日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

中国がいま一番警戒しているのは、和平演変、「平和的な手段で、つまり戦争ではないやり方で、政権を覆す」ということです。こういう和平演変の戦略を中国に対してアメリカは展開している(1)

 

 

『この国の針路』 日本人が知らない地政学が教える

菅沼光弘 元公安調査庁調査第2部長

  kkベストセラーズ  2015/9/16

 

 

 

諸大国が激突する世界で日本人が生き残る唯一の道!

・戦後、敗戦国の学問体系から排除された地政学—―

だが、世界がいまだにこの理論によって動いているのならば、我々はただちにこの学問の何たるかを知らねばならない。さもなければ、この国が生き残る道はない――

 

地政学という学問

地政学という学問は、戦後のわが国において、禁断の学問と言ってもよい扱いをうけてきた学問です。ですから、ほとんどの日本人が、そのなんたるかを知りません。

 それは、地政学ナチスドイツの世界制覇の野望の理論的支柱であったと見なされたという過去の事実から来ています。そのために、敗戦国(枢軸国)の戦後の学問体系からは排除されてしまったからです。

 

・しかし、あの戦争に勝利した戦勝国(連合国)の国々も、この地政学の理論で第2次世界大戦を戦っていたことを忘れるわけにはいきません。そして、いま、国内が、安保法制の論議で大揺れに揺れている2015年現在も、世界はこの地政学の論理で動いているのです。

 戦争の悪であることは言を俟ちません。日本国憲法は戦争を放棄しました。しかし、戦争を、あるいは武力を含めた覇権争いを、不可避なものとしていまも世界の大国が動いているのだとしたら、そして、その理論的支柱がこの地政学にあるとするならば――実際、その通りなのですが――、それを知らないということは、一国として、この世界に生き残る道を知らないということになるのです。

 これではいけない。これでは、この国が生き残る道がなくなってしまう。

 

地政学はどこの大学の講座にもない

地政学というのは、地理的な概念の上に展開される国家の国際政治戦略に関する学問です。世界は地政学にもとづいて動いていますグローバル化した現代の国際社会の中で、地政学を知らずして、国家が生き残ることは不可能です。

 

・ところが、国際政治を謳いながら、どこの大学でも戦争に関してきちんと教えているところはありません。国際政治というものが軍事と表裏一体であることは、いまさら申し上げるまでもない当然至極の常識です。

 

・ところが、いまの国会の議論を見てもわかるように、我が国では安全保障の問題を、憲法違反だとか違反ではないとか、国内法的な観点からのみ議論しています。いま議論をしないといけないのは、第一に、我が国を取り巻く東アジアの政治・軍事情勢が、経済問題を含めてどうなっているのかということです。

 

そういう国際政治、軍事戦略的な問題は一切議論しないで、憲法違反だ何だとばかり言って、政争が激しくなっている。これは関係諸国にとっては好都合なことです。外国にとっては、日本が弱い存在であればあるほどいいわけですから。

 

リベラリズムとリアリズム

・例えば、元外交官の孫崎享氏は「日中間の戦争は起こらない」と言う。中国と日本の間には深い経済的な相互依存関係があるから、というのが理由です。同じ視点から、米中対立も戦争には至らないと言っています。なぜならば、中国とアメリカのあいだには非常に緊密な経済的金融的相互依存関係がある。

 

・そんな関係があるときに戦争をすれば、みんな崩壊してしまう。アメリカ経済も中国の財政もめちゃくちゃになってしまうから、中国とアメリカは戦争できない、という説明です。

 こういう立場は、リベラリズムというものです。

 

・その延長上に、それでもなぜ戦争は起こるのか、それを研究する立場の人たちがいます。これはリアリズム(現実主義)という立場の人たちです。そのリアリズムの範疇に地政学というものもあるわけです。地政学というのは、地理的な概念の上に展開されていく国家の政治軍事戦略を研究する学問で、それぞれの国が何を考えているのか、例えば、国家と国家の、国境線近くには常に活断層と言ってもよい危険が存在する。その活断層はどういう条件のときに活動して戦争をもたらしてきたか、それらを歴史的な具体的事例にもとづいて常に考察し理論的に体系づける、将来を展望する学問です。

 

・例えば、サミュエル・ハンチントンは『文明の衝突』(1998)で、これからは、西欧のキリスト教文明世界とイスラム世界、あるいは中国文明の世界の摩擦・紛争の中で活断層が揺れだすと戦争になる、という地政学的な考え方にもとづいて、将来の戦争の危機を展望しました。ところが、いま日本では、そういう視点からは一切研究されない。なぜ戦争が起こるのかと、それを正面から研究しようとする学者はひとりもいません。国会でも、集団的自衛権を認めると、自衛隊員が死ぬから危険だとか、そんなことばかり議論している。どういう場合にホルムズ海峡で本当に危険な状況が起こるのかというもっと本質的なことを議論しないといけない。

 欧米には、戦争の歴史をずっと遡って研究した結果が、19世紀以来の地政学の成果として蓄積されているのです。いまこそ、それを学ぶ必要があるのです。

 

消えた、昭和15年の「東京オリンピック

・1940年に東京オリンピックをやることになっていたのに、1937年(昭和12)に支那事変が起こってしまった。国中がオリンピック、オリンピックと大騒ぎだったのに、現に戦争が起こったわけです。発端は7月7日の盧溝橋事件ですが、中国に言わせれば、ここから日本の中国大陸侵略が始まったとされていますけれども、実際には、中国共産党の政治戦略、コミンテルンの世界戦略に日本は引っかかったわけです。

 当時、コミンテルンについて日本の政府や軍がどれだけのことを知っていたか。中国共産党のことなどほとんど何も知らなかった蒋介石の国民党のことはいくらか知っていましたが。

 

<TPPの安全保障的側面>

・しかし、アメリカにとっては自動車、あるいは自動車部品の輸入関税をかけるのが最も重要です。これを撤廃するのはけしからんと、ちょうど日本の農産物と同じようなことをアメリカの自動車業界は言っているアメリカは、自動車・自動車部品に関税をかけないで無税にしてしまうと、日本が技術的に圧倒的に強いものだから、アメリカの自動車市場は全部日本の製品によって席巻される。

 

日本は大陸国家と手を結んではいけない

・TPPでもそうです。米の関税とか、乳製品や豚肉の関税の問題ばかり論じているけれども、それよりも、安全保障の観点から見て、我々はTPPに入るべきかどうかを判断すべきでしょう。経済的な中国包囲網に我々は加担すべきなのか、それが我々の生き残る道なのかどうか、そこを議論すべきなのです。

 中国との関係を考えるとき、「日中友好」ばかり言っている人々がいます。

 

・外交史家の岡崎久彦さんは、日本の外交史をつくづく研究してみると、日本が大陸国家と手を結んだときはだいたい失敗だった。日英同盟のときはうまくいった。だから、我々は今後は、アメリカも地政学的に言えば島なのだから、米英など海洋国家と手を結ぶべきだと言っています

 

<中国の夢>

・けれども、まさに、数年前に発表された人口統計学の予測通り、2015年を境に労働生産人口は減っていって、未だ豊かにならないうちに歳をとってしまう社会になっていくのではないのか。中国の田舎にはすでに10年前から若い人がいないのです。じいさんばあさんと、それから若い人が残していった子どもたちしかいない。肝心要の働く人たちはみんな都会へと行ってしまって、その都会へ行った人たちも、だんだん老人になってきた。

 そういうことがあるので、2021年に、中国共産党が言うように、そんな小康社会になれるか、という疑問は当然あるわけです。

 

<中国の権力闘争の内側>

・また、新疆ウイグルチベット、モンゴル、そういうところでさまざまな暴動が起こる。これを背後から資金的にも支援しているのはアメリカです。アメリカには民間の基金というのがある。表向きはそういう民間の基金がお金を出している。しかし、その後ろはみんなCIAだそうです。アメリカはロシアでも同じことをやっている。

 中国がいま一番警戒しているのは、和平演変、「平和的な手段で、つまり戦争ではないやり方で、政権を覆す」ということです。こういう和平演変の戦略を中国に対してアメリカは展開している。アメリカの戦略は和平演変だと中国は言っているわけです。

 さらに、いまのインタ―ネットでもメディアでも中国に不都合な情報をどんどん流す。当然のごとく中国の民衆が見ます。もちろん中国共産党はこれを徹底的に制限しています。しかし、いまの技術ではすべてをカットすることはできないのです。だから、中国人はいろいろな情報を得る。

 

・それから、いま、習近平が腐敗撲滅運動というのをやっています。つい最近も人民日報や新華社通信の報道によると、令計劃(れいけいかく)という人物が、正式に党籍を剥奪されました。そして、おそらく起訴されて、裁判にかけられるのでしょう。彼の一家眷属はもうみなやられていますから。この令計劃という人物は何者かというと、胡錦濤の時代、中央弁公庁の主任だった人物です。日本で言えば、内閣の中枢の要である、官房長官みたいな役割です。それほどの人物が逮捕される、これはなぜか。

 

<日本のインテリジェンスをめぐって>

<日本にはインテリジェンスの仕組みができない>

・我が国が、真の独立国家として自立するためには、自前のインテリジェンスが必要です。

 しかし、日本には自前のインテリジェンスを収集する仕組みができていいない。いろいろな国内議論はやられています。

 

・しかし、インテリジェンスという仕事は、どこの国でも、警察の仕事ではないのです。外務省の仕事とも別の仕組みです。本来ならば役所の枠組みをはずしてやらなければならないのに、日本の場合、残念ながらそうはいかない。韓国やアメリカやロシアと違って、大統領制ではなく、内閣制度ですから、各省がそれぞれの責任を負っている日本の場合は、外交政策は外務省が責任を持っている。総理大臣ではないのです。外務大臣が最終的な責任者です。

 

・そのための前座として、国家安全保障会議というものをつくりました。しかし、機構をつくって、予算をつければ機能するか、というとそういうものではない。インテリジェンスという仕事は長年の蓄積が必要なのです。もちろん、語学の素養も必要です。

 

・ITというのは、ふつうの常識的な世界の話ではないですね。いま、サイバーテロとか、いろいろ取り沙汰されています。サイバー攻撃なんて、どうやってやるのですか。日本の自衛隊の中にもサイバー攻撃対策班をつくったとか、警察の中にもそういうのをつくったとか言われていますが、例えば、防御するということになったって、防御のための防御なんかできるものではありません。防御するためには攻撃しなければいけない。

 

しかし、アメリカのペンタゴンのコンピュータの中に入る、あるいは中国の中央軍事委員会のコンピュータの中に入る、そんなことは常識の世界では絶対できません。いま全世界でハッカー大会というのが広くやられています。そこへ各国の情報機関の人間が行って、優秀なハッカーリクルートしようとしています。しかし、日本人でハッカー大会に行っているハッカーはレベルが低いと、実際に行っている人が言っていました。

 

・一番重要なのは何か、先ほど言ったように、中国がなぜこういう形で「大国外交」を始めたかというと、これはひとえにアメリカの一極支配に対する覇権国家として出してきたわけです。国際情勢の中で、今日でも最も重要なのはやはりアメリカの動向です。アメリカがいまどんな政策をとろうとしているか、ということを分析すれば、これから中国がどう出ようとするか、ロシアがどうしようとしているか、ということもわかる、ということです。

 

ソ連共産党が崩壊したときには、ソ連国内のいろいろな秘密情報が全部出てきました。KGBの情報もいっぱい出てきた。ロシアになって立ち直ったら、再びピタッと出てこなくなった。

 そういうことで、日本の現状の中でどうしたらいいかというと、いま言ったように、それぞれの第1次情報を入手している役所があるけれども、それはそれでやらせておきなさい。それも集約しなさい。しかし、安全保障会議でやるべきことは、アメリカの議会の公聴会の記録を丹念に読み、丹念に分析すること、そうすればアメリカの政策の方向がわかる。

 

・先ほど言ったように、軍事的視点のない国際政治学になんの意味があるのですか。地政学という学問は、戦争に勝つためのもの、国家の生き残りのための学問です。

 そういう観点なしに、ただただリベラリズムの立場に立って、安全保障政策をつくればいいというものではないのです。日本国憲法の前文に書いてある。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と。こんなものに国家の存続の責任を預けて日本は生きていけるのか。この前文のいわんとすることは、日本は何もやっちゃいけませんよ、ということなのです。

 そういうことですから、もはや、時すでに遅しです。日本に情報機関をつくれといったって、蓄積がないとダメだといま言いましたでしょう。だけど、インテリジェンスの蓄積のある人なんてもう1人もいないのだから。もうまったくダメになった。だから、せめてアメリカを分析することですよと、それしかないのです。

 

ただ語学だけの話ではありません。地政学的な、軍事的なセンスがなければいけない

そういう地政学を勉強している者は、(防衛大学校で)そこにもいない

 それでは、分析ができないじゃないですか。アメリカの公聴会の資料を見ても、先日も言った、ウクライナの問題というのはどういう意図で起こしているのか、ということが出てこないです。かつてブレジンスキーがこういうことを言っていました、とか、いまヌーランドが議会でこういうことを言いました、とか、そうやって精査して初めて出てくるわけです。

 

<不可欠な軍事技術の知識>

・それから、いま軍事的な問題と言いましたが、近頃、コンピュータだけでなくて、軍事技術もものすごく発達したのです。その軍事技術に追いついていかないといけない。単に戦に勝つ勝たないというだけではなくて、軍事技術の政治的な意味がわかっていなければいけない。

 

・前に、中国がつくろうとしているシルクロード高速鉄道はトルコからルーマニアを通って行くと言いましたね。この高速鉄道の意味を知るために、いまアメリカがミサイル防衛のシステムをどこに置こうとしているか、それと非常に深い関係があるのです。

 ところが日本の場合、そんなミサイル防衛システムの勉強を誰がしていますか。そんな戦略爆撃機の意味を誰が知っているのですか。航空自衛隊だって、戦略爆撃機は持っていません。

 何度でも言いますが、攻撃こそ最大の防御なのです。科学技術が発達してしまったのだから、先に撃たれたら終わりなのです。撃たれる前に撃つ。いま、そういう方向にぼちぼち行きつつありますけど。

 

<情報機関が使うお金の出どころ>

私がいた公安調査庁は、調査活動費という名目で、協力者に謝礼を出します。これは国の税金だから、そんなに大金が使えるわけではない

 しかし、諸外国の情報機関は、例えば、ひとつの国を国ごと買収するみたいなこともする。大統領を買収することもします。無限に金が要るのです。例えばイギリスのMI6は、どこで資金を稼いでいるかというと、これは極秘になっていますが、実際はカリブ海のケーマン諸島のタックス・ヘイブンなどを使ってマネー・ロンダリングをしている。国の税金で直接払っているということになると、スパイ活動のときに、足がつく。だから、活動費で使うお金はタックス・ヘイブンを経由しているのです。

 その意味でもタックス・ヘイブンは英国にとっては必要なのです。だから、いまアメリカが財政不如意になってきたものだから、タックス・ヘイブンをみんな潰してしまおうと必死になってやっている。

 

・では、アメリカのCIAはどうしているかというと、そこが基軸通貨のいいところで、いまアメリカは、いくらでもドルを刷れば、それがみな通貨になる。CIAは、自分の輪転機をもって自分のところでドルを刷っているのです。それが彼らの活動資金です

 だから、各国の情報機関で、きちんと予算が公表されるようなところはないのです。

 

・ロシアの情報機関はどうか。KGBの時代、予算なんてものはありません。昔の日本だってそうです。もちろん国から特務機関にもお金は出ていました。しかし、活動資金の大部分は独自に稼いでいました。

 何をやるかというと、大陸では麻薬の取引です。戦前の日本の大陸での特務機関というのはいろいろありましたが、アヘンの取引をやっていたのです。それに絡んでいたのは、三井物産です。三井物産イラクやインドからアヘンを輸入して、それを中国国内で売っていた。

 

・だから、北朝鮮が麻薬の取引をやっているとか、よく言いますけど、そんなのどこの国の情報機関でも当たり前の話です。アメリカだってやっているのだから。武器の売買も。そのようなことをやって、みんな活動資金を出しているのです。

 

・日本みたいに活動資金はこれだけしかありません。あとは予算がありませんとか言っているようでは、高度な情報活動がやれるわけがない。スパイというのは、命をかけてみんなやるのです。自分の国を裏切る人間ですよ。そういう人間に、どれだけの金を出すか。それから、そういうスパイが摘発されそうになって、例えばアメリカに亡命してくる。そうすると、名前を変えて、別の人物にして、一生、安全にアメリカで生活させる、というような条件を出さないと協力なんてしてくれないでしょう。そういう人しか高度の情報はもって来ない。コンピュータでそのへんのインタ―ネットで見ているが情報ではないのです。

 だから、先ほどアメリカの公聴会の議事録を読みなさいと言ったのは、そこなんです。

 

<情報機関の仕事>

・情報機関というのは、ただただ情報を集めて分析するだけでなく、カウンター・インテリジェンスの言葉があるように、敵の情報活動を無効にする、あるいは、浸透を防ぐことも重要です。情報機関には、情報収集・分析のほかに、カウンター・インテリジェンスの部門がないといけないのです。

 

先頃(2004年)、外務省の通信担当官が上海で自殺した事件がありました。日本の外務省の暗号をもって来いと、脅されて自殺した事件です。中国の情報機関としては失敗した、ということになります。

 

・だから、どんなに技術が発達しても、やはりヒューミント(ヒューマン・インテリジェンス)はなくならないのです。

 科学技術による情報収集にはものすごいお金がかかります。例えば、アメリカに、NSAという組織がありますが、世界のすべての通信、インタ―ネットを収集して分析しています。こうなると膨大なシステムと、膨大な人間が必要なのです。どれだけ予算があっても足りない。こんなことは日本では絶対できない。アメリカだからできることなのです。

 したがって、日本でそういう水準の情報機関をつくるのは、もう時すでに遅しです。いまからできっこない。

 

・我々はドイツの情報機関と深い関係がありましたが、ドイツの情報機関は、最初は我々と同じようにヒューミントばかりやっていました。そのうちに衛星を飛ばしだした。

 

・日本の場合、偵察衛星もつくりました。それを運用しているのは防衛省です。しかし、それを所管するのは内閣府です。そこの要員は、防衛省の者がトップで、ナンバー2は警察の者だ、とか、前にも言った話がここにも出てきます。

 ところが、その映像を解析する力がどれほどあるのか。

 

<安倍首相のDNA>

木下英治さんに言わせれば、安倍さんが病床にいたときに、安倍さんの夢枕に岸信介が出てきたという。「晋三、お前何をやっているんだ。そんなことで倒れるようなら、政治家はやめてしまえ」と一喝したのだそうです。それで立ち直ったのだと。

 以来、第2次安倍内閣は、親父さんから替わって、じいさん、岸信介のDNAで動いていますよ、と大下さんは言う。

 

アメリカに従属しない日本をどうやってつくり上げるか

・私は基本的には、「日本がアメリカの従属国になることは認められない」という気持ちです。

 いまは、なにがなんでもアメリカと一緒でなければダメだという人ばっかりでしょう。

 

・日本の評論家、日本の学者や日本の新聞記者が言っていることも、全部、アメリカのそういう新聞や雑誌に書いてあることを紹介しているだけです。自分の意見ではないのです。これではダメです。

 しかし、逆に、親中派の人たちも同じようなものです。私は、野田毅さんが理事長をやっている日中協会の会員です。そこへ行って話を聞くと、なんでここまで「中国、中国、中国」と言うのか。中国のなすことはみんないい、と言う人ばかり。

 親中派の人はみんな中国の代弁者になり、親米派の人はみんなアメリカの息がかかっている。

 

・いま、いわゆる「保守派」の人たちも、安倍内閣に対してアメリカべったりではないかと、しきりに批判をしています。では、アメリカから離れて、中国に対抗できるのかと聞くと、そういう人たちに限って、もう中国は崩壊するなどという。

 

・日本の自主独立を守るにはどうするか、と言っても、いまはこういう体制で行くしか、日本の安全を守る選択肢はない。中国、ロシアの動きに対処するためにはそれ以外の方法はないのです。こういうシステムになってしまったら、もう向こう側にはつけない。したがって、次に考えることは、このような選択の中で、アメリカに完全に従属するのではない日本をどうやってつくり上げていくのか、ということでしょう。岸さんのDNAを受け継いだ安倍さんは、そういうことを考えているのではないでしょうか。

 

 

 

地政学の論理』

拡大するハートランドと日本の戦略

中川八洋   徳間書店  2009/5

 

 

 

マッキンダー/スパイクマンの地政学

地球をくまなく、一瞬にして感知できる「知の偵察衛星」が、マッキンダー/スパイクマンの地政学である。本書が、マッキンダー/スパイクマン地政学の教科書を兼ねているのは、この理由による。スパイクマン地政学は、21世紀の日本の外交にとって不朽の羅針盤であり、マッキンダー地政学は、21世紀日本の国防にとって死活的な海図である

 

日清戦争日露戦争前夜に回帰したアジア――日本の「脱亜」と米国の「入亜」なしに、日本の生存は可能か

・日本国をめぐる東アジア情勢は、120年前を再現し、1890年頃の日清戦争(1894~95年)前夜と1900年頃の日露戦争(1904~05年)前夜が同時に襲う、そんな大危機が発生する事態になった。日本は、国家の存続が危うい、存亡の危機の時代を、戦後初めて迎えた。

 日本はもし、国家の永続を願うならば、到来したこの未曽有の新情勢から、目を逸らしてはならない。詭弁的な理屈をこねまわして、現実を隠蔽したり歪曲に努めたりしてはならない。

 

・結論を先に言えば、スパイクマン地政学は、日本に「脱亜」を勧告し、米国に「入亜」を義務づけんとする。マッキンダー地政学は、日本に隣接する2つの巨大なランド・パワーが北と西から、“沖合いの小さな島嶼国家”日本に鎧袖一触に侵攻する時がきたと警告し、日本に「陸軍力3倍強」を判決する。

 日本は、脅威から地理的に隔たった、南太平洋に浮かぶ“楽園”タヒチ島ではない。

 

シー・パワーの要件をいっさい欠くため、日本は「海洋国家」ではない。あくまでも、ユーラシア大陸に隣接する“沖合いの小さな島嶼国家”にすぎない。かつての「栄光の海洋国家」であった英国や、現代の「スーパー海洋国家」米国とは、日本は比すべくものは何もない。それに類する要件はいっさい存在しない。日本とは、2大ランド・パワーの脅威に慄く“沖合の小さな島嶼国家”で、それ以外ではない。

 

上陸作戦は99%以上の確度で成功する

日本海東シナ海も、大規模な軍事力を一瞬にして日本列島に横付けできる。“高速道路”である。北方と西方から侵略する、白色蛮族(ロシア人)と黄色蛮族(支那人)の上陸を、上陸阻止に成功した作戦は数例しかなく、敵の上陸作戦は、必ず成功する。

 

・今もチェチェンチベットにおいて虐殺のし放題の、強力な軍事力を増強して止まない「第1ハートランド(中央ハートランド)」と、「第2のハートランド(東ハートラント)」の2つのヴァンダル(蛮族)に対して、日本が自由と独立と主権とを欲するのなら、マッキンダー地政学とスパイクマン地政学の原理原則から逸脱してはならない。この2人の英米の頭脳を無視すれば、ヒットラー・ドイツとスターリンソ連に挟撃され、たった2週間で滅んだ、1939年9月のポーランドの悲劇を、必ずや再現する。

 

米国一極構造で安定堅牢なヨーロッパ、冷戦が再開した“火薬庫”アジア

「第2ハートランド」の台頭と「第1ハートランド」の再膨張に、日本はどう立ち向かうのか

<「頽廃と悖徳の光景が、日本全土を覆っている。これでは、日本の命運は、遠からず尽きるだろう」>

・今日の日本は、火星かどこかの異星人のように、暢気というより能天気な惰性に日々を享楽している。音もなく静かに牙をむく「ランド・パワー」ロシアに北方から侵攻される軍事脅威にも、昇竜のごとく勃興した新「ランド・パワー」中共が微笑でじわじわと西方から忍び寄る軍事脅威に対しても、無関心を通り過ぎ、国家存亡の深刻なこの急迫の事態を直視しようとはしない。

 代わりに、景気対策とか社会保障とか政権交代など、お祭り騒ぎ以下の低級で軽薄と幼稚な罵りあいや責任転嫁にすぎない“政界ごっこ”を、劇場観劇のように享楽するばかりである。

 

<「第2ハートランド」の、台湾/沖縄/ベトナムへの侵攻はいつ?>

・“東アジアの雄”中共のランド・パワーとしての凄みは、数千万人を数週間で動員できる、超巨大なマンパワーの陸軍力のみにあるのではない。「第2ハートランド」のランド・パワーを決定的に強大化する、鉄道/高速道路/航空による兵站輸送力網の近代化的整備の未曽有の発展によって、(日本の25倍の)面積960万㎢の中共が、巨大な鋼鉄の体に改造したことにある。それはマッキンダーが警告する、古代ローマ帝国が道路網を整備することにおいてローマ帝国を盤石なものにしたように、ランド・パワーの中共は、地上と空中の交通網を近代化し、ロシアに次ぐ巨大な“大陸聖域(ハートランド)”へと変貌を遂げた。

 

・台湾の主権維持はほぼ絶望で、台湾が支那本土に吸収される事態は、1938年3月、小国オーストリアを併呑したヒットラーの蛮行を彷彿とさせて、いずれ現実となる。そして、台湾併合の次は、沖縄占領を敢行するだろう。すでに実行している強盗のような東シナ海での天然ガス生産にしろ、尖閣列島の領有への野望にしろ、それらは沖縄侵攻への前哨戦である。

 

台湾が“赤い支那”に併呑されるのを阻止する方法は、台湾の東に強力な軍事力を展開することである

・台湾は“沖縄を守る不沈空母”であり、台湾の独立なしに沖縄の安全はない。この程度の初歩的な常識をもつのが、主権国家の正常な国民ではないのか。

 具体的には、日本が、台湾に隣接する沖縄の島々すべてを堅牢な要塞と化するとともに、最低限でも5百輌以上の中型戦車部隊(5万人規模の地上部隊)を平時から配備しておく必要がある。また日本は、VTOLシー・ハリヤー24機搭載の4万トン程度の空母を、少なくとも2隻、そして原子力潜水艦4隻を保有する緊急性に直面している。しかし、日本が、いつまでも“軽武装自衛隊”であれば、台湾は支那本土に合併される道を選択するほかない。

 

沖縄を“米国軍事力の要塞”としておくことが、台湾を守り、沖縄を守る。

この「1390億ドル」は、日本の防衛予算の3倍である。中共の低い人件費や購買力平価を考慮すれば、日本の10倍~20倍の軍事費に相当する。日本は直ちに、防衛費を最低でも3倍以上に増加する必要がある。(核兵器だけは米国と協議する必要があるが)空母も爆撃機も巡行ミサイルも、対抗する兵力はすべて保有すべきである。

 これに必要な、逼迫する国家予算の不足分はすべて、社会保障費を削って充当すればよい。国家が存在して初めて社会保障が可能であり、国家が消えれば社会保障制度そのものも消える。国防と社会保障とは、二者択一ではなく、優先順位がピンとキリに相違する。

 

<新ロシア帝国の、グルジアの次なる標的は北海道か?>

・世界最大規模のランド・パワーで「第1ハートランド」の新ロシアは、プーチンKGB(備考)の共同的独裁のもと、石油・天然ガス等の資源輸出からの厖大な利益をすべて軍拡に投入している。その侵略の牙は、2008年8月のグルジアだけで済むはずもない。ウクライナと日本が、その次の標的であろうことは、自明に過ぎようだが、ウクライナは、陸続きのポーランド/チェコ/ルーマニアに米軍力が控えている“米ロの緩衝地帯”だから、日本より安全かも知れず、そうすると「第2のグルジア」が日本だろうことは間違いない。

 

・(備考)数十万人を擁したソ連の巨大秘密組織KGBは、新ロシアでは、

対外謀略・諜報部門の第一総局はSVR(対外情報省)に、国内弾圧・軍監視部門の第2/第3総局などはFSB(治安省)に分割・改編された。だが、縮小はされず、組織は人数を含めソ連時代より拡充している。ロシア外交は外務省も当然だがすべてSVRの管轄下にある。内政や経済はFSBの管轄下にある。新ロシアとは、“旧KGBソ連を簒奪し共産党を追放して創った国家”と解するのが現実に一致する。

 

<日本は、“平成の尾崎秀実”が暗躍する季節か?―—逆立ちの世界を描く“世紀の虚書”『覇権の終焉』>

国家が危殆に瀕したとき、必ず、デマゴーグたちが賑わいを見せる。救国の声は、かき消される。正論は、拒絶される。危機の到来時は、必然的に視界が悪くなるので、いかなる嘘も偽りも、ハーメルンの笛で伴奏させれば、さも本当かに錯覚させられる。

 “救国の正論”は、慎重と熟慮を喚起し軽率な行動を控えさせるので、面白くない。汗をかけ、血の覚悟をせよ、子供への義務を思いおこせ、臥薪嘗胆のときである、などと、必ず国民に賢慮と勤勉と倫理性とを要求するから、享楽と軽薄に慣れ親しんだ日本人は、これを敬して遠ざける。

 

・例えば、「世界は多様化する」「米国一極構造は崩れた」「アメリカ主導の世界体制は終った」「米国は衰退はじめた」「ドルは紙切れになった」「米国との同盟という船はオンボロになったので、急いで下船しないと危ない」などの妄論・暴論は、このトリックスターの典型だろう。『覇権の終焉』は、この種の扇動本として出色の出来栄えで、著者はトリックスターというより、ゲッペルスの再来かもしれない。

 しかし、反マッキンダー/反スパイクマンの『覇権の終焉』は、何もかも非現実の虚構を羅列しているので、その主張の逆をすれば日本が選択すべき正しい外交となる点で、便利な反面教師でもある。世界の真像は、この書を逆さにするだけで、鮮やかに正しく浮かび上がってくる。

 

・つまり、『覇権の終焉』の描く中東情勢は、まったく逆立ちした小説まがいの虚構で、あえて「覇権」の2文字を用いた表現をすれば、「(米国の中東)覇権は未完」と言うにとどまる。『覇権の終焉』は、米国がアラブの敵であった過去を、さも現在かのごとくにすり替えた、非在の虚像を描いた虚本である。多様化しているのはアジアのみ。このアジアでの変化は、米国の衰退とかその対外影響力の翳りとか、米国に起因する原因によって発生しているのではない。ロシアが帝国として復活してきたこと、および赤い支那が猛スピードの軍拡で軍事超大国に成長する路線を邁進していること、この2つの要因による。

 

そして、ロシア帝国も赤い支那も、その「ハートランド」性において、米国その他のシー・パワーの侵入を拒絶する能力がほぼ完全であることにおいて、一方的なアジアでの大侵略を決行する確度が高くなってきている。ロシアの「第1ハートランドと赤い支那の「第2ハートランド」の膨張の脅威が、アジア国際情勢の特性になった。前者は「南下」であり、そこには日本1ヶ所しかない。後者は「東征」であり、そこには台湾と日本の2ヶ国がある。日本は、この2つの「ハートランド」に挟撃される。

 

注意すべきは、この「3極化」とは3極化であって、「(日本も含まれる)多様化」と混同してはならない。日本は軽武装の故に「1極」にはなれず、東アジアは米/ロ/中共の3ヶ国による「3極の多様化」である。しかも、中ロが「条約」を有する軍事同盟国であることを考慮すれば、東アジアは「米国対ロシア・中共連合」の2極対立構造、すなわち冷戦時代の東西対立が、そっくり再生されている。つまり、ポスト冷戦の1989年から2008年までの約20年間とは、東アジアでは、東西冷戦を一時的に凍結した「休戦」にすぎなかった。

 

・『覇権の終焉』の「多極化時代だから日米同盟は不要」などが、いかに逆立ちの謬説で詐言のきわみかは、もう明白になっただろう。クラウトハマーが「米国一極構造であるから同盟は不要」と論じたように、米国1極構造であれば日米同盟の役割は小さいが、多極化構造となれば日米同盟の機能とレーゾンデートルは、10倍以上に一気に跳ね上がる。

 

2008年の東アジアの冷戦再開とは、日本が、北から「第1ハートランド」の、西から「第2ハートランド」の、それぞれの侵略の脅威が増大する事態のことである。

 

この事態で日本が生き残る道は、第1には、国あげて国防力の増強に邁進するしかない。第2には、それとともに、米国との同盟の絆の、これまで以上の強化が欠かせない岡崎久彦の持論は、日本の“国防力3倍増”が欠けていて、タイヤが1つない車のようだが、日米同盟と祖国・日本の生存「サバイバル」の基本関係については、正しく洞察している。

「日米関係さえ堅持できれば、日本は、われわれの孫、曾孫の代まで、安全と繁栄を享受できると思う」

 

・ところが、日米同盟の破棄をアジり、日本列島を中ロ両国の侵略下で分割させ日本国を破滅に至らしめる“逆送の外交”キャンペーン、それが『覇権の終焉』である。かつてスターリンの命令に従って、日本を亡国の淵に転落せしめた大東亜戦争をアジった尾崎秀実の生まれ変わりといえる『覇権の終焉』の著者は、“平成の尾崎秀実”と称されるべきだろう。

 話を戻せば、日本は、このように危険で自己破滅的なデマゴギーに振り回されないためにも、現実の世界を正確に観る手立てを身につけねばならない。それは、不変の地理を安全保障から冷静に活用する英米地政学より優れたものはなく、本書が、英米地政学をわかりやすく概括的に提示する理由は、これにほかならない。