日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

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コロナウイルスを巡る外交戦略で表面化した中国強硬外交の在り方は、「戦狼外交」や「最後通牒外交」と呼ばれるようになった。(1)

 

 

『知らないですまされない 地政学が予測する日本の未来』

松本利秋  SBクリエイティブ  2021/1/6

 

 

 

アメリカによる平和(パックス・アメリカーナ

・アジアで力の空白が懸念される中で、これから数十年後のアジアで日本の生き残りの可能性を探ることが本書の目的である。そのために現在日本を取り巻く巨大なうねりの本質とその原因の解明を試みた。その基礎をなしているのは地政学である。

 

・現在日本が中心になって推進している「クアッド」はその典型的な例であり、更なる拡大と発展に寄与する努力が日本に課せられた義務と位置付けることだ。そして、クアッドを拡充させるには様々な情報の共有が不可欠だ。

 現在、日本は世界最高度の機密情報を共有するファイブ・アイズに加入することを目指しているが、現状ではスパイ防止法さえも存在せず、ファイブ・アイズに加入すれば、日本のせいで機密情報が漏れることも懸念されている。また共同で軍事行動を起こさねばならない場合、平和憲法がネックになる場合も想定される。

 

マクロ視点でコロナ後の世界の動向を分析する地政学の基本

なぜいま地政学

【一般的な認識】 グローバリゼーションが進み、国境を意識しない物流や人の交流が不可欠となった現代では、国際紛争は外交と話し合いで解決できるし、また、そうすべきである。

 

地政学の視点】 現実に紛争が起きていることを踏まえ、地政学は軍事力も含めて国益を追究するための戦略を研究する実用的な学問であり、現実の変化に対応する政策を考える政策科学とも言えるだろう。

 

日露戦争地政学――弱体化した英国の制海権とロシアの膨張

【一般的な認識】 日露戦争満州を超えて南下してくるロシアに対して、国家存亡の危機を感じた日本が戦いを挑み、大激戦の末に勝利した。

 

地政学の視点】 ロシアはシベリア鉄道を開通させ、欧州からアジアまで最速で到達できるようになった。これに対して、海上から世界の物流を牛耳っていた英国が危機感を抱き、ロシアの南下に安全上の危機を感じた日英の利害が一致し、日英同盟を結んだ。日露戦争での日本の勝利は、日英同盟あってこそのものである。

 

海洋国家と大陸国家・視点の違う地政学――基本的な地政学用語

【一般的な認識】 膨張する大陸国家と、それを阻止しようとする海洋国家という対立構図が地政学の基本だが、大陸国家中国が台湾や尖閣諸島を欲しがる理由には明確な説明がない。

 

地政学の視点】 人口が増え、国家が活力を増してくると、それに伴って生存権を拡大するために「面」の確保にエネルギーを集中し、確保した土地を領土として占有するのが大陸国家の本質だ。

 

日本の立ち位置はヒンターランド

【一般的な認識】 尖閣諸島周辺領海への執拗な中国公船侵入に対抗して、自衛隊の施設を建設すべきだという、中国軍との一戦覚悟の論が出ている。

 

地政学の視点】 中国との戦闘になったら、戦闘の範囲が尖閣周辺だけでなく本土にまでおよぶ可能性が極めて大きい。日本はあくまで海洋国家として、海から中国との勢力バランスをとる戦略が必要である。

 

・歴史を振り返れば、海洋国家イギリスはオフショア・バランシングを駆使して海運業でのし上がってきたオランダを敵視し、オランダの植民地であった南アフリカを奪い取り、ナポレオンが率いるフランスをけしかけてオランダ本国をつぶし、更にはドイツなどと組んでナポレオンをワーテルローの戦いで打ち負かさせた。ドイツが台頭してくると、第一次大戦で強固な連合軍を組み、遠くアメリカまでも引き込んでドイツをつぶし、第ニ次大戦ではアメリカだけではなく、社会主義国ソ連までも仲間に引き入れてナチス・ドイツをつぶしたのである。

 

・このような同盟関係を背景に、日本はあくまでも海洋国家らしく大陸には直接関与することなしに、オフショア・バランシングに勤しみ、その一環としてリムランドである朝鮮半島をバックアップすることで、大陸からの膨張圧力を殺いでヒンターランドの役割に徹底していくことが、今後の戦略の在り方であろう。

 

中国経済に依存した悲劇

中国共産党の基本政策と日本の対中戦略

【一般的な認識】 中国の政治システムは共産党一党独裁で、反対勢力は存在しない。政策の実施はスピード感にあふれている。経済の急成長も共産党の強引な成長戦略の結果である。

 

地政学の視点】 中国経済は海外貿易が支えている。交易にはシーレーンが不可欠だが、中国の近海は日本列島弧から台湾、フィリピンなどに囲まれており、周辺諸国との軋轢が生じるのは必至である。

 

・その結果、GDPに占める輸出の割合が高くなり、2010年には貿易黒字のGDPにおける構成比が8%にまで跳ね上がった。ちなみに日本の貿易黒字はそのGDP構成比の0.2%に過ぎない。少ない内需を貿易黒字に頼って製造業の成長を維持してきた結果、国際市場への依存度が大きくなったのだ。しかし、ここ数年の中国の貿易額全体は、度重なる外国情勢の変化で縮小してきている。しかも、その輸出の約50%は海外資本が中国国内で製造したものだとされている中国経済の構造的欠陥の最大のものは内需が少なく、それが年々右肩下がりになっていることである。共産党当局はそのことを懸念し、内需拡大を重ねて強調しているが、内需の原資となる中国国民の賃金が極めて低く抑えられている。改革開放路線は深刻な貧富の格差を生み、とりわけ9億人にも上る農村人口との格差が急速に拡大している。

 従って、中国国民の大多数が個人消費に回せる余裕はなく、内需拡大中国共産党が行っている現状の経済戦略ではほとんど見込めないということになる。

 

・今後、中国の人口はますます減っていくことが確実で、その結果、少子高齢化労働人口が減り、国内市場そのものも将来的には縮小していくことになる。外国企業が中国に投資する最大の要因であった「十数億人の巨大マーケット」というものは、今後、確実に失われていくのだ。

 

大陸的発想で海洋進出――地政学を読み違えた中国

【一般的な認識】 日本の尖閣諸島周辺の海底に莫大な量の石油・天然ガスの存在が確認されると、中国はその領有権を主張し始め、領海侵入を繰り返している。

 

地政学の視点】 中国の行動は自国の勢いが盛んな時にできるだけ支配地を広げ、防衛線を中央から遠くに張って領地とする、大陸国家特有の国益大戦略によるものである。

 

ほころびを見せ始めた一帯一路政策
【一般的な認識】 一帯一路政策の目的は「世界第一の国」の実現。そのために中国はAIIB(アジア・インフラ投資銀行)を創設し、各国から資金を集め、中国を海陸で世界を結ぶプロジェクトを開始した。

 

地政学の視点】 周辺国とトラブルが絶えない中国が、自国を取り巻く海と陸をつなげる一帯一路構想を実現させるのは難しい。ヨーロッパまでの鉄道の警護やメンテナンス、中国船の寄港地確保などは、周辺諸国との関係が良好であることが大前提であるからだ。

 

インドを包囲する真珠の首飾り作戦――一帯一路政策の実態

【一般的な認識】 スプラトリー諸島での軍事基地建設など、この海域を着々と領土化してきた中国が次に目を付けたのがインド洋だ。インドの周辺国に巨額の投資を行って味方に引き入れ、インドを孤立化させようとしている。

 

地政学の視点】 現在のところ中国には、アラビア海アンダマン海周辺に常駐的なプレゼンスを維持する力はない。更には、地政学でいう「チョークポイント」であるマラッカ海峡の入り口にインド領の軍事基地がある島々が存在しており、中国のシーレーン確保は困難だ。

 

コロナ危機で露呈した中国外交の限界

【一般的な認識】 中国の武漢で新型コロナが発生したにもかかわらず、共産党幹部は情報を隠蔽していたことが明らかとなった。各国からの批難をそらすために、米国がコロナをまき散らしたとする論陣を張った。

 

地政学の視点】 一帯一路のルート上の国、特に発展途上国でのウイルス禍が顕著となっている。日本としては、コロナウイルスの世界的蔓延で露呈した中国の外交的弱点を利用しつつ、中国懐柔戦略を考えるべきだ。

 

新型コロナウイルス感染症への対応を巡り、中国の初期対応が後手に回ったこと、情報開示が十分でなかったことなどから、世界中で中国に対する批判が高まった。

 

・続いて武漢封鎖後1週間目、1月31日に流されたCCTVの映像で、武漢市のナンバーワン、武漢市長の上司である共産党委員会書記、馬国強氏がキャスターの質問に答えて「もう少し早く厳しい措置をとっていれば、全国各地への影響も小さかったし、党中央や国務院にここまで心配をかけずに済んだ」と、マスク姿でひたすら謝罪したのだ。更には「習近平総書記、党中央が武漢の人民を忘れず、いつも心にかけ、愛してくださることこそ何にも勝る慰めだ」と発言し、この動画も世界中に配信されてしまった。

 地方政府が不始末をしでかした場合には、行政のトップが責任を取らされ、その上に立つ党書記は表には出てこないのが、これまでの中国のやり方だ。中国の全てを指導する共産党は「全能無謬」のはずで、絶対に失敗はしないとなっているからだ。

 

・このようなシステムの中で、情報の隠蔽工作がなされていたことが次々に明るみに出てきた。正確な情報を流さなかったということで問題となったのは、WHOの言動である。

 

・中国に対する印象はアメリカをはじめ各国において著しく悪化した。現在、中国に対する賠償請求訴訟が、世界各地の裁判所で起きているのだ。中国の初動対応の誤りが世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を招き、甚大な被害を受けたとして、アメリカ中西部ミズーリ州では、2020年4月に中国政府当局がウイルスの危険性や感染情報を隠したために深刻な経済的影響が出たとして、中国政府や共産党などを相手に損害賠償を求める訴訟を米国内の裁判所で起こした。アメリカでは、個人や企業による同様の訴訟が連続して起きている。

 

・こうした動きは、アメリカだけにとどまらない。インドでは弁護士団体などが20兆ドルの賠償を求める請願書を国連人権委員会に提出した。ナイジェリアでも、弁護士らが中国政府に対し2千億ドルの賠償を求めると表明した。

 

・当然のことながら、中国政府はこれらの賠償を全て否定することを表明している。しかし、訴訟大国アメリカでは、この手の訴訟は大量にあり、外国政府に対する賠償金支払い命令が出されている。例えば、2016年、北朝鮮を旅行中のアメリカ人学生オットー・ワームビア氏が北朝鮮当局に拘束され、1年半後の帰国直後に死亡した事件では、オットーの両親が北朝鮮を相手取り、損害賠償訴訟を連邦地方裁判所に起こし、2018年12月に5億ドル(550億円)の支払いが命じられた。賠償金は北朝鮮アメリカ国内に保有している資産から支払われることになった。アメリカ国内の北朝鮮の凍結資産は、2017年の段階で6300万ドルに過ぎず、その中から賠償金が支払われることになる。

 

北朝鮮の場合、凍結金額は少ないが、中国は巨額の資産がアメリカ国内にある。ワームビア訴訟の結果を踏まえると、中国に対する訴訟は金額の問題も含めて、かなり現実味がある。

 このように、新型コロナウイルスへの中国政府の対応に、世界各国が疑念を持ち始めた。これに対して中国は、武漢などのロックダウンを通じてウイルス制圧に成功したことをアピールしている。世界各国に医療物質や医師団を送る、いわゆる「マスク外交」を展開し、自国のイメージ回復に躍起となっている。

 

新型コロナウイルスが世界中に広がる以前から、中国の外交戦略はプロパガンダの多用が問題となっていた中国共産党の中央宣伝部をはじめ、統一戦線工作部、更には外交官による他国を対象とした世論作りが展開されてきた。中国語や中国文化の普及活動をはじめ、多彩なメディア戦略で他国内にその国を批判する論調をしつこく報道させたり、国際社会に対する情報を制限したりしている。こうした「パワー」を駆使した外交戦略は「シャープパワー」と呼ばれていたが、コロナウイルスを巡る外交戦略で表面化した中国強硬外交の在り方は、「戦狼外交」や「最後通牒外交」と呼ばれるようになった。

 先に挙げたポーランドやドイツの例が「戦狼外交」と呼ばれる攻撃的な手法だが、「最後通牒外交」が行使されている国もある。「最後通牒外交」とは従来、中国からの経済支援と密接に関わっている国に対して自国の要求を飲ませるために、支援の削減や中止をちらつかせて圧力をかける手法である。この手法が用いられた例として、オランダの台湾政策に対する圧力がある。

 

・コロナ禍の中で、重要な製造業の多くが中国に集中していることに気づいた国は米欧だけではない。日本もその愚かさに気づいた国の一つだ。2020年3月初め、安倍晋三前首相は日本の主要経済人を集めた会議で、サプライチェーンの混乱を避けるために、日本は中国への依存度を減らすべきだと提案した。安倍前首相は「一つの国に生産を大きく依存している製品のうち、付加価値の高いものは日本に移転すべきだ。それ以外はASEANなどに生産拠点を多角化しなければならない」と述べ、2020年4月7日に閣議決定した緊急経済対策で、新型コロナウイルス問題で打撃を受けたサプライチェーン海外移転や東南アジアへの拠点分散を支援するため、2400億円超の予算を計上したのである。

 

地政学から見た朝鮮半島――日本の戦略的視点とは

地政学から見た朝鮮半島プレリュード

【一般的な認識】 朝鮮半島は古代から中国に支配され、現代にいたっても米中2大勢力の間で二股外交になっている。外交の基軸が定まらない韓国に日本は翻弄されている。

 

地政学の視点】 古代から巨大な中国軍と果敢に戦い、幾度か中国の圧力を駆逐した朝鮮は日本からすれば防衛の最前線であった。日本の安全保障面から見れば、今も韓国の存在は重要である。

 

中国に寄り添い大陸国家を目指す南朝鮮・韓国

【一般的な認識】 ナショナリズム高揚のため、敗戦で弱体化した隙に日本の竹島を占拠した韓国は、黄海離於島も中国建国のどさくさに紛れて占領した。

 

地政学の視点】 離於島の占領は中国の核心的利益をつくこととなり、現在中国からの厳しい軍事的な圧力にさらされている。韓国が親中にシフトせざるを得ない原因の一つとなった。

 

反日の原点――南北朝鮮建国神話の違い

【一般的な認識】 北朝鮮、韓国ともに反日国家だが、北は軍事的に日本に敵対していることは明らか。韓国は米韓同盟との関係上、反日であっても実質的に日本とは敵対関係になっていない。

 

地政学の視点】 建国以来軍事的に敵対関係をとって、北朝鮮に対抗する韓国をリムランドとして、日本は韓国を援助するヒンターランドとしての役割を果たすことになる。

 

朝鮮半島38度線を軸に南北逆転の地政学的巨大地殻変動が起きている

【一般的な認識】 3度にわたる米朝首脳会談でも北朝鮮の核廃棄問題は解決しなかった。韓国は露骨な離米外交をとりつつ中国に接近しており、朝鮮半島の不安定化が懸念されている。

 

地政学の視点】 米朝対話ができたことで北は米国とのパイプができ、コミットすることで海洋への筋道ができつつある。南は中国に接近し、大陸を通して展開できる道を探ろうとし、南北が入れ替わるような事態が予想される。

 

軍事的圧力で変化する北朝鮮

【一般的な認識】 北の核を廃棄させる具体策がない現状では、米本土に届く大陸間弾道ミサイルの開発を凍結すれば、アメリカは北を核保有国と認知する可能性がある。

 

地政学の視点】 2017年トランプ政権発足直後にアメリカは朝鮮半島の両側に2個の空母打撃群を配置し、更には大量の無人機、サイバー攻撃システムを使い、北を締め上げた。その軍事圧力が米朝首脳会談に結び付いたのである。この作戦は力の信奉者に対応する典型例となった。

 

コロナ感染を認めず、核をあきらめない北への日本のアプローチ

【一般的な認識】 国連の厳しい経済制裁の中、北朝鮮は新型兵器の開発を続けている。最近、弾道軌道をとらないイスカンデル型ミサイルの所有が判明。日本のイージスアショア・ミサイル防衛システム設置構想が変更を余儀なくされた。

 

地政学の視点】 北朝鮮とロシアの接近が目立ち、ガスパイプラインの設置などが持ち上がっている。北の新型兵器はロシア製のコピーであり、軍事面の関係も深い。日本はロシアとの関係を深めることで北朝鮮とのコミットメントを深化させていく戦略が必要だ。

 

海から見た日本の生き残り戦略

海の地政学――知られざる安倍論文の中身

【一般的な認識】 米国の衰退と中国の台頭という国際情勢の潮流の中で、日本の外交・安全保障政策の方向性を見定めることが喫緊の課題となってきた。

 

地政学の視点】 軍事的な膨張を続ける中国に対して、日米印豪が連携。リムランドを支援して中国を封じ込めるインド洋と太平洋一体構想を2012年に安倍首相が英文の論文として世界に発表。4カ国外相会議が日本で開催されて構想が具体化した。

 

日米印豪を結ぶ日本の戦略

【一般的な認識】 日米印豪それぞれの国益に照らし合わせれば中国の存在は実に大きい。中国との経済的軋轢をかわしながら、パワーバランスをとっていくのが日本の戦略としても重要だ。

 

地政学の視点】 中国の基本発想は「パワーによる制圧」。中国周辺のリムランドが連携し、総合力で均等になるか上回れば、力だけでは押し切れなくなる。中国のパワーの源は貿易によって培われた経済力であるからだ。

 

東南アジアとアメリカを結ぶ日本の海洋地政学的戦略

【一般的な認識】 2018年インド太平洋構想に呼応して米太平洋軍が「インド太平洋軍」と改称。これを見て、古くから華僑勢力が強いASEAN諸国では、軍事色が強いとしてこの構想を敬遠していた。

 

地政学の視点】 インドと太平洋を繋ぐ位置にあるASEAN諸国の参入が不可欠。提唱国日本が「自由で開かれたインド太平洋(FOLP)」構想と改称。軍事色を薄めた構想に仕立て直したことでASEANも参加を決定。この結果ASEANも日米印豪と共同で海洋安保行動をとることが可能になる。

 

オーストラリアとインドをクワッドに追いやった中国の自業自得

【一般的な認識】 中国と豪・印は経済的には深い結びつきがあった。しかし、豪とはコロナの発生源を巡って対立し、中国は豪からの輸入品にストップをかけた。また、インドとはヒマラヤ山岳地帯で領土問題による軍事衝突を起こした。中国の強硬姿勢が両国をクアッド加盟に追いやったのである。

 

地政学の視点】 周辺諸国を次々に敵対関係に追いやった中国が、孤立化を深めていくのは自業自得ともいえる。世界各国が警戒心を抱くような唯我独尊状態は中国の弱体化に繋がっていく。

 

古代中国の地政学から見た新日英同盟

【一般的な認識】 ASEANも含めたクワッド体制は、中国の傍若無人な膨張に対抗しようとする国々が強調して対応するためのプラットホームとなりつつある。

 

地政学の視点】 古代中国の故事には、強大になった秦の圧力を防ごうとする周辺6カ国による「合従連衡」がある。故事に倣い、現状の中国を秦に見立てることができるが、クアッドには香港問題のもう一つの当事国である英国も加わり、欧州まで広がる大包囲網になる可能性がある。

 

新段階に入った日本――地政学的立ち位置とクアッドの舞台

クアッドからTPPへと新世界構築の推進役となる日本

【一般的な認識】 EUを脱退した英国がTPP加入に意欲を見せ、FOIPをプラットホームとして安全保障と経済安保へと拡大する方向に向かっている。

 

地政学の視点】 英国の加入により欧州とアジアの距離が縮まり、経済も含めた安全保障の選択肢が増える。日本を軸とした繋がりから新しい世界が始まる予兆がある。

 

米新政権に対する日本の戦略とファイブ・アイズ加入の条件

【一般的な認識】 2020年の大統領選挙の結果次第だが、民主党共和党どちらに政権が移っても日米安保体制は重要である。だが、民主党政権なら軍事費が縮小され、米軍の動きが鈍くなる。

 

地政学の視点】 アジアにおける米軍の動きが不透明な場合、日本が効果的な安保政策をとるためには高度な情報が必要。英連邦と米国が構成するグローバル情報網への日本の参加が望まれる。

 

・中国の膨張拡大の象徴となってしまった南シナ海問題が深刻さを増している原因の一つは「軍備を縮小して資金を福祉に回す」というアメリカ民主党の伝統政策にあるといえるだろう。バイデン政権に入る政府高官たちはかつてのオバマ政権を担った人物が多いとされていることから、同様なことが起きる可能性が高い。

 ともあれ、バイデン大統領の対中国政策が我々日本人にとって最大関心事であることは言うまでもないだろう。

 

・言語が共通であるとともに文化も似ているため、関係も密接だ。この深い関係があるからこそ他の同盟国との間よりも高いレベルの機密情報の共有が可能になっている。それ故、未加工の情報もファイブ・アイズ内で共有されているのだ。問題は、日本がこれほど高い信頼をメンバーとの間で築いていけるのかということである。障害となる問題点を3つに絞って見てみよう。

 まず第1に挙げられるのは日本にはスパイ防止法が存在していないことである。

 第2の問題は日本の情報収集能力だ。

 第3の問題は価値観に関する問題である。その事実を示したのはファイブ・アイズのメンバーが中国の香港国家安全維持法適用に強く反対して声明を出したことである。

 

資源輸出国から産業国家に――ロシアから見た日本の重要性

【一般的な認識】 ロシア経済は石油などの地下資源の輸出で成り立っているが、当然のことながらやがて資源はなくなる。ロシアが生き残るには産業を起こすしかない。そのためには日本からの支援が必要だ。

 

地政学の視点】 北方領土の並び方をロシアから見ればオホーツク海を囲むようになる。島を返還すれば日米安保がある限り、米軍基地または自衛隊基地ができるという恐怖感がロシアにはある。

 

オホーツク海を塞ぐ北方領土

【一般的な認識】 温暖化が進行し、今世紀の半ばまでには北極海の氷が解けるほどに地球環境は悪化し、将来にわたる大問題となる。

 

地政学の視点】 北極点を中心に地図を見ると北極海は内海のように狭く、アメリカ、ロシア、欧州の距離はごく近い。氷が解ければ欧州・アジア間のシーレーンの効率は極めて高くなる。