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日米合同委員会は、米軍の占領時代からの特権を維持するとともに、変化する時代状況に応じて新たな特権を確保してゆくための政治的装置、密約機関といえる。(1)

 

(2022/2/23)

 

 

『追跡! 謎の日米合同委員会』

別のかたちで継続された「占領政策

吉田敏浩     毎日新聞出版  2021/12/27

 

 

 

日米合同委員会

・日米合同委員会とは、日本における米軍の権利など法的地位を定めた日米地位協定の運用に関する協議機関である。1952年4月28日の対日講和条約日米安保条約、日米行政協定の発効とともに発足した。外務省や防衛省などの高級官僚らと在日米軍司令部などの高級軍人らで構成されている。

 外務省や都内の米軍施設などで定期的に会合し、議事録や合意文書は原則非公開とされる。国会議員にさえも公開しない秘密の厚い壁を築いている。関係者以外立ち入れない密室の協議を通じて米軍に対し、基地を自由に使用し軍事活動をおこなう特権を認める合意を結んでいる。米軍優位の不平等な日米地位協定を裏側から支える密室の合意システムといえる。

 

アルトラブとは、米軍の要請を受けて国土交通省航空局の航空管制機関が、一定の空域を一定の期間、航空管制上の通知でブロックして、民間機など米軍機以外の航空機を通れなくし、米軍機が訓練や空中給油などをするための専用の軍事空域とするものだ。ほぼ常時専用となる固定型アルトラブは、「空の米軍基地」といえ、しかも増えている。

 アルトラブは民間航空機の安全な運航の妨げとなっている。外国軍隊の要求が優先され、民間機に空域制限が課される。それは日本の空の主権が米軍に制約・侵害されていることを意味する。

 

・日米合同委員会の議事録や合意文書の非公開は、日米地位協定で定められているわけではない。ただ合同委員会の密室協議で、そう取り決めただけなのである。そして、そう取り決めた合意文書さえも非公開としてきた。その秘密体制は徹底している。

 

・そこに風穴を開けようとしたのが、「知る権利」と情報公開の推進に取り組むNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の「日米合同委員会議事録情報公開訴訟」である。この訴訟を通じて、外務省は1960年の安保改定後の第一回日米合同委員会の議事録中の、「日米双方の合意がない限り公表されない」という部分を開示せざるをえなくなった。

 そして、日米合同委員会の文書非公開という秘密体制を維持するために、外務省が情報公開法にもとづく日米合同委員会関連の文書開示請求があるたびに、在日米軍と電話やメールで連絡を取り合い、米軍から「開示に同意しない旨」の回答を受けている事実も明らかになった。

 これでは、米軍が日本の情報公開制度に対し縛りをかけていることになる。米軍の同意なしには開示されないのだから、日本の情報公開の主権と国民の「知る権利」が制約・侵害されているといえる。

 

日米合同委員会は、米軍の占領時代からの特権を維持するとともに、変化する時代状況に応じて新たな特権を確保してゆくための政治的装置、密約機関といえる。つまり米軍が、日米合同委員会における日本の高級官僚との密約協議の仕組みを利用して、事実上の治外法権・特権を日本政府に認めさせるという一種のシステムがつくられている。

 

このような「日米合同委員会システム」を、“別のかたちで継続された占領政策”の一環と鋭く示唆していたのが、現代文学の巨匠・松本清張である。その作品、政治情報小説『深層海流』において、独自に入手した内閣調査室の極秘文書をもとに、日米の情報機関の合同委員会方式による緊密な連携を描くとともに、日米合同委員会の存在にも言及していた。前者は「裏の日米合同委員会」といえる。

 

松本清張日米安保条約地位協定の本質は、“別のかたちで継続された占領政策”であると、的確に述べている。戦後日本を洞察する「清張史観」と呼んでもいいだろう。

 

・また、前述のように全国各地で米軍機が勝手放題の低空飛行訓練を続けるなど、日本の空を米軍が我が物顔で軍事利用する背後に、米軍機優先の航空管制を日本政府が提供している問題があることも指摘していた。

 

松本清張は、米軍優位の日米安保地位協定のもと、日本の長年にわたる対米従属の構造を固定化し運用するための秘密機関という、日米合同委員会の本質を見抜いていたのである。

 日本を呪縛する「占領政策の延長」といえる日米安保条約地位協定の構造と、その核心部で秘密体制を築き機能する謎の日米合同委員会を、本書では追跡し、密約機関としての正体に迫りたい。

 

米軍に差し出された軍事空域「アルトラブ」の密約と「米軍機情報隠蔽密約」

「幻の空域」アルトラブ

・航空関係者から「幻の空域」と呼ばれる軍事空域がある。アルトラブという。米軍の要請を受けて国土交通省航空局の航空管制機関が、一定の空域を一定の期間、航空管制上の通知でブロックして、米軍機以外の民間航空機などを通れなくし、米軍専用の空域とするものだ。しかもアルトラブの情報は非公開とされ、航空路図にも載っていない、だから「幻の空域」といわれる。

 米軍の求めに応じて、日本の空を外国軍隊にいわば差し出しているのが実態である。日本の空の主権が米軍によって制約・侵害されている象徴的な問題である。

 その背後には、米軍優位の日米地位協定に関する密室の協議機関で、日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人からなる日米合同委員会の密約の影がある――。

 

日本上空「植民地化」ではないのか

・米軍の勝手放題の飛行訓練とその情報隠蔽――。日本上空「植民地化」ともいえる状態ではないか。

 日米両政府はなぜ米軍機の飛行ルートなどの情報を隠すのか。前述のように日本政府は国会答弁で、米軍機の飛行計画などを公表しない理由を、「個々の航空機の行動は米軍の機密だから」と説明している。

 

対米従属の密約文書の開示を拒む外務省は米軍と一心同体か

日本の情報公開制度に干渉する米軍

・日本の情報公開制度と「知る権利」への、米軍・アメリカ政府による内政干渉、侵害ともいえる重大事件が、人知れず起きていた。

 米軍機墜落事故や米兵犯罪などに対する損害賠償請求の民事裁判に、米軍側はアメリカ合衆国の利益を害する情報などを提供しなくてもよいとする密約が記された、日米合同委員会の議事録がある。それを不開示とするよう、在日米軍が外務省に密かに要請していたのである。その事実は、総務省管轄の情報公開・個人情報保護審査会の公文書から判明した。

 

情報公開を進めることの重要性>

英文の密約文書は作成から30年以上経過し、すでに秘密指定を解除されてアメリ国立公文書館で公開されている。だから日本で開示しても、日米間の信頼関係を損なうおそれはないはずである。

 

日米合同委員会の秘密体制に挑む情報公開訴訟

情報公開と説明責任に背を向ける政府

・2012年12月~20年9月の第二次安倍長期政権のもとでは、特定秘密保護法の制定の強行、「森友・加計・桜を見る会」文書の隠蔽や改竄、「自衛隊日報」隠蔽など、民主主義にとってきわめて重要な政府の情報公開と説明責任がないがしろにされ続けた。

 2020年9月に安倍政権の継承をうたってスタートした菅政権も、日本学術会議の委員任命拒否をめぐる問題で関連文書を開示しないなど、情報隠蔽の姿勢をあらわにした。

 

政府の秘密主義と日米合同委員会

・しかし、情報公開と説明責任に後ろ向きなのは、歴代の自民党政権

悪弊でもある。たとえば「核密約」など日米密約に関しても、時の政権と官僚機構は存在する文書をないと偽り、隠しつづけてきた。政府の秘密主義には根深いものがる。

 そのような秘密主義の深奥に位置し、情報隠蔽の象徴ともいえる組織がある。日米合同委員会である。それは日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人による密室協議を通じて、米軍に有利な秘密合意=密約を結んできた。議事録や合意文書には原則非公開とされ続けている。

 

日米合同委員会の秘密体制に挑む情報公開訴訟

・このような日米合同委員会の秘密体制に挑み、風穴を開けようとしたのが、「知る権利」と情報公開の推進に取り組むNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の「日米合同委員会情報公開訴訟」である。

 

・「日米双方の合意がない限り公表されないという日米合同委員会の合意自体は、単なる会議のルールで、安全保障や外交政策とは無関係です。こんな情報まで固定的に非公開とするのは、非公開の範囲をひろげすぎており、明らかに情報公開法の拡大解釈です。このようなやり方は看過できません」

 

政府の恣意的な文書不開示決定とダブルスタンダード

・つまり、政府みずからが起こした裁判では、みずからの主張に有利なように、非公開としてきた議事録の一部を恣意的に公開したのである。ご都合主義のダブルスタンダードそのものだ。

 

不開示決定の違法性を訴える国賠訴訟

・それなのに外務省はクリアリングハウスの開示請求に対し、2015年6月30日に不開示決定をした。那覇地裁の裁判で国側がすでに事実上の文書公開をしているにもかかわらず、外務省が不開示決定をしたのは、情報公開請求への対応に際し十分な注意を怠るという注意義務違反があったことになる。そうクリアリングハウスは主張し、国賠訴訟に訴えたのである。

 

松本清張が暴いていた「別のかたちで継続された占領政策」の深層>

松本清張『深層海流』の意図>

・「米軍機アルトラブ密約」「航空管制・米軍機優先密約」「米軍機情報隠蔽密約」「民事裁判権密約」など、数々の密約をつくりだした日米合同委員会――。

 それは米軍の占領時代からの特権を維持するとともに、変化する時代状況に応じて新たな特権を確保してゆくための政治的装置、密約機関といえる。つまり米軍が、日米合同委員会における日本の高級官僚との密室協議の仕組みを利用して、特権を日本政府に認めさせるという一種の巧妙なシステムがつくられている。

 このような“日米合同委員会システム”を、“別のかたちで継続された占領政策”の一環であり、戦後70年以上も続くアメリカの強大な対日影響力・コントロールの象徴と鋭く示唆していたのが、現代文学の巨匠・松本清張(1909年―92年)である。

 

・1昨年の2019年は、松本清張生誕110年だった。社会派ミステリーの代表作『点と線』などのTVドラマが連続放映されるなど、没後27年を経ても清張作品は根強い人気を持続していることが示された。

 

・『深層海流』は、1952年4月の対日講和条約日米安保条約と日米行政協定(現地位協定)の発効に伴う内閣総理大臣官房調査室創設の裏側で、日米の情報機関の緊密な連携に向けた協議が密かにおこなわれていた事実を題材としている。当時の吉田茂総理大臣、緒方竹虎内閣官房長官・副総理大臣、村井順初代内閣調査室長、植村甲午郎経団連副会長など、実在の政治家・官僚・財界人をモデルとした人物らが登場する。

 

占領政策は終わったが、アメリカの政策は一挙に日本から引き揚げて行ったのではない。その占領政策は別のかたちで日本に継続された。それは日米安全保障条約によって具体的に示されている。

 

・講和により日本は独立を回復したとはいえ、占領時代のアメリカによる対日管理すなわち対日コントロールの政策と力は、かたちを変えて続いている。そう松本清張は指摘し、その中心は安保条約にもとづいて占領軍から駐留軍へと装いを改めた米軍であると示唆する。

 そして、米軍の基地使用と軍事活動の権利を定めた日米行政協定の「実施のために協議機関として日米合同委員会が設置された」と述べる。

 同委員会は、日米双方の代表者1名で組織され、財務・通信・出入港・調達・工場・住宅・賠償・裁判管轄権・演習場・民間航空・商港など多くの専門委員会が設けられた。

 

別のかたちで継続された占領政策の象徴

・つまりGHQという、占領下日本での最高権力のもと設置されたのが、日米合同委員会の出発点である。米軍の要求が絶対だった占領下の日米の力関係が、この組織の基底に刻印されている。基地の提供は日米合同委員会で協議・決定すると、行政協定で定め定められた。国会の承認は必要とされない外国軍隊への基地提供という主権に関わる重大な問題が、国会議員や市民の目の届かない日米合同委員会の密室で決められてしまう仕組みが、最初からつくられているのだ。

 日米合同委員会の本質は、占領軍から駐留軍へと国際法上の地位を切り替えた米軍が、日本の官僚機構との密室協議を通じて、実質的に占領時代と同様の特権を維持するための組織である。松本清張が指摘する“別のかたちで継続された占領政策”の象徴的存在といえる

 

日米の情報機関による合同委員会

・さらに興味深いことに、松本清張は前出の「『深層海流』の意図」で、もうひとつの日米合同委員会の存在にもふれている。日米の情報機関の緊密な連携に向けた協議機関としての合同委員会である。

 

・占領中はGHQがあって直接日本国内の警察を指揮していたが、GHQが解消すると、その機関は日本側に肩代わりされた。しかし、安保条約でうたっているように、日本国内に米軍が駐留し、日本を共産圏に対立させる必要上、『外国の教唆による』動きその他治安を紊乱する動きに対して、アメリカ側としては全面的に日本に任せっ放しにするわけにはいかない。

 

・当時は朝鮮戦争(1950年6月~53年7月)の最中で、在日米軍基地は出撃・兵站の一大拠点だった。アメリカは日本を対共産主義陣営の前線基地と位置づけ、当時のソ連など共産主義陣営からのスパイ活動や破壊工作の脅威を日本政府に説き、日米の情報機関の連携を求めたのだ。むろん占領時代のアメリカ側優位の延長線上で、アメリカ主導の連携である。

 

・合同委員会は情報交換機関という特別委員会を設定したのだ。そのときに相互間で交わされた『機密』『極秘』文書の幾つかは、拙作『深層海流』の中に挿入しておいた。これによると、日本側はその知り得た情報をアメリカ機関に報告し、アメリカ側からも情報を貰うという仕組みになっている。

 但し、情報というものが単なる資料の蒐集ではなく、今ではそれが謀略と紙一重であることはCIA(アメリカ中央情報局)などの最近の活動の暴露によっても知られる通りである。

 

情報機関の連携を記した機密・極秘文書

・そして、このG2(米極東軍の諜報担当の参謀部第2部)の責任者が日本の外務大臣とも会談し、日本政府と米極東軍の諜報関係の代表者どうしが定期的会合を持つことに合意し、「日本諜報調整委員会」が誕生したのだと述べる。日米双方による情報収集は、「米軍の安全のため必要」とされ、その情報は大別すると次の三つの分野に関わるという。

 第一は日本の戦略的弱点、即ち攻撃に対し防禦を必要とする日本国内の地域および施設、

 第二はサボタージュ、破壊分子、または外国のスパイ活動による日本の安全に対する国内からの脅威、第三は近隣共産主義国の武力による外からの脅威。

 

表と裏の日米合同委員会システム>

・このように外務省国際協力局長は、“表の合同委員会”と“裏の合同委員会”の両方に属していた。両者は表裏一体となって、アメリカによる“別のかたちで継続された占領政策”を密かに遂行する“日米合同委員会システム”とも呼べる機能を持つのである。

 松本清張は『深層海流』のなかで、日米情報機関による“裏の合同委員会”のありかたは、まさに「表向きの講和条約に含まれた日米安全保障条約の裏側なのだ」と、解き明かしている。この日米安保体制の表裏一体の構造を通じて、アメリカ政府・米軍は、講和で表向き独立を回復した日本に対し、実質的に占領時代と同じような強い影響力を保持してゆこうと考えていたにちがいない。

 

『日本の黒い霧』から『深層海流』へ

・『深層海流』は、松本清張下山事件松川事件帝銀事件など占領下日本で起きた怪事件の謎に挑み、背後に米占領軍の影を見出したノンフィクション『日本の黒い霧』に続いて書かれた。

 小説仕立てになっているが、文中に挿入された機密・極秘文書は、松本清張が独自のルートで入手した本物である。その経緯を本人が次のように語っている。

 

・『日本の黒い霧』はだれにもタッチさせないで私自身が取材したんですよ。身分は言えないけれども、権力の中枢にいる、しかも公安関係の人から手紙が来て、全くの自分の気持ちからあなたにだけは話したい、と言われたわけだ。その人はまだ現役だったんだ。そして、表に立たない職務の人なんだな。戦後からずーっとアメリカの占領政策のもとでいろんなことにタッチした公安関係の人ですよ。『下山事件』のときが最初だったんだけど、その人、非常に用心して、最初に指定した場所では決して話をしないんだよ。そこからすぐ別の場所を指定されるわけだ。タクシーを何度乗り換えたかわからないよ。で、会って、下山さん(初代国鉄総裁の下山定則氏)はああいうことだった、と。下山さんは殺されたんじゃないかという推測はあったけれども、あんなに具体的に、しかも『下山総裁謀殺論』と正面からうたって書いたのはあれが最初ですよ。

 それから以下いろいろと書いたわけです。『日本の黒い霧』はテーマ別だから、そのとき聞いたいろんな話でテーマに外れたのもあるわけでね、それを集めたのが『深層海流』なんだ。

 

・私は『深層海流』を『日本の黒い霧』の続編のようなつもりで書いてきた。これは小説というかたちにしたのは、いちいち本名を出しては思い切ったことが書けないからだ。

 

自在に動けるアメリカの情報機関員

・驚くべきことに、「米国の諜報活動機関と対敵諜報活動機関」すなわちCIAや、米駐留軍情報機関である陸軍対敵諜報部隊(CIC)や海軍諜報機関(ONI)などの要員が多数、なんら制約も受けずに諜報すなわちスパイ活動を日本中でおこなっているというのだ。

 いや驚くこともないのだろう。松本清張の言うとおり安保条約のもと「占領政策は別のかたちで日本に継続された」以上、当然の結果ともいえる。

 

・つまり、スパイ活動中のCIC員がたとえ車で日本人をはねて殺傷しても、公務中としてアメリカ側に第一次裁判権があるので、日本側当局に逮捕・起訴されることはなく、日本の裁判所で裁かれることはないのである。実にアメリカの情報機関に都合のいい仕組みだ。 

 

米軍の便宜をはかる日米合同委員会の合意

・つまり、たとえ犯罪を犯していても、機密文書・資料を運搬・伝達する任務中であれば、「急使等」の身分証明書を示すことで、日本の警察などからただちに身柄を拘束されることはないのである。

 そして、任務終了後、米軍基地にもどり、日本の警察に出頭しないまま、密かに軍用機や軍艦に乗って出国してしまうこともできなくはないだろう。米軍人は地位協定にもとづき、基地を通じて自由に出入国でき、日本の出入国管理に服さなくてもいいからだ。

 

日米行政協定の裏取引

・日米の情報機関の連携について、松本清張は『深層海流』のあとに書いたノンフィクション『現代官僚論』中の「内閣調査室論」でも、次のようにふれている。なお、『現代官僚論』は官僚機構の深部にメスを入れ、日本の行政権力の構造を腑分けせんとする作品だ。

 

 (1952年)当時、講和後に備えて、アメリカ側の要請に基づき、日本情報(諜報)調整委員会というものが持たれた事実がある。これは未だに秘匿されているが、この委員会には村井順が内調室長の資格で日米双方の委員の幹事役をつとめたものだ。この秘密委員会は日米行政協定の裏取引といってもよいもので、村井内調室長の幹事役は同時に当初の内閣調査室の性格の一面も語っている。

 このような委員会が米軍と日本政府側との間にもたれていたことはむろん、国民はおろか、議会にも報いらされないことだった。

 

・また、日本側がアメリカに提供する情報というのは向かうから見てあまりよい情報ではなかった。これは当然で、それまでGHQという巨大な勢力によって強引に情報を収集してきたアメリカからみれば、日本側の出す情報なるものは不満足なものに映ったのだ。

 日本情報調整委員会も結局は、日本側の無力のため雲散霧消した。だが、大事なことは、このような企図が初期の内調の性格を示している点にある。

 

「ムサシ機関」という日米秘密情報機関

・しかしそれで日米の情報機関の連携が立ち消えになったわけではない。

 たとえば、陸上自衛隊の秘密情報部隊である「陸幕第二部別班」の元別班長で、元自衛隊陸将補の平城弘通氏の回顧録『日米秘密情報機関「影の軍隊」ムサシ機関長の告白』(講談社、2010年)には、陸上自衛隊と在日米陸軍が協力して秘密の情報収集活動すなわち諜報活動を長年おこなってきたことが書かれている。

 

・この協定にもとづき陸幕第二部の幹部自衛官アメリカ陸軍情報学校に派遣されて訓練を受け、さらに1956年からは朝霞にあった米陸軍基地キャンプ・ドレイクでの陸幕第二部員への秘密情報工作員の育成訓練が始まった。

 

・「ムサシ機関」の日本側要員は陸幕第二部付で、その二部情報収集班の指揮下におかれ、「陸幕第二部別班」として活動を始めた。後に「ムサシ機関」の上級機関として、陸幕第二部長と米太平洋軍情報部長による定例の「日米情報連絡会議」も設けられた。「ムサシ機関」の秘密情報工作の対象と具体的な活動について、平城氏こう説明している。

 

 目標圏は、日米の脅威の対象国、極東ソ連北朝鮮中華人民共和国ベトナムなどで、極東共産圏諸国を優先した。タイ、インドネシアは一応友好国になっていたが、いつ爆発するかわからないから、これも対象となった。

 工作員は私服であるが、本来は自衛官であり、米軍と共同作業をしている。そして工作員は、自身がいろいろと工作をやるのではなく、エージェントを使って情報収集をするのが建前である。身分を隠し、商社員、あるいは引揚者、旅行者などと接触し、彼らに対象国の情報を取らせるのだ。

 アジア地域に駐在、または往復する商社員、日本海に出漁し、ソ連北朝鮮の港に寄港の可能性のある漁民の協力者に対する訓練、任務付与等の活動は実施していた。

 

 こうして密かに集めた情報は米軍側と共有したのだった。なお、米軍側から「ムサシ機関」に対して日本国内情報の収集の要望はなかったという。それは、「アメリカの情報機関は警察と公安調査庁に別個のルートを持っていた」からだと、平城氏は述べている。

 

アメリカの情報機関との密接な関係

・『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(石井暁著 講談社現代新書 2018)によると、「陸幕第二部別班」は情報収集活動の場を当初の日本国内から、しだいに海外にまで広げていったという。

 冷戦時代から、主に「旧ソ連、中国、北朝鮮に関する情報収集を目的に、国や都市を変えながら常時三ヵ所程度の拠点」を設け、最近は「ロシア、韓国、ポーランドなど」で、商社員などに「身分を偽装した自衛官」が情報収集活動をしてきたという。現地の協力者を使って集めた「軍事、政治、治安」関係の情報は、「出所を明示せずに陸幕長と情報本部長に」上げている。その活動は限られた関係者しか知らず、総理大臣や防衛大臣にも知らされていない。

 

・冷戦時代の別班発足当初は米陸軍の指揮下で活動したとされる。陸幕運用支援・情報部長の直轄となった現在でも『米軍と密接な関係がある』と指摘する関係者は多い。

 

・このように自衛隊の情報機関は、米軍の情報機関と緊密な連携を続けている。

 自衛隊のほかに、前出の『日米秘密情報機関』の記述にもあるように、「アメリカの情報機関は警察と公安調査庁に別個のルート」を持って、それぞれ連携している。また、「警察、内調、外務省はいずれも米中央情報局との情報交換」をおこなっている。

 

アメリカの情報機関NSA(国家安全保障局)の世界的なインタ―ネット監視・盗聴活動を暴露した。元NSA職員エドワード・スノーデンの告発からも、日米の情報機関の連携が明らかになった。

『スノーデン・ファイル徹底検証』(小笠原みどり著 毎日新聞出版 2019年)によると、スノーデンが暴露した日本関係のNSA秘密文書(2013年1月29日付)には、内閣情報調査室が「サイバー・ネットワーク防衛」分野で、米軍と連携を進めていることが記されている。

 

アメリカ中心の諜報・監視ネットワーク

・このような日米の情報機関の緊密な連携は、アメリカ側情報機関の人員・予算面での圧倒的な規模の巨大さ、世界中に張りめぐらした諜報ネットワーク、収集する情報量の豊富さ、諜報技術開発の優位、実践とノウハウの蓄積などから、アメリカ側主導であることはまずまちがいない。

 まして日本政府の対米追従・従属的な政治姿勢からしても、アメリカ側に主導権があるのは当たり前だろう。在日米軍基地がアメリカの世界的な軍事戦略を支える海外基地ネットワークに組み込まれているのと同じように、日本側情報機関もアメリカのグローバルな諜報ネットワークに組み込まれているといえよう。

 

松本清張も見抜いていた軍事空域の問題点

・このように占領時代の延長のような、米軍による日本の空の我が物顔な利用実態、日本の空の主権が米軍によって制限・侵害されている問題について、松本清張は前出の『現代官僚論』中の「運輸官僚論」で言及している。

 

 日本の空は、ひきつづき日本国のものではない。34年(1959年)7月、日米講和条約(昭和27年)よりおくれること7年、ようやく、(航空)管制本部が日本に移管され、形式的に日本の空となったかに思われるが、それには、日米行政協定の付属書によりまだ大きな制限が加えられている。なぜならば、航空機の管制は、非常に軍事的な色彩の濃いものであるからだ。

 

戦後日本の裏面をえぐりだす「清張史観」

・米軍機優先の航空管制のしわ寄せが民間機の運航に大きく及んでいる。日本の空が真に日本の空となりえない状況の背後に、米軍優位の日米安保地位協定の不平等な構造と、その中心で密かに機能する“日米合同委員会システム”がある。

日本の空は、ひきつづき日本国のものではない」という松本清張の言葉にあらためて注目したい。“別のかたちで継続された占領政策”、米軍の巨大な影がいまなお日本の空を覆っている。

 

・日米の情報機関の緊密な連携も、米軍による日本の空の軍事利用と主権侵害も、“別のかたちで継続された占領政策“、アメリカの対日コントロールの継続の産物といえる。それは、密室協議を通じてアメリカ側の特権、利益を維持し確保する”日米合同委員会システム“と深く結びついている。

 松本清張は昭和50年(1975年)という筋目の年に、『文藝春秋』誌上

で哲学者の鶴見俊輔と対談し、あらためてこう言い切っていた。

 

 安保体制というのはアメリ占領政策の継続です。(日本の)官僚政治家はその能率的な実践者であり、忠実な管理人ですね。

 

 この実質的な「占領政策の継続」は、21世紀の今日も続いている。日本政府はその「忠実な管理人」として対米追従の防衛政策、米軍の特権を保障する地位協定の運用を実践し続けている。

 “別のかたちで継続された占領政策”は、いまなお日本を呪縛している。このような戦後日本の裏面・深層をえぐりだす「清張史観」は、現在の私たちに、このままでいいのかと、大きな問いを投げかけている。

 

日本の法令に反してまで米軍の特権を認める日米合同委員会

日本の法令に反して米軍の特権を密約で認める

・日米合同委員会の密室協議から生みだされる密約群の全貌は定かではない。だが、「密約体系」と呼べるほどの規模になっていることだろう。それは「安保法体系」を裏側から支え、米軍の特権を保障する構造をつくりあげている。

 しかも日米合同委員会の密約には、日本の法令に抵触、違反してまで米軍に有利な特別扱いをするものまである。

 たとえば、日本の法令である航空法上の法的根拠がないのに、米軍による「横田空域」や「岩国空域」での航空管制を、「事実上の問題として委任」し、認める「航空管制委任密約」がそうである。

 

基地の日本人警備員の銃携帯を認める秘密合意

・「日本人武装警備員密約」の場合は、銃刀法に抵触している。在日米軍基地では、ゲートの警備などをする日本人の基地従業員が銃を携帯する姿が見られる。しかし、日本では銃刀法により、鉄砲の所持は警察や自衛隊など法令にもとづく職務を除いて禁止されている。狩猟・競技向けに必要な場合は都道府県公安員会の許可を得なければならない。したがって警備員による銃の携帯は許されていない。銃刀法は厳格な規制をしいている。

 もちろん地位協定にも、米軍基地の日本人警備員が銃を携帯できるという規定はない。ところが、日米合同委員会の秘密合意によりできるようにしているのだ。

 

米軍を特別扱いして有利に処理する

・日本の警察に逮捕された米軍人・軍属が公務中なのかどうか、まだはっきりしない段階でも、被疑者の身柄を米軍側に引き渡すという「身柄引き渡し密約」も、日本の法令である刑事特別法に抵触、違反している。

 

・ところが、実際はその裏側で「身柄引き渡し密約」により、刑事特別法に反して米軍に有利な処理をしている。人知れず密約が法律を超越して運用されているのである。

 

閣議決定も形式的なものにすぎない

・一連の「閣議及び閣僚懇談会議事録」を見るかぎり、基地の提供・共同使用・返還の協定の案件は、いつも同じように手短に処理され、閣議決定されている。提供や共同使用の必要性などが吟味され、検討された形跡もない。

 

国民主権の原理に反する密室での合意

・しかし、日本の領土・領海・領空の一部を軍事基地として外国軍隊に提供することは、国家の主権に関わる重大事項だ。そうした重みを持つ決定を、憲法にもとづく「国権の最高機関」である国会が関与できない

までいいのだろうか。

 しかも、合意文書である基地の提供・共同使用・返還の協定は非公開で、国会に対しても秘匿されている。閣議にも協定の概要しか提出されない。こうしたやり方は、憲法国民主権の原理に明らかに反している。

 

閣議決定されない「いわば実施細則」

・それでは、地位協定第二条にもとづく個々の「施設及び区域」すなわち基地の提供・共同使用・返還の協定以外の、日米合同委員会の「いわば実施細則」であるさまざまな合意は、日本政府の閣議決定という手続きを経ているのだろうか。

閣議及び閣僚懇談会議事録」と『閣議及び事務次官等会議付議事項の件名等目録』を調べたかぎりでは、米軍基地で働く従業員の労務提供の基本契約に関する合意、米軍による損害を受けた者に対する賠償金及び見舞金の支給に関する合意、などごく一部の例外を除いて、閣議決定をされた形跡はない。

 

はたして政府間の合意といえるか

・そうすると、基地の提供・共同使用・返還の協定以外の、地位協定の運用に関するさまざまな合意「いわば実施細則」は、はたして「政府側の合意」といえるのだろうか。「両政府の代表者が政府間の合意として確定する行為を必要」とせず、日本政府の閣議決定を経ていない以上、「政府間の合意」とはいえないのではないか。

 

密室協議で共有した解釈にすぎない

・しかし、それはあくまでも日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人による密室協議で共有した解釈にすぎない。しかも、日本側の閣議決定を経ない「いわば実施細則」に、はたして「政府間合意」といえる資格があるのかという問題はあいまいなままである。結果的に「横田空域」や「岩国空域」の航空管制、基地の日本人警備員の武器携帯、米軍による検疫など、米軍の特権が認められている。

 

本来なら国会承認が必要な日米合同委員会の合意

・「国際約束」を「国会承認条約」と「行政取極」に分ける基準について、政府の統一見解を示したのが、1974年2月20日衆議院外務委員会における大平正芳外相(当時)の口頭報告である。

 

・このように「国内法の範囲内で実施し得る国際約束」としての「行政取極」と実質的に等しい効力を持たせるには無理があろう。「大平三原則」に照らせば、「日本国と相手国との間、あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において重要な国際的約束」として、国会での承認が必要となるのではないか。

 

「別のかたちで継続された占領政策」の呪縛を断ち切る

・日米合同委員会の議事録も合意文書も原則として非公開である。国民・市民の目が届かない密室での、ごく限られた高級官僚と在日米軍高官の合意が、「いわば実施細則」として「日米両政府を拘束する」ほどの大きな効力を持つとされる。それ自体が、いかに異常なことかもっと広く知られてほしい。

 このように正当性の欠ける日米合同委員会の密室の合意システムを、放置してはならない。放置したままでは、仮に地位協定を抜本的に改定したとしても、その規定をすり抜けて米軍に有利な合意・密約がつくられてゆくだろう。

 したがって、米軍に対し実効性のある規制をかけるためには、日本法令(国内法)を原則として適用することなど地位協定の抜本的改定とともに、不透明な日米合同委員会の合意システムを見直さなければならない。

 

松本清張が鋭く指摘した“別のかたちで継続された占領政策”。その象徴といえる日米合同委員会。「安保法体系」+「密約体系」という表裏一体の米軍優位の構造。このような“別のかたちで継続された占領政策”の呪縛を断ち切ること。それは、いま日本が独立国として、まさしく取り組むべき大きな課題にちがいない。

 

サンフランシスコ講和条約

・今年、2021年は対日講和条約サンフランシスコ講和条約)と日米安保条約が締結されてから70周年であり、来る2022年は両条約と日米行政協定の発効による主権回復から70周年にあたる。

 

・「安保法体系」も「密約体系」も、実質的に「占領管理法体系」を引き継いだものである。占領の延長線上の米軍特権を維持し、また必要に応じて新たな特権を確保するためのシステムだ。「安保法体系」と「密約体系」が、「憲法体系」を侵蝕し続けている。日米合同委員会はそのシステムの要として機能している。