『神仙道の本』
(秘教玄学と幽冥界への参入) (学研)2007/3
<山人界(天狗界)>
<多種多様な天狗らの仕事と生活の実際>
<高級山人が住まう壮麗な宮殿>
・山人とは山の神のことだが、天狗の異名として用いられることもある。「お山には善美を尽くした広大結構な御殿があり、三尺坊は平生には、そこに居られますが、亦、空中にも大なる御殿があってここにも多くの方々が居られます。
・ひと口に山人界といっても階級は実に多い。そこで、空中の御殿に住む鬼類・境鳥まで、暮らし向きも千差万別なのである。
仙童寅吉以降、山人界の情報はずいぶんと数多くもたらされてきたが山人界の階級等についてもっともまとまった情報を伝えているのは島田幸安だ。
<山人界の天狗の風体とは>
・島田によると、山人界の階級は①神仙、②仙人、③山人、④異人、⑤休仙、⑥愚賓(ぐひん)に大別される。この愚賓というのがいわゆる天狗のことだが、天狗は人間が命名した俗称であって、山人界では使わないという。
・天狗というと鼻高・赤面の異形に描かれるのが通常だが、実際の姿は人と変わらず、頭巾をかぶり、白衣を着し、足には木沓(きぐつ)を履いている(裸足の愚賓(ぐひん)もいるという)。「人界にて云如き鼻高く翼ある者は無御座候」と、島田は断言している。
愚賓は神仙から数えて6番目の下級官吏だが、そのなかにもまたこまかい階級がある。①山霊(大愚賓)、②山精(小愚賓)、③木仙、④鬼仙、⑤山鬼、⑥境鳥、⑦彩麟(ましか)がそれだ。
・⑥の境鳥が、いわゆる木の葉天狗・木っ端天狗と呼ばれる類で、嘴と翼をもつ鳥類の化身である。
<戦争に出陣する愚賓(下級天狗)たち>
・ただし、人間のように肉を食うのではなく、気だけを食うのだと島田が注釈している。生きている魚を海などから招き寄せ、「味の気」だけを取って食べ、食後は生きたまま海に帰すというのだ。
・仕事は、より上級の神界の下命に従って戦争に従軍したり、霊界や人間界をパトロールしたり、冥罰を下したりと、そうとう忙しい。大小の愚賓は、元来が武官だから、戦争になると鬼類などを従えて直ちに出陣する。
・加納郁夫という名の天狗の弟子となった「天狗の初さん」こと外川初次郎は、加納天狗の供をして満州事変に従軍したと言っているし、幕末の戦乱時に活動した才一郎は明治元年から2年にかけての戊辰戦争に冥界から参戦し、三尺坊の命令で、自分の出身国である尾張藩の隊長“千賀八郎”を守護していたと語っている。
<天狗が下す恐怖の冥罰>
・天狗の仕事で最も怖いのは、人間界に罰を下すという仕事だ。火事による処罰が多いようで、情け容赦がない。たとえば、杉山僧正が東京の平川町(平河町)を焼いたことがある。
<過酷をきわめる天狗界の修行>
・寅吉や才一郎は仙縁があって山に招かれたものだがら否応はないが、凡人が天狗の「神通自在」にあこがれて山中修行に入っても、ろくなことにはならないらしいから、注意が必要だ。
最後に、天狗は日本独自のものとの説があるが、それは間違いだということも付記しておこう。中国にも朝鮮にもいるし、西欧にもいる。また、世界各地の天狗が集まって行う山人会議もあるそうだ。
『中国の鬼神』
著 實吉達郎 、画 不二本蒼生 新紀元社 2005/10
<玃猿(かくえん)>
<人間に子を生ませる妖猿>
・その中で玃猿(かくえん)は、人を、ことに女性をかどわかして行っては犯す、淫なるものとされている。『抱朴子』の著者・葛洪は、み猴が八百年生きると猨(えん)になり、猨が五百年生きると玃(かく)となる、と述べている。人が化して玃(かく)になることもあるというから、普通の山猿が年取って化けただけの妖猿(ばけざる)よりも位格が高いわけである。
古くは漢の焦延寿の愛妾を盗んでいった玃猿の話がある。洪邁の『夷堅志』には、邵武の谷川の渡しで人間の男に変じて、人を背負って渡す玃猿というのが語られる。
玃猿が非常に特徴的なのは、人間の女をさらう目的が「子を生ませる」ことにあるらしいこと、生めば母子もろともその家まで返してくれることである。その人、“サルのハーフ”はたいてい楊(よう)という姓になる。今、蜀の西南地方に楊という人が多いのは、みな玃猿の子孫だからである、と『捜神記』に書かれている。もし、さらわれて玃猿の女房にされてしまっても、子供を生まないと人間世界へ返してはもらえない。玃猿は人間世界に自分たちの子孫を残すことを望んでいるらしい。
「天国の真実」 マシューが教えてくれる天国の生活
スザン・ワード (ナチュラルスピリット)
<栄養>
スザン;食べ物は、地球の食べ物みたいなの?
マシュー;僕たちの体は、濃密な栄養物を必要としないんだ!だからここにいるのが長くなるほど、固形食を食べたいという意欲が薄れていく。でも地球では食べることは大きな楽しみの一つだから、ここに来たばかりの魂は、食べる習慣と食べることによって得られる満足感を望む。ここには満足感を満たすのに十分な、ありとあらゆる美味しい食べ物があるんだよ。多くの人は、ピクニック式に食べるのを楽しんでいるけどね。
ここの食べ物のなかには地球の果物みたいに、木や茂みからもいで、そのまま食べられるものもある。あとは地球の野菜みたいな食べ物もあって、普通は料理して風味づけされる。でも動物が姿を変えて食卓に上ることは絶対にないよ!
僕はもうしばらく食べていないんだ。食べることに興味がなくなっているからかな。でも飲み物は好きだよ。ここには本当に美味しくて元気の出る飲み物がたくさんある。なかには軽く発泡したフルーツジュースみたいなものもあるし、他にはもっとどろっとした、いろんな風味の、地球の野菜スープみたいなものもある。
ここの水は、地球のどんな水よりも純粋で光の泡が入っている。空気中にも薄いもやがかかっていて、とても気持ち良いだけでなく、そこにいるだけで、滋養になるんだ。
スザン;それはこちらで言う入浴みたいなものなのかしら?
マシュー;いや、ここでの入浴は汚れた体を洗うという意味合いはまったくない。ここではとにかく汚れはないから、石鹸も水も要らないしね。メンタルな容姿を爽快にする経験というかな。動物たちもそうさ。母さんの六匹の犬もそうだったらいいのにね!
スザン;そうしたらまさに私にとっても地上天国ね!
<環境>
スザン;ニルバーナ(天国)に固い地面はあるの。
マシュー;うん。でも、この領域はどこでもそうだけど、地上の地面の組成とは違うんだ。僕らがバーナと呼んでいる地面を覆っているものは食べられるんだよ。地球で動物が草を食むような感じかな。イージーチェアみたいにふんわりとして素敵なんだ。
景色は地球とは密度が違うけれど、地上と同じような素晴らしい絶景もあるよ。僕はクリスタルのように澄んだ湖の水面に木陰が映るのを見るのが大好きなんだ。木は地球のセコイア杉よりもっと背が高くて、でも輪はもっと繊細で、香りのいいバラ色の花が続く。浜辺にある白い砂みたいな土は、化粧パウダーみたいにサラサラなんだ。
スザン;素敵なイメージを伝えてくれてありがとう!本当に天国みたいなところね!
マシュー;そう、まさに、ここは天国だよ。湖や海、山、森は動かずにいつもここにあって静止した、安定したものといえる。あとは、天候も自分の好きなように瞬時に変えて、何回でも自分が好きな環境を作れるんだ。季節は地球と似たような感じで変わっていく。それはここの住人の大半が指揮の変化を望んでいるからなんだ。つまり、ここには「天国の完璧な一日」が毎日やってくるんだよ。
大半の人がそう望んでいるからみんなで集合的にそのように作り出すんだ。たとえば、屋外コンサートとかお祭りに行っている人は、せっかくの楽しみを嵐で中断させたくないよね。だから、嵐を作り出す人は、一人もいない。でも、どこかで雷や稲妻のドラマを望む人がいれば、その人は、自分のところだけでそれを作り出せる。誰がどんな環境を望んでも、その望む通りの環境を人の迷惑にならずにカプセル状になったゾーン内で作り出せるんだ。
スザン;何だか唖然としてしまうね。どんな天候も景色も思いのままだなんて。
マシュー;確かにすごいことだよね。でも作り出せるのはそれだけじゃないよ。どんなものであれ鮮明にイメージでき、それを真剣に望むのなら、ここでは何でも現象化できる。魂の知覚や創造力が、地球よりずっと発達しているからね。
<パートナーシップ>
(スザン)同性愛のパートナーは、両者が望めばニルヴァーナ(涅槃・天国)でもそのつながりを継続できるの?
(マシュー)そうだよ。同性愛というのは地球ではよく理解されていない。言ってみれば、同性愛は体や物理的側面というよりも、霊の進化の一段階であって、他の身体的あるいは霊的発達段階と比べてとがめられるものでも崇められるものではない。
・それに僕たちは一回きりの人格でなく、類魂だということを忘れてはならない。どの類魂もおそらく肉体、あるいは肉体なしで男性、女性、そして、両性具有の存在として何千回も転生している。
・もし直前の過去世の地球の人生で同性愛者だったら、ここにも同じ状態でやってくる。ここでは体が性的行為をする造りにはなっていないから、同性愛の精神的な側面だけがついてくる。
・地球で猛烈に同性愛を糾弾している人たちというのは、直前の過去世で同性愛者の人格を経験した魂たちなんだ。
(スザン)同性愛は今、地球の歴史上、かってないほど増えているのかしら?
(マシュー)いや、でも有史以来、今はずいぶん人口が増えているから、割合は同じでも数にすれば、増えていることになるね。歴史上、様々な分野で尊敬されている著名なマスターたちは多くが同性愛者だ。
<ニルヴァーナ評議会>
(マシュー)
・たいていの場合、評議員たちは地球に何度も転生しているが、必ずしも地球での経験だけに留まるわけではない。
・評議員は男女、そして、両性具有の魂たちの代表だ。それには素晴らしい知恵や知識を持って新たに加わるものもいるし、また霊的進化からいえば、ニルヴァーナを数段超えているのに、あえてこの領域に留まることを選んだマスターたち、また必要に応じて請願されるグレート・マスターたちがいる。グレート・マスターは住人でもなければ体も持たない。彼らの強力なエネルギーは、この太陽系一帯からリラ、シリウス、プレアデスといった地球文明の発展に緊密に関連する星系に瞬間的に移動できるんだ。
『アプ星で見て、知って、体験したこと』②
ヴラド・カペタノヴィッチ ヒカルランド 2012/9/30
地球人になったアプ星人はこうして歴史を動かした
プラスイオンによる地球人の陽性化
<地球でかつて聖人と呼ばれた人々は、生きてこのアプ星にいた!>
・「あの男性は誰?」
「僕たちのマスターであるザイだよ。様々な地球人に宿ってきた。そのうちの一人が、イエス・キリストなんだよ」
・「地球人は、イエス・キリストとブッダ、マホメット、モーセ、ダヴィデ、マルクス、マルティン・ルター、その他の地球に生まれた賢人や“聖人”たち――君たちはこういう呼び名をするだろう――が死んでしまったと思い込んでいるけど、それは正しくない。実際には、彼らの誰一人として死んでしないんだよ。みんな不死身なんだからね。
イエスは死刑となって十字架にかけられた。けどザイが宿っていた人間に釘が打ち付けられ出した時には、ザイは既にアプ星への帰途に就いていた。見張り番のローマ兵も涙を流す人々も、イエスが<分解>したことに気付かなかった。彼は、アプ星随一のマスターの一人なんだよ。絶え間なく全銀河を旅して、地球を頻繁に訪れる。その度に、様々な地球人を教育しているんだ。彼らが、エゴイズムのない、平等と友愛を基盤とした生活構築を目指せるようにね。彼はとても陽性なので、多くの惑星、例えばナー星やアウックス星、ズィー星が現在、和合生活を享受できるのも、彼のおかげなんだよ」
「ということは、イエス・キリストは生きているの?」
「もちろん、他のアプ星人同様、不死身なんだよ。ただ彼の場合は、他の銀河や惑星の生命体を助けて文明化を促す、という任務を担っている。この点が、他の人と違うだけだよ。
彼はね、様々な惑星の住人たちから、既に57回も死刑宣告を受けているんだ。地球でも何度か死刑にされた。そのうちの一つが、ギリシャに生まれた賢人であるプロタゴラスであった時のことだよ。当時の地球人は、彼が偽物の科学者だと糾弾して、彼を海に突き落とした。それから約500年後にザイは地球に戻り、イエス・キリストの名で知られるようになる。その際には、ヘブライ人夫婦の子どもの身体に宿ったんだよ。差別がない自由で友愛に溢れる新しい労働社会の形成を地球人たちに説くためにね。そんな社会ができれば、地球人はすぐさまアプ星人の進化レベルに達するはずだった……」
「イエス・キリストは生きているっていうことね、ガット」とイヴァンカは改めて確認する。
「そうだよ。そこにいる、マスターであるザイがイエス・キリストだったんだよ」
「彼がイエスに宿ったの?」
「まさにそのとおり、イヴァンカ」
・「今から私たちのマスター・ザイが、全アプ星人が習得済みである、彼によって開発された素晴らしい技術のひとつを披露します。マスターは、皆様がたのどなたかを<分解>し、自らの傍らに運び<再融合>します」
突然、イヴァンカは何ともいえない快感を覚えると、次の瞬間には何も感じなくなっていた。光も、愛するガッドさえも見えない。ラグーナや爬虫類、空やアプ星の地面も見なくなっていた。彼女という存在は、全ての能力が保持されたまま、テーブルにいた時と全く同じ姿のままで、ザイの隣に現れた。
どうやって宙に浮いているのか理解できなかったが、とにかく彼女はそこにいた。
・「ではいいかな? デモンストレーションに協力してもらえるかな?」
「ええ、愛する人。私はオーケーよ」と嬉しそうに答えた。
「忘れないよ、イヴァンカ」と彼が言うと、次の瞬間、彼女がいた場所、つまり座っていた椅子の上に、色が変化する羽毛に包まれたツバメが一羽現れた。その時、イヴァンカをなによりも驚かせたのは、知らないうちに鳥に変身させられた、という事実だった。鳥の姿になっていたにもかかわらず、人間であった時と同じように考え、推理し、判断していた。
彼女は、ガッドのテーブルまで飛びたいと思ったので、すぐさまそうしてみた。彼女はガッドの右手にとまると、嘴で指をつつき始めた。人々は拍手喝采する。ツバメは再び空を飛びザイの隣に戻る。最初にいた椅子の上に戻ったかと思うと、彼女は女性の姿に戻ったのだった。
・ステージがどこに行ってしまったのか、ガッドに尋ねようとしていると、二人のテーブルから右手に数メートル離れた円形のスペースの地面に、ザイと先程までテーブルの周りにいた全ての動物たちが現れた。その後すぐ、ザイは別の見世物を即興で始めた。動物たちは異文明の生命体に変身し始めたのだった。イヴァンカはそうした生命体を最高性能のスクリーンで既に見ていた。
このデモンストレーションが終了すると、ザイは人工血液について説明を始めた。人工血液は器官で消耗された細胞を再生し、不死化するのだ。この話には、イヴァンカはさして感動しなかった。アプ星に到着した際、自ら体験していたし、その有効性は実証済みだった。
その時イヴァンカがやりたくて堪らなかったことといえば、ずば抜けた能力に恵まれたあの男性に近付いて、2千年前本当にイエス・キリストに宿っていたのか、と質問することだった。
・ユニバースが神秘の王国に隠していた最大の秘密の一つである、極めて陽性な発見を太古の昔に成し遂げた偉大なるマスターは、舞台から忽然と姿を消してしまった。代わりに現われたのは、背の高いアプ星人だった。彼は甘美な声で目に見えないマイクを使いながら、自分は発明家であると述べた。彼は、宇宙のプラスイオンを濃縮させ、様々な用途のエネルギーに変換する装置を発明したのだった。
発明家は、四角い小箱を手に取ると、サイキック能力で箱を宙に浮かせた。そして箱を様々な物質に変えてみせるのだった。そのうちのいくつかは、太陽光よりも格段に明るい陽性の光を放っていたし、超光速のスピードで上空に消えてしまうものもあった。しかし数秒後には、もとの場所に再び姿を現し、また異なる物体に変化するのだった。
<ザイ/地球でイエスだった人物>
・唐突に、イヴァンカにとって思いがけないようなことが起こった。前方のテーブルの間に、ペドロとケイ、そして僅か数分前に彼女を宙に浮かせツバメに変身させたアプ星人が現れたのだった。
・「ならあなたは何歳なの、ケイ?」
「二千三百歳よ」 イヴァンカは驚きの溜息を禁じ得なかった。
・全員が着席する。イヴァンカは立ったままだったが、やがて彼女も椅子に座ると、ザイを見つめた。まだ確信は持てなかったが、自分の目の前にいるのは、ユニバース随一の陽性な生命体の一人なんだ、と思う。彼女の前に座っているのは、物心ついたときからその善良さを繰り返し聴かされてきた神秘的な人物なのだ。
今しがた、地球では多くの人からユニバース創造主の息子と見なされている人物の手に触れたのだという実感が湧くと、彼女の頭の中には奇妙な考えが浮かんできた。なんといっても彼は、善意と正義、恐怖と愛情の体現者であり、懲罰者と救世主でもあると考えられているのだから。地球人の幸福のために地球に来て、そのために磔刑に処されたのは、彼だったのだから、彼が、戦争や異端裁判、浄化の焚刑の原因でもあったのだから。
・僕は何度も地球へ行った。それは、地球の兄弟たちに奉仕するためであって、“超人”だと見なしてもらうためではなかった。第一、全ての人間は例外なく“超人”になれるんだからね。僕たちは皆、同じ能力を備えている。ただ地球には、超能力開発に繋がる学習と労働に専念できるような、友愛と誠意に満ちた社会組織が欠けている、っていうだけのことだ。
<アプ星人ザイ/地球でのイエスがその真実のすべてを語る>
<細胞の<分解>と<融合>/イエス、モーセに宿っていたときのこと>
・「それはね、イヴァンカ」とザイが話し出した。
「ユニバースの陰性の渦が巻く領域に、天の川が漂っていた時代の出来事だった。陰性の力に満たされてしまった地球人は、金銭欲や政治的な権力欲を抱くようになり、三度目となる地球人全滅の危機が迫っていた。極めつきの利己主義者で生命に対する陰性の力に充ち満ちているローマの皇帝たちは、敵対する民族は全て絶滅させようと決意していた。つまり、地球人は食人種になろうとしていたから、矯正して殺戮を防ぐ努力をする必要があった。
そこで僕は地球に行った。アプ星から地球が分離する以前の遺跡がまだ残っている地域に着陸したんだ。そこから僕の旅が始まった。全地球人の破滅を招きかねない弾圧や争いがある国々を回ったんだよ。
ナザレの街の近くにある村には、ベタニア出身のエレナと古代都市ジェリコ出身のダヴィンチから成る一組のヘブライ人夫婦が住んでいた。
・1年後、エレナは再び子ども授かった。そこで僕は彼女の胎児に宿ったんだよ。
「ザイ、一つ聞いていいかしら?」
「ああ、イヴァンカ、もちろんだよ」
「ペドロはアプ星人は<分解>した後、胎児に宿り、アプ星人のミニウスが胎児のミニウスと結合するようにする、と説明してくれたわ。そういうものなの?」
「ああ、そうだよ」
「私はこう思うのよ、ザイ………大人の身体を形成する細胞数は、子どもの細胞数よりもずっと多いはずよ、ならば、子どもに宿った時、アプ星人の余剰の細胞はどうなってしまうのか知りたいの」
「ペドロが君に説明したとおり、<分解>と<融合>を促すのはミニウスだ。またミニウスは子に宿る際に必須の要素となる。“宿る”というのは、<分解>と<融合>の一現象だからね。なんといっても、宿るためにはまず自分を<分解>しなければならないんだから。アプ星人が子どもに宿るとき――胎児であれ胚であれ――必要なミニウスしか使わない。
この際、二通りあるプロセスのうちどちらかを用いる。まず、子どもの細胞を全部取り替える方法。つまり、子どもを<分解>しアプ星人の
新しい細胞を用いて元の形に<融合>することだ。二つ目は“宿主”の成長に伴い、アプ星人の細胞のミニウスを“宿主”の細胞に徐々に融合させていく方法だ。余剰分のミニウスは常に“宿主”の周りに分散して漂っている状態になる。人間の目には見えないけど、宿った人物の命令にいつでも反応できるようになっているんだよ
例えば、僕が君をツバメに変身させたとき、君のミニウスを鳥の形成に必要な分量だけ用いた。残ったミニウスは君の周りにあったんだよ。僕が<分解>を行った本人だから、残りのミニウスはいつでも僕の命令に従える状態にあったんだ。
・「その話はね、イヴァンカ、僕の過去の宿主の話にまで遡ることになる。最高性能のスクリーンで好きなときに見てごらん。
僕がモーセに宿っていた時の事だった。僕は陽性な知己知人のグループに、規律もとい戒律――地球ではそう呼ばれているよね――を渡したんだ。人類にその戒律を広めてもらえるようにね。
そのグループには、エス・ニエと呼ばれていたアプ星での集団生活の詳細について教えたんだ。エス・ニエという言葉はね、地球人の言葉だと“協力”という言葉に一番意味が近いだろうね。この言葉が、時が経つにつれて“エッセネ”に変化していったんだよ。
では、話の続きをするよ、イヴァンカ。登録から数日後、つまり地球時間のローマ暦741年10月23日3時27分に、ヘリオポリスでエレナ(マリア)は男の子を出産し、その子はイエスと名付けられた。その陰性の時代には、平穏な場所などどこにもなかった。
<十字架にかかったのは、イエスのイメージ体 ⁉>
・「刑場で、彼らは僕をオリーブの十字架の上に横たわらせると、釘を打ち付け始めた。その瞬間、僕は<分解>したんだよ。兵士たちと居合わせた人々は、数分前に彼らの頭の中に刻まれたイメージを十字架の上に見ているだけだった。それはもう現実のイメージではなかったんだよ。僕は自分の姿を目に見えないようにすると、母に近付いて耳元で言ったんだ。
「お母さん、泣かないで。あなたの息子は死んでいません。あなたの隣にいます。家に戻ってください。間もなくしたらお母さんのところに行きますから」
母は僕の能力を知っていたので、言われるとおりにした。マルタとマグダレーナ、その友人たちが、十字架にかけられた僕のイメージが“苦しむ場面”に立ち会っている間、僕は既に母の傍らにいて、現実と僕たちの世界の暮らしについて説明を始めていたんだ。その後、僕は母をアプ星に連れてきた。今は、ミイ星にいるよ。戻ってきたら君に紹介するからね」
イヴァンカは仰天してしまった。
<ザイの地球帰還/暗黒時代に放ち続けた陽性のフォース>
<マルティン・ルターとしてのザイの生涯>
・「あなたは何回地球人と暮らしたことがあるの、ザイ?」
「何度もあるよ。イヴァンカ。僕は、ここ30万年の人生で、何百人という地球人に宿ったからね。今からイエスの後に宿った二人の人物について君に話をするよ。その後、モーセとピタゴラス、他の人物に宿った時の僕の仕事も説明する。
さて、イヴァンカ、ナザレ人――地球人はこう呼ぶだろう――に宿った12世紀後に、僕は子どもに宿った。ザクセン人の夫婦の息子(マルティン・ルター)だよ」
<レオナルド・ダ・ヴィンチに陽性の着想を与え続けたアプ星人アマン>
・「シャベ未亡人は僕をジョバンニ・トレボーニオという教師の元に連れて行ってくれた。この人物はアプ星人のアマンによって陽性化された地球人の一人だった。ちなみにこのアマンは、賢人レオナルド・ダ・ヴィンチに陽性の着想を与え続けていた人物だよ。アマンが、彼に驚異的な発明をさせていたんだ」
<生命と万物の起源/アプ星における人間誕生の瞬間>
<疑問に対する答えを瞬く間に映し出す最高性能スクリーン>
・「地球と地球人の生命はどのようにして誕生したの、ザイ」
「それはね、イヴァンカ、とてつもなく長いプロセスなんだよ。これを全部詳細にわたって話すとなれば、地球時間で何ヶ月もかかってしまうよ。だから、タイムスクリーンで見た方がいいと思うよ。こうなれば、全ての詳細も明らかになるからね………どうする?」
・「僕たちの陽性なスクリーンは、物質と生命の創造を促したプラスイオンの出現以降に起こった出来事を全て映し出すからね。プラスイオンが現れる以前は、無しかなかったので、そこは注目に値しないから」
イヴァンカはスクリーンを見つめた。すると、陽性の装置なしでは人間の目ではとらえられないほど微細極まる塵の淡い煙霧が、暗い無限大の宇宙にあるのがなんとか確認できた。陽性の装置は、暗闇や水中、空中、地中にある、ありとあらゆるエレメントの存在を探知できるので、そうした場面の映写が可能なのだ。
“地球時間で言って、この瞬間から現在まで、宇宙現象の変遷にどれほどの時間が費やされたのか、誰に聞けばいいのかしら?”とその時イヴァンカは思う。すると瞬く間に、スクリーンの右下に、次のような言葉が表示された。
“あなたが見た万物の起源からあなたの誕生の瞬間までは、地球時間に換算すると、17×10583年の隔たりがあります”
・こんな驚異的な現象を経て、人間の眼には見ない塵が、生命体が棲息可能な冷たく硬い巨大球体に変貌するまでいったい何年かかったのだろうか、とイヴァンカは考える。するとスクリーンに次のような文章が現れた。
“あなたが今、最高性能のスクリーンで目にしたばかりの球体すなわち惑星の形成、冷却、凝固には、地球時間に換算して、10584年を要しました。ですが今後、惑星の形成にはこれ程の年数はかからなくなります。形成済みの惑星が環境を整えたので、以降、惑星の凝固にかかる時間は、大幅に短縮されるようになりました”
<地球人にも人工生殖が必要な理由/宇宙空間の陰性ゾーン通過>
・これほどまでにも奇妙な外観の小動物群が現れて、イヴァンカは仰天してしまう。彼女は、人間の目でようやく識別できるほど小さな蛙の一種が出現したのだ、と思った。
「この動物は何なの、ザイ」と興奮して尋ねる。
「これは最初の人間なんだよ。その形成については、先程述べたとおりだ」と彼は答える。
「なんて小さいのかしら、ザイ! アリのようだわ!」
「まさにそのとおりだよ、イヴァンカ……。僕たちの祖先となる最初の生物がアプ星の地表に現れた時、あまりにも小さかったので、サイズからすればアリにとても近かったんだよ」とザイが答えた。
イヴァンカは最高性能のスクリーンで、一部の動物が二本足で歩くために立ち上がる様子を目撃する。