日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

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新型コロナの経済回復には最低4年は必要(2)

 

 

『日本の宿題』

令和時代に解決すべき17のテーマ

竹中平蔵  原英史   東京書籍  2020/4/27

 

 

 

当面の日本経済はコロナ問題への対応で大揺れになるだろう。しかしその先に、日本が避けて通れない『宿題』が待っている。いや、コロナ問題に対応するためにも、本書で示した宿題への処方箋が急がれる(例えば、遠隔診療・遠隔教育を可能にする規制緩和など)。

 

コロナ問題

このように安倍内閣発足以降、コロナ問題が生じるまでについては当面の日本を良くするための政策はそれなりに議論されてきた。しかしながら、将来の日本を良くするための政策を考えると、それらにはまだほとんど手がつけられていないことに気づく。

 

・本書は、この先令和の時代にどのような政権が生まれ、誰が総理大臣になっても、避けて通れない重要な政策問題を議論するために書かれた。

 

これらの宿題の解決を避けて通ろうとすれば日本の未来はない!>

宿題1  真の政官分離を実現する――官僚主導のゆがみを是正せよ――

なぜ政官分離が必要か――優先される特定権益集団の利害――

政策の決定は、業界団体・族議員・官僚機構の三者により、閉鎖的に行われ、その目的は特定権益集団の利益を最大化することであった。1990年代から、この弊害を解消するために官僚機構改革など、様々な改革が進められた。いわゆる「内閣主導(官邸主導)」への転換だ。

 

・規制に関して、20年も30年も同じ議論を続けており、既に岩盤のように固くなってしまい、どうにも解決の糸口が見えない状況を言い表している。「鉄のトライアングル」と呼ばれる業界団体・族議員・官僚機構の三者が、相変わらず、社会全体の利益よりも特定の利権を持っている人たちの利害を優先するような構造になっている。

 

突出した権限を持つ日本の官僚機構

・「鉄のトライアングル」という言葉は、もともとアメリカで使われ始めた言葉だ。決して日本特有の問題ではなく、世界共通の現象と言える。何らかの制度がいったんつくられると、それによって既得権が生まれる。既得権を持つ業界団体は政治家に対してロビイング(ロビー活動)を行う。

 

・日本では、官僚機構が強すぎるため、時代に対応した政策転換が遅々として進まなかった。

 

抵抗勢力」と闘う

政策決定に強大な力を持つ官僚たち

もともと改革には積極的でない官僚と、利権を失うかもしれない族議員たちは、法律案をつぶそうとするか、後退させようとする。強いリーダーシップを持つ総理大臣が頑張っても改革が容易に進まない原因がここにある。

 

「事前規制型」から「事後チェック型」への転換に抵抗する官僚・族議員

国家公務員制度の改革と新たな抵抗

内閣人事局ができてから省庁をまたがった幹部の異動などは増えてきたが、まだまだ機能を十分には発揮していない。

 

政治に優れた人材を集めよ――土日・夜間議

・欧米各国の地方議会では、普通の人が仕事を持ったまま議員になることは当たり前のことである。例えば、フランスの地方議会では、一般の人が自分の職業を持ちながら政治家として活動している。アメリカの場合は、地方議員の大半が非常勤で、週に1回程度会議に出席すればよい。議員報酬も無報酬か、あってもわずかな額である。議会も「土日・夜間開催」が普通だ。議員は特殊な仕事で、地方議員であっても、議員になるために会社を退職し、すべてを投げ打って立候補する日本とは大きく状況が異なる。

 こうした多様な人材の参入を可能にする仕組みは、国会でも応用できる可能性がある。よりよい人材を政治に集めるという観点では、まずは地方議会に「土日・夜間議会」を導入したうえで、国会レベルでも検討すべき課題である。

 

政策決定を歪ませる地方議員の存在

・いっぽう、地方議員の多くは、地元のしがらみにどっぷり浸かっている。政治家を職業とするプロであり、なによりもまず、職業としての議員の職を守らなければならない。その結果、自分を支持する地元の団体や一部の住人たちの要望に応えられるかどうかが死活問題であり、その実現を国会議員に迫ってくる。

 

投票率をあげるために電子投票(インターネット投票)を実現せよ

・インターネット投票の導入がなかなか進まないのには、いくつかの理由がある。外部からの不正アクセスによる侵入が防げるかというセキュリティの問題、ネットを使用しにくい環境にいる人たちへの対策、「秘密投票」の制度など、解決すべき課題は多い。

 

提言

1、「政官分離」を断行し、政治家と官僚それぞれが本来の役割を果たすようにする。そのため両者の接触を原則禁止する。

2、「土日・夜間議会」を採用するなど、政治への参入障壁を引き下げ、優れた人材を政治に集める。

3電子投票を実施し、投票率(特に若年層)を高める。

 

宿題2 地方衰退を解決する

地方衰退解決策の一つとしての介護問題対応

・地方創生は、ある意味決定的な「解」のない問題と言える。都市立地を好む知識集約型産業のウェイトが高まるという構造変化が背景にあるからだ。

 

第一の課題は、日本の制度では社会保障負担の一部を地方が負担することになっているため、地方政府の財政負担が増えることである。地方は、本音では、社会保障負担が増える高齢者よりも、働き盛りの若い世代に移住して欲しいと願っているはずである。そこで、社会保障費の地方負担増分を国が肩代わりする制度を設ければ、地方も高齢者を受け入れやすくなるだろう。

 介護問題は超高齢化社会の日本において、避けて通れない問題である。それを国が資金面で支え、地方政府が担っていく。高齢者の地方移住と地方政府による介護政策が、地方創生のひとつの決め手になると考えている。

 

提言

1地方分権一括法を見直し、国の仕事と地方の仕事を明確に区分する。それに合わせた権限・財源を国から地方に移す。

2、地方活性化の切り札として高齢者の地方移住を促進し、それに伴う社会保障の地方負担を国が肩代わりする。

 

宿題3 道州制を導入する

・結果的にいま、国家公務員のうちの3分の2は地方にいる。もし地方に優れた人材が少ないというならば、彼らを仕事・権限とともに地方に移せばよいだけの話である。

 

提言

1道州制を実現し、国は本来の役割に特化する。

2、その前提としての基礎自治体を強化するため、市町村のさらなる合併を進める。

 

宿題4 東京を独立させる

・特別行政地区の東京には様々な可能性が生まれる。例えば、東京が持っている土地や建物などのアセット(資産)を内外マーケットで活用する。所有権の売却でも、運営権の売却でもいい。

 

提言

1、東京を日本全体の戦略基地としての特別行政地区とする。

2、そのトップは国務大臣とする。

 

宿題5 令和の農地改革を実施する

・農業や漁業への企業参入が認められないというのは、日本の農業や水産業にとって大きなマイナスであり、若者の地元離れを助長するだけである。農業や漁業への企業の本格的参入を認めることは、令和の時代に残された大きな宿題といえる。

 

提言

1,令和の農地改革として農地法を改正し、企業の農地所有を認める。

2、現状維持の仕組みになっている農業委員会のあり方を抜本的に改め、農地のより自由な活用を可能にする。

 

宿題6 ベーシック・インカムを導入する

世界中で格差が拡大している

・2000年以降、世界の先進国で格差が拡大している。しかも、今後もさらに格差拡大が見込まれ、世界中で大きな問題になっている。にもかかわらず、各国とも格差解消に十分に対応しきれてこなかった。

 

・ピケティは著書「21世紀の資本」の中で、世界の格差は1970年代以降に拡大したと指摘している。

 

AI進展によって格差はますます拡大する

・さらに言えば、現在、第4次産業革命あるいはソサイエティ5.0)が進行中だ。第4次産業革命とは、18世紀後半の蒸気機関を中心とした第1次産業革命、19世紀後半の内燃機関を中心とした第2次産業革命、1980年代以降のICTを中心とした第3次産業革命に次ぐ革命で、その中心はAIと言われている。また、ソサエティ5.0とは、第5次科学技術基本計画において示されたもので、経済産業省経団連が強く主張している。狩猟採取社会・農耕社会、工業社会・情報化社会に次ぐ社会のことで、その中心はやはりAIである。

 第4次産業革命では、格差がより拡大していくと予想されている。

 

中流の崩壊

・実は、日本の格差の問題はそれほど大きくはないという認識がなんとなくまだのこっている。世界中で問題になっている格差拡大やグローバル化に伴う移民などの問題は、日本ではまだそれほど大した問題ではないという見方もある。しかし、日本でも格差拡大は着実に進行しており、すでに深刻な問題になっている。

 

・バブルの時代では「1億総中流」と言われた。しかし、現在の日本では大きな所得格差が生まれている。日本では金持ちの数や程度はそれほど大きくはないかもしれないが、貧しい人の数は多いということである。

 

日本の格差の変遷

・実は、日本では明治から昭和にかけて格差が広がり、戦後の財閥解体や農地改革で格差が縮小したという歴史がある。

 

・しかし、1980年代以降、所得格差は拡大するようになる。1985年のジニ係数は、アメリカが0.34、日本が0.30だったが、2012年になると、アメリカが0.39、日本が0.33と、不平等が拡大していることが読み取れるアメリカの格差拡大は、上位所得者に所得が集中していることが原因だが、日本の場合は、人口の高齢化と単身・二人世帯の増加という世帯構成の変化も大きな原因といえる。

 

日本の生活保護制度は不公平

・実際、日本の生活保護制度は不公平である。現在(2019年2月)、生活保護を受給している世帯数は約164万世帯であり、生活保護受給者数は約209万人となっている。日本の全人口を1億2600万人(2019年)とすると、人口比1.7%に過ぎない。日本の相対的貧困率16%と比較するといかにも少ない。

 なぜ日本の貧しい人々は生活保護を受けようとしないのだろうか。一つの理由は、生活保護を受給する要件が厳しいことである。厚生労働省のホームページによれば、預貯金や生活に利用されていない土地や家屋等があれば売却して生活費に充当し、働くことができれば各自の能力に応じて働くことが前提になる。さらに、年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は活用しなければならず、親族等から援助を受けることができる場合はそれが優先される、という具合である。

 

・さらに言えば、日本の生活保護は所得水準が低ければ自動的に受給できるようにはなっていないことに加えて、生活保護を受けるのは恥ずかしいという雰囲気があって申請しにくい面がある。逆に生活保護の不正受給が横行している、との報道を目にすることもある。

 

日本の格差対策は日本型雇用慣行と産業保護政策だった

・なぜそのようなことになっているのか。その理由は明らかで、残念ながらこれまで有効な所得再分配政策がとられてこなかったからである。

 

・正確を期すために言うと、高額所得者に対する所得税率は、日本の場合既に高い。しかし、中所得者に対する税率が低く、このため全体としての所得再分配機能が弱くなっている。

 実は、日本の格差対策を実際に担ってきたのは、日本型雇用慣行と産業保護政策だった。いったん会社に入ると給料は右肩上がりで上がり、大会社に入れば中途で解雇されることはない。それなりの会社は、いかに生産性が低くても倒産することはない。つまり、生産性の低い企業をわざわざ守っていたからである。

 

・実際、何が起きているのか。正社員で運用しきれなくなった企業は非正規での社員を雇用の調整弁として活用して、状況が悪くなったときには非正規社員の待遇を悪化させる、あるいは解雇するということを進めてきた。要するに、日本型雇用慣行が、結果として正社員と非正規社員との格差を大きくしている。

 そういう状況の中で、これまでのように、いったん会社に入れば解雇されることはなく、所得格差は生じないというような状況ではなくなり、再分配前の格差が大きくなっているわけである。そして、従来、あまり事前に格差が生じていないということが前提になっていたために、事後的な所得再分配をあまりやってこなかったツケが、いまやってきているのだ。

 

ベーシック・インカムで格差縮小

・このように、これまでの所得再分配がうまくいかず、その結果として格差が大きくなっている。では、どうすれば日本の格差を縮小できるだろうか。その解決策は「ベーシック・インカム」である。一定の所得に達していない場合にはマイナスの所得税が受給できる。それよりも高くなると税金がかかるというものである。基本的には負の所得税ベーシック・インカムは同じもので、税金を取る段階で給付するのが負の所得税であり、最初から一律に一定金額を給付するのがベーシック・インカムである

 

ベーシック・インカムが進まない理由

・では、なぜベーシック・インカムの導入が進まないのか。その理由は明確で、ベーシック・インカムは公正で明快な格差対策だからである。つまり、全国民一律に一人当たり7万円を配るという「透明なばらまき」で、政治の入る余地がなくなるからである。

 いま行われている政策の多くは、政治が介入する余地が大きなものだ。例えば、農業を守るという名目で補助金を出す。公共事業という名の補助金を付けて建設労働者の仕事を確保する。あるいは中小企業が倒産しないように補助金を付けるという具合である。生活保護や高齢者対策にしても同じことで、要するに政治的に力を持つ特定のグループに選択的に補助するというシステムである。これは政策決定者にとっては好ましいことであり、特定のグループからの要望に応えるという形で恩を売り、その対価として選挙での票を得ることにつながる。

 合理的に考えれば、不公平さや不透明さをなくすためには、ベーシック・インカムに切り替えるべきであることは明らかだ。

 

・スイスでは、2016年にベーシック・インカム導入の是非を巡って国民投票が行われた。残念ながらその時は国民の理解が得られずに、否決されている。しかし、今後5年ないし10年の間に、世界の主要国で必ずベーシック・インカムの議論が行われるようになるだろうと筆者たちは考えている。

 

提言

1ベーシック・インカム制の導入に向けて、正面から議論を本格的に開始する。

2,その際、ベーシック・インカムの水準を適切に定め、またそれに伴って削減できるコストを明確にし、財政の過度な負担を回避する。

 

宿題7 「コンセッション」を全面導入する

高まるインフラ需要と進む老朽化

委託や民営化と異なる「コンセッション」

・この運営権売却のことをコンセッションという。英語のコンセッションの意味は、譲歩、割譲、政府から得る免許などである。すべて民間に渡すのではない。所有権は残したまま、運営権を民間に渡して効率的に使ってもらい、資本のリサイクルを実現する。そういう意味から、コンセッションという名前がつけられている。

 コンセッションは民営化の一形態と言えなくもないが、いわゆる一般の民営化とは異なる。民営化は所有権そのものを民間に売却するからだ。またコンセッションは、公的な業務の単なる委託とも異なるものだ。

 

・コンセッション方式のメリットは三つある。

一つ目は、この方式はまさに民間企業の成長戦略になるということだ。

二つ目は、公務員にはない民間の視点が経営に入るということだ。

三つ目は、コンセッションによって国や地方自治体に財政資金が入ってくることだ。

 

提言

1,コンセッションの個別成功事例(関西空港仙台空港)をマクロに拡張し、幅広い分野・地域でこれを実施する。

2、とりわけ、当面、水道、林業などの分野を重視する。

3,コンセッションを財政健全化の重要な手段として位置づける。

 

宿題8 シェアリング・エコノミーを推進する

・要するに、既得権を守るということを素直に認めて、利害調整をし、ルール設定をしているので、問題は解決している。それに対して日本では、既得権を守るということを表面上は出さず、安全を守るためだという建前論だけで議論する。国民が事故に遭ったらどうするのかという議論ばかりする。そういう捻くれた議論ばかり何年も繰り返しているので、新しい課題への規制対応が遅れているのである。

 先にも述べたように、ライドシェアは近年の世界で最も注目される成長産業だ。そこに一歩たりとも参入させまいとするタクシー業界と、それと一体化した官僚の責任は極めて大きい。また、既得権益に切り込めない政治の責任も大きなものがある。

 

提言

1、第4次産業革命が進行する世界の現状を正面から受け入れ、民泊やライドシェアの活用をはじめ、新たな社会システムに対応した本格的な税制改革を進める。

2,例えば、ライドシェアに関して、安全を守るといったごまかしの建前論ではなく、既得権益の保護を素直に認めたうえで必要な調整を行う。

 

宿題9 経済の新陳代謝を高める――総理主導の規制改革――

日本企業の労働生産性は低い

日本経済の成長力を高めるために求められる最大のポイントは、企業の生産性を高めることだ。

 日本の生産性の低さは、世界の主要な先進国と比較するとそれは明らかだ。日本の生産性はアメリカやヨーロッパ諸国よりも低いばかりか、OECDの平均よりも低い水準にある。日本経済の今後の成長を考えた時、中長期的に成長軌道に乗せていくためには、生産性を高めなければいけない。

 一国の経済規模は「人口×生産性」で決まる。そして、日本の人口は減少傾向にある。

 

事前規制型の行政で企業は守られてきた

・このような状況を解決するためにはどうしたらいいのか。答えは簡単で、退場すべき企業の保護をやめるということに尽きる。少なくとも、退場すべき企業を政府が守ることをやめるべきである。具体的には、規制改革を強力に進めることだ。

 

事後チェック型行政が世界的潮流になった

・それに対して、事後チェック型とは、市場や競争を重視し、自由に参入を認めて競争を促し、競争に敗れた企業が退出をするためのルールをきちんとつくることである。

 

提言

1、企業と産業の新陳代謝を高め生産性を向上させるため、退出すべき企業の保護を止める。また、コーポレートガバナンスの一層の強化策を探る。

2既得権益グループと官僚機構の壁を突破するため、首相主導の規制改革を復活させる

3、その象徴として、第4次産業革命に対応した「スパー・シティ」を早期に実現する。

 

宿題10 デジタル・ガバメントをつくる

デジタル・ガバメント化を進めるために

・日本でも、もともとはマイナンバーカード一枚ですべての手続きが可能になるように制度設計されていた。

 

マイナンバーで「源泉徴収」は不要になる

・日本では自営業の所得捕捉率が低いという問題がある。これを解消するためにも、マイナンバーを活用してデジタルに収入を把握し、公正に税率をかけるという仕組みに変えたほうがよい。

 

年金未収問題と「日本年金機構」という杜撰な組織

・さらに、デジタル・ガバメントを財政の観点から見ると、「デジタル歳入庁」の創設につながる。実は、税務署などの国税部門と、社会保険を取り扱う社会保保険庁(現在の日本年金機構)を合体して歳入庁をつくるという議論は、かねてからあった。

 

しかし、国税庁が歳入庁の創設を嫌った。社会保険庁のような不出来な役所と一緒になりたくないというのがその理由だ。かつての社会保険庁も現在の日本年金機構も、数年に一度必ず不始末問題を起こす厄介な組織である。

 

・要するにこの組織には、データ管理体制に関する根本的な問題があるということだ。

 

デジタル歳入庁で社会保険料の未収はなくなる

・実は、日本年金機構と一体化することについての国税庁の懸念は、デジタル歳入庁をつくることによって解消される。日本年金機構と事務所や組織を統合する必要はまったくなくなるからだ。

 

提言

1マイナンバー制度は第4次産業革命の時代に不可欠なインフラであり、その普及と拡充を急ぐ。

2、デジタル・ガバメントを推進し、その象徴としてデジタル歳入庁を創設する。

 

宿題11 働き方をさらに変革する

過去の遺物となりつつある終身雇用・年功序列

同一労働同一賃金を実現する

・不平等の典型的な例が、同一労働同一賃金が実現されていないことだ。

 

同一労働同一賃金外国人労働者への適用

外国人労働者に対しても同一労働同一賃金の考え方を当てはめるべきかについては、意見が分かれる。

 

人生100年時代の働き方

・しかし、人々がふつうに100歳、105歳まで生きる時代が到来すれば、ほとんどの人は、少なくとも90歳前後まで働かなければならないだろう。

 

兼職OK、金銭解雇ルールの確立

・新たな働き方では、兼職も認めるべきだ。多段階のライフステージが前提となっている社会では、一つの会社に留まることがベストの選択とは言えない。

 

OECD諸国の中で、金銭解雇のルールがないのは、日本と韓国だけである。

 

定年制を廃止せよ

・働き方と密接に関連するのが定年制の問題である。

 人生100年時代と言われるいま、定年延長が課題となっている。

 

現実的には定年制を柔軟に対応し、理想的には廃止する

・定年をなくすか、もっと柔軟に定年に対応するかが課題である。終身雇用、年功序列制度により、企業は自社で社員教育を行ってきた。そのことにより社員の能力が向上してきたことも事実である。一つの考え方として、40歳定年制という考え方がある。

 

・この不平等なキャリア制度を見直すのは、喫緊の課題である。アメリカの政府ではキャリア制度などない。年齢による差別もないし、国家公務員試験という試験制度もない。日本の高級官僚にあたる職員は、アメリカの場合、大統領が代われば約3000のポストが入れ替わる。日本の官僚の働き方は、民間の働き方以上に独特の歪みを持つものとなっている。

 

提言

1、終身雇用・年功序列こそが正しい働き方であるという前提を解消し、自由な働き方と自由な雇い方を認める。労働者間の制度的差別をなくし、同一労働同一賃金を実現する。

2、時間ではなく成果で評価する働き方の拡充、金銭解雇のルールづくり、定年制の見直しなど、残された改革を急ぎ実現する。

 

 

宿題12 移民法(外国人労働法)をつくる

提言

1、日本は外国人を受け入れて国を発展させてきたという歴史的事実を認識し、本格的な移民法(外国人労働法)を制定する。

 

宿題13 脱原発を実現する

 提言

1福島第一原発の事故処理は、国の責任で行う。

2原発問題に関する、真に独立性の高い第三者委員会を設置する。

3放射能のごみの最終処分問題について早急に結論を出す。解決できないならば、脱原発への道を明確にする。

 

宿題14 少子社会を克服する

提言

1特別養子縁組をしやすくするための法律改正を行う。

2、子どもを持ち、育てるための限界費用を安くするために、フランスの例などを参考に、メッセージ性のあるわかりやすい政策を講じる。

 

宿題15 東大を民営化し、教員資格制度を変える

提言

1、大学の運営を、「自治」ではなく「マネジメント」の概念に基づく形態に転換する。

2、東大を民営化する――国立大学への運営交付金を競争的研究資金とする。資産運営の自由を認める。

3、教員免許の制度を、全面的に見直す。

 

宿題16 真のジャーナリズムを育成する

提言

1、世界のメディア産業に大変革が起こっている現実を踏まえ、前時代的な日刊新聞法、放送法を大幅に見直す。

2記者クラブを廃止し、切磋琢磨を通じて質の高いジャーナリストを育成する。

 

宿題17 政治・メディアの悪循環を糾す

提言

1、主要大学に、スクール・オブ・ジャーナリズムを設置し、権力からも大衆からも独立した志高いジャーナリストを養成する。

2、国会議員の免責特権が乱用されるのを防ぐため、国会に特権をチェックする自主機関を設置する。

 

 

 

『ポストコロナの「日本改造計画」』

竹中平蔵  PHP  2020/7/30

 

 

 

新型コロナウイルスパンデミック

今後に向けた前向きの改革の大きなチャンスをもたらしている

・歴史を振り返ると、このようなパンデミックは大きく二つの教訓をもたらしてきました。第一は、パンデミック後は従前とは大きく異なる社会が訪れること。第二は、混乱の中でその社会が持つ弱点が露呈される、という点です。

 今回の混乱で、二つの教訓から日本が考えるべき最大の課題は、世界が凄まじいデジタル資本主義の競争に向かうこと、そして日本が立ち遅れているデジタルシフトを急いで進めなければならない、ということです

 

・本書の締めくくりとして、第6章ではまず「ポストコロナ構想会議」の必要性を主張しています。そして、この構想会議で取り上げられるべき重要な六つの政策項目を議論します。デジタル資本主義において重要性を増す無形資産の問題、デジタル時代のインフラとしてのマイナンバー制度の思い切った拡充、さらには究極のセイフティーネットとしてのベーシックインカム、などです。デジタル化は、効率的な社会を作る一方で、新たな格差社会を産む可能性を秘めています。

 

ポストコロナの時代、日本は厳しいデジタル資本主義競争の強者を目指す必要があります。

 

死者数、感染者数から見えてきたこと

しかし、特効薬となるワクチンや治療薬は開発中で、もっかの感染が一段落しても、やがて第二波、第三波が来るとも言われています。北半球では2020年の秋から2021年の冬にかけて、さらなる警戒が必要とされるでしょう。

 

・最初に申し上げておきたいと思いますが、私は政府と国会に対し、今の時点で「コロナ問題の検証」を是非してもらいたいと思います。

 

・以上、これらの数字から、当初いくつかの論点が浮かび上がってきました。一つ目は「これらの統計が、本当に正しいのか」というものです。

 

・二つ目の論点は、少なくともこの時点で、「日本のコロナ対策は素晴らしいかもしれない」というものです。

 

懸念された医療崩壊の裏側

・三つ目は、「日本は医療崩壊する可能性があった」というものでした。

 

・この医療崩壊について考えるとき、日本で忘れられがちな議論が、医師数の少なさという点です。

 人口1000人当たりの医師数は、OECDの平均が3.5人であるのに対し、日本は2.4人です。多い国ではノルウェーが4.7人、ドイツが4.3人で、日本はノルウェーやドイツの半分程度しかいません。2.4人という数字は、チリやメキシコと同じレベルです。

 

2017年、国家戦略特区にある国際医療福祉大学の成田キャンパスで、医学部が新設されましたが、これは実質的に約40年ぶりのことでした。それぐらい日本では医学部を作らせず、医師数を抑えていたのです

 

・もう一つ注目したいのが、日本では人口当たりの病床数が桁違いに多いことです。人口1000人当たり13.1床で、これはドイツの8.0床の約1.5倍、アメリカの2.8床の約5倍になります。

 一方、ICUは非常に少なく、人口10万人あたりの数がアメリカの35室。ドイツの29室に対し、日本は7室しかありません。医師数が少なく、ベッド数が多く、ICU数が少ない。つまり長く入院させて、治療代や差額ベッド代で稼ぐ。一方で、重症者のためのICUは十分に整っていない。そんな日本の歪んだ医療構造が見えてきます。

 

イタリアと日本の死者数が大きく違う不思議

コロナ危機で露呈した日本の矛盾

7割の人は本来、在宅勤務が可能

・俯瞰すれば、日本では医師数が少ないという問題点がクリアになりました。さらに、新型コロナ問題の解決において最も重要なことは死者数を減らすことにあります。にもかかわらず、日本の死者比率はアジアの中では高いということも明らかになりました。

 

・そしてもう一つ、今回のコロナ危機から見えてくるのが、非常時にはその組織が持っている矛盾が、すべて露呈されるということです。

成長はすべての矛盾を覆い隠す」という、イギリスの名相チャーチルの言葉があります。経済が順調なときは、すべての矛盾が隠れてしまう。これは逆もまた然りで、パニックが起こるような非常事態のもとでは、その社会が抱える大きな矛盾が、すべて出てくるのです。

 わかりやすい例が、日本におけるデジタルシフトの遅れです。今回のパンデミックを機に、さまざまな国、さまざまな分野で、凄まじいデジタルシフトが加速することは間違いありません。残念ながら日本は、この流れに出遅れています。

 

・2018年には労働基準法が70年ぶりに改正されましたが、このとき導入された「高度プロフェッショナル制度」も、世論から猛反発を受けました。

 

緊急事態宣言で反対した日本の世論

・日本の国のかたちとして望ましいのは、「自由」と「統制」のスイッチングができる国にすることです。普段は徹底的に自由を認め、いざ非常事態となれば政府が厳しく統制する。今の日本はむしろ逆で、平時に多くの規制を敷き、有事、非常時になると統制ができない国になっています。

 

日本が今後向き合うべき問題

・本来、近代国家では、平時と有事のスイッチング機能があるのが当たり前です。実際、欧米のいくつかの国では、感染者の増大を受けて私権の制限と罰則を伴う、非常に強い経済統制を敷きました。

 理由は明白で、どの国でも戦争は「あってほしくないけれど、あり得る」という前提で、有事には平時とは違う社会体制を取る仕組みができているからです。

 

・また日本人の多くは国連に期待を抱いています。その時点で、国際感覚がずれています。

 

日本やドイツ、イタリアはいつまで経っても敵国で、常任理事国になれないのです。世界平和のために国連の場で頑張ろうと考えても、現界がある。もちろんそのこと自体問題ですが、そういうパラダイムの中で、日本は生きているのです。

 それに対し、十分リアリスティックな議論がなされずにきた。それがここへ来て、いよいよ変容を求められているのです。

 

ポストコロナ・四つの改革プラン

「国内回帰」で考えるべきこと

・今回、新型コロナウイルスによるパンデミックを通して、グローバルに展開する経済が抱える、さまざまな問題が浮かび上がってきました。とくに、モノづくりにおける国際分業体制について、多くの人が、今後手を入れるべき課題と認識したのではないでしょうか。

 

なぜなら、日本国内がつねに安全なわけではないからです。たとえば

地震が起きれば、日本の製造業は完全にストップしてしまいます。

 2004年の新潟県中越地震では、新潟県小千谷市に集約させていた三洋電機半導体の製造工場が大きな被害を受けました。この時、被った損害は500億円を超え、これが三洋電機の経営を大きく揺るがすことになったと言われます。

 

新型コロナウイルスによるパンデミックが起きた時、香港やソウルにいた私の知人は、日本の自粛要請が緩やかなことを非常に心配していました。

 

1920億円の協力金から見えてくる東京都の歪み

・東京都が他の地域と比べ、桁違いに財源が豊かなことは、バランスシートからも明らかです。たとえば2018年度の東京都の総資産は約35兆円ですが、島根県は約1兆7000億円しかありません。

 収入も東京都の約8兆8000億円に対し、島根県は約3000億円です。しかもこのうち約2000億円が地方交付税です。両者を同じ「地方自治体」としてひとくくりにするのはもはや乱暴な話で、これまでの形を変える必要があるというのが、今回のパンデミックから明らかになったことです

 この歪みを解消するため、私が以前から提案しているのが、東京だけ他の地方自治体と別扱いにするということです。

 

東京はワシントンD.C.のような特別区

・東京都は別の意味からも、資産を売却すべきです。そうすれば資産市場が活性化し、東京は本当の意味での国際マーケットになれます。

 

・具体的には、東京を特別区にして日本政府直轄にする。

 

そこで地方自治法とは切り離し、アメリカにおける「ワシントンD.C.」のような存在にしてしまうアメリカの首都であるワシントンD.C.は、他の州とは異なる存在で、国が管轄する区域があることが、憲法1条に記されています。

 

在宅勤務を続けるために必要なこと

・必要なのは、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を明確にし、それに応じた成果を出させる仕組みです。

 

官僚主導の復活か?

・ここからわかるのは、この当時、政策の司令塔が非常に曖昧だったということです。本来なら政治のリーダーが司令塔になるべきところが、どうしても官僚ベースになり、司令塔としての政府が十分機能しなかったと考えられるのです。

 

ポストコロナ構想会議」の六つのテーマ

「ポストコロナ構想会議」を作り、民間人と政治家で議論を

・ポストコロナを見据えて、今後作るべきだと私が考えているのが、「ポストコロナ構想会議」です。今、日本に求められるのは、従来の縦割りという次元を超えた大胆な構想力です。それを担う存在として必要なのです。

 

明治維新の時のように、どのような国作りをするのか、が重要です。ポストコロナの世界をイメージしながら、具体的な構想を持ち、それに向けて戦略と政策を作り上げ、実行していく必要があるのです。

 

デジタル資本主義で求められる無形資産への投資

・このポストコロナ構想会議で議論する内容は、大きく二つに分かれます。一つは以前から言われていた構造改革です。もう一つは、来るべき「ニューノーマル」を念頭に置いた構想です。

 

・このニューノーマルにおいて必要なことを、どこまで実現できるか。これが構想の重要なポイントになります。そのための一つ目のテーマは、無形資本への投資を強化することです。

 

個人情報とビッグデータの扱いをどうするか

・さて、ニューノーマルにおいて考える二つ目のテーマは、個人情報とそれに基づくビッグデータの扱いをどうするかです。

 

・これはアメリカ型でも中国型でもない、第三の道に基づく個人情報・ビッグデータの管理、活用の方法です。そのような仕組みを作ることができれば、日本の未来に対して、非常に大きな意味を持ちます。また、世界に対して新しいモデルを提供することにもなります。

 

デジタル世界でのセキュリティに必要な生体認証

ここでもう一つ重要になるのが、生体認証です。今、日本では、個人認証は主に運転免許証や健康保険証を使って行いますが、これらはプラスチックに情報を印刷しただけのもので、偽造が容易です。とりわけ健康保険証については、それが言えます。最も間違いがないのが、指紋や虹彩、顔などで本人を確認する生体認証です。

 

・デジタルの世界では、セキュリティをしっかりとしたものとし、かつ個人の特定が確実にできるものでないと、大変な被害を受ける危険性があります。知らないうちに、誰かに個人情報が引き出されることにもなります。そのためにインフラをきちんと整える、という話なのです。

 

米中対立の中、日本が国際協調をリードせよ

ニューノーマルから考える三つ目のテーマは、自国中心主義や反国際協調の流れと、どのように対峙するかです。今回のパンデミックによって国と国の出入りが遮断され、自国中心主義が激しさを増しています。

 

・国際機関などによるパテントの買い取りを実現させるべきでしょう。たとえばWHOが新薬のパテントを2兆円で買い取る。これをWHOは無料で世界に開放し、世界中で作れるようにする。これが今後、国際協調の非常に重要な一つのパターンになるはずです。

 

アジア諸国との連携政策

・そのための一つとして考えられるのが、アジア諸国との連携です。今回のコロナ禍で特筆すべきことの一つは、アジアの国々の死亡率が欧米と比べ、著しく低かったことです。

 

・近年、世界経済を引っ張ってきたのはアジアです。アジア経済の復活は、今後の長期不況が予測される世界にあって、好ましい材料になることは間違いありません。こうした呼びかけを日本が主導して行うのです

 すでに述べたように、戦後の世界は勝者が作ります。相互連携によりアジア経済がいち早く復活すれば、ニューノーマルの時代において、日本をはじめアジアの国々が発言力を持つうえで、非常に大きな助けになります。

 1918年から20年にかけて猛威を振るったスペイン風邪は、結果的にアメリカが世界一の経済大国になることを後押ししました。

 当時世界で1億人の死者を出したと目される中、アメリカの死者数は50万人程度と言われています。