日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

わたしの住むベルギーは、ほかのベネルクス諸国(オランダ・ルクセンブルグ)やスイスなどと並び、安楽死、医師による自殺幇助が合法化されている。とくにベルギーは、子供の安楽死さえ容認している。(3)

 

エスカレートするスペック作り

・結局、毎年悪化する就職事情が、就職準備生を対象とする教育市場の膨張をもたらしている。英語とともに外国語のスペックとして人気沸騰中の中国語教育市場は6000億 ウォン規模へ急拡大しており、英語も従来からあるTOEICやTOEFELのほかに新しく数種類の資格試験が登場し、いずれも大きく成長している。

 

N放世代とスプーン階級論

公試生全盛時代

韓国の就職準備生にとって、9級公務員はまさに夢の職場だ

・パクさんのように公務員試験を目標とする就職準備生を公試生、または公試族と呼ぶ。統計庁の調査によると、韓国の就職準備生の40%が公試生という。韓国の公民試験は、9級、7級、5級に分かれるが、ほとんどの就職準備生が狙うのは9級公務員試験だ。

 1級から9級まで分かれている韓国の公務員体系の中で、9級公務員は最も下のランクにあたる。しかし、一応9級に合格すれば、試験なしで4級、あるいは3級まで上がることができ、定年を迎える60歳まで雇用が保障される。

 

しかし、公務員の増員は、青年の失業問題の特効薬にはならなかった。むしろ文在寅政権が公務員の増員に本格的に乗り出した2017年下半期から、青年(15~29歳)の失業率は毎月最悪の数字を示している。2017年10月に8.6%だったのが、12月には9.2%、2018年2月には9.8%、4月には11.6%まで跳ね上がった。多くの青年が就活を放棄し、何年も公務員試験にしがみつくようになったからだ

 人口5000万の韓国で、現在、公務員は102万人、文在寅の公約が実行されれば、任期が終わる2022年には120万人に上ることになる。人口の減少や高齢化が急速に進み、生産人口が減少する中、税金が充てられる公務員ばかりが増えている。しかも、膨大な政府予算が投入されても、就職環境は悪化するばかりなのだ。

 

公試生の聖地、鷺梁津

・以後、90年代に入って大峙洞を中心とした江南地域に子供たちの入試塾が集まる中、鷺梁津は公務員試験や各種国家資格試験を準備する成人向けの塾街として君臨してきた。特に地方から上京した学生たちは塾が密集している鷺梁津に住むようになり、鷺梁津は学習塾街を中心とした「考試の町」として栄えている。

 

・パクさんは、塾の授業時間を除いたほとんどの時間を「読書室」で過ごしている。平日はもちろん、週末も、朝の7時に読書室に「出勤」し、夜12時に「退勤」するパターンを繰り返す。歩いて3分の距離にある読書室は、大手学習塾が経営するフランチャイズ読書室で、利用者たちのスケジュールを厳格に管理してくれるために、「管理型読書室」と呼ばれる。

 

公試生の70%が自殺症候群

OECD加盟国のうち、青年の自殺率が最も高い韓国社会。厳しい就職市場による絶望感が、その背景に潜んでいることは間違いない。

 

賃金の両極化

文在寅政権は中小企業と大企業の賃金格差が、若者に中小企業への就職を躊躇わせる要因と判断、中小企業に就職した若者には最初の3年間、3000万 ウォンの政府補助金を支給する政策を実施している。毎年1000万 ウォンずつ支援して、大企業との賃金格差を解消しようという狙いだ。しかし、この政策に対する若者の反応は予想以上に冷ややかだ。前出の大企業を目指して就活2年目のチェ・シンさんは、政府は問題の本質を見誤っていると話す。

3年が過ぎたら、また賃金格差が生じるのですから、支援金目当てで中小企業に入ろうとする人はいないはずです。むしろ、3年という時間を無駄にすることになると思うんです。大企業から中小企業に転職する人はいても、中小企業から大企業に転職できる人はほとんどいません。韓国社会はどの職場に就くかによって、その人の序列が決まるんです。大企業に入らなければ、一生、庶民のまま生きなければなりません

 

N放世代と人口の崖

・韓国の青年世代を指す流行語に、「N放世代」という自嘲的な言葉がある。「すべて」を表す不定数の「N」に、「あきらめる」という韓国語の頭文字である「放」を合成した「N放世代」は、厳しい経済状況のため、すべてをあきらめて生きる世代という意味だ

 恋愛、結婚、出産をあきらめる「三放世代」という造語が誕生したのが2011年で、その後、青年失業率の増加と非正規労働者の増加がマスコミで大々的に報じられるようになった2015年頃から流行語として盛んに使われるようになった。

 

・2006年、著名な人口専門家であるオックスフォード大学のデイビット・コールマン氏は、少子・高齢化によって地球上から消える危険国家の第1号として韓国を指名した。また韓国国会立法調査処は2014年、韓国の人口は2100年には2000万人に減少し、2750年には地球上から消滅すると予測した。

 

ヘル朝鮮とスプーン階級論

・人生で最も大事なことを次々とあきらめなければならない祖国を、韓国の若者たちは「ヘル朝鮮」と呼ぶ。地獄(HHELL)のように生き辛い国という意味だ。韓国ではなく、あえて朝鮮と言う言葉を使用することにより、14世紀から20世紀初めまで朝鮮半島を支配した李氏王朝のような、階級や差別が存在する前近代的で非合理的な国という意味も含んでいる

 ヘル朝鮮を叫ぶ韓国の若者たちが作った新しい理論に「スプーン階級論」がある。「スプーン階級論」によれば、韓国は表向き身分の差別がなく階層間の移動が自由な社会だが、実際には生まれた環境によって階級が決まる前近代的な社会だという。

 

職場でも家庭でも崖っぷちの中年世代

襲いかかるリストラの恐怖

犬になった中年男

・中小企業で次長を務めるファン・ソンミンさん(47歳)は、自分を典型的な中年とは思っていなかった。しかし、ある日、女性社員たちが、こっそり自分のことを「ゲジョン」と呼んでいるのを聞いて愕然としてしまった。

「ゲジョン」とは、犬(ゲ)とおじさん(アジョン)の合成語で、「品の悪い中年男性」に対して、若い世代が軽蔑を込めて使う流行語だ。

 

中年男性に対する青年世代の反撃

・韓国で「犬」という言葉は、相手を蔑む接頭辞としてよく使われる。ひどく汚れた席のことを「犬場(ゲパン)」といい、人をけなす時は「犬のような〇〇」「犬以下の〇〇」と言ったりする。人類最高のペットである犬が、なぜ韓国でこれほど冷遇されるのかという議論はさておき、犬をおじさんと合体させた「ゲジョン」という造語の誕生は、韓国の中年男性に大きな衝撃を与えた。

 

ルックスも競争力――美容に没頭する中年男性

・Kポップに続いてKビューティーが、韓流の新しい流れとして注目を集める中、韓国男性の美容ブームは、従来の「グルーミング族」からさらに進化して、「グルダブター族」を登場させた。

「グルーミング族」が美容やファッションに惜しみなく投資する男たちを指す造語だとすれば、グルダプター族」はグルーミングとアーリーアダプターを合成した言葉で、美容のためなら化粧品はもちろん、整形手術も躊躇わない男たちを指す新語だ。

 大手IT会社の役員を務めるキム・ギョンジュンさん(仮名・57歳)は、「グルーミング族」とはかけ離れた人物だった。顔が割れるように寒くて乾燥した冬でも、一度もローションを塗ったことがなかった彼が、数年前から百八十度変身し、若々しく見られるためなら整形手術も厭わない「美容男」になった。それは40代前半の若い御曹司が会長の座に就いたことがきっかけだった。

 

・キムさんは、「私たちのようなサラリーマンにとって、老けて見えるというのは、ポストを明け渡す時が来たことを意味します。今後は肌の手入れを怠らず、せっかく若々しくなった顔をできるだけ維持したいと思っています」と話してくれた。

 

49開花、54落花

・企業情報分析会社の「韓国CXO研究所」は、2018年、韓国の売上高上位の10大企業の退職役員を対象に、役員たちの平均年齢と勤務年数などを全数調査して発表した。これによると、韓国の10大企業で、初めて役員に抜擢される平均年齢は49.6歳、役員から退いた平均年齢は54.2歳だった。

 

この調査結果を「49開花(49歳で役員に抜擢)、54落花(54歳で役員退職)、花2絶頂(役員在職期間は2年)」と表現する。

 

・「法的な定年は60歳だが、実際に企業内部で体感する退職年齢は、50代前半とはるかに低いのが現状です」

 大手企業の役員だけではない。大多数のサラリーマンにとって、中年退職は極めて深刻な問題だ。

「2015年、ソウル市が50~64歳のソウル市民1000人を対象に実施した「ソウル市の50+(プラス)世代の人生二毛作の実態と欲求調査」によると、ソウルに住む男性の退職年齢は平均53歳、女性は平均48歳だった。しかも、退職後の再就職率は53.3%にとどまる。平均寿命が82.6歳の韓国で、50代前半で会社から追い出され、再就職の道も半ばふさがれているのだ。

 

・就職サイトの「インクルート」が2018年に行ったアンケートによると、40代と50代の91%が、「中年失業率の増加を実感している」と答えた。その理由としては、「再就職を準備する40~50代が増えた」「退職する40~50代が増えた」「起業を準備する40~50代が増えた」が挙げられている。

 現在、韓国の経済状況は「IMF危機以来最悪」とも評価されている。最も深刻なのが青年の失業問題で、韓国統計庁によると、2019年4月現在、韓国全体の失業率は4.4%、青年失業率は11.5%と、どちらもIMF危機以来、最高水準だ。ここに、社会と家庭の中枢を担う中年の失業率も高まり、大きな社会問題となっている。

 韓国の中年男性にとって、退職は死刑宣告と同じだ。若い頃には、良い待遇を求めてあちこち転職することも可能だが、40代半ばになると、いくら実力のあるサラリーマンでも転職はほぼ不可能になる。迫りくるリストラの恐怖の中で、どうにか生き残れるよう踏ん張るしかないのだ。

 

<中年のサラデント>

・職級破壊、序列破壊が進行中の韓国企業では、もはや年齢や経歴だけでは昇進できない。むしろ、年齢が高ければ高いほど、昇進するには多くの努力が必要だ。

 

IMF危機を経験した韓国の中年世代は、「実力こそが武器」という考えが頭に深く刻まれているため、危機感から自己啓発にのめり込むケースが多い。「サラデント(salaryman + student)」という言葉が登場したのも、IMF危機以後だ。会社に通う傍ら、学生のように勉強する人々を称した造語である。

 

退職後の資格取得ブーム

・中年男性たちの自己啓発は、業務に関係のない分野にまで広がっている。いつ首になるか分からない不安の中で、退職後を見据えていろんな資格取得に励んでいるのだ。

 

しかし、現実はそう甘くない。いざ、資格を取っても、就職できない場合がほとんどだ。中年層は年齢制限や経歴制限によって就職市場でそっぽを向かれてしまう。最近のように青年層でも良い就職先が見つからない中で、経歴もなく資格だけで再就職に挑む中年の姿は無謀にも見える。

 

中年の考試、公認仲介士試験

・就職を求めて若者が殺到する公務員試験や教師任用試験を「青年考試」とすれば、「中年の考試」と呼ばれるほど、中年層が押し寄せるのが「公認仲介士」試験だ。

 公認仲介士とは、主に不動産を取り扱う不動産仲介士を指す。日本でいえば、宅地建物取引主任にあたる

 

・しかし、不動産業界の展望はそれほど明るくない。韓国公認仲介士協会によると、2017年時点で資格保有者は40万6072人に達しており、さらに毎年2万人以上が増えている。

 

起―承―転―チキン

・チキンは韓国が世界に誇る「Kフード」の代表的な食べ物であり、韓国人のソウルフードとも言われる。「チキン共和国」という言葉があるほどで、多様な料理法のある韓国のチキン店は、2019年2月時点で、全国に8万7000店あまりが営業中だ。マドナルドの店舗が全世界で約3万7000店なので、その約2.4倍である。

 韓国にこれほどチキン店がある理由は、退職した中年男性にとって最も取っつきやすい仕事が、フランチャイズチキン店の経営だからだ。材料や調理マニュアルはすべて本部が提供し、インテリア業者まで紹介してくれる。売り場のスぺ―スを確保し、フランチャイズ費用さえ払えば、誰でもオープンできるようになっているのだ。少なければ5000万 ウォンからでも開業が可能だという。

 韓国男性の人生を指して、「起―承―転―チキン」という流行語がある。

学歴が高卒であれ、名門大学出身であれ、会社が中小企業でもサムスン電子でも、結局はチキン店が人生の終着駅という意味だ。

 「自営業分析報告書」によると、韓国では、2014年から2018年までの4年間、平均で毎年約6800のチキン店が開業し、約8600のチキン店が廃業している。まさにチキンゲームである。

 

自営業者も崖っぷち

・2019年9月、企画財務部が国会に提出した「最近5年間のOECD加盟国の自営業者比率」という資料によれば、韓国の勤労者全体のうち、自営業者が占める割合は2018年時点で25.1%で、OECD平均の15.3%より約10%も高く、米国(6.3%)の約4倍、日本(10.3%)の約2倍も高かった。

 

・専門家は、硬直した労働市場にその原因があると分析する。労働市場が柔軟で再就職が容易にできる国に、自営業者は多くない。一方、労働市場の柔軟性が低く、一度仕事を辞めると再就職が難しい国は、自営業者の比率が高くなる。韓国は後者に近い構造だ。

 

・そして、文在寅政権が推進している労働政策が、自営業者をさらに窮地に追い込んでいる。文在寅政権の2年間で、最低賃金は約30%も引き上げられたが、実はその直撃を受けているのが自営業者なのだ。

 

いくつになっても引退できない老人たち

居場所をさがす高齢者たち

IT先進国で取り残された高齢者

・高速インターネット回線の普及率やスマートフォンの普及率で、世界トップを誇るIT先進国の韓国では、生活全般でデジタル化や無人化が進んでいる。そのため、スマートフォンやパソコンなどの情報機器に慣れていないお年寄りは、「差別」と感じられるほどの大きな不便を強いられている。

 

高齢化社会のデジタル格差

・金融サービスがオフラインからオンラインへ急速に変化する中、インターネットが苦手なお年寄りはサービスの死角に置かれてしまった。今や銀行の手数料には「年寄り手数料」というニックネームが付けられている。

 

老人たちの天国「タプコル公園」

・しかし、今や、タプコル公園は、行く場所のない高齢者たちが集まる老人公園として認識されている。ここに来た老人たちは、将棋を指したり、数人で政治や社会などについて話すこともあるが、ベンチに座って孤独に過ごす人がほとんどだ。

 ここに老人が集まる理由は、アクセスが良いからだ。

 

・食事代2000 ウォンも持っていない高齢者のための、無料給食所も何ヵ所か運営されている。付近で最も長く運営されている「社会福祉元閣」は、約27年間、1週間に3日、年寄りのための無料給食を実施している

 

ユーチューブと太極旗

・ユーチューブは、韓国のシニア層から最も愛されているSNSだ。スマートフォン・アプリケーション分析会社である「ワイズマップ」の調査によると、韓国人が最も長時間利用するアプリはユーチューブだった。その中でも、韓国の50代以上は1ヵ月に20時間6分もユーチューブを視聴する。

 

「敬老社会」から「嫌老社会」へ

仕事にしがみつく高齢者たち

・韓国交通安全公団の資料によると、パクさんのような65歳以上の個人タクシー運転手は全国で5万9000人余りで、全体の37%を占める。

 

平均引退年齢73歳――世界で一番長く働く韓国老人

・韓国の高齢者は、世界で一番長く働いている。OECDの最近の資料によると、韓国人が労働市場から完全に離れる「引退年齢」は、2017年時点で男性が72.9歳、女性が73.1歳。これは、OECDに加盟している36ヵ国のうち最も遅い。OECDの平均が男性65.3歳、女性63.6歳だから、その凄さがよく分かる。

 韓国人が会社を退職する平均年齢は50代前半だから、平均的な韓国人は退職後20年も、劣悪な環境の中でいつ首になるか分からない非正規職として働いていることになる

 

OECDで最も高い老人貧困率46%

公的年金制度が成熟していない韓国では、2015年時点で、老人の貧困率が45.7%と、OECD平均の12.6%より3.6倍も高くなっている。

 高齢者の自殺率も、OECD加盟36ヵ国のうち、韓国が断トツだ。統計によると、韓国の65歳以上の高齢者の自殺率は、10万人あたり54.8人に達する。

 経済成長や社会の民主化、そして子供世代のために身を粉にして働いてきた韓国の老人たちは、今、世界で最も不幸な人生を生きているのかもしれない。

 

世代葛藤が招く「嫌老社会」

・韓国の高齢者を苦しめているのは、経済的な問題だけではない。韓国社会全体からの老人への否定的な視線が、高齢者を追い詰めている。

 社会福祉のシステムがきちんと整わない状態で高齢化が進み、経済成長の鈍化に伴って若年層の負担が顕著に増大、これが老人に対する「嫌悪」として表れている。

 

・専門家らは、韓国社会の「老人嫌悪」現象について、政府が近い将来「老人大国」となる韓国の未来像を、あまりにも否定的に見ていることが原因の一つではないかと分析する。「2057年には、国民年金が枯渇する」「2060年からは、1人の若者が数人の老人を扶養しなければならない」といった暗鬱な展望が、かつて東方礼儀之国と呼ばれ、老人を敬う「敬老社会」だった韓国を、「嫌老社会」に変えてしまったのだ。

                                                              

分断を深める韓国社会

文在寅政権の誕生と韓国社会の大転換

文在寅大統領は、朴槿恵前大統領とは、まさに「対極の人」である。出生からして、朴前大統領が、大統領の娘という「金のスプーン」であるのに対して、文在寅大統領は、朝鮮戦争北朝鮮から避難してきた「失郷民」と呼ばれる貧困家庭の出身だ。

 

所得主導政策の失敗

文在寅政権は、韓国経済の低成長と社会の二極化の問題を同時に解決するため、経済パラダイムの転換を図った。つまり、金大中政権以来の新自由主義から脱却し、積極財政による「大きな政府」を作ることで、分配と成長を並行して実現しようとしたのである。

 具体的には、「所得主導成長」「革新成長」「公正経済」という3つの方向性を示した

 まず「所得主導成長」とは、低所得者層の所得が増えれば、消費がつながり、これが企業の生産、投資、雇用拡大をもたらし、ひいては経済全体が成長する好循環が生まれるという理論だ。

 

この所得主導成長は、李明博政権が行った「落水効果」とは正反対の考え方で、「噴水効果」とも言われている。「落水効果」とは、大手企業や富裕層の所得が増大すれば、より多くの投資が行われて景気浮揚につながり、経済全体が活性化する。その恩恵が、水が上から下に落ちるように、低所得者層にも流れて、雇用と所得が増え、二極化も解消されるという経済理論だ。日本のアベノミクスも、この考え方に近い

 

それに対して、文在寅大統領が目指したのは、噴水を噴き上げるように、まず低所得者層の所得を押し上げることによって、景気を活性化させようということだった。

 具体的な方法としては、まず、公共部門で非正規労働者ゼロを目指した。民間の非正規社員に関しても、縮小させる政策を取り、非正規職を正規職に転換させることで、非正規雇用者の割合を現在の20.6%からOECD平均の11%台まで引き下げようとしている。

 また、政権の任期である5年以内に公務員を17万人増員、公共機関で81万人雇用を増やすなど、若者の雇用創出に政府が先頭に立っていく姿勢を見せた。さらに、最低賃金を時給1万 ウォンに引き上げ、労働時間を週52時間に制限するなど労働環境改善策も推進している

 

しかし、政権発足から2年が経った時点で、早々と、文在寅政権の未熟な経済政策が、むしろ韓国経済を悪化させたという批判に直面している。何より、2020年までに最低賃金を1万ウォンにするという公約を守るため、2年間で3割近く最低賃金を引き上げたことが、韓国経済の命取りになりつつある。

 まず、自営業者が急激な最低賃金引き上げの影響を受け、廃業するケースが続出している。また、多くの韓国企業は、恒常的に外国企業との激しい競争にさらされており、一方で、最低賃金の引き上げと週52時間労働制の施行により人件費が上昇。この内憂外患によって、首が回らない状態になってしまった。そのため海外に生産拠点を移したり、甚だしいところでは本社を海外に移転させるという「エスケープ・コリア」現象まで起きた。

 当初、文在寅政権が意図した雇用増加とは正反対の方向に事態は動いてしまい、若者の就職難はさらに悪化している。

 

・文大統領が舵を取っている「韓国号」は、彼の就任演説のような統合と共存の道ではなく、摩擦と分裂の道に進んでいるように見える。2年以上も続いている文政権の積弊清算は、韓国の国民をイデオロギー論争と地域・世代・階層間の激しい対立に追い込んだ。

 行き過ぎた資本主義と、そこからの揺り戻し。政治に翻弄され続ける韓国社会は、今や、難破船のように針路を見失っている

 

<留学>

・私が上智大学新聞学科に留学したのは、1993年のことだ。

 当時、韓国では日本文化が、「全面禁止」されていたが、若者の間でひそかなブームになっていた。私が日本への留学を決めたのも、日本の文化に対する憧れがあった。

 

一方、日本に来て私がいちばん驚いたのは、日本人が隣国である韓国についてあまりにも知らないという事実だった。

 

・あれから26年が経った現在、韓国、日本ともに、お互いの国に対する関心は、これまでになく高まっていると感じる。しかし、その関心はネガティブな方向にぶれている。

 韓国に対して無関心だった日本人は、反日政策を掲げ、北朝鮮との同胞意識を強調する文在寅政権に対して危機感を感じており、それが「嫌韓」という感情で表れている。

 韓国でも文在寅政権になって以降、歴史問題や領土問題など両国の懸案が一気にクローズアップされるようになり、さらに旭日旗問題やホワイト国除外など新しい摩擦も生じ、「反日」感情が最高潮に達している。

 そんな中、私がいま思うのは、国が内部からヒビ割れている現状を韓国人が認識し、それを克服するため、同じ資本主義の民主国家である隣国=日本との関係を、いち早く修復してほしいということだ。

 

 

 

『日本人のためのイスラエル入門』

大隅洋  ちくま新書    2020/3/6

    

 

 

スタートアップ企業の急増

イスラエルは「わが世の春」を謳歌していた。混迷するアラブ諸国とは対照的に、この一世紀超にわたりゼロから自分たちで作り上げた経済・社会は大地に力強く根を張っている。「スタートアップ・ネーション」として頭角を現し、小国ながら最先端技術の大国としての地位を確立してきている。

 

・近年、スタートアップ企業の急増等により世界から熱い視線を浴びるイスラエルは、建国後わずか70年で最先端技術大国の地位を確立した。古代から続くユダヤの伝統を大切にしながら、なぜ彼らはイノベーションを起こし続けられるのか? 高出生率、家族中心の伝統、常識を打破する反骨心、市民社会と軍隊の関係、徹底した安全保障意識と自存自衛の精神………。少子化や経済・社会の不安に喘ぐ日本の未来を考えるヒントとして、現役外交官がイスラエルを縦横無尽に語り尽くす!

 

・このような状況にある日本の視点からイスラエルを見ると、①高い出生率と家庭中心の社会、②伝統を大切にしてそれを中心として回る社会、③「常識」を打破する精神がもたらすイノベーション、④市民社会と軍隊との関係、⑤徹底した安全保障意識と自存自衛の精神など、参考にできることがある国であり社会であると思う。

 そして、日本がイスラエルと付き合う必要性はこれまでになく増している。もちろん歴史や背景も違うので、単純に移植できるものはほとんどない。しかし、現代の我々の考えるヒント、行動するヒントとして、イスラエルが提示してくれるものは色々ある。

 

・なお、イスラエルという国は、ユダヤ人のみの単一民族国家ではなく、多数派のユダヤ系と少数派のアラブ系で構成されている。したがって、単純にイスラエルユダヤとは言えないが、ユダヤ教及びユダヤ民族の伝統や文化が社会の運営に色濃く反映されていることも確かである。

 一方で、ヨルダン川西岸及びガザ地区にはパレスチナ人(アラブ人)が住んでおり、そこには全く違う現実がある。

 

岐路に立つ日本

革新のきっかけ

・母国を誇ることができる民は幸せである。日本人は、そのような思いを持てる幸せな民族である。しかしそれは努力なしには続かず、自分たちについての客観的な認識と能動的な革新の姿勢が必要だと思う。そのためのきっかけを何に求めるか。

宜しく歴代の史書を読むべし」佐藤一斎『言志四録』)のとおり歴史からの学びは一つのきっかけとなり得る。そして同時代に生きる他国の文化や民族の生き方を参照するというのもまた、そのきっかけになると思う。もちろん、生きてきた背景や取り巻く環境が違う中から生起してきたものを盲目的に日本に移植するというのは不可能であり、また、すべきことでもない。しかし、批判精神と自律的態度をもって参考にすれば、おのずから得られるものはあろう。

 

イスラエルに関心を持つべき五つの理由

①  高い出生率と家庭中心の社会

イスラエルにいると、子供の姿をよく見かける。街に出てエレベーターに乗る時などに家族連れに出くわすと、だいたい三人は子供がいる。実際、イスラエル出生率世界銀行統計(2017年)によれば3.11であり、「先進国クラブ」と称されるOECDの中で最高である。

 

・1948年に独立した時は約80万人だった人口は現在900万人を超え、2065年には2000万人を超えるとイスラエルでは予測されている。

 

・そして、この社会では家族がその中心にいる。ユダヤ教の伝統にしたがって安息日金曜日日没から土曜日日没まで)の金曜日の夜には祖父母から孫の世代まで、親戚と食事を共にする習慣が現在も生きている。親戚だけでなく恋人や友人なども集う。これは、キリスト教国での日曜日より徹底しており、店やレストランが閉まるだけでなく、鉄道やバスなどの公共交通機関も基本的には動かなくなる。ヘブライ語聖典旧約聖書)あるいはタルムード(口伝的解答を集大成した宗教的典範)などから一節が朗読され、皆でお祈りをしてから食事をする。

なお、ユダヤ教は「新約」あるいは「新約聖書」を認めず、自分たちのヘブライ語聖典を「旧約聖書」とは言わないが、右聖典のうち、特にトーラーあるいは律法と言われる創世記、出エジプト記などのいわゆる「モーセ五書」が重要であり、その中には613の遵守されるべき戒律がある。一方、「タルムード」は、トーラーの法規的解釈や物語伝承が口頭で伝えられてきたものを集大成したミシュナ、およびミシュナについての議論を集大成したゲバラの二つの部分により成り立ち、6世紀までに編集されている。

これに対し、日本の社会は少子高齢化の真っ最中である。厚生労働省の統計によれば、2018年の日本の出生率は1.42で、人口が2007年に減少に転じて以来この方、その継続的減少は日本社会にボディブローのように「効いて」きている。小学校は統廃合を繰り返し、企業は海外市場に重点を移さざるを得ない。

 

・「日本の安全保障の最大の脅威は中国ではなく人口減少だ。これは移民では解決できない問題で、少子化問題を乗り越えるための国民運動を起こすべきなのに、社会に危機感が見られない」

 

・「日本はパチンコに金を使っている場合ではなく子供につぎ込むべきであり、国家戦略として「若返り」を目指すべきである」

 

ちなみにイスラエルでは不妊治療は無料である。日本に帰ってくると、日本社会は子供中心に回っていないと感じる。

 

経済的利益が最優先であって、コンビニの営業時間短縮の議論ももっぱら経済的理由からのものであり、家庭や社会が弱体化していくのは良いことなのだろうという観点からの議論はあまりないように思う。それでいて一人当たりGDPはイスラエルに抜かれている。

 

②  伝統を中心として回る社会

イスラエルで生活すると、宗教(ユダヤ教)に基づいた祝祭日がカレンダーを支配しているところを目の当たりにする。毎週、金曜日日没から土曜日日没の安息日には、公共交通機関は基本的にストップするので、鉄道駅やバス停は金曜日の夕方には、便がなくなる前に家にたどりつこうとする人たちでごった返す。

それに加え、一年の暦の中で節々の祭りの際には親戚家族が集まって盛大に祝い、食事を共に過ごす回数が多い。中でも過越祭、シャブオット、仮庵祭の三大祭りはいずれも、モーセに率いられたユダヤ民族のエジプト脱出という「歴史的事件」にちなんだものであり、食事の際には「出エジプト」の関連部分が聖書から読誦される。

過越祭は、神がエジプトに対して「初子をすべて殺す」という災いをもたらした際に、ユダヤの民の家の戸口に印をつけたことで神の怒りが「過ぎ越し」、その後集団でエジプトを脱出することができたことを祝う祭りである。エジプト王の追跡を受けた民はパンに酵母を混ぜて膨らませる時間がなかったということに因み、この時期、店頭からはパンを含む酵母を用いた製品(ビールも含む)が一斉に消える。

 

③  「常識」を打破する精神

・「フツバ」というヘブライ語を持ち出せば、その場にいるイスラエルから失笑とも苦笑ともいわれぬ笑いが起きる。イスラエル人(ユダヤ人)の気質をよく示す単語だという。だいたいにおいて「傲慢不遜な態度」という意味だが、その言葉には日本語のようなネガティブなイメージはない。常識をものともせず、人を人と思わず、権威に食ってかかるこの態度がイスラエルイノベーションの背景にある。

一方日本は、イノベーションの時代に遅れをとっていると言わないが先頭走者ではない。

 

④  市民社会と軍隊の関係

イスラエルは、アラブ系市民と超正統派を除き国民皆兵であり、兵役は男性で3年弱、女性で2年弱である。街中にはカーキ色の軍服に身を包んだ若者がいつも歩いている。

 

古代ローマにおいて、男性市民は兵役を担い、時には戦争に従事し、市民社会を守っていた。古代ローマ帝国落日の最大の原因の一つは、ローマ人自身が犠牲を払わなくなり、傭兵に国の防衛を依存したからである。帝国末期にかけては傭兵出身の皇帝さえ出現する。市民社会は誰かが守る必要があり、イスラエルは、その置かれた地域状況から、男女皆兵によりその市民社会を守っているわけである西部邁は、「今の日本人は、シチズンが「国家から保護してもらうことの引き換えで国家への義務を引き受ける人々」を意味することをすら忘れてしまっている」と批判する。

 

⑤  徹底した安全保障意識と自存自衛の精神

ムハンマドアラビア半島に出現してこの方、十字軍の時代のキリスト教勢力が散発的に勢力を盛り返した時期をのぞき、ユーラシアとアフリカの結節点にあるこの地はだいたいにおいて、アラビア語イスラム教が圧倒する土地になった。その中で、2000年間存在しなかったユダヤ人主導の国家として誕生したイスラエルは、四方を敵に囲まれていたために、徹底した安全保障意識を持たざるを得なかった。

 

・しかしむしろ、反ユダヤ主義震源地は歴史的には欧州キリスト教世界であり、ユダヤ教徒たちはキリスト教徒から、主イエスを殺した原罪を背負う民族として、常に懐疑と嫌悪の対象とされてきたのである。

かたや中東は民族が複雑に入り組んで存在しており、なおかつイスラエルにおけるイスラムドゥルーズ派のように、イスラエル国家に参画して軍役にも服する集団もいて、単純明快な図はない。また、イスラム教自体がユダヤ教徒を、キリスト教徒やゾロアスター教徒とともに「啓展の民」として社会的存在として認めており、反ユダヤ主義の根はそれほど深くないといえよう。