特別な「黒い貴族」の血統とやらが判別可能とは思えない。「悪魔の13血流」説について言えば、ロスチャイルドやロックフェラーの実在はともかく、彼らが数千年密かにつづく悪魔の血統であることは、あるいは逆にそうでは「ない」ことは、証明のしようがない。

 

三百人委員会」にいたっては、その存在の痕跡もない。おそらく、ドイツの政治家ヴァルター・ラーテナウが1904年に述べ、彼が極右活動家に暗殺されたのと同年の1922年に出版された『現代政治批判』に掲載された発言がきっかけだろう。彼は、互いに親密な300人の人間がヨーロッパの経済を操っている、と述べた。これはヨーロッパ経済の統制を試みる大資本家たちに対する非難の言でしかなかった。しかし彼自身がユダヤ系だったことも手伝って、この発言はユダヤ人秘密政府が存在する証拠であり、自身もその一員であるラーテナウが秘密を遺漏したのだ、と陰謀論者たちに曲解されている。

 

・存在の証明も反証もできないということは、陰謀論者各自が自分の好きなように組み立て主張できる、つまり「言いっ放し」でかまわないということである。これらの「陰謀の中核」は、「イルミナティ」の最終段階とまったく同様、単なる「悪の秘密結社」の記号にすぎない。それによって社会のあらゆる事象を説明しつくす、何でも放り込んで説明できたつもりになるためのブラックボックスなのである。

 

イギリス帝国主義から新世界秩序へ

今日、陰謀者たちはアメリカや国連を通して国際社会を完全にコントロールしている、とされる。これまで述べたような構図に、古代からつづく悪魔崇拝カルト、ユダヤ国際金融、フリーメーソンイルミナティ共産主義、等々が接ぎ木され、新世界秩序陰謀論が形成されるのだ。ある出来事がどのような陰謀なのかについては、陰謀論者の多くに共通の見解があるものもあれば、論者によってバラバラなものもある。例えば、ある論者によればヒトラーイルミナティの手先であり、「彼ら」の計画にしたがって第ニ次世界大戦を引き起こした。別の論者によれば、ヒトラーユダヤの真実を見抜き自衛を試みるも破れ去った、陰謀の犠牲者だ。

 しかし「すべてが陰謀である」こと、二度の世界大戦、地域紛争、社会主義革命からソ連崩壊、国際的テロ行為、エイズなどの伝染病、学校教育、メディアや娯楽産業にいたるまで陰謀のコントロール下にあることについては、すべての陰謀論者が一致している。

 

超管理社会と「ヨハネの黙示禄」

・新世界秩序の本質は少数エリートによる全人類の管理・奴隷化である、というのが陰謀論者たちの共通認識だ。その表現として「人類の家畜化」だとか「世界人間牧場」といったフレーズがしばしば用いられる陰謀論者たちが描く世界の将来像として頻出する、典型的主張が「コンピュータによる超管理社会」と「人口削減計画」である。

 

・こうした未来像の出所は『新約聖書』の「ヨハネの黙示禄」である。世界の終末に「第一の獣」(反キリスト)と「第二の獣」(ニセ預言者)が現れ、あくまで神にしたがう少数をのぞく全人類が獣にしたがうことになるのだが、その様子として以下の記述がある。「すべての者にその右手か額に刻印を押させた。そこで、この刻印のある者でなければ、物を買うことも、売ることもできないようになった。この刻印とはあの獣の名、あるいはその名の数字である。ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は666である」。バーコードもバイオチップも、この「獣の刻印」なのだ。

 

 人口削減と「グローバル2000報告」

 ・コンピュータによる超管理社会の形成と並ぶ陰謀の柱が、大量虐殺計画である。多くの場合、「彼ら」の人類管理のため人口を適正人数にまで削減する「間引き」計画として説明されるが、「4人の天使は、人類の3分の1を殺すために解放された」(ヨハネの黙示録9章15節)のような聖書の記述を実現させるためなのだ、という主張もある。

 

 映画『ターミネーター2』の冒頭では、核戦争による30億人の死が描かれているが、これは「彼ら」による計画のほのめかしなのだ、と主張する者もいる第三次世界大戦が方法として想定されることも多いが、現在もさまざまな手段で人口削減は進行中とされている。各種致死性ウイルスの開発利用は、多くの論者にとってこの削減の大きな柱である。アジア風邪、香港風邪、ラッサ熱、鳥インフルエンザなどの伝染病はすべて、「彼ら」が流行させたものだ中世ヨーロッパで猛威をふるった黒死病も陰謀の産物とみなされているエイズが「彼ら」によって開発された生物兵器であり、人口削減計画のための意図的に流行させられたものであることは、陰謀論者たちにとって論証の必要もない自明の前提となっている。

 

・現状のまま推移すれば、世界人口は2000年には60億、2030年には100億、21世紀末には300億に達する。その増加の90パーセントは最貧国に集中するだろう。食糧生産、エネルギー資源、鉱物資源の供給は地球全体の需要に追いつかず、それらを先進国に吸い上げられる発展途上国はますます危機的状況となるだろう。地域的な水不足や環境破壊による動植物種の絶滅も深刻となる。

 

『グローバル2000報告』はローマ・クラブ『成長の限界』の延長線上にあるが、その発想をイギリスの経済学者マルサスの『人口論』にまで遡ることも可能だろう。人口は等比数列的に増加するが、生活資源は等差数列的にしか増加しない、というのが『人口論』のテーゼだ。つまり人口は累乗で増えていくのに、生きていくのに必要なものは同じ数の足し算でしか増えない。その落差が貧困の発生原因となるのだから、何らかの人口抑制策が必要とされるということである。

 

曲解された警告

・だがそれにしても、陰謀論者たちの主張は粗悪なものと言わざるをえない。彼らは「人口ゼロ成長」と「人類大量虐殺」を、何の正当性もなく直線的に結びつける。『グローバル2000報告』の主張は「地球の収容力が限界なので、今後の人口増加を抑えなければならない」というものだが、陰謀論者たちはこれを「人類は多すぎるので、適正人数まで殺してしまおう」という主張だと解釈してしまうのだ。

 

・ジョン・コールマンは『グローバル2000報告』の戦略をこう解説する。まず国家の経済構造が破壊され失業者が大量に発生、つづいて大規模な栄養失調が蔓延し、そこに疫病がばら撒かれ死者が量産される。この戦略はペルー、ナイジェリア、ザンビアジンバブエ、ザイール、南アフリカ等、第三世界のほぼすべての国ですでに実行されているのだ。

 しかし、経済弱体化、栄養失調、保険・衛生環境の悪化、伝染病への抵抗力の衰退等は、このまま対策を採らねば今後起こりうる、あるいは一部地域ではすでに現実となりつつあるものとして、同報告書がまさに指摘・警告していた事態そのものである。つまりコールマンが陰謀の実例として指摘しているものは、同報告書の分析が正しかったことの証明でしかない。

 こうしたことは、報告書を読みさえすれば通常ならば理解できるはずである。陰謀論の主張を信じ、流布させる人びとのほとんどが原典にあたっていないことは、まずまちがいないだろう

 

日常の隅々を覆う陰謀

・ふたたびコールマンによれば「イルミナティは、われわれの日常生活のほんの細かい面まですべて支配している」。この見解は新世界秩序陰謀論に共通のものである。われわれが日常で見聞きするものすべてが陰謀の所産であり、われわれの生活のすべては陰謀に侵食されているのだ。そのような、日常を覆う陰謀の事例をいくつか紹介しておこう。

 一般大衆の情報源たるメディアが陰謀の支配下にあること、われわれの接するすべての情報が陰謀に都合のよいように操作されたものであるという主張は、すでに何度も登場した。報道関係にかぎらず、TVドラマ、映画、音楽といった娯楽も「彼ら」による大衆の洗脳に利用されている。これらの主張は『プロトコル』に由来する「3S政策」=セックス・スポーツ・スクリーンは大衆を目先の快楽のみ追い求める衆愚と化し、本当に重要な事柄から目をそらさせる陰謀である、という主張がそのまま引き写されたものである。

 

・ハリウッド映画やテレビ・ドラマも同様に陰謀の道具だ。ハリウッドがユダヤ人の支配下にあるという主張はすでに見た。ホロコーストは捏造だと主張する人びとにとっては、『シンドラーのリスト』はユダヤの宣伝工作にほかならない。『奥様は魔女』『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』などはオカルトに対する肯定的イメージを刷り込み、キリスト教を破壊し悪魔崇拝を蔓延させるための洗脳である。ハリウッド映画は暴力や殺人を美化して描き、若者に反社会性を植えつけている。同性愛などという性嗜好が蔓延するようになったのも、麻薬汚染の広がりも、シングルマザーや婚外子の増加など伝統的家族道徳が崩壊したのも、ハリウッド映画がそれらを美化し宣伝したからである。

 

・またハリウッド俳優や監督にはリベラルな傾向をもつ人びとも多い。もちろんそうでない人びとも存在するが、「ハリウッド=リベラル」というイメージは、それほど的外れではない。そして極端に保守的な人びとの見解ではリベラル=共産主義者であり、多くの陰謀論者の見解ではリベラル=陰謀の手先であるマッカーシズムの時代にはチャップリンを含め多くのハリウッド関係者が「共産主義者」として糾弾された。

 

陰謀は日常のいたるところに

陰謀論者たちは、丸いものであれば「目」を、数字があれば「666」を、三角形があればピラミッドを見つけだす。その他にも、五千円札に描かれている富士山はじつはユダヤの聖地シナ山であるとか(実際は岡田紅陽「湖畔の春」という写真作品)、CMや雑誌広告にはサブリミナル・メッセージが仕込まれているだとか(そのメッセージとやらは、それを主張する人以外の目では確認できない。なおサブリミナル効果の有効性は学術的に疑問視されている)、陰謀論者は日常のいたるところに陰謀のサインを発見してしまうのである。

 

・陰謀を企んでいる人びとはつねに、いたるところで、自分たちの存在や計画をほのめかしている――これは陰謀論者たちに共通する信念である。陰謀のサインは密かに、しかしわかる者にはわかるようにばら撒かれているはずなのだ。言うまでもないことだが、本当に陰謀を企む人びとがいたとして、何のメリットもない、そのような「ほのめかし」をおこなう合理的理由は存在しない。

 

グローバリゼーションの鏡像

新世界秩序陰謀論の構造

アメリカの政治学者マイケル・バーカンは、陰謀論の構造を事件陰謀/体系的陰謀/超陰謀の三つに分類している。

  • 事件陰謀は、陰謀を企む主体と陰謀とされる事柄が一対一で対応し、陰謀の権力は限定的で明確な対象へと注ぎ込まれる。aという出来事はAという集団/人物による陰謀だ。例えばフランス革命フリーメーソンの陰謀だ、という主張はこれにあたる。
  • 体系的陰謀では、陰謀の主体と陰謀の事柄の対応は一対多となる。a、b、c、……のさまざまな出来事はすべてAによる陰謀だ。数々の一見独立した事柄が、特定の集団による陰謀の仕業として結びつけられる。陰謀の目的も、国家や世界の支配といった広範なものとなる。フランス革命を含むさまざまな出来事はすべて、メーソンの世界支配陰謀の一環である、といった主張が該当する。
  • 陰謀では、陰謀の主体と事柄の対応は多対多となる。陰謀を企む集団も、陰謀だとされる出来事も、入れ子のように複雑に絡み合っている。階層構造をなす陰謀の頂点は遠く隔たっており、すべての陰謀関係者を操っている。その陰謀の頂点は秘密のベールに包まれた、実在自体が疑わしい、無限の力として働いている。バーカンは超陰謀を「複合的な陰謀が界層的に連携しているとみなす陰謀構造体」、「すべてのものと繋がっているとみなす超陰謀の論法」と表現している。

この分類にしたがえば、現代の新世界秩序陰謀論は典型的な超陰謀である。というよりも、バーカンが新世界秩序陰謀論を分析するために構築した概念が超陰謀だ。

見通せなくなった世界

・過去の陰謀論と現在の新世界秩序陰謀論との大きなちがいは、以下の二点である。

 第一に、非常な包括性。新世界秩序陰謀論では、今まで個別に語られてきたさまざまな陰謀や都市伝説などが「新世界秩序」という統一目標のための陰謀の一部としてつなぎあわされ、また、陰謀の主体としては数多くの組織が複雑に連携したネットワークが想定されている。

 第二に新世界秩序陰謀論は、陰謀集団は世界支配を企んでいるというよりも、すでに世界をほとんど支配していると主張する陰謀論者によれば歴史は陰謀によって一貫して操作されてきたのであり、現在の政治経済や世界情勢はもちろん、日常生活の隅々まで陰謀の支配下にある。世界、そしてわれわれはすべて、過去から現在にいたるまで、新世界秩序の陰謀の手のひらのうえでコントロールされているのである。

 

世界を動かす主体の可視化

・現在の陰謀論の二つの特徴は、このような世界状況を反映したものといえるかもしれない。陰謀論において世界を動かす主体は、複雑に絡み合った陰謀のネットワークである。そのネットワークは国家という枠組みを無視して世界中に張りめぐらされ、統一的な把握が困難なほどに錯綜しており、しかし末端までひとつの陰謀の意志で統一されている。

 陰謀論者たちにとって、国家はそれらの陰謀ネットワークに対して受動的存在であり、陰謀に侵食され操られる主体性のない駒にすぎない。

 

・しかし陰謀論者たちは一方で、国家主権の独立、国家の至上性を語り、彼ら自身の国家がいままさに陰謀の最大の標的とされ、脅かされていると主張する。彼らの多くは、愛国心と国際主義は相容れないと主張する。新世界秩序陰謀論においては、あらゆる国際主義的思想や国際組織は世界統一支配陰謀の一環である。

 

陰謀論者は複雑で把握しがたい陰謀のネットワークを想定する。その一方で、それらを統括する単一の意志、少数エリートによって構成された陰謀の最上位機関を想定し、またそれによって世界がすでに支配されていることを主張する。このこともまた、グローバリゼーションによってもたらされた世界情勢のひとつの反映である、と見ることができる。

 

・このような状況において、世界を統一的に簡単に理解したいと願う人びとは、世界を動かす見えない主体の可視化を求め、世界を動かす主体に明確で首尾一貫したアイデンティティを求めるのである。

 例えばスプリングマイヤーは言う。「人類の歴史上起きた本当の歴史を知っているのは“内部”の者だけということになる。本当の決定や真の有力者は、世間の目から隠されてきた。一般大衆が見せられるのは、イルミナティの操り人形がそこら中を歩き回り、イルミナティの台本どおりに盛大な演説をするステージショーなのである」。

 このような少数エリートによる、一般大衆の目を欺いた密かな世界支配という主張と、そうした支配に対する反発は、自分たち以外の主体によって縛られているという感覚、その自分たち以外の主体の正体がはっきりと特定できないことに対する苛立ちの反映である。

 

 東日本大震災地震兵器

 震災デマの流布

 多くのデマはすぐに消えていくがいくつかは根を下ろし、社会に現実的な不利益を与えることになるだろうし、すでになっている。  震災デマについての分析は『検証 東日本大震災の流言・デマ』(荻上チキ著、光文社新書)や『検証 大地震の予言・陰謀論“震災文化人たち”の情報は正しいか』(ASIOS、アンドリュー・ウォールナー著、文芸社)といった優れた解説書がすでに出ている。ここでは震災にまつわる陰謀説の一例として、「東日本大震災地震兵器による攻撃だった」という主張を取り上げたい。  なお、「地震兵器」にまつわる主張は、主に疑似科学の領域で古くから存在するが、そのものについての詳しい解説は割愛する。たいていの場合エジソンのライバルと言われる発明家ニコラ・テスラの研究をもとにしてソ連アメリカが開発していることになっていること、そんなものは存在しないことを知っておけばじゅうぶんだ。