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中国では都市住民と農村住民とのあいだに、所得格差どころか身分差と言えるほど大きな格差が存在する。中国が次の覇権国家?ご冗談でしょう。(1)

 

(2021/11/25)

 

 

 

『米中「利権超大国」の崩壊』

アメリカに中国を切って生き延びる道はあるのか

増田悦佐   ビジネス社   2021/6/23

 

 

 

中国が次の覇権国家?ご冗談でしょう

・利権集団の弱い日本には、とんでもない大富豪はめったにない。国民の大部分がそこそこにカネを持っていて、多少なりとも自分の趣味に合った生き方ができる。消費の多様性が経済発展を牽引する状態をつくり出しやすい。利権集団の力が強い国では、なかなかそうはいかない。

 米中利権大国が共倒れしたあと、日本は世界のどんな貢献ができるだろうか。

 

中国経済をめぐる謎

中国経済をめぐる謎は、なぜあれほど大きな対外純資産を持っている国が、対外金融所得収支では赤字なのかという一点に収斂する。私なりの考えがおよぶかぎりでいちばん論理的な整合性の高い答えは出せたと思う。

 つまり中国共産党一党独裁体制維持のために国有企業群を始めとするさまざまな利権集団の助けを借りている。そして国民がおこなった貯蓄の大部分を、国有企業群への利権分配で使ってしまう。だから民間企業の成長のための原資は、アメリカに無利子で貸しておいたカネを、アメリカに高い金利・配当を払って借り戻している。

 

・少なくとも中国と同じ程度に贈収賄がはびこっているアメリカ政治の現状を取り上げた。なぜか日本ではめったに論ずる人がいないが、アメリカは贈収賄が合法的な政治活動と認められている数少ない国のひとつだ。ひょっとして唯一なのだろうか。その影響は政財界にとどまらない。

 

・中国農村の闇に少しでも近づく努力をしてみた。都市戸籍を持って生まれ育ち、都会暮らしをしている中国人にとっても、まったく同じ時代に同じ国で生きている人たちという実感が持てないほど異なる環境で生きているのではないか。

 

中国の金融業界が今後6~7年間のうちに大激震に見舞われないはずはないと思う。だが、もし金融破綻の連鎖などが起きなかったとしても、農村で頻発する「群体性事件」が現政権を衰弱させる可能性は高いだろう。あるいは都市に居住する民工の暴動が起きるかもしれない。

 

・中国もアメリカも利権社会であると同時に大変な格差社会だと論じた。とくにアメリカの都市間の所得格差は、国民が居住地を自由に選ぶ権利を持っている国としては、異常に大きい。

 

中国が次の覇権国家?ご冗談でしょう

GDPが世界最大になれば、世界一豊かな国と言えるのか

・早ければ2030年ごろ、遅くとも2035年までには中国の国内総生産(GDP)が、アメリカを上回って世界最大になるという。これで世界経済の覇権がアメリカから中国に移ると主張する人さえいる。

 ほんとうにそんなことになるのだろうか。まず、この予測は「中国政府が発表している公式統計を信じれば」という大きな前提条件が付く。だが中国政府の公式統計はあまりにもずさんで、信用できないと考える研究者のほうが多数派だ。

 

・「中国については、毎年GDP成長率が約2パーセンテージポイントずつ過大評価され、現在のGDPは約12%実勢より大きく表示されている

 この推定を受け入れれば、中国のGDPがアメリカを追い抜くのは10年や15年先ではありえず、もっと遠い将来の話となる。

 

・中国の人口はアメリカの5倍に近い。だからGDP総額がアメリカより大きくなっても1人当たりで見れば20%を超える程度に過ぎない。具体的に言えば、2020年の段階でアメリカのGDPは約21兆ドルに対して、中国のGDPは約14兆7000ドルだった。しかし、それぞれ人口で割って1人当たりにすれば約6万3000ドル対約1万ドルという大きな差になる。

 

・波乱万丈となりそうな今後15年間を年率5%の実質成長率で駆け抜けるというのは、そうとう楽観的な予測だ。それでも中国は、いわゆる先進国にはとうてい及ばない生活水準にとどまるわけだ。

 

都市住民対農村住民のすさまじい格差

中国では都市住民と農村住民とのあいだに、所得格差どころか身分差と言えるほど大きな格差が存在する。中国では「農民」という単語にはふたつの意味がある。ひとつは農業従事者ということで、これは日本語の農民と同じだ。もうひとつは農村住民ということだ。どんな職業に就いていても、農村に住んでいる人は全部農民ということになる。

 

・ところで中国では、現在でも農村から都市への人口移動を厳重に制限している。中国国家統計局のデータでも、2018年の時点で都市住民は農村住民の約2.7倍の可処分所得を得ていた。年収の低い人ほど所得税率も低くなっているはずなので、粗収入ベースで見れば農村住民は都市住民の3割程度の年収しか稼げていないだろう。

 

国民の4割にものぼる人たちを世界各国中で下から数えたほうがずっと早いほど貧しい境遇に放置しておいて世界覇権を握ろうとは、おこがましいのではないか。いや、放置しているどころではなく、この格差は政権を握った直後の中国共産党が意図的につくり出したものである可能性が高いのだ。

 

ここでは中国政府首脳は世界覇権を夢見るより、自分たちの政権を支える経済基盤がいかに脆弱かを心配したほうがいいとだけ、忠告しておこう。

 

巨額の経常黒字を出しながら経済発展は外資頼み

・何より重要な経済成長のための原資をどこから調達するかという点で、中国は独立国とは言えない。外資、しかも主として米国債購入というかたちでアメリカに貸したカネを、自国への投融資というかたちで「又貸し」してもらうことで資金循環をかろうじて成立させている。

 貸すときにはほぼ全額無利子で貸して、そのうちほんの一部を「又貸し」してもらうときに高い金利や配当を支払っている。

 

なぜ莫大な対外純資産国が金融赤字?

・中国はほとんど無利子で貸した莫大な金額の対外投融資のうち、ごく一部を高い金利・配当を支払いながら借り戻している。だから巨額の対外純資産を持ちながら、(金融)所得収支は赤字なのだ。

 謎はそこから始まる。なぜ中国は莫大な対外純資産を持ちながら、対外金融収支では金利・配当を受け取る側ではなく、金利・配当を支払う側に立つという愚行を何年もつづけているのだろうかこの問題を突き詰めていくと、国民の貯蓄の大半を利権として既得権益団体にばら撒いている、とんでもない利権大国の実態が浮かび上がってくる。

 

・しかし中国人民銀行の最優先課題は、国民経済をどう銀行業界に有利に導くかには置かれていない。中国共産党の私設銀行としては当然のことながら、中国共産党一党独裁をどう維持するかに置かれている

 

党員数たかだか8000万~9000万人の中国共産党が、今なお14億人の人民を支配している。この一党独裁体制の維持については、人民解放軍の武力や、中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』をはじめとする国有メディアの宣伝力も大いに貢献している。

 だが最大の力となっているのは、国有銀行・国有企業を通じて利権を分配するネットワークなのだ。利権は国有企業経営陣にとどまらず、従業員や系列企業、取引先にまで及んでいる。広範な受益者たちが「この利権を守るために一党独裁の存続が必要だ」と感じているからこそ、こんな体制が維持されてきたのだ。

 

営利団体として見れば、国有企業はとんでもなく非効率

・だからこそ国有企業の大部分は、総資産こそ大きいが収益は微々たるもの、あるいは万年赤字でも存続が許されている。こうした万年低収益で、たびたび赤字も出している国有企業には、経営基盤を安定させなければいけないなどという認識はまったくない。

 

それにしても総資産利益率がわずか2パーセントというのはふつうの国なら、銀行は怖くて融資をためらう水準だ。

 

その国有企業に融資が集中する

・というわけで中国の国有企業の大半は、借り入れなどをせずに自己資本だけで事業をやっていたほうが収益最大化という目的にかなう。これほど低水準の利益率で事業を展開しているのである。

 

・国有企業のほうが民間企業よりレバレッジが高いのは、収益最大化とは違う目的で動いているからだ。

 

・2006年以降になると、もっとひどい。国有企業への融資を増やし、民間企業への融資を減らすという、経済合理性とは正反対の行動をしている。理由としては、中国人民銀行が銀行業界全体に対して国有企業優先で融資しろと指導していることも大きい。

 

民間企業の成長のための原資をどうまかなうのか

・この利権分配システムが健在なかぎり、共産党一党独裁体制は安泰かもしれない。問題は、経済成長のための民間企業の投資をどうまかなうかだ。国有銀行が国民から預金として集めた資金を少しずつ好採算の民間企業優先の融資にシフトしていくという、一見順当な手段は使えない。銀行と国有企業のあいだに強固な贈収賄のネットワークが確立されているからだ。

 

中国製造業成長の資金源、ユーロダラーシステムは崩壊していた

・経済全体がサービス化し、製造業でもハードウェアよりソフトコンテンツが重要になった21世紀の世界経済では、投資のための待機資金は慢性的にたぶついている。その中で、まだまだ重厚長大型製造業での設備投資が活発な中国の民間企業は、ほぼ慢性的に資金需給がタイトで旺盛な資金需要を持っている。

 

・我々は、2007~08年の国際金融危機どん底は2008年の秋ごろだったと思いこみがちだ。だが国際金融市場の資金循環をどう維持するかという視点から見れば、クライマックスが起きたのは2007年8月という早い時期だった。このときユーロダラーシステムが崩壊した。

 その後も修復できていない。だからユーロダーシステムはひんぱんに目詰まりを起こし、2011年、2015年、2017年と米国債市場への資金逃避が起きている。そのたびに中国の工業生産高成長率は落ちこむ。それだけではなく、落ちこんだまま横ばいになるだけで、ユーロダラー出資金がショートするたびに、工業生産高の潜在成長性自体が下っているのだ。

 

・というわけで潤沢な待機資金を持っているはずの中国では、民間企業がドル建て債を発行して資金を募集したり、ドルによる直接投資を受け入れたりして、高い金利や配当を負担しながら、なんとか資金需要を満たしている。これなら中国内の銀行業界は関与できないので、利権集団に巻き上げられてしまうことはない。

 

巨大化した民間企業の総合金融業化は共産党独裁体制の危機

・巨額の対外債権を持っている中国が、巨額の対外債務を負っているアメリカにたいして、金利・配当のやり方を意味する(金融)所得収支では黒字(収入超過)ではなく赤字(支出超過)になるという資金循環が定着している。

 国内貯蓄は国有銀行網を通じて利権として分配する。民間企業の成長原資は、海外に滞留させておいた貿易黒字を預かっている海外金融業からドル建てのまま民間企業に投融資してもらうというかたちで、「投資」用資金が振り分けられているのだ。

 この振り分けは、中国共産党にとって一党独裁体制を維持しようとするかぎり、絶対に守らなくてはいけない一線となっている。

 

ワイロがすべて――東の利権超大国中国

中国経済が自由競争の市場経済ではあり得ない理由

・国有企業は、債務は銀行が債権放棄をしてくれたり、国が救済してくれたりして自然に消えるものだと思って、放漫経営をつづけている。民間企業は、過去に元利返済の負担をずっしり感ずるほど潤沢な資金を借り入れて経営していた経験があまりない。そういう企業ばかりが集っている国で、突然債務を急膨張させることができるようになってしまったのだ。

 どちらも、いざとなれば土地の転売益で債務を消せると考えて事業展開をしている。だが実際には、債務の重荷は確実に中国企業の経営を圧迫している。

 

中国は2011年に衰退期に入っていた

・中国政府・共産党はいくら拡大しても、実質GDP成長率が加速しないことに危機感を抱いているのは間違いない。

 

中国共産党一党独裁政権と、アメリカ金融業界の癒着の構造を、もう一度おさらいしておこう。

 中国は、アメリカにほぼ無利子で貸したカネの一部を高い金利・配当を支払って借り戻さなければ、自国の経済成長を支える民間企業の資金需要を満たせない。アメリカ金融業界は、中国というお得意様から金利・配当収入を得ていなければ、日本やヨーロッパの同類のように斜陽産業化してしまう。

 

全要素生産性が示唆する中国経済の暗い未来

・2020年の中国の実質GDP成長率が、公式発表どおりにプラスだったかどうかは怪しい。ただ見てきたとおりに国内金融政策もお粗末で国際金融でも資金の出し入れが下手な中国が、少なくとも2019年まではなんとか経済成長を維持できていた。

 先進諸国経済が軒並み製造業主導からサービス業主導に転換する中で、巨額の設備投資さえすれば、それなりの成長は見こめる製造業主導経済にしがみついていたからだ。

 しかし今後は中国でさえ製造業の成長鈍化、衰退に直面し、いやおうなくサービス主導経済に転換しなければならないのだ。

 

権力買えます――西の利権超大国アメリ

ロビイングを通じてわかるアメリカ政界地図

裁判官や検事が議員に献金したりして司法の独立が保てるのかと思うが、アメリカ的な発想は違う。ありとあらゆる産業・職能団体がロビイングをしているとき、行政府に属しているからとか、司法府に属しているからとかの理由でロビイング活動を禁じられる団体があったら、その団体だけが不利になる。だから彼らにも合法的に贈収賄をおこなう機会を与えるべきだというものだ。

 それでは共和党保守本流を支持しているのは、どんな産業分野だろうか。ご想像のとおり、不動産業界、石油・石炭・天然ガス業界、建築・土木業界といった、いかにもワイロやコネで甘い汁を吸う連中が多そうな業界となっている。

 

ロビイスト集団は、自分たちの飯のタネが争点のはっきりした議案だと知っている。思想傾向などどうでもいいが、補助金や助成措置が出るか出ないかで、有力産業、大手企業の業績にも差が出そうな議案について、賛成か反対かを鮮明に打ち出す議員にカネを渡したいわけだ

 

共産党政権産みの親、農民のみじめな境遇

毛沢東の『人民戦争論』では「農村から都市を包囲する」と主役を割り当てられているのに、共産党政権樹立後の農民の生活は惨めだった。1958年に農家世帯が一斉に人民公社として集団化され、大躍進運動が始まった。

 異常気象という不運にも見舞われたが、人民公社=大躍進時代には3000万人から5000万人と推定される餓死者が出た。異常気象もさることながら、急激な集団化による労働意欲の衰退も深刻だった。犠牲者の中に本来なら食料には困らないはずの農民が多かったことも、強制的な集団化の誤りを示唆している。

 文化大革命では都市在住の知識人が農村部に下放されて苦労させられた。そのころの農民たちは、精神的に都市の文化人、知識人に対して優位に立てたという満足感はあったかもしれない。だが経済的には、自分たちの食い扶持を稼ぐだけでも苦労が多かったのに農作業に不慣れな都市住民を押しつけられて、ますます生活が苦しくなった農民が多かった。

 

・農村では働き口のない農民が都市に出たとしよう。すでにお伝えしたように、いつまで都市に住んでいても短期滞在扱いしかしてもらえない。だから、きちんとした職業にも就けず、稼げる賃金給与も低いままということが多い。必然的に農村部に余剰労働力が滞留したままの状態がつづいている。その結果、都市住民の所得は農村住民の3倍というところまで格差が広がっている。

 

・もともと1農家当たりの農地も狭く、機械化のための資金も不足していたので、中国の農業生産は第2次世界大戦後もかなり大きく人力に依存した状態がつづいている。

 

・実際には都市部への流出に関する制約も大きかったので、なかなか農村部の過剰労働力は解消されず、いまだに農業機械の導入も遅れている。さらに肥料などの効果的な利用によって生産性を上げる努力は、教育水準の低さも桎梏となってなかなか進まない。

 

・日本の農村では江戸時代中期から、実用的な農学が広く浸透していた。たとえば、人糞堆肥は暗いところで十分バクテリア発酵させ、安全で匂いもほとんどなく、有効成分の濃度を上げたものを撒くといった知識は、ほとんど地域差もなく普及していた。

 ところが高橋五郎著『農民も土も水も悲惨な中国農業』(2009年)には「農民たちは無発酵のまま、いわば『ナマ』のままで畑にまくのが習慣で、それを最良の方法と信じて疑わないのである」と書いてある。こういう話題が出ると、すぐ中国人一般について「知的能力が低い」とか、「学習意欲が足りない」とか言いたがる人がいる。だが、それはまったく違う。中国の農村部では、いまだに学習の習慣を身につけることなく、働かなければならない人が多いのだ。

 

教育水準もなかなか上がらない

・中国では、義務教育の小中学校は完全に無償ということになっている。しかし農村部では、実際には満足に学校にも通えず、働き始めてからも読み書きができないので事務系の仕事はまったくできない人たちが大勢いる。

 

「義務教育が完全に無償の現代中国には、読み書きができない人間などいない。お前のほうがウソつきだ」などという建前論を振りかざしても、説得力がない。農村に読み書きのできない人が大勢いることは、周知の事実だからだ。

 なぜいまだに読み書きができない人が多いのか。上からは日常生活のありとあらゆる場面について、達成しなければならない基準を押しつけてくるが、そのための予算は出ない。

 

・地方の悪徳幹部は、むしろこうした予算配分のない「基準達成」指令を歓迎する。地域住民の懐に直接手を突っこむ口実になるからだ。

 

・こうして、存在しているはずの小中学校はじつは校舎がなくて授業ができないとか、協力金も払えない貧乏所帯の子どもは授業を受けられないとかの事態が出現する。これが改革開放路線の定着以来40年以上も経っている中国農村部の「義務」教育の実態なのだ。

 ふつう経済発展の進んでいる国では、就学率、識字率、平均寿命が1人当たりGDPの成長率を上回るペースで伸びるものだ。ところが中国はこの点で、異常に歩留まりが悪い。

 

・しかし農村部にはまだまだ読み書きができない人たちが残っているのに、総就学率も識字率もほとんど上がらなかった。そもそも1人当たりGDP自体が、農村部ではほとんど伸びていなかったということかもしれない。

 それにしても不思議なことがある。世界中どこの国を見ても、平均寿命はまだ人類はもうこれ以上長生きすることはできないという天井に達してしまったわけではない。しかも中国の平均寿命はトップグループの83~84歳にはほど遠い76.4歳だ。

 それなのに都市・農村ひっくるめて、1人当たりのGDPの上昇による平均寿命の伸び率があまりにも低い。農村部の貧しさに加えて、都市部、とくに工業地帯の公害のひどさも一因だろう。

 

都市戸籍保有者、農村住民の所得はどのくらい違うか?

都市戸籍を持つ都市住民が約6億3000万人、民工と呼ばれる農村戸籍のまま年に住んでいる人たちが約2億5000万人、そして農村戸籍を持って農村に住みつづけている人たちが約5億9000万人だ。この人たちのあいだでの所得格差はすさまじい。

 大ざっぱに言って、民工の年収は米ドルに換算して約8600ドルで、おそらく4300ドル程度に過ぎない農村居住者の2倍にはなっているはずだ。都市戸籍を持つ都市住民の年収は1万6400ドルで民工の約1.9倍、農村居住者の3.8倍ぐらいだろう。つまり経済面では、都市戸籍保有者が一級国民、民工が二級国民、農村居住者が三級国民となる

 

・だが政治社会的な権利という点では、何十年都市に住んでいても出稼ぎに来ているだけで居住地は農村ということになっている民工のほうが、農民よりさらに抑圧された立場にある。

 たとえば民工同士の夫婦に子どもができても、建前上は完全無償となっている小中学校の教育は、郷里の祖父母のもとに預けなければ受けられない。夫婦の居住する都市では正規の義務教育ではなく、施設も教師もお粗末な私塾に高い授業料を払って通わせなければならない。つまり政治社会的には、農村居住者が二級国民で、民工が三級国民ということになる。

 それでも農村戸籍保有者たちは都市に移住しようとする。

 

・農村では豊かな暮らしをするチャンスはかぎられているので都会に出ようとする。

 ただ中国の場合、もうひとつの大きな動機がある。それは、あまりおいしい利権が回ってこない貧しい村になるほど、権力を握った人間はそれでなくても貧しい村民たちから暴力的にカネとか農作物とか土地とかを巻き上げるからだ。しかも、たいていの場合、警察、検察などの公安当局は、完全なボスたちに取りこまれてしまっている。だから暴力的な収奪に抗議すると、抗議したほうが刑罰を受けることになる。

 

貧しい村ほどむき出しの暴力支配下に置かれる構図

・根本には、そもそも経済合理性のない利権分配組織を守ろうとすれば、末端に行くほど大勢の党官僚・地方政府官僚を配置しなければならないという事実がある。

 

・農民たちは自嘲してこう言う。「一人の農民に数十人の役人がぶら下がっている

 

・なお郷鎮とは、日本で言えば村に当たる行政単位のことで、陳桂棣は中国の行政組織は中央、省・自治区直轄市、市、県、郷鎮の5階層になっていると述べている。中央集権が徹底している中国では、地域は狭く人口も少ない市が県の上に立ち、県は市の指導を受けるという構造になっている。

 

・行政区画として公認されているか、いないかは本質的な問題ではない。それより重要なのは、経済活動にほとんど貢献していないのに地域の住民にたかる冗員の人数だろう。その典型である書記の人数という視点から言えば、郷鎮が4万人強なのに対して村(村民委員会)は約80万人と圧倒的に数が多い。書記と名のつく役職のあるところ、必ず利権ありだ。

 

群体性事件に希望の芽はあるか

都市戸籍を持って生まれついた人たちは、経済的にも政治社会的にも、一級国民だ。総数約6億人にのぼる彼らは、利権社会主義大国中国で人口ベースから見て最大の利権グループを形成していると言えるだろう。

 

中国でも時おり群体性事件と呼ばれるような社会騒擾が起きる。たいていは「いいご身分」の都市戸籍保有者たちが、こうした事件を起こす不穏分子の大半を占めている印象があった。

 

・結局のところ、中国社会の激動は、憤懣が鬱積しているはずの民工たちではなく、大国有企業の破綻に始まる連鎖破綻と、これまで優遇されてきた都市戸籍保有者の中で家計破綻に陥った人たちが惹き起こしそうな気がしていた。また家計破綻の萌芽は、大都市圏マンション価格の値上がり率鈍化にあらわれているとも見ていた。

 

現在、都市住民にとって最良最大の蓄財手段だったマンション投資の利回りが確実に低下している。中国の都市在住世帯は、一家で2~3戸の分譲マンションを買ってローンを払いながらマンションの値上がりを待ち、値上がり率の高い物件の売却益で住みつづける物件の残債を消すという行動様式を取ってきた。

 この方針をつづけていると、まだ家を持っていない世帯の数が減少するにつれて、複数のマンションにローンを払いつづけても、どの物件からも値上がり益が出ず、結局ローンが払いきれずに家計破綻に陥る世帯が激増する。

 

・そして中国の人口構成は、成人のうちに占めるひとりっ子政策時代に生まれた人たちの比率が高まるにつれて、夫婦どちらかの親からマンションを受け継ぐことができる世帯が増え、マンション新規購入需要が激減する局面に入っている。

 

・政府が崩さないと感じているからこそ、中国人の心理には土地神話が宿る。まさに土地の錬金術が、そのまま通用している世界だ。だが日本の地価バブル絶頂期にも「銀行業界がこれだけ貸しこんでしまって上がった地価だから、もう大蔵省は銀行破綻が怖くて地価を下げられない」などとまことしやかに言う人がいたのを思い出す。役人がどうあがこうと、下がるものは下がる。

 わからないのはタイミングだけだ。そのタイミングも、そろそろ5年とか10年ではなく、2~3年のうちにやってくるのではないか。

 

群体性事件についても、今までの主として都市住民が起こしているという見方は、間違っていたと感じる。膨大な数の群体性事件について、実情を調査した『中国農民調査』の対象となったのは、安徽省で起きた事件だけだ。GDPに占める比率はわずか2.7パーセント、人口も5950万人で総人口の4.5パーセントに過ぎない。

 その安徽1省で起きた事件が、A5判、2段組みでびっしり300ページに達しようというのだ。全省・自治区直轄市の群体性事件を網羅したら大変な数になるだろう。そして、その大半はメディアの眼が届かない農村部で起きていたのではないかという気がする。

 

アメリカにとって中国に勝るカモはいるか

利権集団としての国有企業群は、経済的にはとんでもない重荷だ。その重荷を背負った中国経済は間違いなく破綻する。それも1~2世代といった悠長な時間枠の中ではなく、短ければ今後5年以内に、長く見ても10年は保たずに崩壊するだろう。

 アメリカの金融業界はそのときまでに、中国に代わる丸々太っておいしいカモを見つけ出すことができるだろうか。

 

全面監視社会の悪夢を実現した中国

一見順調に国際社会における存在感を高めている中国は、社会経済情勢としては大変危険な状態にある。この事実は、中国の社会情勢にほんの少しでも興味をお持ちの方なら先刻ご承知だろう。具体的には全面監視社会の悪夢を実現していることだ。この点では、中国は世界の最先端を行っている。

 人口1000人当たりの監視カメラ台数で世界のトップ30を並べると、うち25都市が中国にある。

 

貧困層を抱えたアメリカの大都市では治安劣化が進む

・ようするに金持ちはサンフランシスコやロサンゼルスのような大都市の多様なライフスタイルを満喫するにも、小都市ののどかな暮らしを楽しむにも、頻発する犯罪におびえながら生活する必要はない。しかし低所得者層にとって住宅を取得しやすい都市は、ほぼ例外なく暴力犯罪多発地域なのだ。

 

モノ不足型経済はモノ充足型経済に転換していた

・なぜ商品価格やエネルギー価格は低下しつづけるのだろうか? 再三にわたって強調したように、経済を主導する産業が製造業からサービス業に変ったからだ。その底流には、国民を豊かにするには資源を大量投入する必要があったモノ不足型経済から「モノより珍しいコト、おもしろいコト」のほうが国民を豊かにするモノ充足型経済への転換があった。

 

このままではアメリカの大都市は都心部から壊死する

・もう中間層は逃げてしまっている。大富豪と貧乏人しか住んでいない大都市中心部で中小零細店舗の集積が消え去ったら、あとはもう大都市が中心部から壊死していくだけだろう。サービス業主導の経済で大都市だけが提供できる趣味・嗜好の多様性が失われたら、いったい何が残るというのか。

 

どんな国が米中亡きあとの世界経済をリードするだろうか

アメリカの金融業界は、たとえ中国というおいしいカネづるを失っても生き延びるかもしれない。だが大都市が次々に衰亡していく中で、経済全体の大収縮は避けられないだろう。中国利権社会主義が滅び、アメリカ利権資本主義が衰退する中で、どんな国の経済が輝きを増すのだろうか。

 資産分布の平等性の高さという点で、おそらく日本に勝る明るい展望を持つ国はないだろう。

 

利権集団のはびこる国

・ここまで醜悪な利権大国同士が覇権を争うには、それなりに理由があるだろう。最大の理由は、経済を牽引する産業は製造業からサービス業に変ったのに、製造業の設備投資資金調達のために肥大化した金融業が、そのまま経済の中枢に居続けようと利権をばら撒いていることなのではないだろうか。

 ただしアメリカの金融業界を唯一の例外として、先進諸国の金融業界が軒並み構造不況に陥っている。そろそろ舞台も替わり、主役も敵役も交代する時期が来ているからこそ、製造業全盛時代の主役アメリカと、遅れてきた製造業主導国家中国が、カネと権力の力で舞台にしがみついているのではなかろうか。

 第2次世界大戦後初めて金融業界からの献金をほとんどもらわずに大統領になったトランプは、だからこそ真剣に中国の現政権を潰そうとした。そして再選には失敗したが、トランプ政権末期に着手した中国叩きの諸政策は徐々に中国社会に波紋を広げつつある。

 アメリカの2大政党主流派と中国共産党ががっちり手を組んで築き上げた利権の構造は、はた目には難攻不落に見えるしかし、カネや権力の力で無理を押し通す利権構造が定着しているからには、米中両国が利権の横車を押したために被害をこうむった人たちが確実に増えているはずだと思い当たる。