『ついに中国で始まった大崩壊の真実』
急落する経済と社会混乱の実態を現地から衝撃報告
邱海涛 徳間書店 2015/7/24
<株も土地も大暴落、年金破綻、無法がまかり通り、AIIB、外交、国内政治も大波乱>
<経済崩壊で好戦的気運が高まる中国>
・2015年4月25日付の「経済観察報」は、東莞市が第2次企業倒産ブームに見舞われていることを報じている。工場閉鎖が大量に相次ぎ、この1年で少なくとも4000社が倒産に追い込まれた。2008年から2012年までの5年間で、東莞市ではなんと計7万2000社が倒産し、数百万人の労働者が失業に追い込まれた。
<実体経済の崩落が止まらない>
・中国の景気が落ち込み始めたのは2008年からであった。
・企業の生産も鈍い。2015年4月の工業生産は前年同月比5.9%増だった。伸び率は同年3月より0.3ポイント改善したが、8%超だった2014年の通年の水準を大きく下回る。4月の乗用車の生産台数は11.2%減と2008年12月以来の2桁の減少幅となった。石炭、粗鋼、板ガラスなど、設備過剰が目立つ業界の生産量も前年割れが続いている。
要するに、景気悪化が加速し、企業の経営が苦しく、ほとんどの企業は利益をあげられず、重大な危機に直面しているということである。
<40年前の生活水準に戻る中国>
・GDPが相当に上がらないと、社会福祉も国民生活への保障なども消えてなくなってしまうからだ。
かつては、そのために必要なGDP成長率は8%といわれ、「保八(8%を維持する)」が絶対条件だとされていたが、もはやそれを唱える政府関係者や学者はいない。無理だからだ。
平たく言えば、工場からの製品出荷が鈍り、デパートには買い物客の姿が見られなくなるということである。生産も消費も激減する。成長率4%とは、40年前の生活水準に逆戻りするということを意味する。
<2015年の「3つの重大事件」から始まる中国崩壊>
・まず2015年だが、中国では3つの重大事件が起こると予測されている。それは、次のようなものだ。
- 理財商品のデフォルト
・中国の経済学者、李迅雷は2013年に、「これから2、3年のうちに、中国には全面的な経済危機が起こる。不動産市場が一番危険な火薬庫だ」と警告したことがある。
彼によると、中国銀行の貸付総額のうちの約30%は不動産市場に流れ込み、地方政府の財政収入のうちの約30%は土地と絡んでいる。そのために、いったん不動産や土地の価格が下落すると、中国経済が崩壊しかねないという。彼の予言は現実味を帯びてきている。
・②労働人口減による激震リスク
2つ目の重大事件は、2015年から中国の生産年齢人口が急減し始めることである。毎年400万人近くの労働力が失われ、経済発展に大きな打撃を与える。人件費の高騰が予想され、成長率の失速が避けられそうもない。
一人っ子政策のつけが回ってきたのが原因であろう。2014年から一人っ子政策が見直されたが、もう遅すぎるのは明らかである。これから20年間は逆転の望みがまったくない。
- 日中関係は重要な節目を迎えるのか
3つめの重大事件は、2015年8月に中ロ共同主催の「世界反ファシスト戦争勝利70周年記念行事」が行われることだ。同時に、中国では抗日戦争勝利70周年を迎え、中国国民の反日感情が高まり、反日行事が各地で行われるであろう。
<2016年の「第13次5カ年計画」が中国経済に波乱に輪をかける>
・2016年は、中国の「第13次5カ年計画」が始まる初年度である。第13次5カ年計画にどんな内容が盛り込まれるかを大いに注目したい。
・実際、5ヵ年計画は宣伝されているような完備無欠で信頼性の高いものではなく、いままでも問題点がいろいろ指摘されている。
たとえば、設定された目標が達成できなかったことはよくあった。1991年の5ヵ年計画では、教育支出予算の目標をGDPの4%と定めたが、それは十数年連続で達成できなかった。やっと実現させることができたのは、20年も経ってからである。
・しかし、問題が1つある。それは、2016年から始まる第13次5ヵ年計画を策定する際、李首相は現実路線を踏襲しにくい状況に陥る可能性があるということだ。
その理由は、第13次5ヵ年計画の期間には、大変重要なイベントと重要な時期が控えているからだ。重要なイベントとは、次のようなものだ。
・2017年 中国共産党第19回全国代表大会(党大会)
・2019年 中華人民共和国建国70周年
そして、2021年には中国共産党誕生100周年にあたるが、その前年の2020年まで継続していた第13次5ヵ年計画の成果が、改めて問われることになる。
<2017年に起こる政治体制の激変>
・最終的にどうなるかは、大会が開かれてからしかわからないが、中国共産党第19回党大会では改革派(共青団派)が党の中核に大いに躍進するのはほぼ間違いない。
もっとも、この党大会を睨んで、2017年に入ると、各地方で大規模な開発ラッシュが始まるだろう。借金してでも巨大なプロジェクトを建設する。地方と地方との背伸び競争が激しくなる。というのも、ポスト昇進のチャンスだからだ。
・GDPの伸びを役人の評価基準とすることは害が大きく、見直すべきだと声があがっているが、世の中はそう簡単に変わらない。何よりGDPのほうが一番はっきりと見える実績だからだ。
<「1国2制度」が限界となった香港は捨てられる>
・サービス業の対外開放、規制緩和など、数多い経済改革のテスト措置の中で、もっとも重要なものが金融の改革開放であり、成功すれば、上海は国際金融センターとしての基盤づくりができることになる。核心となるのは、資本移動の開放と預金金利の自由化であり、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への早期参画も目論んでいる。
もし、これが成功すれば、香港は完全に孤立させられ、没落していくだろう。
<2018年に経済構造の変化が起こる?>
・前述したように、上海自由貿易試験区で得られる成果は2017年に新自由経済モデルとして全国各地に広げることになっているので、第19回
3中全会では、上海自由貿易試験区で成功した経験を取り上げる決議文書が発表されるであろう。これをきっかけに、中国の経済構造は大きく変わる可能性がある。
・成思危の予測では、2019年に成長率が9%に達する可能性があるという。
その理由は、前年に全人代と全国政協が開かれ、多くの有能な新人幹部が政府の各部署に抜擢され、彼らが非常に情熱的に経済活動に取り組むので、実績がどんどん積み上がるのだという。
ただし、2019年以降は、経済の成長率が6~7%に落ちるとも成思危は指摘している。
<2020年から一気に総崩れとなる中国>
・2020年に東京オリンピックが開かれ、日本経済はいっそう活力がみなぎることになるだろう。また、待望しているメタンハイグレード(メタンを主成分とする化石燃料)の実用化も、この年の実現が予測されている。
一方、中国では翌年に中国共産党誕生100周年を迎えるが、解決しなければならない問題が国内に山積しており、それが原因で一気に坂道を転げ落ちる可能性が高い。深刻な高齢化問題が、その1つである。
中国は2020年になると、3人の若者が1人の老人を養い、さらに2035年になると2人の若者が1人の老人を養うという、大変厳しい社会人口構造に直面することになる。いままでは一人っ子政策による制限が人口減少の原因だと言われてきたが、学歴社会が定着し、婚姻意識が多様化しているなど、その原因はいろいろ挙げられるだろう。
・中国人、とくに農村部の人々は男尊女卑の意識が根強く、一人っ子政策のもとで男児を出産するためには手段を選ばなかった。妊婦が超音波検査を受けて胎児が女児とわかると、堕胎させることはよくあった。そのため、中国では男女の人口比のバランスが崩れてしまい、結婚適齢の男性が女性より3000万人も多く、結婚できないでいる。このことも急速な人口減につながった。2020年になると、結婚適齢の男性が6000万人も余ると言われている。
このような極端な社会生態のもとでは、いろいろな社会問題が起きるだろう。婚姻売買、婦人誘拐、性的犯罪が多発することは容易に考えられる。
・ある学者が、大胆な予言をしている。それは、これから10年の間に、数千万人に上るアフリカの結婚適齢期の黒人女性が中国へ嫁にやってくるというのである。理由は、アフリカにも美人が多いし、コストが世界一安いからだ。中国政府は奨励措置を講じるともいう。
<「1億3000万人を都会人に」の無謀>
・2013年の中国の総人口は13億5000万人で、都市部人口は7億1000万人。2020年に総人口が14億人に達すると予測され、「都市部人口は60%以上」という目標を掲げるならば、8億4000万人にまで増えなければならない。言い換えれば、あと数年の間に1億3000万人が都会人になるということである。
しかし、高価な住宅、立ち遅れる地方都市のインフラ整備、教育・医療・社会福祉の問題など、難題が山積している。真っ先に解決しなければならないのは、何といっても就職問題だろう。仕事がなければ、どんなに立派なスローガンであっても、絵に画いた餅にすぎないからだ。
・このように、重大な経済危機が7年周期で起きており、2015年は2008年9月のリーマンショックから7年目を迎える。
しかし、中国の株式暴落は彼の予想より早まった。そしてその破壊規模はギリシャの破産より十数倍も大きいものだ。中国発の世界金融危機が起こる可能性する否定できない。
中国の株暴落の元凶は、言ってみれば、政府そのものにある。
<いま中国社会で起きている悲惨な現実>
<上海でもオフィスビルはガラガラ>
・2013年に上海のオフィスビルの空室率は8.1%に達し、2014年には13%にまで上った。2015年は、さらに上昇している。前述した日本の空室率とは雲泥の差が見られる。
<成都市の空室率は46.9%にも>
・大都市の上海でもこのありさまだから、地方の中小都市の景気がいかに悪化しているかが窺い知れよう。
・いま、地方都市で、オフィスビル空室率が全国ワーストワンとなっているのは、四川省の成都市だ。2010年から空室率はうなぎ上りに上昇し始め、2012年に34.6%、さらに2014年には43.9%という驚くべき数字にまで達した。
<廃墟化する全国の「経済開発区」>
・中国には、もう一つの経済バブルが確実に弾け始めている。それは、「経済開発区」と呼ばれるものである。その損失規模は、オフィスビルの開発より数倍大きいといわれている。
・いろいろな呼び名があるだけではなく、経済開発区の数は想像以上にあり、全国各地に夥しく存在している。正確な統計数字はいまだに出ていないが、国だけでなく省や市が認可したものも含めると、数万以上あると推測される。
中国には22の省(台湾を除く)、4つの直轄市、2つの特別行政区、5つの自治区があり、それらの下には2856の県があり、さらに4万906の鎮と郷がある。香港とマカオ特別行政区を除けば、経済開発区のないところは見つからないのだ。
・開発区の敷地内には雑草が生え、空き地が目立っている。堀で囲まれた工場は数ヵ所あったが、窓から中を覗き見ると、床が裸土のままで機械は1台も置かれていない。現地の人々は、もし稼働している工場が見つかったら「国宝級のパンダ」という称号を送りたい、とよく揶揄している。
<氾濫するニセの外資企業>
・原因はいろいろあるが、やはりひどいGDP依存症にかかっているため、正常な経済活動に歪みがでていることが大きい。実績を粉飾するのは当たり前になっており、将来性や持続性のない外資企業の導入が盲目的に行われていた。
高汚染、高エネルギー消費、かつ本国で禁止された生産品目を扱う外資企業が続々と中国に進出してきた。結局、そのつけが回ってきて、やむをえず閉鎖や破産に追い込まれたのである。
<6000万戸の空き住宅>
・2014年6月、西南財経大学の調査チームが、「2014年、中国住宅空室率および住宅市場の発展趨勢」という報告書をまとめた。その報告書の中で、都市部の販売済み居住用住宅の空室率23.4%にも上り、約6000万戸は誰も住んでいないという驚くべき真相が明らかにされた。このニュースが伝わると、大きな反響を呼んだ。
<30%にも及ぶ「無効GDP」で地方債務は爆発寸前>
・重複プロジェクトとは、全国的に企業の生産過剰が広がっているのに、同じものを生産する新規事業のことをいう。コストの回収はほぼ絶望的で、地方債務が膨らむ一方である。
中国ではGDPのうち、「無効GDP」の部分が非常に大きい。無効GDPとは、帳面上は入金が記載されているが、実際にはその金は消えており、存在していないということである。日本ではあまり聞きなれない現象だ。専門家の試算では、いままでに、この無効GDPが全体の20~30%を占めるとされている。
<役人の監視体制は機能しない国>
・このようなことが可能になるのも、地方(県)の最高指揮権は党委員会書記(党委書記)にあり、党委書記の裁量ですべてのことが決められるからだ。
日本の場合、県や市にはそれぞれ県議会、市議会があり、知事といえども勝手に公共事業の立案や予算などを決めることはできない。だが、中国では党委書記がすべての権力を持っている。だから、地方の党委書記は「地方皇帝」と呼ばれているのである。
<老齢人口の増加と実体経済の低迷が年金制度を直撃>
・いま、中国では60歳以上の人口が約2億人に達しており、総人口の約14.7%を占めている。35年後の2050年には高齢者人口が総人口の40%まで占めるようになるという試算が、ほぼ確実なものだと見られている。
・ちなみに、1998年まで中国には本格的な年金制度が存在せず、誰も年金の掛け金を納付していなかった。したがって、定年退職の年から平均寿命の年までに受け取る年金総額は、在職期間中に納付した掛け金の15倍にもなってしまうのである。このデータはすでに明らかだ。
年金財政が破綻の危機に陥っているもう1つの原因は、年金制度の設計における重大な欠陥が挙げられる。
前述したように、中国の年金制度は1998年から本格的に実施したもので、あまりに歴史的に浅く、年金財源の備蓄不足は大変深刻な状態である。
<7000万人の役人はただで年金が受け取れる>
・中国の公務員数は約1000万人で、「事業単位」と呼ばれるところで仕事をしている準公務員は約6000万人いる。
事業単位とは、学校、病院、学術研究所、文化団体、新聞社、テレビ局などを指しており、仕事は政府の行政指示のもとで進め、政府から運営経費をもらっているのが特徴である。
実は、この7000万人の年金が大問題なのである。彼らは昔も今も年金保険金を納付していないが、一般の国民より多額の年金を受け取り、年金生活を享受するという非常に不公平な現状があるのだ。
<「理財商品」で税収の5倍に膨れ上がった地方債務>
・実は、地方債務は、土地を強制買収して大型プロジェクト建設を進めようとしている。しかし、資金がなければどうしようもない。
<国家に還元される利益は10%にも満たない>
・中国企業には、投資対象国の政治的、経済的リスクをまったく無視して、無理やり勢力拡大をしようとする傾向がある。さらに、中国国内と同様に、現地の法律や法規を無視する行為もよく見られる。そうしたことが、海外進出で多額の損失を招いているのである。
だから、中国では、国有企業が「第2の税務署」という渾名で呼ばれている。もちろん、国民の富を容赦なく吸い上げるという皮肉が込められているのはいうまでもない。
にもかかわらず、前述のように11万社に上る国有企業のうち、利益をあげている企業は10社くらいである。ほとんどの国有企業は破綻寸前の状態に陥り、国からの資金注入を頼りいいかげんな経営をしているのだ。
『チャイナ・リスク』
黄文雄 海竜社 2005年3月9日
<中国の破局は突然やってくる><農村の崩壊が引き金となる>
・中国の破局は突然やってくるだろう。というのも、歴史を見ると、中国の場合は、そういう傾向があるからだ。
<通常、大きい国は没落に時間がかかる>
・中国の場合、没落には時間がかかるが、破局は突然やってくる。どのような環境変化によって、あるいは歴史的条件の変化によって破局を迎えるかと言うと複合的にやってくる。
<今、中国が抱える大きな問題点の一つに、「三農問題」がある>
・中国の農村人口は約8億6000万人だが、農作業を行っているのは5億4000万人、実際せいぜい1億~2億人程度で十分だ。それ以外は余剰人口ということになる。
・中国以上に耕地面積を持つ、アメリカの実労人口がたったの300万人と比べれば一目瞭然だ。農村で仕事にあぶれた農民は、都市に出稼ぎに出る。年平均9000万~1億人の農村人口が都市に流入している。
・が、都市部の建設ブームが去り、農村の経済を支えていた出稼ぎ人口が、仕事にあぶれて農村へ帰ることになると農村問題はより深刻化する。それをきっかけに農村が一挙に崩壊する可能性はある。歴代王朝の末期に見られた流民の大噴出が再現するのは避けられない。
・歴代王朝を見ると、水害、旱魃、飢饉がおこり、流民が100万、1000万単位で出てきて、疫病が流行し、カルトつまり法輪功のような新興宗教が出てくると、それが易姓革命になる可能性が出てくる。
『100年予測』
世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
・「影のCIA」と呼ばれる情報機関ストラトフォーの創立者でCEOをつとめる政治アナリスト・フリードマンが予想する衝撃のこれからの世界は……。
・勢力を回復したロシアは、アメリカと第2の冷戦をひきおこす。
・アメリカへの次の挑戦者は中国ではない。中国は本質的に不安定だ。
・今後、力を蓄えていき傑出する国は、日本、トルコ、ポーランドである。
・今世紀半ばには、新たな世界大戦が引き起こされるだろう。その勝敗を左右するのはエネルギー技術であり、宇宙開発である。
・そして、今世紀の終わりには、メキシコが台頭し、アメリカと覇権を争う。
・地政学の手法を駆使してフリードマンが見通す未来は、一見荒唐無稽に感じられても合理的で、的確な洞察力を感じさせる。示唆に富む未来覇権地図がここに描かれている。
<2020年の中国―張子の虎>
・中国は過去30年にわたってとてつもない発展を遂げている。これほどの成長が無期限に、あるいは永久に続くというのは、経済の基本原則を無視した考え方だ。いつか景気循環が醜い顔をもたげて脆弱な企業を淘汰するはずであり、実際そうなるだろう。そして技術力を持った労働者の不足が持続する成長にいずれ終止符を打つだろう。成長には構造的限界があり、中国はその限界に達しつつある。
<中国の政治危機>
・中国では忠誠は金で買うか、強制するものだ。金がないなら、強制するしかない。景気低迷時には、企業倒産や失業が多発するため、一般に社会不安が起こる。貧困が広く存在し、失業が蔓延する国に、景気悪化の圧力が加われば、政情不安が広がる。
・あり得るシナリオの二つ目が、中国の再集権化である。景気低迷をきっかけに相反する諸勢力が台頭するも、強力な中央政府が秩序を打ち立て、地方の裁量を強めることによってこれを抑え込む。
・第3の可能性は、景気悪化がもたらすひずみにより、中国が伝統的な地方の境界線に沿って分裂するうちに、中央政府が弱体化して力を失うというものだ。
・これが実現すれば、中国は毛沢東時代と同じ状況に陥る。地域間の競争や、紛争さえ起きる中、中央政府は必死に支配を維持しようとするだろう。中国経済がいつか必ず調整局面に入る事、そしてどんな国でもそうだが、これが深刻な緊張をもたらすことを踏まえれば、この第3のシナリオが中国の実情と歴史に最も即していると言える。
<日本の場合>
・大方の予想に反して、中国が世界的国家となることはない。
・中国のもっともともありそうなシナリオは、日本をはじめとする強国が中国に経済進出を活発化させるうちに、中央政府が力を失い分裂するというもの。
<アメリカの力と2030年の危機>
・アメリカは50年周期で経済的・社会的危機に見舞われている。
・次の危機は労働力不足で、2028年か2032年の大統領選挙で頂点に達する。アメリカは移民の受け入れ拡大政策で問題の解決にあたるだろう。
<新世界の勃興>
・2020年代のロシアの崩壊と中国の分裂が、ユーラシア大陸に真空地帯を生み出す。
・その機会を利用して勢力を伸ばしていくのが、アメリカと同盟を組んだ、日本、トルコ、ポーランドである。
『チャイナクライシスへの警鐘』 2012年中国経済は減速する
<「市場経済」という言葉自体はタブーだった>
・実はその当時は、「市場経済」という言葉自体を公にすることができなかった。
・なぜなら、「市場経済=資本主義=反社会主義」という考え方が、当時はまだ根強かったからだ。そこで、苦し紛れに付けられた名称が「商品経済」というものだった。そういう状況だったから、「民営化」とか「私有化」という言葉など口にしようものなら、当時の中国社会では厳しく批判され、人生の前途が台無しになる恐れがあった。
<自浄システムが欠如している>
・経済格差や政治的腐敗がどんどん拡大していった先にあるのは何だろうか。それは、おそらく「暴動」という形で表面化する。中国の国民もバカでないから、そうした実態を目の当たりにすると、怒って暴動を起こす。それが鎮圧され、また暴動が起こるということを繰り返している。あまり日本では報じられないが、中国では年間8万件もの暴動が起こっている。
<貧者も富者も不幸せな社会>
・なぜ富裕層なのに安心感が得られないのか。それはいつ、財産を没収されるかわからないからだ。経済的にも資本主義でも、政治的には共産主義だから、政府の一声で、財産を没収される恐れがある。
・私有財産を安心して自国内に置いておくことができないから富裕層にとっても安心できる国ではないということになる。
<飢饉が起こる恐れすらある>
・このままいくと飢饉が起こる恐れすらある。飢饉というものはそう頻繁に起こるものではない。数十年に一度の割合で起こる程度のものだ。ちなみに、中国では直近、1960年に飢饉が起こっている。このときは飢饉が3年間続いた結果、実に3000万人もの人が亡くなった。
この数字は第二次世界大戦で戦死した人の数よりも多い。食糧危機というのは実に怖いのだ。
<北京の地下水は枯渇寸前>
・中国ではいま。水が完全に不足している。中国の大河、揚子江よりも北に位置する都市は、すべて水不足に悩んでいるといってもよい。
・しかし、中国には自力で水不足の問題を解決する力はない。
<中国のカントリーリスクに備えよ>
<減速と混乱は通過儀礼>
・したがって、個人、法人を問わず、中国に投資している人は、仮にXデーを迎えたとしてもパニックに陥る必要はない。求められるのは情報収集力を強化して、それを解析して戦略を考えることだ。仮にXデーを境に中国が谷に向かって進み始めることになったとしてもリスクを軽減できるようにいまから資産の分散を図っておくとよい。
『中国沈没』
沈才彬 三笠書房 2008年3月25日
・中国には「居安思危」という諺がある。この諺には、平時に有事を想定し、危機管理を徹底するという意味である。
・近い将来、中国が沈没するようなことになれば、このところ続いている10%を上回るGDP成長率が、一気にマイナス成長へと転落する可能性も否定できない。それを回避するためにも、中国は自国の状況に対して危機意識を持たなくてはならないのだ。
<中国沈没―9つのケース>
1、「政治闘争」になる社会・経済の不安定化
・66~76年までの文化大革命(文革)によって、中国は10年間という長期間の沈没を経験した。
・中国の「失われた10年」は、日本とは比べものにならないほど悲惨だった。文革の10年間、約2000万人の国民が非正常死したといわれている。
2、“爆食”による経済成長の行き詰まり
・エネルギーを非効率的に消費し、高度成長を達成する「爆食経済」。この言葉は、今の中国の高度成長の特徴を表すために私が作った造語である。爆食経済はいつか必ず破綻する。
3、アメリカ経済が、かって陥ったマイナス成長パターン
・ベトナム戦争は、アメリカを深刻なトラウマ状態に陥れた。さらに経済的な沈没だけでなく、価値観の崩壊まで招いてしまった。長期的な戦争は必ず国を沈没させる。
4、「格差問題」「腐敗蔓延」「失業問題」
・ラテンアメリカ諸国を不安定な状態に陥れた「格差拡大」「腐敗蔓延」「失業問題」という3つの問題は、中国が抱えている問題と完全に一致している。ラテンアメリカでは、こうした問題への国民の不平不満が政変へとつながっていった。
5、「民主化運動」による中国政府の分裂
・とう小平の南巡講話が行われ92年、中国は14.2%という経済成長率を達成し、天安門事件によってもたらされた沈没から脱却することに成功したのだった。
6、日本の「失われた10年」型長期低迷パターン
・バブル崩壊によって失われた資産価格は、約2000兆円といわれている。2000兆円は、今の日本のGDPの4倍に相当する額であり、驚異的な額の資産がバブル崩壊とともに消滅してしまったことになる。
・バブル崩壊後、日本は深刻な不況に陥った。90年代は景気低迷が続き、その10年間は「失われた10年」として、日本経済に大きなダメージを与えた。いまある問題を解決し、さらなる成長のための目標を決定することができなければ再び沈没してしまうことも十分に考えられる。
7、旧ソ連が経験した国家崩壊型の沈没
・国家崩壊は計り切れないほどの負のインパクトをもたらす。もし中国がソ連のように崩壊や分裂するようなことがあれば、とてつもない数の人々が犠牲になるのは間違いない。中国の人口はソ連崩壊当時の人口より4~5倍も多いのだ。
・中国とても、ソ連が経験したような国家崩壊型の沈没だけは何としてでも避けなければならない。
8、アジア「通貨危機」型のリスク
・アジア通貨危機はASEANに大きなダメージを与えた。98年のASEAN全体の経済成長率はマイナス8%にまで落ち込む。
9、アメリカ経済失速による世界経済の崩壊
・ただし、アメリカ経済はITバブルの崩壊からわずか2年後に再び回復軌道に乗っている。その理由は、ITバブルが日本のバブルとは違った特徴を持っていたからである。
<中国が抱える問題は、最後は「政治」に行き着く>
・民主化を定着させるためには、厚い中流層が形成されなくてはならない。しかし、中国では厚い中流層が形成されておらず、いわば発展途上国と中進国が混在している状況だ。こういった状況では、民主化は時期尚早といわざるをえず、中国民主化はかなり先の話になる可能性が高い。
<中国沈没の回避の方法は見いだせるか?>
・中国にとっての最善策はこれからも「気功療法的な改善」を進めていくことだ。農村地域や貧困層にも経済発展による恩恵を行き渡らせ、中流層を育てていくことが中国にとって何よりも大切である。