日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

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ポジティブな側面も見受けられるが、しかし韓国の若者を取り巻く生き辛さの構造は、この20年間まったく変わっていないのである。(1)

 

『韓国の若者』

なぜ彼らは就職・結婚・出産を諦めるのか

安宿緑     中公新書    2020/9/8

 

 

 

「苦しすぎる」韓国の若者たち

青年失業率、20年連続で8%を下回らず。

大卒就職率、8年連続で60%台に留まる。

婚姻率、7年連続で減少を続ける。

出生率、ついに一人を下回る。

 これはすべて、韓国の若年世代にまつわるデータである。

 

・90年代生まれの親にあたる50~60年代生まれは、民主化運動に明け暮れた一方で、そこから立身出世できた者が、現在の韓国国内の中枢に存在している。そして彼らのリソースを受け継ぐことができた子だけが社会で浮上できる、とチョ氏も説く。

 

・大統領推薦図書にも選ばれ、既に韓国国内で150刷以上も版を重ねている『90年代生まれがやってくる』(未邦訳)の著者、イム・ホンテク氏は、今の90年代生まれを「アンビバレント(両面価値)」だと指摘する。これは、社会の要求とは裏腹に「自身を社会発展の原動力とみなさず、特定以上を実現する必要性を感じていない」という意味だ。

 韓流ドラマ「冬のソナタ」が日本で放送され、第一次韓流ブームが起きた2003年以降、特に日韓の距離は近づいた印象がある。今では華やかなK-POPグループやアーティスト、インフルエンサーが韓国の若い世代の「顔」となり、日本の若者層と文化を共有するようになった。そういう意味で、ポジティブな側面も見受けられるが、しかし韓国の若者を取り巻く生き辛さの構造は、この20年間まったく変わっていないのである。

 

韓国の若者 なぜ彼らは就職・結婚・出産を諦めるのか

貧困層の象徴「半地下」住宅に住む若者

・2020年、アカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画「パラサイト――半地下の家族」を通じ、韓国の貧困や格差社会のありようが世界に広く知れ渡ることになった。

 そのロケ地として一躍、脚光を浴びたのがソウル・忠正路駅近くにある阿峴洞1区にある”半地下式住宅“である。

 北朝鮮との抗争が激化していた70年、韓国政府は建築法を改正し、防空壕や軍事転用のためソウルの新築建造物に地下階を造ることを義務付けた。当初は倉庫などに利用されていたが、ソウルの都市化が進み、人口が急増したことを背景に地方からの上京者が入居したのがその始まりだ。

 もとが住居ではないため当然であるが、カビや悪臭の温床になる。また、雨水、害虫の侵入に加え、ろくに換気ができないためガス漏れが起きると命にもかかわりかねない。

 そのような悪条件から家賃が安いため、貧困層が定着し現在に至る。

 

・ソウルに隣接する都市の仁川にある大学を卒業したシムさんは、兵役を経た現在、会計士を目指して浪人中の身だ。ソウル出身ではあるが一家は地方を転々とし、生まれたときから長屋などで暮らしてきた。財布職人の父と専業主婦の母、薬局に努める姉と4人で、近くの半地下から、昨年ここへ越して来たという。

 

韓国で会計士に合格するまでの平均年数は3年6か月。少なくともシムさんも合格するまではここ、半地下で過ごすことを考えている。

 

・「合格したら起業したい。家族にも援助をし、普通に結婚して平凡に暮らしたい」とシムさんは最後に語っていた。

 

一流大卒以外は希望の職に就けない

・ソウルにキャンパスのあるキリスト教系大学を卒業したユ・ヨンミさんは(仮名・27歳・女)は、インタビューの約1か月前に小さなIT会社に就職した。履歴書を300枚以上送ってようやく得た職だ。

 高校生の頃に福祉系の職に就く夢を抱き、大学でも社会福祉学を専攻したが、望みは叶えられなかった。そのことが未だに心残りだという。

「面接では出身大学のランクと保有資格の数を見られるので、一流大学卒業でなければ希望の職に就くのはほぼ無理です。それに、同じスぺックなら男性が優先的に採用されます。卒業した大学で人生がまったく変わってしまうのですから

 彼女は、小学校の頃から学校の授業も含めて1日約20時間、土日も休まずに勉強したという。朝8時に登校し、放課後は「学院」と呼ばれる学習塾に通う。夜10時に終わると帰宅し、宿題をこなして深夜2時頃に就寝する毎日を過ごした。

 

・韓国では新卒採用者にも即戦力を求める。そのためインターン経験の有無が重要となる。大学を休学してインターンに参加し、そこで経験を積む人も多いが、ユさんの場合は親が学費を出せなかったため、途中で一度休学して、バーテンダーのアルバイトに注力せざるを得なかった。そこに資格取得のための勉強も加わり、休学中の2年間は「忙しすぎてほぼ記憶がない」そう。

 

世界でも有数の「大学貧困率

・ソウルの小売会社に勤めるイ・フンミンさん(仮名・32歳・男)は、地方都市出身で、現在ソウルで弟と二人暮らし。ソウルにある私立総合大学の建国大学校を卒業後、就職活動で連敗し、大手スーパーマーケットの高卒枠でようやく採用された。

 馬車馬のように働いて、当初の月収はわずか120万ウォン。現在の月収は150万ウォンになったが、交通費は含まれていない。

「家賃と光熱費、食費や被服費、交際費で1ウォンも残りません。8月に奨励金が出るのでそれが頼みの綱です」

 奨励金とは、韓国政府が若年雇用促進のため打ち出した「青年追加雇用奨励金」のこと。満15~34歳までの青年を正社員として3年間雇用した場合、その会社に対して、企業規模に応じて一人当たりの総月給を最大1400万 ウォンまで負担する制度だ(2020年7月現在)。

 イさんもその制度があって就職できたわけだが、それだけでは根本的な解決には至らない。

 また、同じく政府が青年失業対策として打ち出した「青年の明日を満たす共済」に加入しているため、3年勤続すればイさんには3000万 ウォンが支給されることになっている。

 

・「自分はソウルに実家があるから助かっていますが、地方から上京している人はもっと厳しい。地方には仕事が少ないから、みんなソウルまで出て来ざるを得ないのですが、すぐにに仕事があるわけでもないし。饅頭を5つ買って1週間しのぐという人もいますよ」

 

「はじめに」でも書いたが、日本の労働市場が人出不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。2017年には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も大きな改善を見せていない。特に1997年のアジア通貨危機以降、失業率は上昇基調にあり、2000年からはほぼ最悪に近い状態で停滞しているまた2005年から下降線を辿っているものの、大学進学率は70%台を推移しており、国民の約7割から8割程度が大卒にあたる。

 このデータからは、韓国は長く「大卒貧困者の割合が世界トップレベル」という状況におかれている。

 

最初から成功を望めない地方の若者たち

・先述したが、地方在住の若者は、標準的な就職活動のレールに乗ることすら困難だ。中でも韓国の南東部、慶尚北道蔚山は地域別青年失業率が高い。2018年4月時点で11.1%と、韓国の諸地域別失業率でダントツとなった。

 その蔚山出身のキム・ユネさん(仮名・33歳・女)は、ソウル特別市中区と慶尚北道の慶州市にキャンパスを置く私立大学、東国大学校の経営学科を卒業後、民間企業でマーケティングの職を得た。年棒は2400万 ウォンだった。

「私は大企業や都会の企業に応募せず、最初から地元での就職を希望しました。お金よりも、自分に合う仕事がしたかったので」

 だが、就職してすぐに迷いが生じた。就職先が超過労働を課すブラック企業だったこともあるが、就職のためだけを考えて経営学を選び、実際に職を得たことに対して疑問が生じたという。

 

・「昔は貧しさを逃れる手段が学問でしたが、今は手段が目的と化していると思います。それに韓国では、いかなる会社も学歴と別に、実務とは関係ない資格を要求してきます。そのせいで、韓国の若者は明らかに過剰で無駄な勉強をさせられているというのが実情です

 彼女自身もTOEIC700点、IDCL(国際コンピュータドライビングライセンス)、MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)、韓国史検定と4つのスキルや資格を取得しているが、それだけで就職に役立ったと思えるものはない。現在は会社を辞め、釜山の大学院で韓国史を学んでいる。国史編纂委員会への就職を目指しているのだという。

 

・2017年の韓国雇用情報院の報告書によると、首都圏の大学卒業者の大企業就職率は首都圏の職場の場合32.4%であるが、大企業の地方営業所を選んだ場合は44.9%となる。一方、同じく大企業の地方営業所に就職できた地方大学出身者は21.9%だった。

 

若者の貧困を加速させた「最低賃金上昇」

2017年の文在寅政権の発足以後、アルバイトも激しい競争にさらされている。その直接的な原因として、最低賃金の上昇があるだろう

 文在寅政権は18年の7530 ウォンから、19年には8350 ウォンまで最低賃金を大幅に上げたのだが、その結果、競争率が激化。アルバイトにありつけない若者があふれるという事態を招いている。その後も上がり続け、21年度には8720 ウォンとなることが決定した。

 

大学ではTOEIC800点を獲得し、難易度の高いIT系の資格も複数取得したが、それだけでは就活が円滑に進むことはなかったという。

エントリーシートはもう400枚書きました。それに、たとえば国内業務しかないリフォーム会社でもTOEICの点数が高くないと早い段階で落とされる。ただただ疲弊する毎日です」

 

・韓国で学力レベルがトップテンに入る大学を卒業し、アルバイトをしながらデザイナーを目指すコ・ヒョナさん(仮名・26歳・女)は、就職のために鼻を美容整形した。注射器でフィラーと呼ばれる半固形の物資を入れて鼻筋を通す施術で、いずれ元の顔に戻るという。

「就活生はほとんど横並びのスペックなので、強力なコネでもない限り就職は本当に難しい。だから、少しでも面接官の印象に残るようにするんです」

 

不可視の存在・「高卒者」

・地方でも三流でも、大卒として求人にエントリーできれば、それでも「マシ」なほうなのかもしれない。極度の学歴至上主義である(しかもそれが報われるとは限らない)韓国の就職事情では、土俵にも上がれない、もはや「不可視の存在」ともいえるのが高卒者である

 韓国には、高校卒業後の就職を目指し、専門技能を習得する「特性化高校」という教育機関がある。そこに入学できれば良いのだが、普通高校を卒業しただけの者は「勉強ができなくて大学に入れなかった」という扱いを受け、より過酷な状況を強いられる。

 年間約10万人の高卒無職者のうち、8万人が普通高校卒業者だ。

 

競争を勝ち抜いても低い「幸福度」

・では就活戦争で勝ち抜くことができれば、それで幸福かといえば、勝者には勝者なりの悩みもあるようだ。

 日本でも販売されているラーメンなどを製造する大手食品企業で勤続3年目となるオ・テグさん(仮名・38歳・男)。彼は英語、韓国語、スぺイン語と中国語の4か国語ができ、IT関連の各種資格を持つハイスペック人材だ。

 名門・高麗大学校を2年休学して海外を放浪。帰国後、半年ほどかけて就活を行なった、エントリーシートを出した50社中、最終面接に辿り着いたのは5社、そのうち大企業数社から内定を獲得した。ここまでに登場したほかの人たちに比べると、はるかに恵まれているようにも感じられる。

 

大企業に憧れない若者たち

・前述のとおり、韓国では大企業が日本よりもはるかに狭き門となっている。だが尋常ではない競争に勝ち抜いて入社しても、激務に耐えきれず、早々に辞める人も多い。昇進試験の評価が悪ければプレッシャーを受けて自主退職を迫られる。40代のうちに役員コースに乗らなければ出世が閉ざされる、といった現実が「大企業40代定年説」とも呼ばれる事態を招いている。

 実際、平均退職年齢は49.1歳で、実際にそれよりも早いと話す韓国人は多い。

 

・退職後、子どもの学費を支払えず車や家を売るケースもある。辞めた後は中小企業に入り直すか、アルバイトをするか、起業するかの三択となるが、中高年からではどれも茨の道だ。大企業出身者は、再就職しても7割が新たな職場に適応できず、やはり1年以内に辞めてしまうという研究結果もある。

 取材したうちの数人が「大企業を45歳前後で辞めて、それまで貯めたお金でチキン屋を開くのが、そこそこの人生コース」と話していたのがとても印象的だった。

 

世襲階層社会、親世代からの圧力、プライド

・ここで近年における韓国の経済状況をざっと整理したい。

 韓国は1997年に通貨危機を経験し、一時、国家破綻の危機に直面している。

 経済は大混乱に陥り、IMFより資金支援を受けることでなんとか乗り超えるも、多くの企業が倒産し、財閥解体政権交代などの結果を招いた。これは「IMF経済危機」とも呼ばれる。

 その後、2007年の世界同時不況を契機として、通貨である ウォンの価値は下落。2008年10月には再び通貨危機を経験することになる。

 

・この間、経済面での浮き沈みはあるものの、基本的には低迷期間が長く続き、特に2000年からは青年失業率が上昇の一途を辿った。その中で、韓国の若者は世界でも類例のない「多重貧困」にさらされている。

 複合的で特定しにくいが、その原因にますます広がる格差と、学歴による過当競争が挙げられるのは間違いない。

 たとえば一流企業と中小企業の賃金格差はとても大きい。平均的な中小企業の賃金は大企業の6割にも満たないことが明らかになっている。

 

一方で、大学進学率は日本よりも高く、国内の7割の若者が大学に進学しており、2008年以降OECD加盟37カ国で一位を維持している。その大卒者が、国内にわずか0.1%存在する、年商5兆 ウォン以上のいわゆる大企業を目指すが、実際に一流企業への門戸が開かれているのは、ソウルにキャンパスを置く国立のソウル大学校、そして私立である高麗大学校延世大学校などの上位大学卒業者にほぼ限定される。結果として多くの若者が、学業に費やした労力に見合わない低賃金の職や、無職に甘んじる状況を招いている。

 

・なお文部科学省の学校基本調査によれば、2019年度の日本の大学進学率は、短期大学への進学を合わせて58.1%。現役だけに限定すると、54.8%に留まっている。

 また韓国の賃貸制度では、家を借りる際に数十万~数百万円の保証金が必要になる。それが自立を妨げる結果になり、結婚の困難さなどにも繋がっているようだ。

 こうした状況に置かれた韓国の若者は、2010年代に入って「恋愛、結婚、出産」の3つを放棄せざるを得ない「三放世代」とされていた。しかし昨今ではそこに「就職、マイホーム、夢、人間関係」を加えた「七放世代」とも呼ばれるようになった。

 「世襲階層社会」と呼ばれるが、「階層が親の経済力によって固定されやすい」というのも韓国社会の特徴でもある。階層を上がりたい場合、前述の「半地下」で暮らすシムさんのように有資格者、公務員を目指すほかには「これだ」と呼べるようなルートがなかなか存在しない。

 それでいて、起業も奨励されず、副業も日本ほど浸透しておらず、貧困を打破する手段が限定的なのがさらに問題と思われる。

 

労働市場の硬直性も相互作用を及ぼしている。

 日本でも非正規社員から正規社員になることの難しさがよく話題になるが、韓国でのそれはさらにハードルが高い。その確率はOECD加盟国の平均35.7%に対し、韓国は11.1%に留まり、かなり低いことが分かる。そうした状況は「労働市場の二重構造化」と指摘され、問題視もされているが、そこにきて脱産業化など、市場構造の変化によりホワイトカラーの仕事そのものが減少している。平たく言えば、大卒者の多くが望む「それなりに良い仕事」の数自体が減っているというわけだ。

 

・「韓国の青年失業問題はあらゆる要素が絡み合い、原因を特定するのが困難です。人口的要因と景気変動的要因から述べるならば、韓国でベビーブームが起きた91~96年生まれの世代が成人し、雇用市場を圧迫していることが挙げられます。さらに、労働市場の両極化と、高学歴者のインフレが起きている点も考慮しなければなりません。特に韓国は大企業とそのほかの中小企業の賃金格差が非常に大きく、そのうえ大企業の数が全体の数%しかないため、当然ながら大量にあぶれる人が出てきます。また、似たようなスペックばかりのため区別がつかない。それで政府からは、経歴を開示せずに選考する案がでましたが、そうなるとさらに混乱が生じるでしょう」

 

非恋愛、非SEX、非婚、非出産を掲げる若者たち

韓国国内で広がる“非恋愛、非SEX、非婚、非出産”

・芸能人だけに留まらず、韓国では2000年代初頭から非婚主義は一種のムーブメントとなっており、関連した書籍も多く刊行されている。なお非婚とは、未婚と異なり、あえて結婚を選択しないことを意味する。

 こうしたムーブメントは「非恋愛、非SEX、非婚、非出産」の「4B運動(「B」とは「非」を韓国語で発音した際の音、ピまたはビを示す)」と呼ばれ、最近ではそこに「非消費」などを加えた6Bにまで発展したとされる。今では非婚主義者たちがワークショップを開いたり、シェアハウスで共同生活を行ったりする動きも活発である。

 

「N放世代」を取り巻く現実

・筆者が渡韓し、20代を中心に取材を行ったところ、「結婚がそれほど必要であると思えない」「まわりも結婚する意味がないと言っている」と答える若者はやはり多かった。日本でも生涯独身率の高まりがよく話題になるが、韓国ではそれ以上の状況にあると感じられる。実際にデータを見ると、韓国の婚姻件数は1996年の約43万5000件をピークに年々減少傾向にあり、2019年はついに史上最低の約24万件を記録。出生率も同年に0.94人と「1人未満」になってしまった。

 

・韓国の多重貧困社会の煽りを受け、結婚や就職など、ほとんどのライフイベントを放棄せざるを得ない世代は「N放世代(Nは変数の意味)」とも呼ばれている。就職がままならなければ、結婚どころではないことを察するにあまりある。

 なお韓国統計庁は、男女の生涯未婚率が2015年時点の8.0%から2025年にはその倍となる16.6%、2035年には3倍の24.6%まで上昇すると推計している。男性は2015年の10.9%から2025年20.7%、2035年29.3%と段階的に上がり、同じく女性も5%、12.3%、19.5%に達するだろうとしている。

 

女性が「非婚」を選び始めた理由

・韓国国内における若者の非婚傾向の外部要因としては、伝統的家族観と産業構造の変化、女性の教育水準の向上などが原因であることもよく知られている。

 

この調査では非婚の類型を「結婚費用負担型」、「機会喪失型」、「不利益負担型」、「自発型」の4つとしている

「結婚費用負担型」は文字通り、経済的理由で結婚を避ける集団だ。理由としては、不安定な雇用と低い所得、住宅事情、結婚後の生活費などが挙げられる。

「機会喪失型」は時間的余裕がなかったり、年上の兄弟姉妹が未婚だったりして、結婚適齢期を過ぎても出会いがないことを原因にした集団である。

「不利益負担型」は結婚・出産をすることが人生に支障をきたす、または家父長制を受け入れられないとする集団だ。

 最後の「自発型」は、そもそも結婚の意思を持たない集団を指す。

 

調査の結果、対象者の約80%が「非自発的」非婚に属していた。うち最も多かったのが「機会喪失型」で、その次が「結婚費用負担型」であった。さらに細かく言えば、男性では「結婚費用負担型」が多く、女性では「不利益負担型」が多いことが分かった。

 これは現在の韓国における家族制度が「結婚と仕事によって生じる負担を、男性側以上に女性側へ強く与えている」結果として、得られる不利益も男性側より、女性側で大きくなっている状況を意味する。

 また「結婚費用負担型」は財政的条件がネックになっているだけに、「自発的」非婚者に比べて教育水準が低く、非就業者の割合が高いのがその特徴であった。

 

・この結果はつまり、男性の多くが経済的要因によって非婚にならざるを得ない状況に対し、女性は外部要因にかかわらず、自ら非婚を選んでいるような状況を示唆している。整理すれば、そもそも生じていた「女性抑圧へのバックラッシュ(反動)」に「若者の貧困」が重なり、韓国で広がる非婚現象は女性を中心としてさらに加速した、と言えるかもしれない。

 

海外への就職が増加している韓国

ここまでに記してきたように、若者を生き辛くさせている直接的な原因として、韓国国内の厳しい就職事情があるのは間違いないだろう

 就職率がなかなか改善される見込みのない状況で、韓国政府は「K

-move」と称して二つの対策を講じた。一つが「青年創業支援事業」、もう一つが「海外就業支援事業」である。

 

・具体的な人材育成事業の内容とは、「海外就業情報網の構築」や「グローバル人材養成事業において優秀な成果を挙げた委託機関に対する優遇措置」、「養成事業に参与した青年の事後管理」などが挙げられる。特に「準備中の者も含めた海外就業者への管理」を業務として指定し、徹底するように指示しているのがその特徴だ。

 

韓国政府が海外就職を支援している理由

・これは「『良質の職』を創出し、均衡的な経済発展を促す」という現政権の長期的目標に沿ったものと言えるだろう。具体的な事業内容には就業者の管理とアフターケアも織り込まれており、国内回帰した海外就労経験者を「メンター」として参与させることで、海外就業事業の拡大・持続に貢献させるシステムの構築を意図しているものと思われる。

 

具体的どのような支援をしているのか

・では韓国政府は海外への就職について、具体的にどのような支援をしているのだろうか。

 ここでK-moveの主要事業を挙げれば、海外就業用研修「K-moveスクール」の運営、海外就業およびインターンの斡旋、メンタリング、国内外に展開する「K-moveセンター」の運営、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が運営するウェブサイト「WORLDJOB+」などを通じた海外就業情報網の構築と提供、海外就業定着支援金の支給である。

 

就職先として人気を集める日本

・KORTAの年度別就業統計によると、2018年の海外就業者数は5783人。この数はK-moveが発足した2013年の1607人から数え、約3.6倍まで増加したことになる。

 そしてその5783人のうち、実に1828人が日本だった。なお日本への就職者数は、K-move始動翌年となる2014年からの総計、2万294人の中でも5328人を占めている。これは対象15か国の中でも最多だ

 次いで米国42848人、シンガポール2165人となるが、サイト「WORLDJOB+」でも、2020年5月現在、希望就業先として日本が最も多く登録されていた。

 

日本の高度外国人材誘致政策による就労ビザ要件の緩和

・日本政府の姿勢も要因として大きいだろう。

 日本政府は第4次産業革命の下での熾烈なグローバル競争に打ち勝つことを目標に、2020年末までに1万人、2022年末までに2万人の高度外国人材の受け入れ強化を打ち出している。「未来投資戦略2018」の中ではさらに「従来の専門的・技術分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく」などと示した。背景には、高齢化による労働人口の減少があるだろうが、そのため特定分野での就労ビザが出やすくなっている。

 なお執筆時、日本日本での就職を目指すにあたり、最も有望な分野と考えられているのはIT関連である。

 

・現実として韓国でもITは産業の基盤となっており、資格取得者も多い。

かつてはIT分野なら、それを専攻した4年制大学卒業者にのみ就労ビザが発行されていた。現在では日韓のIT資格について相互認証が締結されされており、専攻ではなくとも、資格証保有者が発給条件を満たせばビザ取得が可能となっている。

 

 

 

新版『ラルース 地図で見る国際関係』  現代の地政学

イヴ・ラコスト   原書房    2016/12/22

 

 

 

地政学、それはまず戦争をするのに役立つ」

地政学、それはまず戦争をするのに役立つ」。これは1970年代末に発行されたイヴ・ラコストの著書のタイトルで、当時大きな反響をよんだ。

 現状に即して完全に見なおしたこの新版で、著者はこの直観を現代世界を読み解くカギとして使っている。著者(フランスの地政学の第一人者の1人)は現代の大きな争点について、独自のアプローチを提案する。それは、局地的な地図から世界地図まで、さまざまな地域の地図を重ねあわせることによって、そうした争点をたがいに関連付けるという方法である。

 

<中国:いずれは世界一の経済大国か?>

統計によれば、中国は2009年から公式に世界第2位の経済大国になった。しかし国民の多く、とりわけ農民は、今でも非常に貧しい生活を送っている。にもかかわらずそうした状況が語られないのは、人々が今でも共産党の役人の支配下にあるからである

 

<始まりは大きな地政学的動き>

漢民族の勢力拡大:南北2000㎞>

・中国人は全員同じ言語を話すわけではないが(中国南部にはさまざまな方言が存在する)、そのほとんどが自らを漢民族だと認識しており、共通の文字である漢字を用いている。漢字はアルファベットと違って表意文字で、読み方は地域によって異なる。この文字の統一性は、インドとは大きく異なる点である。インドも10億人以上の人口をかかえるが、その90%がヒンドゥー教徒であることを除けば、言語的、文化的には非常に多様である。

 

中華帝国がまもなく世界の中心になる

中国のめざましい経済発展とその地政学的理由

・産業活動は、党の有力者とその家族が結託して中国や外国の個人投資家と取引するという、理論的に不鮮明な無秩序な方向に向かって進められた。

取引相手はとくに台湾の人間だった。

 

・そのいっぽうで地方の状況は非常に不安定なままで、国の管理下にある工場は失業者を出し、多くの場合労働者に賃金を払えずにいる。

 

国内移住と貧困

国際的な研究によれば、中国では中流階級(西洋型消費・社会生活を送る人々)が3億人いるいっぽうで、公式な数字によれば1億人以上が貧困線以下の生活を送っている。これは年収882元以下を基準にしたものだが、貧困線の世界平均は年収3000元以下である。こうした貧困層の大半は、仕事を求めて田舎から都市に出てきた無数の国内移民(2000年代初頭には約4200万人)で、おもな出身地は、四川省湖南省河南省である。出稼ぎ先としては、広州(半数近く)と上海が多い。こうした人口の大移動は、国の政治経済を不安定にする大きな危険要素の一つである。

 

・人口密度の非常に高い東部地域となかば砂漠のような西部地域との違いは歴然としている。世界的な経済危機によって対米貿易が低下したとはいえ、中国はこの危機以前に経済成長の記録を達成している(最高年16%)。そうしたなかでも中国当局は綿密な出生管理を続けており、1970年代に決定した産児制限政策は2001年にふたたび「国家政策の基本」であると宣言された。しかも妊娠中絶という強制的な手段も棄ててはいない。中国の出生率は人口の自然出生率より低くなる見込みで、女性の数の不足が強く意識されはじめている。都市の人口は、1980年から2011年の間に、全体の19.7%から50%に変化した。

 

<農地の獲得、緊張と対立の源>

・1980年に中国の都市人口は全人口の20%以下であったが、現在は50%を超えたところだ。上海は2300万人を、北京は2000万人を超えている。かつて四川省に属していた内陸部の重慶市は、数字の上では3100万人を超えるが、これは特別なケースである。というのも、三峡ダムの建設後に長江流域が水没したため、「赤色盆地」(四川盆地)の多くの地域を行政上まとめたからである。

 多くの都市の拡張はほかの国と同様、都市化の問題を引き起こしたが、中国では都市の農村部への拡張が特別の問題をもたらした。農地は原則として集団の土地にしておかなければならないからである。各公社で指導者たち(選挙で選ばれる原則だが、実際は共産党に任命される)が土地を不動産開発業者に売ることを決めると、開発業者はその不動産を裕福な市民に売却する。この売買の際に、公社の指導者たちが利益のうちのかなりの部分をしばしば着服していることに、農民たちはすぐに気がついた。こうした土地詐欺に続いて複数の指導者に対する暴動が起こり、インタ―ネットで伝えられるようになった。

 党幹部(「赤いプリンス」とよばれる)の家族が私服を肥やす問題やその役職の問題、地方や国家のトップの座を争うライバル関係については、ますます論議されている。

 

<中国がアメリカを「救う」>

・1990年代から米中の経済関係は非常に良好で、何年も前から中国資本がアメリカの巨額な貿易・予算赤字を補填しているほどである。中国はアメリカに製品を売り、同国から国債を購入しており(推定1兆ドル以上)、アメリカの外貨と経済を支えている。

 

国内移動者が大量に存在

・今や豊かで工業化された沿岸各省と、大部分が農村の中央部、そしてあきらかに開発の遅れた西部各省の間には大きな格差が認められる。

 現代の中国の特徴は地方から都市へ向かう国内移動者が大量に存在することで(2000-05年に2億人以上)、一部の人はこれを社会を不安定にするリスクであると考えている。しかし当局は、人口100万人以上の都市に住む人の割合は世界平均よりもまだ5%以上低いと指摘する。

 香港を含む中国のGDP(国内総生産)は、2010年にはアメリカに次いで世界第2位であり、日本とドイツがこれに続いている。

 

<華僑>

・華僑がもっとも多いのは当然ながら東南アジアだが、中国人の存在に対して土着住民が激しい拒否の動きをみせることがある。とくにインドネシアでは、1965年にスハルト将軍のクーデターが起こったときにそれがみられた。中国人は当時共産主義と同一視され、地元の共産主義者とともに多数が虐殺されたのである。

 

<どのような大国? どのような未来?>

中国では昔から、何百万人もの農民が不法に都市に出稼ぎにきて、非常に不安定な状態におかれている。国内移住を管轄する当局は、相応の許可をもたない人間が都市に居住することを禁止しているからである。現実に何千万人もの「密労働者」が必要な滞在許可なしに都市で働いているが、最低の賃金で、家族を呼びよせられずにいる。彼らはいかなる要求もできない。そんなことをしたら追い出されるか、労働所に収容され、それまでの貯金を田舎の家族に仕送りできなくなるからである。世界的な経済危機の影響で中国の経済成長も大幅に減速したため、「不法労働者」たちは田舎に押しもどされている。収入源を絶たれた彼らは、自分達よりもはるかに豊かに暮らしている地元の共産党の役人による支配に反発しはじめている。

 反発の声は、共産党員の労働者からも上がっている。党の有力者の親族が経営する民間企業は羽振りがいいのに、彼らが働くかつての国営工場は不振にあえいでいるからである。この不安定な社会情勢に直面して、指導者たちは社会保障制度をはじめとする改革を約束する。国の息のかかった組織は、国の統一を強化するために、中国が外国から脅威にさらされていると吹聴する。その言によれば、国際世論がチベット人を支持しているのがその証拠だ。

 

ナショナリズムの高まり、社会不安、農村部での反乱、都市部の混乱など、現在の中国は何が起きてもおかしくない状況である。しかも、めざましい発展を制御しつづけることができたとしても、この国はいずれは国境を越えて力を行使したくなるのではないだろうか。中国は原材料、とりわけ石油を大量に必要とし、中央アジアやアフリカに本格的な経済攻勢をしかけている。とくにアフリカには、資材と資本だけでなく数多くの労働者も送りこんで、地元民をひどく驚かせている。

 中国の大企業は、現在はグリーンランド北極海の鉱物資源に強い関心を示している。