日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

あの辺りの人たちは、「ネッシー」とか「ネス湖の怪獣」なんて呼ばず、「けだもの(beast)」、ゲール語で“beistean”と呼んでいた。(1)

 

 

スコットランド

ミステリー&ファンタジーツアー

石井理恵子、杉本優   新紀元社  2004/3/1

 

 

 

スコットランド

・なかでも特に興味深かったのは、宿泊したお城が、ゴーストが出るというので評判になっていたこと。日本だったら薄気味悪がられるためそういう事実は隠すところですが、こちらはそれをウリにしているのです。またそれを目当てにやってくる観光客の多いこと!ここにかぎらずスコットランドは、お城に石を投げたらゴーストに当たるといっても過言ではないぐらいですまた、地方のさびれたお城だけでなく、観光地でもゴーストツアーが大盛況、大都市にも謎めいた話がいっぱいあるのです。

 そして、スコットランドは、エディンバラで生まれた大ファンタジーハリー・ポッター」の物語の下地になる魔女の話やフェアリー・テイルの話も豊富な土地。

 

真実を語る詩人 トマス・ライマー

・トマスがある日ハントリー川の岸辺で昼寝をしていると、エルドン丘陵から駿馬の貴婦人が現れます。たてがみに鈴を飾った白馬に乗り、緑色の絹とベルベットのドレスに身を包んだその女性の神々しい美しさに、トマスは天国を統べる聖母マリアが地上に姿を現したのかと、帽子をとりひざまずいて頭を垂れます。しかし、貴婦人は「いいえ、トマス、私は聖母マリアではありません。妖精の王国の女王です。私についていらっしゃい。そしてこれから7年間私のしもべとして仕えてください」と答えます。トマスは言われたとおり馬の後ろにまたがって、人間界を去り妖精の王国へと旅立ちます。

 

・この旅の行程については、バージョンによってさまざまな違いがありますが、ポピュラーなバージョンによると、妖精の女王はトマスに3つの道を見せます。ひとつは鋭いとげのあるいばらにおおわれた細い「善行の道」、それからユリの花が咲き乱れる草地に続く、広々とした「悪業の道」。「この道を、天国に続く道だという人もいるのだけれど」と女王は説明します。

そして最後に、麗しい谷間をうねるように続く道が妖精の王国への道。

 この3つ目の道をたどりながら、妖精の女王はトマスに、「これからはなにを見聞きしても口をきいてはいけません。一言でも発したら、二度と人間の世界に戻ることはできなくなります」といいます。

 

スコットランド在住の魔女

・「スコットランド在住の魔女だという女性にはインタビューしたところ、東スコットランドでは人々は魔術や霊能力に対してわりとおおらかだけれど、西の方のハイランドやブリディーズなどでは人々はとても信心深いので(魔女に好印象を持たない)、そちら側に住んでいる魔女はみんな自分が魔女であることを大っぴらにせず、隠さなければならないという話をしていたんです」。

 昔から伝説や物語では魔女といえば邪悪なものというイメージがあるからね。西ヨーロッパでは魔女といったら即恐ろしいものという連想になるから。黒猫を飼っていて、怪しい呪いを駆使する、鉤鼻の醜い老婆っていう。

 宗教的な土地柄と相容れなかったんだ。僕の家族も信心深いし、僕自身も強い信仰心を持っている。そういう環境のなかでは、霊感を持っていることは、すごく大変なことなんだ。

 

・僕の曽祖父は教会の長老職に就いていた人でね、教会のリーダーとしての立場にあった人なんだけど、妻がなにかを予知した時には、彼女を部屋に閉じ込めて鍵をかけてしまったくらいだった。

 

善良な妖精とか悪意のない幽霊とかだったら見てみたいと思いますか?

・そうだね、興味はあるね。僕の家族やこの辺りに住んでいる人々から、幽霊の話なら何百も聞いている。多分僕にも、見ようと思えばそういうものを見る力はあると思うんだ。自慢してるつもりじゃなくて、そういうものが見える人と見えない人というのはいるんだとしたら、僕は多分潜在的には見える方に入るんだと思う。

 

素晴らしきストーリーテリングの世界

ケネス・スティーブン氏

グラスゴー出身。バースシャー在住。詩人・作家そして絵も描くアーティスト。そうした作家活動と並行して、主に子供たちを対象にストーリーテリングの活動も行っている。

 

フェアリー・ストーリーのテーマの底流

ケネスさんの一番好きなフェアリー・ストーリーは?

・そうそう、ネス湖の話をしたけど、僕の母はネス湖畔の育ちだっていったよね。ネス湖っていうのは山脈の間の峡谷にある細長い湖なんだけど、ネス湖から離れて山の方に入っていくと、山の奥にもいくつも小さな湖があって、小さな離村が点々としているんだ。そのひとつにアブリアハンというのがあるんだけど、そこの湖には、地元の年寄りは暗くなってからは決して近づこうとしないんだそうだ。ウォーターホースが出るからだというんだね、僕の母が幼かった頃、この村の住民で恋人同士だったふたりがその湖に船を出して、溺れ死んだそうだ。ウォーターホースに引き込まれたんだといわれている。

 

・僕が小さい頃、母がよく歌ってくれた歌があって、僕はそれを聞くと泣いてしまったものだけど、「赤ちゃんを置いてきてしまった、ブルーベリーを摘みに行った時」という歌なんだ。ブルーベリーが実っていて、赤ちゃんを置いて実を摘みに行ったら、妖精が赤ん坊をさらってしまったというストーリーで、子供を失って悲しむ母親の歌なんだね。ここでも、妖精はなにかで人を誘ってトリックにかける存在として出てくるわけだ。

 

語り部として語る物語はどうやって知ったり、集めたりするのでしょうか?

・僕の場合、いろいろな人から話を聞くことだな。それから、昔の本に関心があるので、図書館でビクトリア時代(1837-1901年)の古い本を読んだり。また、僕は両親がずいぶん年をとってから生まれた子供だったので、いつも家族から古い物語を聞かされて育ったんだ。

 

・本当に、物心がついた頃からずーっと物語というものに興味があったね、母の実家だけじゃなく、毎年夏になると、それより南のネス湖辺りに行ったんだ。あの辺りの年寄りは、この世ならぬものの存在にすごく敏感でね。今もそうかもしれないけど、昔はもっとそうだった。そして、なにより良かったのは僕が「よそ者」じゃなかったってこと。母はネス湖の近くの生まれだから、僕も身内の子として扱われた。泥炭が燃える暖炉を囲んで座っていると、地元の年寄り、特におばあさんたちは僕には気を許してくれたよ。

 

あの辺りの人たちは、「ネッシー」とか「ネス湖の怪獣」なんて呼ばず、「けだもの(beast)」、ゲール語で“beistean”と呼んでいた。だから「けだもの」って言葉を聞くだけで、今でも背筋がぞっとするんだ。邪悪な存在であるっていう気持ちが込められてて。あの辺りの人たちはネス湖のけだもののことを心底怖がっていた。あれを見るのは不吉なことだと考えられていたんだ。今じゃ観光客がネッシーを見たくてやってくるんだから皮肉なものだよね。地元の年寄りたちは、ネス湖の怪獣を見たなんて話をマスコミにすることは絶対になかった。あれを見てしまったなんてのは自慢にもならない。逆に恥だと感じていたくらいだから。同じように、僕の祖父母は霊感を持っていることを恥じていた。あの辺りの人々は本当に信心深い人たちだから、そうした霊感や異世界の生き物と自分たちの信仰、教会の立場というものは相容れない、矛盾するものだと強く自覚していた。だから軽々しく霊感だの怪獣だのの話をしてはいけないと感じていたんだね。

 

・北欧に住んだ経験から、現地の妖精伝説にも関心を持ったというケネスさん。スコットランドの伝統や妖精との共通点も感じるのだとか。

 

霊能力者の家系

物語には妖精や幽霊など不思議なものがよく登場しますが、ケネスさん自身は不思議なものを見たり聞いたりしたことはありますか?

・僕自身がなにかを見たとか体験したというのではないけれど、僕の家族には昔から異世界にまつわる話がいろいろあるんだ。僕も自分でも説明ができないようなちょっと不思議な体験をしたことは何度かあるけど、作品に取り入れている不思議体験は、主に僕の家族、特に母方の家族に伝わる話なんだ。母方の家族は西ハイランドの出身でゲール語を話すんだけど、1世代前にはあの辺りの地域には異世界や神秘の伝説が色濃く存在していて、人々はそうした物語の世界とまさに隣り合って暮らしていたんだ。僕の曾祖母は第六感を持っている人で、これから起こることを予知できたんだそうで、祖母や母にもそういう力がいくらか伝わっているみたいなんだ。

 

奥深きストーリーテリングの世界

ジョン・バーリントン氏

ウェールズ出身だが、30年以上スコットランドに住む、スコットランドに90人いるといわれるプロのストーリーテラーのひとり、25年のキャリアを持つ羊飼いだったが、現在はストーリーテラーや名所ガイドとして活躍中。地元アバファイル地域のフェアリー・テイル以外にも、英雄伝説やゴースト話に詳しく、イベントなどで語る他、そういった名所へのウォーキングツアーも行っている。

 

語り部として語る物語はどうやって知ったり、集めたりするのでしょうか?

・僕の語る話は昔ながらの語りの伝統からきていてね、スコットランドにはプロの語り部が今90人いるんだけど、僕はそのひとり。僕がスコティッシュストーリーテリングセンターにプロの語り部として公認されたのは、それまでずっと集めてきた物語のレパートリーの量によるところが大きいんだ。

 

語り部の仕事とはどのようなものですか?

・ここからは見えない谷間になっているところにアバフォイルからベン・ローモンドのふもとまで続く渓谷があって、グレン・ドゥーと呼ばれている。直訳すると黒い峡谷となるけど、そうじゃなくて「秘密の峡谷」という意味なんだ。「暗い秘密」とかっていうだろう?「スコットランドのシャングリラ」とでも呼んでいいような場所なんだ。その谷にはストロンナクレアーという村があって、そこはほんの狭いエリアに過去1万年に渉って死者が埋葬されてきたという土地なんだよ。テンプル騎士団もこの土地にきている。1307年に大陸で起こったテンプル騎士団掃討の大虐殺を免れた騎士たちがスコットランドにやってきたんだ。

 

・そういうわけでその7年後にバノックバーンの戦いが行われた時、たった7000人のハイランド兵とテンプル騎士団の部隊を率いたブルースは、かつてない規模の軍を率いてスコットランドに乗り込んできたイングランド軍を徹底的に打ち破ることができたんだ。

 

妖精体験

物語には妖精や幽霊など不思議なものがよく登場しますが、ジョンさん自身は不思議なものを見たり聞いたりしたことはありますか?

・ここでは見たことはないけど、子供の時に(リトルピープル)を見たことはあるよ。成長するにしたがって、見えなくなってしまったけどね。僕はウェールズの出身なんだけど、5歳の時にそこで妖精のシルエットを見たんだ。

 妖精が落とす影はワイン色をしているという話があるんだ。

 

・その両側には家が並んでいたのに、そこだけぽっかりと穴になっていた。それは、妖精がいるからというのでそこには家を建てなかったからなんだ。妖精がいるというのはよく知られた話で、誰もが知っていた。あの原っぱには妖精が住んでいるってね。

 

・知り合いの女性も子供の時に妖精を見たよ。その人はキャサリンといって、今はカナダに移住しているんだけれど、妹の方は、今もここに住んでいる。キャサリンは両親の家にいた時に、よく妖精を、見たそうだ。僕は妖精を見たことがあるという人を何人か知っているんだが、彼女もそのひとりでね。

 

プロの語り部として

どのようにしてプロの語り部になるのでしょうか?

・プロと名乗れるだけの語りの技量があることを公認機関に認められればプロになるんだ。エディンバラのロイヤルマイルにスコティッシュストーリーテリングセンターというのがあって、フルタイムのスタッフもいるし、劇場も持っているという組織なんだけど、そこで語り部の資格を与えている。「物語を語る」ということと、「語り部である」というのは別のことでね。

 プロとして正式認定されたのは、語り部になってから何年も後のことだ。

ストーリーテリングセンターは登録する語り部の質にすごくうるさくてね、なかなか簡単には認めてもらえないんだ。

 

物語は知識を次世代に伝える

物語を語るということの意義ってなんだと思いますか

・語りの意義は今も昔も変わらないよ。ゲール語っていうのは、18世紀、それも18世紀の後半になるまでは文字を使わなかったんだ。ゲール語圏、つまりスコットランド北西部ということになるわけだが、そこでゲール語の筆記というものが始まるようになると、スコットランドの教会の牧師はすべて、自分の教区の歴史を書き残すことが義務づけられるようになったんだ。この記録は1794年から1804年にかけて編纂・出版された。これがスコットランド最初の全国統計記録なんだ。

 

取りかえっ子

・妖精が子供をさらい、その代わりに置いていくといわれる、子供の姿をした妖精。この場合は、子供をさらって入れ替わった妖精が子供に化けて悪態をついていたという話のようだ。

 

ハロウィーン

・去年のハロウィーンの夜、子供をガイジングに連れていった。ガイジングって知ってるかい?

 ハロウィーンのことを昔のスコットランドではサーウィンといったんだけど、その夜は1年にたった一度だけこの世と霊界の間に時間の裂け目ができて、まだ昇天せずに地上をさまよっている魂が、夜の闇のなかでこの世の家族のもとに戻ってきて、夜が明けるまでとどまることができるという夜なんだ。だからハロウィーンの夜には地上には死者の魂がうろうろしている。なかには性の悪い魂もいる。そこで勇敢な子供たちに頑張ってもらおうというのがガイジングだ。

 

日本のストーリーテラー

・日本も昔話の宝庫です。かつては、囲炉裏端を囲んで、子供たちに愉快な話、怖い話を語って聞かせてくれた語り部がいました。最近ではそういう人たちを目にする機会がめったになくなってしまったような気がします。

 ですが、現在も語り部ストーリーテラーと呼ばれる人が日本にももちろんいます。ただ、スコットランドにあるような、プロのストーリーテラーを認定し、統括しているような公的機関はありません。またスコットランドのように職業としてのニーズも、まだ確立しているとはいいがたい状況です。

 

妖精を追放した伯爵のお話

・12世紀に入った頃から、スコットランドの気候に変化が起きた。それまでよりも温暖になって、降雨量が増えたんだ。そのため、それまではいい農地だった土地が水につかり、やがては泥炭の湿地になってしまった。その結果、土地が痩せてしまって、家族単位で農業をやっていた人々はそのままでは立ち行けなくなり、作業の集約化のため、寄り集まって共同体を形成するようになった。その時にもちろん助っ人の妖精、ブラウニーもいっしょに連れてきたので、1ヵ所にたくさんのブラウニーが集まるという状態になった。

 ブラウニーがあまりたくさんいると、全員に仕事を与えて忙しくさせるのも難しくなってくる。

 

・それで、1298年のある日、修道院長が特別の礼拝を行い、メンティース伯爵領から妖精を追放してしまった。

 こうして、スターリングとアバファイルの間の一帯は、妖精が住まない地域になったんだ。そういうわけで、妖精たちは、荷物をたたんで出ていかなくちゃならなくなった。山を越え、谷に沿って北へ向かってカトリン湖の辺りへ、また、アバフォイル峠を抜けてストラザイアへと移っていった。ストラサイアは世界中でも一番たくさんの妖精が住んでいるという場所なんだ。また、西へ向かってフォース河沿いにアバファイルの方にもやってきた。スコットランドの妖精国の女王がアバフォイルのフェアリー・ヒルに住んでいるのはそういうわけなんだ。

 

妖精の女王とバイオリン弾きのお話

・するとふたりはあっという間に妖精の王国に連れていかれ、女王の御前に通された。そこでふたりは早速バイオリンを構えて弾き始めた。夢中になって弾きまくっていると夜もたちまちのうちに更けて、早々と鶏の声がした。ふたりは金貨の詰まった袋を与えられ夜明け前のまだ暗い道をインバネスへ戻っていった。

 

・ところが進めば進むほどわからなくなってくる。どの建物にも見覚えがない。いったいどうしてしまったんだとすっかり慌てた頃に、やっとふたりにも見知っている建物が目の前に現れた。教会だ。毎週日曜日に礼拝にゆく場所だ。

 

それを見て牧師は、ちょうど今から100年前に、金貨のほうびを目当てに妖精の女王の御前で演奏しようと出かけたふたりの若い楽師が、二度と戻ってこなかったという事件があったという伝説を思い出した。教会のなかの空気が急に張り詰めたように感じられ、ふたりの若者は牧師の目の前でみるみるうちに老いていった。その時、朝の最初の光が教会のなかにさしこんだ。すると、その光に当たったふたりは、ぱっと灰になって消えてしまったのだった。後に残ったのは、ふたつのバイオリンと金貨の袋だけだった。

 

詩人トマスとブラウニーのお話

・詩人トマスことエアシルドゥンのトゥルー・トマス(真なるトマス)は、13世紀の人物だが、アーサー王に仕えた有名なマーリンと並ぶ強力な魔法使いだ。トマスは妖精の女王に見込まれ、妖精の王国に招かれて女王の愛人となり、7年を過ごした後に人間界に戻った。

 

ブラウニー

リトル・ヘルパーともいい、イングランドでもよく知られた、ハリー・ポッターに登場する屋敷しもべ妖精ドビーのモデルと思われている。人間に似た姿形で、身長は90センチほど。

 

・ブラウニーは、どんな家にもいた小さな妖精で、人を助けてくれます。昔人々が農家をやっていた時、一家総出の作業に出ている際に手伝いをしていました。ブラウニーは決して疲れることがなく、いつまでも休まず働き続けます。だから、人間の方はブラウニーにちゃんと指示を出してどんな仕事をしてほしいのかをはっきり説明することが重要なんだそうです。

 

妖精国を行き来した少年のお話

・次の話は神様も保障する実話だよ。

 17世紀の話だ。その頃、人々はとても貧しかった。さて、ストラサードの小作農の家に男の子がいた。

 

だが、この少年は妖精と友だちになっていた。妖精国にも行き来自由で、バイオリン弾きみたいにひと晩妖精の王国で過ごしたら人間界では100年経っていたなんて目に遭わされることもなく出入りすることができた。妖精国ではすべてが黄金でできている。明かりなんかないんだが、天井も壁も床もみんな金が張りつめてあって、家具だってみな黄金製だ。だから灯火がなくてもどこからか入ってきた光が黄金に反射され、辺りは明るく輝いているんだ。

 

スコットランドの妖精たち

ケルビー

・水棲馬。ゲール語ではヤーフーシュケ、「水の馬」という意味。英語ではウォーターホースとも呼ばれる。姿は馬のようだといわれている。半神半馬の姿のものもあり、また人間に化けるものもいるのだ。

 

ケルビーのお話

・昔、ふたり連れの美しい女がある男たちの住む家を尋ねてきました。そして、いっしょに出かけませんかと誘ってきました。そのうちのひとりは喜んでついていこうとしました。しかし、その時家にいた別の男が、ふと暖炉の火を見ると、炎が緑色に変わって燃え盛ったので、もしやこの女たちは悪い妖精なのではないかと疑いました。結局ひとりはついていきましたが、もうひとりの方は不安がよぎり部屋を締め切って朝を待ちました。翌朝家を出たところ、そこには血に染まった布があり、男はその先にポニーが2頭水中に消えていくのを目撃しました。

 これは、人を襲うケルビーだといわれています。人の姿に化けることができ、人間の肉を好んで食べてしまう恐ろしい生き物とされています。

 

ウォーターブル

・水のなかに棲む牛の妖精をウォーターブルという。ぱっと見た感じでは普通の牛とほとんど区別がつかないが、赤ちゃん牛の耳の形で判別ができるとか。ケルビーほど性格は悪くないといわれている。

 

ブルー・メン・オブ・ザ・ミンチ

・日本でいう、海坊主のようなものだとされている。その名前が示すように、青っぽい色をしているらしい。幽霊のようなものだといわれています。

 

スロウ

・その姿は、人の目には見えない霊魂、夜、現れるといわれている。スロウというのは見えないスピリット(霊魂)のことです。夜寝ている人を、本人が気づかないうちに連れ回すといういたずらをするのです。

 

アンブトン・ワーム

・山を3周するほどの長い長い体を持ったドラゴンのような生き物。スコットランドでも、ハイランドではなく、どちらかというとイングランドとの境辺りで耳にすることが多い。

 

トラウ

・神が創った人間の形をした妖精。橋の下や木の陰に隠れて、人を襲うという。北欧の伝説のトロールには、特別な力があり、ノルウェーの言葉では魔法のことをトロールカップ」といいます。だからトロールと魔法、超常の力には深い関わりがあり、それも邪悪な力だそうです。

 

ボーガン

・妖精一般を指す時に使うが、今はエルフという呼び名の方が一般的。ちなみに、エルフは妖精でも、羽のないタイプ。羽のある方がフェアリーなんだとか。しかし、フェアリーでも羽のない姿で描かれるものもある。

 

ピープル・オブ・ピース

・平和の人々と直訳できるが、妖精のことであり、じつはこれは反語。妖精たちのなかでも、好戦的なものたちをこう呼んでいる。妖精の耳に入った時、聞こえのいい名で呼んで、悪意を持たれないようにするためとか……。

 

フェアリー・ヒル

・地元の人によると、フェアリー・ヒルと呼ばれる場所は、アバフォイル以外にも、インバネスのトムナヒューリックや、アイラ島のキルダルトン・クロスという観光スポットの先にある個人所有地のなかにもあります。そこには妖精の女王やお付きの妖精たちが住んでいるといわれています。「妖精の女王とバイオリン弾きのお話」のような話は、フェアリー・ヒルのある場所で起こることとしてよく聞く話。詩人トマスが妖精に導かれてついていった、エルドン・ヒルも、もちろんフェアリー・ヒルということになるでしょう。

 

毛皮を着た妖精 あざらしびと

セルキー (ローン)

・あざらしびとのこと。ローンともいう。一見あざらしの姿をしているが、その皮を脱ぐと、人間の姿をしているという。

 

 

 

・そのスコットランドでもっとも親しまれているフェアリー・テイルのひとつがセルキー、あざらしびとのお話です。

 北スコットランドの海辺の村に、ひとりの漁師がいました。ひとり者の彼は、ある夜、月明かりの下、岩場にあざらしたちが集まっているのを見ました。するとあざらしたちはその毛皮を脱ぐではありませんか。毛皮の下は美しい女の人でした。漁師は彼らに気づかれないようにそっと近づくと、そのうちもっとも美しい女の人の毛皮をこっそり盗みます。時間が過ぎ、再び毛皮を身につけ、海に戻っていくあざらしたち。でも、自分の毛皮がないと知ったあざらしは困惑し、捜し回ります。あざらしびとは、毛皮を着ていないと、海には戻れないからです。そこで漁師は自分が毛皮を盗み、隠したことは秘密にして、あざらしびとに海に帰るのはあきらめ、自分と結婚しようと説得します。困ったあざらしびとは仕方なく人間の妻になります。そして月日が経ち、子供ももうけるのです

 

 

『リトル・ピープル』

ピクシー、ブラウニー、精霊たちとその他の妖精

ポール・ジョンソン     創元社  2014/4/13

 

 

 

リトル・ピープル

イギリス諸島で頻繁に目撃される妖精は、英語でリトル・ピープルとも総称されるその秘密は、遠い昔から人びとを大いに悩まされてきた。

 

・すっかり忘れ去られてはいるが、こうして魔法にかけられて、そのヴェイルに魅了されつづけているということが、現在もリトル・ピープルたちが人間とのつながりを保ち、しかも固い絆で結びついているという喜ばしい証なのだ。

 時代をさらにさかのぼり、このイギリスという国の緑の大地へと深く踏み入るほどに、リトル・ピープルたちの存在はリアルなものとなり、かつて私たちの生活の一部となっていたことがわかる。

 

彼らは産業革命時代の訪れとともに、私たちの目の前から消え去った

・多くの人びとがリトル・ピープルを分類しようとしてきた。だが、その試みは彼らの魔法にまどわされて、その棲家の様子や性質について紹介するにとどまっている。

 

昔昔のことでした……   視る力を失って

・伝説によると、地球の四方から、海を越えてイギリス諸島に人類が渡ってくる以前、島じまのいたる所に、人間よりもかなり背の低いリトル・ピープルの先祖となる種族がいたという。彼らは長命で用心深く、やがて、大地の秘密に通じるようになった。

 

彼らは自然のもうひとつの姿、この世界の向こう側にある繊細な自然を見る力にすぐれていた。彼らは、私たちの先祖の内で、そのような能力をもつ最後の種族であった。

 

・彼らの姿を見ることはほとんどなくなってしまったが、今日では、色のついたオーブ[写真にうつる、小さな水滴のような光球]や、山や谷などを陽気にとびまわる大地の光というかたちで姿を現すことがある。ただ、気をつけてほしい。その光は妖精の国へと導いてくれるが、やみくもに追ってゆくと、やっかいな世界に足を踏み入れることになりかねないのである。

 

今も残る魔法の力

魔法、いたずら、そして姿なき音

アイルランドでは、妖精にまつわる物語が豊かに語り継がれている。

 

・魔法によって道に迷った人間は、戸惑いながらまったく見当違いの方角へ進んでしまう。混乱して、それが正しい方角であるかのように感じてしまうのだ。見慣れた目印は見つからず、小道や道しるべも消えてしまう。季節までもが変わってしまう。

 リトル・ピープルの種族のほとんどが、喜んで、この類の悪戯をしかける。現代になっても、私たちの感覚を狂わせ、道に迷ったものをさらに遠くへと光で導くのを楽しんでいるのだ(時には家に戻れなくしてしまう)。

 

世界の境をさまよって

美の境界

・河川や清流、丘、森、山脈、荒野など、物質界における変化に富んだ自然は、人間界とリトル・ピープルの世界との境界の役割を果たし、このふたつの世界が交錯する場とも考えられている。

 

・土地の境界はかつて、その地形と一致していた。そして、妖精たちの通り道やその棲家を、敬意をもって避けていたものだった。

 

第二の視力

透視する力、聖なる科学

・人間の能力を超えた透視の力によって、妖精の国をかいまみるという昔話は数多く残されている。スコットランドで知られているように、「第二の視力」にはさまざまな側面があるが、もっとも重んじられたものは、妖精の国をつねに見とおす力だ。この力をもつ者はめったにいない

 

白く泡立つ清流と泉

ピクシー、ニクシー、そしてシリー・スプラッシュ

・リトル・ピープルたちはみな、水を崇めている。だが、ピクシーほどに大きな喜びを感じているものはないだろう。彼らは水を崇拝し、水のなかでたわむれることを好む。いにしえの泉や井戸にはリトル・ピープルが祀られていることがよくある。彼らはこのような場所を守る用心深くて、知恵のある番人なのだ。

 

ほとばしる水の世界

<河川のにぎやかな住人

・女の精霊ニクシーと男の精霊ニクスは、大陸ヨーロッパの川の精霊ウンディーネと深い関係がある。どちらも古くから存在が知られており、伝説も残されていて、たいていは若くて美しい人間の姿で現れる。そして、どちらも同じつとめや力をもっている。

 

・彼らは人間に愛情をいただく。昔話によると、彼らは配偶者として人間を選ぶという。

 

湖の女主人

月光に照らされた神秘の乙女>

・満月の光のもと、星降る夜空が映るほど穏やかな湖上では、驚くほど美しいリトル・ピープルの一族が見られるかもしれない。水の精アスレイは、やさしい女性の姿をしている。何百年も生きながらえ、今なお美しい。緑青色の長い髪、足の指には水かきがある。

 

ウェールズ地方に棲む一族には、グラゲーズ・アンヌーンがおり、湖に沈んだ街に棲んでいる実際、内陸の湖には、その土地にまつわる神々となった妖精が棲んでいるものだ。多くの美しい精霊たちがそうするように、彼女たちはときに人間の男性を夫とすることで知られている。

 

・人間の感覚からすると、妖精の時間は永遠に近いため、アスレイの世界にやってきた男性は、ほとんど永遠の命を得たかのようになる。

 

砂と泡

海や海岸の精霊

・海や海岸と深いつながりがある、善き隣人の妖精のなかでも、マーメイド(女性の人魚)やマーマン(男性の人魚)ほど知られている者はいない。

 

アイルランドのメローやモルアーは、イギリスのマーメイドと同じもので、波の下の国であるティール・フォ・ヒンに棲む

 

・もっとも有名なものは鮭の尾をもち、西暦558年までアイルランドの海を泳いでいたというリー・バンだ[この年、人魚を捕えたという記録が残っている]。

 

魅惑の洞窟

石や鉱石、貴金属の番人

姿を見ることができるのは、幸運なものだけ

・地下の奥、その内部の暖かい深みには、人間が想像するよりははるかに多く、幻想的な秘密の空間や道がある。そこはもっとも多くのリトル・ピープルが棲む世界で、数え切れないほどの種族が地下の国に存在している

 

コーンウォール地方のノッカーや、ウェールズ地方のオブラナイ(ゴブリン)、そしてスコットランドのブラック・ドワーフは、お互いが深いつながりのある種族だ。身長は30センチほど。

 

魅力的な山の洞

地中深く棲む者たち

・地下世界の伝説的な鍛冶屋であるドワーフたちは、山の奥深くに棲み、魔法の鋳造術を施すため、鉱石や金属を採取している。未来を予言し、思うままに姿を変えることもできる。魔法の帽子、衣、ベルト、姿が見えなくなる指輪を身につけることが多い。この一族の王国は山の内部、地下の深みにある。その地下の都市や宮殿は、人間の目には、はかりしれない価値がある宝物で溢れていると、物語には描かれている。

 

自然の森

世界の境の森

・人の出入りしない森は、手つかずの土地の最後の緑の聖域であり、リトル・ピープルがもっとも多く棲みついている場所のひとつでもある。

 

・名高いスコットランドのアバーフォイルにある妖精の塚は、牧師ロバート・カーク[17世紀の妖精研究家、妖精と交流を持ったとされる]が「知られざる国」に入った場所にある。彼は同名の書籍を著したが、ついに、妖精たちの棲む世界に移り住み、今でもそこに留まっているという。

 

密集した低木

精霊と妖精たち

・木を棲家とするドリュアスなどのリトル・ピープルたちは、みな、お互いに協力し合っている。それぞれが棲家にして、あるいは自分が木の一部となって、樹木のそれぞれ固有な性質を守ってきた。

 

樹木と葉

ホビットと洞

・森に棲む者のなかでも、めったに見られないのがホビットだ。リトル・ピープルを描いた文学作品にも、ほとんど描かれてこなかったが、この数十年、文学の世界でも復活を果たしたのは、うれしいことだ。

 

・このことは、妖精の信仰で、キリスト教がもたらした「大分裂」として知られるものを反映している。

 

ホビットはホバニーの子孫だといわれている。ホバニーは、リトル・ピープルたちの王で、女王ハボンドの夫でもある

 

緑のガリトラップ

喜びのダンス、ホップ、スキップ、トロット

・大地が四つの季節をめぐる1年のある特定の日々、リトル・ピープルたちが躍る、いにしえの豊穣を祝う魅惑的なダンスが見られることがある。

 

すべてではないが、古い異教信仰の多くが、リトル・ピープルの世界に由来しているといえるだろう。