(2022/3/14)
『中国共産党 暗黒の百年史』
石平 飛鳥新社 2021/6/29
虐殺・凌辱・陰謀・裏切り……本書を読めば、中国がやっていること、やろうとしていることがすべてわかる!
<「百年分の衝撃的な真実」を書いた理由>
・本書を一読すれば、百周年の「誕生日」を迎えた中国共産党が、どれほど罪深く、どれほど外道なふるまいをする危険な勢力か、よくわかると思う。そして、世界最大のならず者国家・中国の軍事的脅威と浸透工作によって、わが日本が脅かされている今こそ、中共の悪を歴史的に明らかにし、マフィア同然の「反日・反社会勢力」の罪悪と危険性にたいする日本人の認識を深めるお手伝いをしたい。これが本書執筆の最大の目的である。
・その理由は簡単だ。日本の一流(?)知識人たちが書いた中国近代史のほとんどは、まさに中国共産党の「革命史観」に沿って書かれた、中国共産党への賛美そのものだったからである。
<浸透・乗っ取り・裏切りの中共裏工作史>
<乗っ取り工作から始まった党勢拡大と建軍>
・中国共産党という政党が創建されたのは1921年7月1日のこと。この日こそ、中国史上と世界史に悪名を残す「サタン誕生」の日である。
この「中共」という名のサタンを中国の地で産み落としたのはロシア人のソ連共産党、厳密に言えば、ソ連共産党が創設したコミンテルンである。コミンテルンという組織の使命は共産主義革命を世界中に広げることであるが、1920年、コミンテルンの極東書記局が設立され、中国を含む極東地域で共産党組織を作り、暴力革命を起こさせるのが任務であった。
<現在でも世界規模で展開されている中共の浸透工作>
・そして2000年代に入ってからも、ほぼ数年ごとに一人~二人の中共スパイが台湾で摘発されている。現在でも日々、台湾を舞台にした中共の浸透工作とそれに対する中華民国側の反スパイ戦が熾烈に展開されている。
中国共産党政権の浸透工作は、台湾に限定されたものではない。中共が必要だと判断した世界各国でも、同じようなスパイ作戦が日常的に展開されているはずである。
例えば、オーストラリアの学者クライブ・ハミルトンの『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』(飛鳥新社)によって暴露された、オーストラリアに対する中共の浸透工作の実態は、実に凄まじいものだった。
<繰り返される血まみれの大量虐殺史>
<「一村一焼一殺」で奪われた10万人の命>
・第1章では、敵方への浸透工作が中国共産党の得意技であることを具体的に見たが、この浸透工作と並んで、中国共産党が結党当初から三度の飯より好んだことは、自国の一般国民に対する残忍極まりない大量虐殺であった。多数の人命を組織的に奪っていくのは、中国共産党の一貫したやり方で、習性とさえなっている。
中共という組織は最初から、テロ活動を主な仕事としていた。敵の暗殺、あるいは混乱を起こそうと無差別殺人を繰り返した。後に「聖人君子」に祭り上げられたあの周恩来こそ、中国共産党のスパイ工作の大ボスであり、暗殺活動の総責任者でもあった。
・中共が自前の軍隊を作って武力革命を開始したのは、1927年8月1日の南昌蜂起だった。実はその時、周恩来率いる蜂起軍は「蜂起決議案」という公式文書を公布し、蜂起後のとるべき行動について次のように宣言した。
「われわれは反革命的な軍人たちを全員殺さなければならない」
「われわれは反動的官吏たちをいっさい殺戮しなければならない」
「われわれはすべての土豪劣紳を殺し尽くさなければならない」
文字通りの「殺人宣言」であるが、中共の起こした「暴力革命」は最初から「殺人革命」だったのである。
「殺人宣言」の三番目に出てくる「土豪劣紳」は共産党による造語で、農村地域に住む地主や旧家、素封家を指している。中国では昔から、政治権力の支配は農村の地域社会に及ばないのが原則である。農村の社会秩序は、たいてい地主や素封家を中心とする自治によって維持されていた。彼らのほとんどは安定した財産を持ち、教養と良識を身につけ、地元の名望家として地域の安定と平和を守ってきた。
しかし、上述の「蜂起決議案」では、そうした人々はみな共産党の目の敵にされ、皆殺しの対象に指定された。
・しばらくして「紅軍」を名乗る毛沢東と朱徳の部隊は山から降り、広域の農村地帯で「革命根拠地」を作っていくことになった。その時点から、南昌蜂起の決議案で叫ばれていた「土豪劣紳殺し」が、毛沢東たちの手によって本格的に展開されていった。
その時、毛沢東たちは「打土豪、分田地(土豪をやっけて耕地を分配する)」というスローガンを掲げて農村革命の基本政策としていた。そのための具体的な「行動方針」として打ち出したのが「一村一焼一殺、外加全没収」というものだ。「一つの村では一人の土豪劣紳を殺し、一軒の家屋を焼き払い、加えて財産を全部没収する」という意味である。
つまり、農村地主や素封家に対する殺戮と略奪が、毛沢東ら紅軍による「革命」の主な内容だったのだ。その際、紅軍の連携する対象はいわゆる「地痞流氓」、つまり、農村社会のならず者やゴロツキの類である。
・1933年末には、共産党紅軍の開拓した根拠地、つまり「中華ソヴィエト共和国臨時政府」の支配地域は、3600万人の人口を有する広大な地域に広がったと記録されている。1928年末からわずか5年での「革命」の成果である。
そしてこの5年間で、「一村一焼一殺」で殺された地主・素封家の総数は、何と10万人に上ったという。
・ちなみに、「一村一焼一殺」はあくまでも農村地域で実行された紅軍の行動方針なので、都市を占領した場合、話は違ってくる。
例えば、1930年3月、紅軍は江西省の吉案という都市を陥落させ、45日間占領したことがある。その間、彼らは何と、1万人以上の市民たちを虐殺したと記録されている。
・内戦中、大量殺戮を伴う多くの作戦が共産党軍の手によって遂行された。その最たるものの一つは、共産党軍が旧満州にある長春という都市を攻略した際、籠城した国民党軍と長春全市民に対し断行した「兵糧攻め作戦」である。
1948年5月から10月までの5カ月間、国民党軍が籠城していた長春を、共産党軍は幾重もの包囲網で囲み、完全に包囲した。
・市内に入った共産党軍がまず目撃したのは、餓死者たちの死骸の山であった。街角や家々の前には、干し魚のように痩せ枯れた死骸が山のように転がっていたという。生きている者たちも、餓死した親族の遺体を埋めるだけの気力を残していなかったのである。
籠城以前の長春市民の人口は50万人であったが、生き残ったのはわずか17万人だった。
・このような残忍なやり方で内戦を抜いて、天下盗りを果たしたのが毛沢東の率いる共産党軍である。戦争終結後の共産党政権の発表によると、彼らはこの内戦でじつに800万人の国民党軍を「消滅させた」という。3年間の内戦における双方の戦死者数は、少なくとも1000万人以上と推定されている。
今の中国共産党政権は、事実、死骸の山の上に成り立っている。
<「一村一殺」の全国版で殺された200万人>
・1949年10月1日、内戦に勝利した中国共産党は、今の中華人民共和国を建国した。
・しかし唯一、今の「中国共産党王朝」だけは全然違った。彼らが天下をとり全国政権を樹立した。まさにその時から、支配下の自国民に対して前代未聞の大虐殺を続々と断行していったのだ。
政権樹立の翌1950年初頭から、中国共産党政権はさっそく全国規模の「土地改革」を実行した。それは、今まで「革命根拠地」で行ってきた、地主や素封家に対する「一村一焼一殺」を全国的に展開していくことを意味した。全国の村々でゴロツキやならず者たちを総動員して地主たちを吊し上げ、土地その他、全財産を奪ったのである。
・それでも、全国で吊し上げられた六百数十万人の地主のうち、200万人程度は確実に殺された。
<71万人を即時処刑した「鎮反運動」という名の大虐殺>
・「土地改革殺戮」は1950年の1年間を通して全国で実行されたが、それが終わるや否や、翌51年の年明けから、今度は毛沢東本人による殺戮命令で、全国規模の組織的な大量虐殺が、またもや始まった。これが中国共産党政権史上有名な「反革命分子鎮圧運動(鎮反運動)」である。
・要は、「反革命分子」だと認定されて銃殺された71万の人々は、最初から共産党の敵対勢力でもなければ、何かの罪を犯した悪人でもまったくなかった。実際、彼らの多くは、都市部と農村部に住む素封家や名望家たち、あるいは地域社会の有力者であった。
・1951年の「鎮反運動」からわずか数年後の1955年、中国共産党政権は「粛清反革命分子運動(粛反運動)」と称する運動を開始いた。「鎮反運動」の時と同じ手法を使って、「反革命分子」に対する再度の大量逮捕と銃殺を実行したのだ。1年間にわたる「運動」の結果、総計130万人の「反革命分子」が逮捕され、そのうち8万人が処刑台の露と消え、帰らぬ人となった。
・「粛反運動」から2年後の1957年、中国共産党政権は「反右派運動」と称する政治運動を発動した。政権の諸政策に批判的な意見をした55万人の知識人を「右派分子」だと認定した上で、公職から追放して農村の強制労働と収容所へ追いやった。
この運動で政権は銃殺による殺人こそしなかったものの、強制労働に追いやられた「右派分子」が最悪の労働環境・衛生環境の中で命を落としたケースは多い。
・結果的に20数万人の知識人たちが共産党政権の「反右派運動」によって命を奪われたことになる。「反右派運動」から2年後の1959年から61年までの3年間、今度は政権の人為的失敗によって全国で大飢饉が起き、数千万人の人々が餓死することとなった。
「政権の政策失敗によって大飢饉が起きた」とはどういうことか。不思議に思う日本人もいるだろうが、これは国内外でよく知られている歴史的事実だ。例えば1999年5月に岩波書店から刊行された『現代中国事典』という書物はこの一件について、「1958年の大躍進政策の失敗で、59年から61年までに2000万人から4000万人という史上空前の大量の餓死者を出した」と記述している。
・この大飢饉の経緯を詳しく解説する紙幅はここにはないが、要は、中央政権が間違った政策の推進により、数千万人が餓死するほどの大飢饉を人為的に起こしてしまったのである。間接的ではあるが、中共はまたもや、数千万人の中国国民を死に追いやった。
この「3年大飢饉」の後にやってきたのは例の文化大革命である。1966年夏から76年秋までの10年間にわたって中国全土の大地に吹き荒れた「大革命」の嵐は、文化・社会・経済の空前の大破壊であったと同時に、拷問やリンチによる大量殺戮が全国で展開された「殺人の嵐」でもあった。
・「文革時代では、私設の裁判がおこなわれ、拷問による自白強要、勝手気儘な逮捕、違法な拘禁、捜査がごく当たり前の現象となり、造反の対象となる人々の撲殺や迫害に耐えられない人々の自殺が続出し、人々の生命、財産はまったく保障されなくなった。当時の不完全な統計によっても、1966年10月14日までに、『人民の敵』とされて公職や市民権を剥奪され、都市から農村に追いやられた人数は、全国で39万7400人以上に及び、1966年8月下旬から9月末までの40日あまりの間に、北京市だけで8万5198人が原籍地に追い返され、1万770名が殺害され、3万3605世帯が家捜しを受けた」
・中国国内で出版された『従革命到改革』という書物では、文化大革命の10年間、「さまざまな形で命を失った人の数は数百万人に上る」と推定されているが、これがもっとも保守的な数字であり、その10倍の「数千万人」という推測もある。今日までのさまざまな研究成果と公開資料から総合的に判断すると、文革の10年間で「非正常死亡」を遂げた人々の数は、最低でも1000万人単位であろうと考えられる。
・1968年8月27日から9月1日までの6日間、大興県下の13の人民公社で、紅衛兵たちは現地公安局の協力を得て、「五類分子」(地主・富農・反革命分子・悪質分子・右派分子)とその家族に対する集団虐殺を行った。「五類分子」とその家族たち325名が殺され、一族もろとも全滅させられたのは25世帯に上ったという。
・前述のように、文革の10年前、惨殺されたり自殺に追い込まれたりした無実の人々の数は、保守的な推定でも優に1千万人を超えている。その中には、赤ちゃんも子供も含まれていたから、文革中の中国は、まさに毛沢東共産党の作り出した阿鼻叫喚の「殺戮地獄」であった。
<天安門虐殺で命を失った若者たちへの鎮魂歌>
・以上、中国共産党が百年前に結党された時から文化大革命までに起こした大量殺戮の数々を記してきた。考えてみれば、建党から文革終息までの四半世紀以上にわたる中国共産党前半の歴史は、まさに大量殺戮の常習犯であり、確信犯である。
・その謎を解く鍵は、中共による大量殺戮の共通した手法にある。「革命根拠地時代」の「一村一焼一殺」にしても建国早々の「鎮反運動」でも、中共の好む殺人法はいつも「公開処刑」であり、必ず大衆を集めてきて、大衆の目の前で殺戮を行うのである。
中共が大量殺戮を好む理由の一つは、これでわかるであろう。大衆の前で公開処刑を行う意味は、民衆に恐怖心を植え付けておくことだ。民衆に心底からの恐怖を常に感じさせることによって、彼らが政権に反抗できないように仕向けるのである。
・この天安門事件において、袁力と共に殺された若者や市民たちの数はどれほどだったのか。真実は今でも「最高国家機密」として中国共産党政権によって封印されたままである。死亡者数数千人という説がもっとも有力であるが、それ以上である可能性も少なくない。
・そして、この「北京大虐殺」を含む、毛沢東以来の数多くの大量殺戮の罪に対し、今の中国共産党政権は一度も謝罪したことはない。反省の色すら見せていない。そして、習近平政権下の中国共産党はいまや、大量殺戮から始まり大量殺戮で彩られた自分たちの百年史を、まさに誇るべく輝く歴史として自画自賛している最中である。
<侵略と虐殺と浄化の少数民族弾圧史>
<軍事占領・政治支配・文化的同化の「民族浄化政策」>
・今の中華人民共和国には、人口の絶対多数を占める漢民族以外に、55のいわゆる「少数民族」が生活している。
・しかし軍事占領は、中共にとって民族支配の第一歩に過ぎなかった。占領後しばらくすると、中共政権は、各民族への政治支配を強化する政策を推進していった。政策のポイントは、各民族固有の社会制度や財産制度を全部破壊した上で、土地と人民と財産をすべて、中共政権の完全支配下に置くことである。
・チベットで共産党政権は、一貫してチベット人の信仰の中心であるチベット仏教を弾圧し、寺院を破壊し僧侶を追放する宗教絶滅政策を強行してきた。
・もちろんその中でも、中共政権の同化政策に抵抗して自分たちの民族的アイデンティティと独立性を保とうと必死になっている民族がある。チベット人、ウイグル人、モンゴル人はその代表格であろう。しかし、まさに彼らが、中共政権の占領政策と同化政策に強く抵抗してきたが故に、歴史上、中国共産党政権による大量虐殺の標的となったことはいくたびもあった。
<13万人の兵力を動員したイ族虐殺>
・中国の西南地域の山間部には昔から「イ族」と呼ばれる人々が住み着き、暮らしている。2010年の人口統計では871万人の人口を有しているという。現在、その大半は西南地域の雲南省に住んでいるが、3割程度は四川省の涼山イ族自治州にいる。
・当時の涼山自治州の総人口は90万人、そのうちイ族の人口は約70万人だった。70万人のイ族の住む地域に13万人の大軍を送り込んだのは、いかにも大掛かりな軍事行動である。しかも、70万人のイ族全員が反乱に加わったわけではない。女性、老人、子供を除けば、実際に反乱に参加したのはおよそ10万人程度。そのほとんどは何の軍事訓練も受けていない普通の農民で、所持していた武器は槍や刀、せいぜい2、3人につき自家用の猟銃1丁程度だった。こうした人々に、大砲と機関砲で武装した十数万人の解放軍が襲いかかったのだから、鎮圧というより虐殺に近いものだったと言える。
・村々での掃討作戦と山岳地帯の掃討作戦で、どれほどのイ族が殺されたのか。数字を示す資料は一向に見つからない。
・しかし1956年初頭から58年3月まで、涼山地域で自分たちの伝統生活と共同体を守るために立ち上がったイ族の人々に対し、中国共産党は13万人もの大軍を派遣して無慈悲な軍事鎮圧を行い、女性・子供を含む数多くのイ族を虐殺した歴史的事実は、消えないのである。
<120万人のチベット人を殺した世紀の民族虐殺>
・このような虐殺は、1970年代半ばまで続いたが、解放軍のチベット占領開始から25年以上の長きにわたって行われた数多くの虐殺で、一体どれほどのチベット人が殺されたのか。元東京大学史料編纂所教授の酒井信彦氏の推定では、チベット総人口の約5分の1、すなわち120万人が殺されたという。
しかし、このような虐殺は、決して1970年代で終わったわけではない。2008年3月、同じラサにおいて、解放軍部隊は「暴動」を起こしたとされるチベット人への鎮圧作戦で、多数のチベット人を殺した。
<34万人逮捕、5万人以上虐殺の「内蒙古ジェノサイド」>
・中国共産党政権が「少数民族」に行った組織的なジェノサイドの中で、殺人規模の大きさでチベットに次ぐ二番目となるのが、内モンゴルに住むモンゴル人の虐殺である。
文革中の1960年代後半、共産党政権が内モンゴル自治区において「内人党粛清運動」を発動させ、モンゴル人の組織的な大虐殺を行ったのである。
<紅軍内大虐殺、陰謀と殺し合いの内ゲバ史>
<冤罪を着せるのはまず味方から>
・ここまでは、中国共産党による自国民虐殺の歴史と、チベット人やモンゴル人など「少数民族」への弾圧・虐殺の歴史とを具体的な記録に基づいて明らかにした。この政党は殺人魔・嗜血鬼の集まりであることが、よくわかる。
嗜血的な人間たちが一つの政党を作って群れを成していると、内部で仲間同士の凄まじい殺し合いが起きるのは避けられない。かつてスターリンのソ連共産党もそうであったように、中国共産党の百年史は、激しい内部闘争と党内殺し合いの歴史でもある。
・中国共産党の内部で大規模な殺し合いが最初に確認されたのは1930年、共産党紅軍が江西省の瑞金を中心とする広い地域に「革命根拠地」を作り上げた時だ。紅軍の最高指導者の一人、毛沢東が首謀者となり、同じ仲間のはずの紅軍の大量粛清と虐殺を行った。共産党史上に残る「AB団粛清事件」である。
・そのために毛沢東は「AB団」という怪しげな固有名詞を持ち出した。AB団とはもともと、1926年に国民党の一部幹部が結成した秘密団体である。当時、共産党のスパイが国民党内部に入りこんで凄まじい浸透工作を展開していたが、それを警戒した国民党有志は浸透を食い止めようと、AB団を作った。
・1930年時点で、AB団という組織はもはや存在していない。ましてや共産党紅軍の作った「革命根拠地」にAB団がいるはずがない。
・1カ月間にわたって摘発キャンペーンを徹底的にやった結果、毛沢東配下の紅一方面軍4万人あまりの幹部と兵士から、4百数十名の「AB団員」を摘発できた。うち30名以上の「AB団幹部」は即座に処刑された。中には、毛沢東配下の幹部でありながら、平素から毛沢東のやり方に不満をもっていた紅軍幹部の多くが含まれていた。もちろん、本当の「AB団員」や「AB団幹部」は誰もいない。皆、毛沢東の陰謀の犠牲になっただけだった。
<毛沢東による1万人処刑の「紅軍大粛清」>
・この輝かしい「成果」を手に入れた毛沢東は、摘発した「AB団幹部・団員」および処刑した者の名簿と、多数の「自供者」の証言に基づき作成した「AB団浸透の実態報告」一式を、腹心の部下に持たせ、上海の党中央に届けさせた。
これで党中央は、真剣に対処せざるを得なくなった。党中央指導部の誰一人として、まさか毛沢東が冤罪をこしらえて自分の部下を死に追いやるとは想像できなかった。党中央はこれで、「AB団はすでに紅軍全体に広く浸透している」という毛沢東のでっち上げを信じるようになった。
党中央は毛沢東の主張を聞き入れ、紅軍全体で「AB団粛清運動」を展開することを決めた。
・こうして、江西地方紅軍の幹部と根拠地の党・行政の幹部、合わせて1万人以上が、まったくの冤罪で処刑されてしまった。江西地方紅軍とその根拠地を手に入れたい毛沢東の個人的野心はこうして、1万人の紅軍・共産党仲間の命を奪ったのである。
<7万人の「革命同志」はこうして殺された>
・上述の富田虐殺は、紅軍におけるさらなる大虐殺の序章にすぎなかった。富田であれほどの粛清と殺戮を行った以上、党中央と毛沢東は、党全体、紅軍全体に対して、彼らの措置の正当性を証明しなければならない。江西地方紅軍でのAB団摘発が正しいことだったなら、当然、紅軍全体に拡大して行わなければならない。
・その結果、1931年夏に粛清キャンペーンが終わった時点で計算すると、共産党全党と紅軍全軍で、総計7万人以上が処刑されたという。中には、党と紅軍幹部の一部親族まで含まれていた。
この紅軍史上最大の虐殺が終わると、首謀者・発案者の毛沢東は当初の目的を完全に達成した。江南地方紅軍の根拠地をまんまと手に入れ、紅20軍の生き残りの兵士たちを彼の部隊に編入した。毛沢東はこれで、紅軍内の最大勢力を擁することになった。
そして1931年秋、富田大虐殺のわずか11カ月後、毛沢東の本拠地である江西省瑞金で、紅軍の全根拠地を統合した「中華ソヴィエト共和国臨時政府」が成立した。主席に収まったのは毛沢東である。
<陰謀と粛清と殺し合いの中国共産党史(その1)>
・1937年、日中戦争の勃発に伴い「第二次国共合作」が実現した。毛沢東にとって、権力の全面掌握の絶好のチャンスが巡ってきたのだ。
<陰謀と粛清と殺し合いの中国共産党史(その2)>
・整風運動で毛沢東独裁体制が成立してから7年目の1949年、中国共産党は国民党政府と内戦で歴史的勝利を収め、今の中華人民共和国を建国した。それ以来の共産党政権史もまた、内ゲバと殺し合いの歴史そのものである。
建国後、最初に激しい権力闘争が展開されたのは1954年の「高崗(こうこう)事件」である。
<陰謀と粛清と殺し合いの中国共産党史(その3)>
・彭徳懐が疑問を持った毛沢東の「大躍進政策」の推進とその失敗は、共産党政権内における次の大粛清の伏線となった。
町内のお爺ちゃんやお婆ちゃんまで動員し、手作りの高炉で鉄鋼を作らせるような、めちゃくちゃなやり方で進めた毛沢東の「大躍進政策」は、当然のことながら、完全な失敗に終わった。また、本書第二章でも記したように、「大躍進政策」の推進によって農村地域で大飢饉が起こり、数千万人の人々が餓死した。1959年から61年までのわずかな時期のことである。
「大躍進政策」失敗後に、混乱の収捨役を任されたのは劉少奇と鄧小平ら、現実路線派の幹部だった。彼らは数年間、さまざまな政策転換を行い、必死に頑張った。中国経済はやっと瀕死の状態から立ち直り、共産党政権はこの難局を何とか乗り越えた。
・紅衛兵たちの吊し上げや拷問の標的は、やがて「反毛沢東」の共産党幹部から拡大していき、一般の知識人や学校の先生にも及んだ。本書第二章でもその実態を一部断片的に記したが、文化大革命中にはおよそ数千万の人々が、殴り殺されたり自殺したり獄死したりして命を失った。そして1億人単位の人々が、何らかの形で政治的迫害を受けた。
・そして1976年9月、長年の権力闘争で多くの政敵と同僚、仲間を死に追いやり、億単位の中国人民に地獄の苦しみを味わせた毛沢東は、罪悪に満ちた生涯をようやく終え、死去した。「毛沢東時代」の終焉である。
<権力闘争と殺し合いはいつまでも続く>
・四人組逮捕の後、しばらくは華国鋒を中心とした指導体制が維持されたが、長くは続かなかった。解放軍内に大きな勢力を擁する鄧小平は復活後、亡き周恩来の勢力と連携して華国鋒を引きずり下ろし、実質上の「鄧小平政権」を樹立した。
<女性と人民を食い物にした党幹部の貪欲・淫乱史>
<江沢民政権下で全面開花した「腐敗・淫乱文化」>
・このように、1989年から13年間も続いた江沢民政権下では、政権トップの江沢民とその一族からあらゆるレベルの共産党幹部に至るまで、共産党伝統の淫乱文化と腐敗文化がまさに全面開花したわけだが、2000年代の胡錦涛政権下でもその勢いが衰えることはなかった。そして次章で述べるように、今の習近平政権では大掛かりな「腐敗撲滅運動」が展開されているものの、「腐敗」と「淫乱」はいっこうに共産党政権から消えることはない。人民と女性を食い物にする二つの醜悪文化はもはや、共産党政権の体質そのものと化しているからである。
<極悪の習近平政権を誕生させた「闇の力」>
・習近平の政治家人生の大半は親の七光で出世街道を歩んだわけだが、出世街道の最終段階で、江沢民の愛顧を得ることに成功し、政治権力の頂点へ登り詰めることができた。親の七つ光と悪運の強さ、この二つこそが、習近平に天下を取らせた秘密であり、悪の習近平政権を誕生させた「闇の力」であった。
<自由世界vs.中共政権の最後の戦い、邪悪な政党の歴史に終止符を!>
・武漢発のコロナ禍では、武漢市内でコロナウイルスが拡散し始めた初期段階で、習近平政権が徹底的な情報隠蔽を行った結果、ウイルスの世界的拡散を許し、全人類に多大な犠牲と損失を与えた。それなのに現在に至っても、習近平政権の中国は世界に対し陳謝の一つもなければお詫びの言葉もない。
・中共政権の手で民族浄化の憂き目に遭っているいるウイグル人やチベット人を救い出すため、そしてわれわれの住むインド太平洋地域の平和と安定のために、自由と人権と民主という自由世界の普遍的価値観を守っていくために、そして北京発のあらゆる災禍からこの世界の安泰とわれわれの子孫代々の幸福を守っていくために、今こそ、世界は一致団結して北京の独裁者・ならず者たちの蛮行と暴走を封じ込め、中共政権を破滅へと追い込まなければならない時がきたのである。
幸い、この数年間、特に2020年秋から中共百周年の2021年にかけて、自由世界の多くの国々では中共政権の邪悪さへの認識をより一層深めた。自由世界は中共政権を封じ込める中国包囲網の構築に乗り出したのである。
・中国包囲網の構築は、主に二つの領域で進められている。第一に人権問題である。中共政権のウイグル人・チベット人に対する民族浄化の人権侵害に対し、そして彼らが香港で行っている人権侵害に対して、自由世界はいっせいに立ち上がり、習近平政権への「NO」を付きつけ始めた。
まず2020年10月6日、ニューヨークで開かれた国連総会の第三委員会(人権委員会)では、ドイツ国連大使が39カ国を代表して、ウイグル人や香港に対する中国政府の人権弾圧を厳しく批判した。ドイツが束ねた39カ国の中には、アメリカ・日本・イギリス・フランス・イタリア・カナダなど自由世界の主要国ほぼ全てが加わり、人権問題を基軸にした「自由世界vs.中国」の対立構造がその原型を現した。
そして2021年1月、米国トランプ政権は任期終了直前に、中国政府のウイグル人民族浄化政策を世界各国の中で初めて、ジェノサイドと正式に認定した。その後、新しく誕生したたバイデン政権もこの認定の継承を宣言した。
・この年の2月に、カナダ議会下院は中国のウイグル弾圧をジェノサイドとして非難する決議を可決、欧州でもオランダ議会が率先して同様のジェノサイド非難決議を可決した。そして4月には、イギリス議会が「ウイグルに対するジェノサイド」動議を可決した。この原稿を書いている4月30日現在、オーストラリア議会や日本の国会でも類似の決議の審議が始まっており、中共政権のウイグル・ジェノサイドに対する非難の大合唱が、自由世界で巻き起こっている最中である。
・そして一部の西側先進国は、非難の声を上げるだけでなく、制裁など実際の行動を起こしている。ウイグル人への弾圧や香港での人権弾圧をめぐって、アメリカは早い段階から中国への制裁を実施してきたが、2021年3月22日、欧州連合、英国、米国、カナダは一斉に、ウイグル弾圧に関わった複数の中国高官を対象とする制裁措置を発表した。西側諸国が対中制裁でこれほど足並みを揃えたのは1989年の天安門事件以来のことである。
人権問題をめぐる自由世界の中国包囲網はこのようにして形成され、「人権」を基軸とした「自由世界vs.中共政権」の戦いの火蓋が切って落とされた。そして第二の領域、すなわち安全保障の領域においても、自由世界対中国の戦いが熾烈に展開されている最中である。
・このように、2020年秋から2021年春の現在にかけて、「中共に弾圧されている人々の人権を守ること」、「中共の脅威に晒されている地域の平和を守ること」という二つの重大な命題で、自由世界主要国は連携して、中国共産党政権に対する総力戦的な戦いを挑み始めた。
(2020/12/30)
『コロナショック』
山田順 MdN新書 2020/6/11
<ダイヤモンド・プリンセス号>
・中国で、湖北省武漢市が「完全封鎖」されたのは、2020年1月23日のことだった。それ以前、1月16日に、日本でも初の感染者(中国人観光客)が確認された。1月末から日本ではマスクが品切れで買えなくなり、2月になると横浜港にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が入港して、連日、「新型コロナウイルス」について報道されるようになった。
・そうして3月16日、NY株価はついに下落幅2997ドル10セントという過去最大を記録し、まさに「大恐慌」と呼ぶほかない状況に陥った。このNY株価の大暴落で、コロナショックは確定した。しかし、このコロナショックは、過去のどんなショックとも違うものだった。
・安倍首相も、4月になって、ジャーナリストの田原総一朗氏との会談の席で、「第三次世界大戦はおそらく核戦争になると考えていたが、コロナウイルス拡大こそ第三次世界大戦であると認識している」と述べたというが、これは、世界各国のリーダーの認識を慌てて追随してみただけだろう。
<対コロナ戦争、戦いは短期か長期か?>
<ウイルスは変異(ミューテイション)を繰り返す>
<ゴールドマンサックスの顧客向けレポート>
・新型コロナウイルスとの戦いは、長期戦になると考えられている。治療薬とワクチン次第だが、それができないことには収束はありえないと言われている。
・NY株価が史上最大幅の暴落を記録した2020年3月半ば、ゴールドマン・サックスは顧客向けレポートで、収束を次のように予測し、顧客に一種の楽観論を提供した。
このレポートでは、アメリカでは国民の半数が感染し、感染のピークは2カ月後の5月半ばになるとしていた。要するに、国民の多くがウイルスに感染して「集団免疫」ができてしまえば、コロナ禍による社会と経済の混乱は収まるというのだ。
<国民がどんどん死んでいくのに耐えられない>
・ゴールドマン・サックスのレポートは、ざっと次のようにも言っていた。
《新型コロナウイルスは、従来の風邪と同様、北緯30~50度に発生が集中しており、寒い気候を好む。夏には少し収まるだろうが、冬には再発する。ただし、感染者のうち80%は無症状か軽症で回復し、15%が中程度の症状、5%が重症になる。重傷は高齢者に集中する。
こうして、アメリカでは約300万人が死ぬが、この死者数はアメリカの例年の年間死者数と変わらない。死者が倍増するのではなく、もともと死にそうな人間が新型コロナウイルスで死ぬのだから、死因が変わるだけで、全体の死者数はあまり増えない》
ここでのポイントは、死者数に関して、「もともと死にそうな人間が新型コロナウイルスで死ぬ」としていることだった。
・つまり、新型コロナウイルスは死にゆく高齢者の死期を早めるだけで、人類全体に大きな影響はない。死者を減らす、命を助けることは必要だが、集団免疫を早く獲得し、社会・経済活動を妨げないほうが大事だと言うのである。
しかし、アメリカ国民の半数が感染するとしても、その数は約1億6000万人である。そんなことに、アメリカ国民が耐えられるだろうか? その間に、多くの重症患者が発生し、さらに数百万人の命が失われる。
・当時、ドイツのアンゲラ・メルケル首相も英国のボリス・ジョンソン首相も、国民の半数以上が感染するという警告を国民に発していた。専門家の警告も「人類の6、7割が感染し、そのうち1~3%が死ぬ。感染のピークは5~6月になる」というものが多かった。
ところが、死者数の増加に耐えられなくなり、結局、イタリア、スペイン同様の「ロックダウン」(封鎖)政策に転じた。
<感染拡大を収束させるための二つの方法>
・そこで、コロナ禍から脱出できる方法を整理してみると、次の二つしかない。
(1) 人類の相当数が感染してウイルスに対する免疫を持つようにする。いわゆる集団免疫による収束を目指す。
(2) ウイルスに効く新薬、ワクチンを開発し、それまでは「検査」「隔離」「封鎖」により、感染拡大を防ぐ。
<集団免疫による収束は本当に可能なのか?>
・つまり、ある国が集団免疫を獲得しようとしまいと、現在のグローバル化した世界では、世界のすべての国が集団免疫を獲得しない限り、どの国も鎖国を続けなければならないことになる。人類全体の6、7割が抗体を獲得するまで、いったいどれくらいかかるだろうか?
また、集団免疫そのものに関する疑問もある。WHOは、過去に感染したかどうかを調べる抗体検査には懐疑的である。それは、たとえウイルスに対する免疫が獲得できたとしても、その免疫がどれくらい持続するかわかっていないからだ。感染すると一生免疫が保たれるなら、集団免疫は成立する。しかし、1年ほどで消えてしまうなら、集団免疫は成立しない。
<投資家が望むのは「早期収束と第二波なし」>
・また、早期収束を想定する人々は、感染爆発の第二波は起こらないとしていた。つまり、この先、NY株価は3月の大底に匹敵するような二番底はこないと見ていた。
しかし、これは非常に危険な見方だ。なぜなら、コロナショックは新型コロナウイルスの感染拡大そのものが引き起こしたものではないからだ。ウイルスは世界的な金融緩和で膨らんだ金融バブルの崩壊の引き金を引いたにすぎない。
つまり、コロナ禍がなくとも、NY株価は暴落し、金融市場のバブルはやがて崩壊を迎える。
<あと3年続くのか? 「スペイン風邪」の教訓>
・投資家たちが、早期収束を望むのはわかるが、それに掛けてしまうのは極めて危険ではなかろうか。
ビル・ゲイツ氏は新型コロナウイルスを「100年に一度発生するレベルの感染症」と称した。となると、100年前に大流行した「スペイン風邪」を念頭に置いて、今回のコロナ禍がどうなるかを考えてみることも必要だ。
スペイン風邪の流行は、1918年から1920年まで、なんと3年間も続いた。全世界で5億人が感染し、死亡者は3000万~4000万人に達したと言われている。
・それによると、3年間の総患者数は2380万4673人、死亡者数は38万8727人。当時の日本の人口は約5500万人だったから、なんと半数が感染したことになる。
<ペストの蔓延で人類は人口の多くを失ってきた>
・歴史上もっともひどかったとされる感染症の蔓延は、14世紀にヨーロッパを襲ったペストである。発症すると死に至ることが多いので「黒死病」と恐れられた。このとき、約7000万人だったヨーロッパの人口は、約3分の1にあたる2000万人以上を失ったという。イタリアでは、人口の8割が失われてほぼ全滅した村もあった。その結果、中世は「暗黒時代」となり、経済も文化も大きく滞った。
ペストの発生源については諸説あるが、もっとも有力な説は中国である。
・同じく大航海時代の新大陸航路も疫病の輸送路となった。ヨーロッパ人が持ち込んだペスト、天然痘、結核、コレラなどで、中南米の先住民の多くが滅亡した。
モンゴル人による中国王朝である元朝が崩壊したのも、ペストのせいと言われている。元朝を倒した明王朝は、異常気象による大凶作とペストの流行により衰えた元朝を、朱元璋が華南から反乱を起こすことで建国された。元朝の最盛期の中国の人口は1億3000万人と推定されるが、明朝初期には、その半分以下の約6000万人にまで減っていたという。
明朝は1644年に滅亡し、その後は、満州族の清が王朝を立てるが、このときも感染症が大流行したという。
・明朝末期の華北地方では、ペストや天然痘が猛威を振るい、少なくとも1000万人の死者が出たと言われている。同時に飢饉も続いて人口は減り続け、清が建国されたときの中国の人口は3000万人を割り込んでいたという。明朝で1億人以上まで回復した人口は、またしても3分の1以下になっていたのである。
<20世紀以降はインフルエンザが猛威を振るった>
・このように中国発の疫病の歴史は、近代になっても繰り返された。
1820年には広東でコレラが大流行し、翌年には北京にも広まった。このコレラは日本にも伝染した。
・20世紀以降では、ウイルスによる感染症のパンデミックは三度記録されている。いずれもインフルエンザウイルスによるものだ。そのうちの最大のものが、前記したスペイン風邪である。
インフルエンザウイルスは、大別してA型、B型、C型の三種類があり、このうち主に人間に感染して流行を引き起こすのはA型である。しかもA型のなかでも細かい種類があり、常に変異を繰り返している。
はたして、新型コロナウイルスが今後どのような経緯をたどるのかは、いまのところわからない。
ただし、これまでの歴史から見て、確実に言えることがある。それは、どんなかたちにせよ、人類はこのウイルスを撲滅するか、あるいはうまく共存するようになり、蔓延の惨禍を乗り越えて、次の時代を生きていくということだ。
<ペストの蔓延がルネサンスを用意した>
<ポストコロナはいままでと違う世界になる>
・ペストは、その後、17世紀にも大流行した。
とくにひどかったのは英国で、1665年から1666年にかけて、約10万人が死亡し、ロンドンの街は死体であふれたという。
・このように見てくれば、今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、人類に与えられた試練だが、その先には必ず明るい未来があることがわかる。
コロナ禍が短期で収束するのか、それとも長期にわたるのかは別として、感染が収束した後に訪れるポストコロナの世界は、これまでと違った世界になる。経済は復活し、社会は発展し、人類はより豊かになるだろう。
<ウイルスは人工的につくられたのか?>
<トランプ「チャイナウイルス」発言の真意>
・それは、ウイルスが自然発生ではなく、中国が人工的につくったものではないかというものだった。だから、「アメリカ軍が武漢に持ち込んだ」という趙立堅報道官の発言は、看過できなかったのだ。
<海鮮市場のコウモリからヒトに感染した>
・武漢市には「武漢ウイルス研究所」があり、研究所内には中国ウイルス培養物保存センターがあって、多くのウイルス株を保管している。そこが、ウイルスの発生源ではないかということは、早くから指摘されていた。
・しかし、米中が舌戦を始める前までのマスメディアでの主流なストーリーは、新型コロナウイルスは自然界のなかで突然変異によって生じた。それはおそらく、センザンンコウなどを中間宿主として、コウモリからヒトに伝染したというものだった。
中国の研究者たちは、そう発表していたし、中国政府もそれを認めていた。中国政府は、1月半ばの段階で、ウイルスの遺伝子情報を公開したので、人工説を唱える研究者は世界にはいなかった。
発生源は、中国の武漢市にある海鮮市場。そこで売られていたコウモリから中間宿主に感染。その後ヒトに感染するようになった。これが定説化していた。
<なぜ中国は、武漢を全面封鎖したのか?>
<ウイルスめぐる北京とワシントンの非難合戦>
<「ワシントン・ポスト」紙が口火を切った>
・マスメディアでウイルス人工説を最初に取り上げたのは、「ワシントン・ポスト」(WP)紙だった。「WP」紙が4月14日に、ジャーナリストのジョシュ・ロギン氏の記事で、アメリカ政府が武漢ウイルス研究所の安全基準について懸念していたことを明らかとする文書の存在を報道すると、「フォーブス」誌、「FOXニュース」などが、こぞって追随した。
<動物由来か? 人工か? どちらにも確証がない>
・《ウイルスはここで発生したのか?――「WP」紙と「FOXニュース」がその可能性を報道した。「WP」紙が入手した外交公電からは、当局者らがとくにSARSに類似したコウモリコロナウイルスの取り扱いをめぐる安全対策の不備に懸念を示していたことが明らかになった。
「FOXニュース」は、同施設で研究対象となっていたコウモリ由来のウイルス株に感染した人物が「〇号患者」となり、そこからウイルスが武漢の住民に広まった可能性があると伝えた。
中国の科学者らは、ウイルスは武漢の海鮮市場で動物からヒトへと感染した可能性が高いとしているが、ネット上では武漢ウイルス研究所が発生源だという陰謀説が拡散。アメリカ政府も調査に乗り出した。同研究所と中国外務省はこの説を否定している》
<なんとノーベル賞学者が「人工説」を唱えた>
・その本人というのは、1983年にHIV(エイズウイルス)を発見した功績でノーベル賞を受賞したリュック・モンタニエ博士で、語ったのは「新型コロナウイルスは人工的なものであり、武漢ウイルス研究所でつくられたのに違いない」というものだった。
ノーベル賞受賞者が人工説を断言しただけに、アメリカでも日本でも右派人間は喜んだ。これで、人工説にお墨付きが与えられたと思った。
<「人工説」「生物兵器説」が立ち消えた理由>
・こうして、新型コロナウイルス人工説は、ほぼ立ち消えになった。一時まことしやかに言われた「生物兵器説」は、モンタニエ博士の騒動後は、完全に葬り去られた。
その理由は、このウイルスにとって敵も味方もないからだ。敵も味方もなく、ヒトなら誰でも感染する。しかも、治療法がない。治療法がなければ味方も死んでしまうから、そんなものが兵器になるわけがない。
・最終的に、新型コロナウイルスは自然界由来ということがほぼ確定したと言っていい。
<武漢で開催された「世界軍人オリンピック」>
・しかし、新型コロナウイルスの発生源が、武漢の海鮮市場と特定できる証拠はない。そのため、武漢ウイルス研究所で保管されていたウイルスがなんらかの理由で流出してしまったという見方は消え去らなかった。
<アメリカ人の3割が「人工説」を信じている>
・“米中ウイルス・バトル”の渦中、4月14日、世論調査機関「ビュー・リサーチセンター」は、18歳以上のアメリカ人に、ウイルスの起源に関してのアンケート調査を行った結果を公表した。それによると、43%が「自然発生した」と答えたが、23%が「意図的につくられた」、6%が「偶然つくられた」と答え、計29%が人工説を信じていた。なんと、アメリカ人の約3割が、新型コロナウイルスは人工的につくられたと信じていたのである。
<ウイルスは世界政府樹立への布石>
<ウイルスは「NWO」によってバラ撒かれた>
・コロナ禍で世界は危機に陥ったが、危機になるときまってささやかれるのが「陰謀論」である。この章では、あえてそれを紹介してみたい。
その理由は、コロナ禍が続いていくと、収束後の世界が陰謀論が描くような“暗黒の世界”になる可能性があるからだ。
今回のコロナ禍でもっとも多く語られている陰謀論は、毎度おなじみの世界のパワーエリートたちが、人類の数を減らして家畜化し、それを支配するというものだ。そのために、人工的につくられた新型コロナウイルスがバラ撒かれたというのである。
陰謀論の世界では、あまりのも有名な「NWO計画」というものがある。これは、「新世界秩序」(New World Order:NWO)のことで、パワーエリートたちは世界政府を樹立してNWOをつくろうとしている。NWOは、人類の数を減らし(つまり人口を抑制し)、その後、徹底した管理社会をつくる。そうして、人類は思想や行動を完全に統制・制御されて生きていくことになる。
・また、ロックフェラー財団が10年前に作成したという『パンデミックの計画書』(ウイルスのパンデミックによって全体主義になるという未来予想)も持ち出されている。さらに、殺害されたリビアの独裁者カダフィ大佐が、かつて国連で「インフルエンザはアメリカの生物兵器」と述べたことを指摘して、新型コロナウイルスは人工的につくられたと示唆したりする。
・NWO陰謀論では、その首謀者は、マイクロソフトの創業者で世界第2位の大富豪ビル・ゲイツ氏となっている。ゲイツ氏は、2015年の{TED}の講演会で、「今後数十年で1000万人以上が亡くなる事態があるとすれば、戦争より感染性のウイルスが原因だろう。ミサイルより病原菌に備えるべきだ」とスピーチしていた。これが、新型コロナウイルスの蔓延を預言していたものとされ、ゲイツ氏らパワーエリートたちが新型コロナウイルスをつくり、NWO計画を進めている証拠だとされたのである。
・ゲイツ氏を中心とするパワーエリート集団には、国際金融資本、国際機関幹部、主要政治家などが参加している。古くからの陰謀論にしたがえば、ロックフェラー、ロスチャイルド、イルミナティ、フリーメーソン、世界300人会議、ビルダーバーグ会議など、すべてが世界を支配する集団である。
彼らは国家の枠組みを超えた存在で、アメリカではもっぱら「Deep State」(ディープステート)と呼ばれている。
彼らの計画は、「ウイルス散布」→「経済破壊」→「人口削減」というように進んでいき、最終的に世界政府が樹立される。
<ビル・ゲイツ氏「ありがとう」動画が大炎上>
・陰謀論を活気づけさせたのは、ビル・ゲイツ氏自身のこれまでの言動にも原因がある。ゲイツ氏は以前から「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」を通して「グローバルヘルス・プログラム」活動を行い、ワクチンや医薬品の開発などに資金を積極的に投じてきた。今回のコロナ禍でも、2020年5月までに総額で2億5000万ドル(約275億円)の資金を提供している。
・とくに、インスタグラムは、ゲイツ氏が「ありがとう、医療従事者のみなさん」と書いたサインを窓際に掲げる3秒の動画を投稿したので、激しく炎上した。
<トランプ支持の極右が陰謀論をつくった>
・ビル・ゲイツ首謀の陰謀論をつくって拡散させたのは、極右集団「QAnon」(キューアノン)の一派とされている。これに、右派の論客たちが次々に飛びついた。彼らはみなトランプの支持者で、民主党とリベラルを敵視している。
・このようなアメリカの右派の人々とトランプ支持者たちには、「大統領はディープステートと戦っているのだ」という、根拠のない信念がある。前大統領のバラク・オバマ氏までディープステートの一員で、トランプ大統領は彼らの支配からわれわれを救ってくれているのだと思っている。
そのため、陰謀論は沈静化しないのである。ラシュ・リンボー氏はついに、「コロナ禍は中国人が仕組んだ陰謀だ」と言い出し、トランプ大統領もそれを真に受けたのか、中国非難を繰り返すようになった。
<ポストコロナ世界は「新しい中世」になる>
・それでは、ここで、今回の陰謀論が本当だと仮定してみよう。そうして、コロナ禍が収束した後のポストコロナの世界はどうなっているかを考えてみたい。
陰謀論によれば、人間は世界政府の監視下で自由を奪われ、統制された生活を余儀なくされる。この政治体制は、コロナ封じ込めに成功したとされる中国の政治体制とそっくりではないだろうか。
人々はデジタルIDを付けられ、常時、行動を追跡され、思想までコントロールされる。コロナ禍のなかで、行動が監視され、集会が禁止され、ソーシャルディタンシングを守ることに慣らされてしまうと、ポストコロナの時代になっても、それがおかしいとは感じなくなる恐れがある。
まして、コロナ禍は格差を拡大させるので、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる。中間層は転落を余儀なくされ、ポストコロナ社会は、少数の富めるパワーエリートと圧倒的な貧しい人々の二極社会になると予想される。
となると、これは欧州中世の暗黒時代の再来ではなかろうか? ペストの蔓延で「暗黒の中世」は終わりを告げたとされるが、今回の新型コロナウイルスは、当時とはまったく逆の方向に社会を変えていってしまう恐れがある。
<「新しい中世」は「グローバル階級社会」>
・この論文によると、私たち世界の政治経済秩序の大きな転換期に直面していて、その変化は16~17世紀の中世から近代への変化に匹敵するものだという。そして、次の世界秩序は「中世世界」に似たものになるというのだ。中世世界においては、キリスト教が唯一の権威だった。キリスト教は国家の権威の上に存在していた。
新しい中世においても同じで、領土的主権、国境、国内と国際の区別などを基盤とした「国民国家」は力を失い、国家を超えた権威が成立する。それは、リベラリズム、デモクラシー、エンバイロンメンタリズム(環境主義)などだ、とコブリン教授は指摘した。
しかし、コロナ禍はそうした普遍的なイデオロギーによる世界政府の確立により、デジタル支配による覇権的世界政府の確立に世界を向かわせる可能性がある。
また、「新しい中世」が、グローバル階級社会になるという見方もある。それを示したのが、ジェレミー・シーブルック氏の『階級社会 グローバリズムと不平等』だ。
この本は、世界のグローバル化によって生じた不平等を告発し、「新しい貧困」と「新しい階級」を描き出している。いま、この本を再読すると、ポストコロナの世界では、ますます「新しい貧困」が進み、一部の上流階級が支配するようになることが予感される。
<陰謀論は一般庶民の傷ついた心を癒す>
・そうではない証拠は山ほどにあるのに、人々は陰謀論のほうを信じてしまうのである。今回の新型コロナウイルスも同じだ。陰謀論とはいかないまでも、根拠のない言説が洪水のようにあふれ、それを信じる人が多く出た。
陰謀論というのは、この世界の出来事にはシナリオがあり、それは、“選ばれた人々”によってつくられている。これが、すべての陰謀論の基盤である。
選ばれた人々というのは、たとえば金融を支配するロスチャイルド家などの「ユダヤ人ネットワーク」であり、世界のトップが参加しているという「300人委員会」であり、あるいは昔からの闇の権力と言われてきた「イルミナティ(秘密結社)」などだ。
いずれも、一般庶民、とくに貧しい人々からは、はるかに遠い存在である。
こうした黒幕が世界を動かしているので、自分たちはなにもできない。自分の人生も世界も変えることはできない。そう考えてしまうストーリー構造になっている。
・つまり、陰謀論は、一般庶民、とくに貧しい人々、不幸な人々にとって、傷ついた心を癒してくれる。自分の貧しさ、自分の不幸は、自分のせいではなく、すべて仕組まれていたのだから、自分を責める必要がなくなるのである。
これが、私が考えた陰謀論が広まる理由である。
<金融バブルの崩壊と第二次大恐慌>
<英国の有名な童話「三匹のくま」の教訓>
・ここ数年、世界規模の金融緩和による「適温相場」が続いてきた。しかし、それはやがて終わる。ただし、それがいつになるかわからないという雰囲気のなかで、突如、襲ってきたのが「コロナショック」である。NY株価の暴落をきっかけに、世界経済は未曽有の危機に陥った。
<なぜ、「適温相場」は崩れるとされたのか?>
・未来永劫にわたって株価は上がり続ける。そう信じている人々がいる。それは、これまでの歴史を振り返れば、ある意味、まったく正しい。世界経済は、長い目で見れば拡大を続けてきたからだ。それにともない、株価は何度か下落を繰り返しながら上がり続けてきた。
・債務残高がいくら膨らんでも、資金の流動性が続いている限りデフォルトはない。しかし、なにかのキッカケで金利が上昇すれば、リーマンショックのような金融危機が訪れる。
このような観点から、金融バブルはやがて弾ける。適温相場は崩れるとされてきたのだ。
・したがって、ひとたび金融バブルが崩壊すれば、リーマンショック以上の危機が起こり、世界経済は大幅に後退する。アメリカ発の金融危機は全世界に及び、中国も欧州も大きく落ち込むだろうと、投資家は警戒してきた。
・ミンスキー・モーメントとは、簡単に言えば、バブルが弾けて崩壊に転じる瞬間のことだ。経済学者のハイマン・ミンスキーが、金融の不安定性を説いた金融循環理論のなかで唱えた。景気がいくらよくなろうと、債務が増加すれば、過剰な資産形成から、やがて資産価値が下落する局面(バブル崩壊)が必ずやってくる。これが、ミンスキー・モーメントであり、2008年のリーマンショックもミンスキー・モーメントだった。
「バブルがいつ弾けるのか、それを予測することは誰にもできない。ただ、バブルは必ず崩壊する」
と、経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスは言った。
・コロナショックは、このミンスキー・モーメントを確実に引き寄せる。なぜなら、世界中で、コロナ禍に対する経済政策が行われ、そのための金融緩和が行われ、さらに莫大な債務が積み上がったからだ。
<IMF大甘予測>
・コロナショックによって、あらゆる経済指標は意味を失った。それによって生み出される経済予測も意味を失った。
・コロナショックが起こってから、相場に影響を与えるのは、感染者数の増減、新薬やワクチンの開発など、これまでとまったく違う情報になった。
・コロナ禍が続いている限り、経済予測はことごとく外れると考えるべきだ。
<アメリカ経済は今後どこまで落ちるのか?>
・また、「CNBCニュース」の報道によると、ニューヨーク連邦準備銀行は、アメリカの世帯債務が2019年に急上昇し、リーマンショック以来最大の年間増加を記録したと公表したという。アメリカ人のほとんどがクレジットの債務を抱えて暮らしている。消費はほとんどクレジットで行われている。新型コロナウイルスは、こうしたアメリカの一般世帯を直撃したことになる。このようなことを考えれば、アメリカ経済が1年で回復に向かうなどとはとても思えない。GDPの落ち込みも一桁ですむわけがない。
<社会を底辺から支えるギクエコノミーの崩壊>
・アメリカ経済の7割を占めるサービス業で、廃業、倒産、レイオフ(一時解雇)が相次いでいる。ロックダウンは経済的な大虐殺と同じで、サービス業から全業種に拡がり、大不況をもたらした。
泡を食ったトランプ大統領は、経済再開を急いだが、感染者が出続ける限り、経済は元には戻らない。
・最近のアメリカ経済は「ギグエコノミー」で回っていると言われている。ギグとは、日本で言う「ライブ」のことで、ライブハウスなどでギタリストなどがライブセッションをすることを指す。そこから転じて、インターネットなどを通じて単発の仕事でおカネを稼ぐのがギグ労働で、そうした仕事でお金が回っている経済がギグエコノミーである。
現在、アメリカの労働者の36%がギグエコノミーで働いているとされ、その職種は、レストランのウエイター、仕出屋、ウーバーの運転手、ホテルやビルの掃除人、イベントのスタッフ、企業のアウトソース事務、プログラマーなど多岐にわたっている。
これらのギグ労働者をコロナ禍は直撃した。アメリカでは約1550万人が、飲食店で働いており、そのうちの約300万人が貧困ラインにいる。彼らは仕事がなくなって、家賃が払えず、ホームレスになる者も出た。
<株価再暴落と金融崩壊で「第二次大恐慌」に>
・今後考えられるのは、株式市場の再暴落と金融バブルの崩壊である。
・NY株価が暴落後に大きく反発したのは、FRBによる無制限の量的緩和と大規模な流動性供給に加え、トランプ政権が次々と大型の経済対策を打ったからである。
ただし、2万9000ドル台まで上がった株価の上昇過程を振り返ると、さらなる暴落(二番底)の可能性は高い。NY株価が上昇し、「適温相場」を続けられてきたのは、企業の好業績もあるが、金融緩和マネーと超低金利のおかげだ。超低金利で借り入れ、それを自社株買いや配当に回す「株主還元」が大ブームになった。
・一方の金融相場は、今回のコロナ禍による緩和で、もう限界である。これまで、アメリカの財政赤字とそれに伴う米国債の発行は、海外マネーとFRBによって支えられてきた。海外マネーというのは、主に日本と中国である。しかし、コロナ禍で日本も中国も、もう米国債を買う余力がない。実際のところ、リーマンショック以降は、米国債の最大の買い手はFRBとなっている。これが「QE2」と呼ばれた量的緩和で、いわゆる「財政ファイナンス」だ。
・株価の再暴落と金融バブルの崩壊が起これば、アメリカ経済は1929年の大恐慌をはるかに超える落ち込みを記録し、「第二次大恐慌」に突入する。すでに、実体経済のほうは大恐慌時を超える状況になっている。
大恐慌では、1929年から1933年にかけて、アメリカのGDPは27%も減った。アメリカがこのどん底から立ち直ったのは、1941年からの戦争特需の発生からだ。
とはいえ、アメリカ経済は世界最強である。アメリカは食料も資源もあるから、国を閉ざしても十分にやっていける。
<できるのか「グッドバイ・チャイナ!>
<反グローバル化で国境は閉じられる>
・ポストコロナの世界に対して、さまざま見方が入り乱れている。それを整理してみると二つの世界観があることに気づく。
一つは、グローバル化が大きく後退し、世界の国々が国境を閉ざす世界。もう一つは、逆にグローバル化が促進され、世界規模の連携が強化される世界だ。
・こうした状況を見ると、今後の世界では反グローバル化が進むのではないかと思える。人々は以前のように移動しなくなり、多くが国内に止まる。コロナ禍の教訓から、各国は、医療リソースをはじめとする健康、安全にこだわるようになる。食糧安全保障も進むだろう。どの国の政治家も、トランプのように「自国第一主義」を掲げ、グローバル化は後退してしまうのか。
そういう世界が訪れると、多くのエコノミストたちが口をそろえる。はたして、この見方は正しいのだろうか?
<グローバル化を止めれば経済成長も止まる>
・歴史を振り返れば、グローバル化が大きく後退したことは、これまでに何度もあった。世界の歴史はグローバル化と反グローバル化の繰り返しと言ってもいい。
20世紀においても、大恐慌前まではグローバル化が進んでいた。ところが、大恐慌とともに各国はバラバラになり、政治・経済のブロック化が始まった。大恐慌では世界の国々の約4割が事実上のデフォルトに陥って、世界市場から退場していった。これらの国が再び世界市場にアクセスできるようになったのは、第ニ次世界大戦が終わってからである。ブロック経済は、結局、主要国の対立を激化させ、第ニ次世界大戦を引き起こしてしまった。
この教訓から、グローバル化を止めてはならない、よりいっそう強化すべきだと、別のエコノミストたちは主張する。
・前記したように、コロナ禍は国家が強権を発動しなければ防げないことを、私たちに思い知らせた。しかし逆に、一国だけで解決できる問題ではないことも、私たちに思い知らせた。感染症は、人類全体の脅威だからだ。この先、新型コロナウイルス以上に強力なウイルスが襲ってくる可能性もある。
そう考えれば、ポストコロナの世界では、よりいっそうの国際協調が必要ではなかろうか。そうしなければ、人類は世界全体の問題を解決できない。
<先に経済再開した中国がアメリカを逆転する?>
・反グローバル化、グローバル化、どちらに進むにせよ、ポストコロナの大問題は、米中両大国の「覇権争い」である。このことに、異論を唱える者はいない。コロナ禍でいったん中止になったように見えるが、米中の覇権争いは続いている。
エコノミストの多くが、コロナ禍の影響をもっとも大きく受けるのがアメリカで、中国はいち早く立ち直ると見ている。
・いくら中国が真っ先に経済活動を再開させたからといっても、かつてのような成長軌道を取り戻すことができるだろうか?
2020年の世界のGDPは、すでに前年比で20~30%の減少が見込まれている。コロナ禍はこのまま終わらず、第二波がくる可能性も指摘されている。とすれば、「第二次大恐慌」は相当長引く。そんななかで、中国一国だけが、再び経済成長していけるだろうか?
<医療分野で中国に依存してきたアメリカ>
・じつは、中国には大きなアドバンテージがある。それは、アメリカが、中国の医薬品、医療機器に依存していることだ。
中国は産業政策「中国製造2025」の重点分野の一つとして、医薬品産業の強化を図ってきた。その結果、中国の医薬品産業は、近年、急成長し、とくに「抗生物質」や「API」(医薬品有効成分)、「ジェネリック薬」などの分野で、世界市場で高いシェアを占めるようになった。その結果、アメリカは、抗生物質の80~90%、鎮痛・解熱剤「アセトアミノフェン」の70%、血栓症防止薬「ヘパリン」の40%などを中国に依存するようになった。もちろん、コロナ対策で必要なマスク、手袋、防護服、人工呼吸器も中国依存である。
<中国に「コロナ蔓延」の責任を取らせる>
・政治学者に言わせると、アメリカの選択肢は二つある。一つは、国民の生活、安全、健康、幸福を最優先して、この先は中国と協調していくこと。もう一つは、世界覇権の維持が最終的な国益につながるとして、この先も中国の覇権挑戦を退ける戦いを続けることだ。
<「中国寄り」のWHOを拠出金の停止で脅す>
・トランプ大統領は、4月14日、WHOへの拠出金を停止すると表明した。本来公平であるべきWHOが「中国寄り」の立場を取ったせいで、適切な警告を出さず、その結果、全世界に感染を拡大させたと指摘した。
<トランプ政権の危険な「国際機関」離脱戦略>
・国際機関のトップやそれに準ずるポストに、中国の息のかかった人間を据えるのは、中国の国際戦略である。
・アメリカは単に国際機関離れをするのではなく、国際機関の改革に乗り出し、アメリカ中心の自由主義、資本主義、民主主義を基盤とする組織につくり変えなければならない。それが、世界の覇権国家としての責務だ。
たとえば、現在、ほとんど機能しなくなっている国連は、「安保理改革」や「二院制改革」など、改革すべき点が山ほどある。
<超党派で議会をあげて中国に対抗する>
・日本では誤解されているが、中国との覇権戦争は、トランプ大統領が始めた勝手な戦争ではない。「中国封じ込め政策」は、共和党と民主党を超えた超党派(バイパーティザン)の戦略であって、アメリカは一枚岩である。
<アメリカばかりか欧州諸国も中国に反発>
・「中国のほうがウイルスに上手く対応していると単純に信じてはいけない」
こんなきつい言葉で、中国の情報公開への疑問を呈したのはフランスのマクロン大統領だ。彼は、感染拡大が始まった当初から、中国には懐疑的だった。
<「脱中国」「中国封じ込め」が進んでいく>
・このように見てくれば、ポストコロナの世界で中国の力が増し、逆にアメリカの力が衰えて、世界は多極化、フラット化していくという見方には無理があるのがわかる。
いくらトランプのアメリカが国際協調を乱すからといって、中国サイドに立つ国は出そうもない。むしろ、アメリカといっしょになって、中国の責任を追及するだろう。そうして、中国離れが進んでいく、そう見るのが、妥当ではないだろうか。
・ポストコロナの世界では、東南アジア圏が中国に代わって「世界の工場」になる可能性が高い。
そうして、中国経済は衰え、中国の「アメリカを超える超大国」になるという「中国の夢」は消えていく。となると、コロナ収束後にアメリカ経済が回復すれば、世界は中国抜きのグローバル化した世界になる。そうして、アメリカによる一極支配が強化されるだろう。
それを推進するのは、次期アメリカ大統領である。
<集団免疫ができるまで経済は回復しない>
・2020年5月の時点で、コロナ禍から脱して経済活動を全面的に再開しているのは、主要国では中国だけである。習近平政権は3月半ば以降、ウイルスを抑え込んだ自国の体制の優秀さを国民向けに強調し、「中国は必ず双勝利できる」と言ってきた。「双勝利」とは二つの勝利のことで、一つがウイルスの撲滅で、もう一つが経済復興である。
・これで、中国経済が再び成長ができるだろうか?
2019年の中国の対外輸出総額は2兆4984億ドル、人民元に換算すると17兆4888億元で、中国のGDPの17.4%を占めている。中国経済は輸出依存が高いと言える。
では、海外との交流ができないまま、輸出をこのレベルまで回復させられるだろうか? 輸出するには輸出先が必要だが、その輸出先が中国と同じように感染を収束させていなければ、中国製品は売れない。
これは、中国ばかりの話ではない。一国内だけで完結する経済を持っている国以外のすべての国にあてはまる。コロナ禍は一国だけでは解決しない。コロナ禍は、世界全体で収束しなければ終わらないのである。
したがって、収束後の世界でボイコットされるのが確実な中国経済は、永遠に回復しない。
これまで経験したことがない長期低迷に入るだろう。
<希望にあふれた世界>
・新型コロナウイルスのパンデミックは、人類に与えられた試練と言える。この試練を乗り越えれば、いままでとは違う世界が訪れ、経済も必ず復活する。
おそらく、ポストコロナの世界は、希望にあふれた世界になるのではないだろうか。人類はさらに飛躍的に発展すると思われる。
ただ、それがいつから始まるのかわわからない。
『変質する世界』
ウィズコロナの経済と社会
「これから」を本気で考える
Voice編集部 編 PHP新書 2020/7/15
<「開疎化」、「ウイルスの心配より、健康で長生きしてもやることがないことのほうが問題」>
・新型コロナ禍という未曽有の危機に出合ったのちの世の中は、これまで以上の速度で変質し続けている。未来を見通すことはきわめて難しい。だからといって、思索を止めることが許されるだろうか。世界が劇的に変質していくのならば、日本と日本人ははたして、どのような経済や政治、そして社会の新しいかたちをめざすべきなのか。一人ひとりが決して借り物ではない「自分の言葉」で考えなくてはならないはずだ――。
・昨今、「書店に人が戻っている」という声を聞く頻度が増えた。SNSの爆発的な普及により情報が氾濫し、また世界がより複雑化する時代だからこそ、諸問題に対して時間をかけて向き合える「遅いメディア」、すなわち書籍・雑誌が逆説的に求められているのかもしれない。
<『アジャイル(迅速かつ柔軟)な仕組みが国を救う 安宅和人』>
<「withコロナ」は当面続く>
・(安宅)新型コロナを終息させるための方法は、大きく二つ。一つは、ウイルスを制圧できる治療薬を開発すること。もう一つは、自然感染がワクチンによって抗体保持者を増やして集団免疫を確立することです。ところが現実問題として、いずれも容易ではない。
・そこで、カタストロフィック(破滅的)なストーリーとして「フリーフォール(自由落下)」を起こす。すなわち自然感染に委ねて集団免疫を形成する考え方もあります。しかし、もし実行に移せば、その過程で人口の0.5~1%が死に至ると推定されます。日本でいえば100万人規模の命を犠牲にするわけで、大戦争クラスの死者数です。成熟した民主主義国家として採ることができない施策であることは明白です。
・つまり、われわれはどの戦略を採るにしても、少なくとも2年は「withコロナ」に向き合わざるをえない。これはさほど難しくない数式で推定できることであり、大学で1・2年生が主として履修する講義で課題として出したほどです。
・そもそも人類は有史以来、つねに感染症と闘ってきました。コロナとは別の細菌やウイルスが再び襲ってくる可能性も十分にあります。近年でもSARSやMERSが流行したように、平均すれば4~5年おきに未知の伝染病が世界を襲っている。そう考えれば、かつてコレラや赤痢に悩まされた時代のように、感染症と共存しながら社会を回す仕組みを早急に確立しなければなりません。
・三つ目が、今回のウイルスは、肺を集中して攻撃してこれまでにないスピードで破壊すること。酸素マスクでは対応できず、入院して1日で気管挿管が必要になる割合が多いというのは尋常ではない病気です。
四つ目は、世界がグローバルにつながっていながら、人の流れが止まり、飲食・小売・交通・リゾートに代表されるオフライン側の経済の多くが止まってしまったことです。結果、公的な経済処置を通じた莫大な未来への負の遺産も生まれました。これほど世界的に大きな経済的打撃を与えた疫病は近現代では初めてでしょう。
・近代において感染症がいかにグローバルに蔓延していたかがわかります。16世紀にアステカ帝国を滅亡させたのも、スペインから到来した天然痘だった。まさしく、世界の歴史そのものが感染症と共にあったのです。
<危機対応の柔軟な仕組みを構築せよ>
・(安宅) まずは、政策の意思決定システムを、国会で行なわれている揚げ足取り的なものから、タスクフォース型の仕組みにアップデートする。新型コロナへの対応では、たとえば他の先進国で抗体検査の審査が通ったら、日本でも迅速に行なえるようなフレキシブルな仕組みをつくる。政策判断としては、現在は「有事」であることを前提とし、止血的な有効性と過剰なコストの回避を軸とする、これらのガイドラインの構築が急務です。
・いずれにせよ政治家の俗人的な能力ではなく、その根底にあるシステムに注目して刷新しなければ、不連続な変化に対応しうる新しい日本をつくることは叶わないのではないかと思います。
<「開疎化」のトレンドを押さえよ>
・ところが今回のコロナ危機によって「密閉・密接×密」から「開放×疎」な価値観へと向かう強いベクトルが働き始めている。私はこのことを「開疎化」と呼んでいます。
ただし、だからといって都市化の流れが完全に止まるわけではありません。
・また、接触から非接触への転換も需要なポイントです。近年、中国で急速にキャッシュレス化が広まりましたが、それは偽札問題以上に、現金が汚かったことが大きい。中国では、銀行員など日常的に現金に触れる人は肺炎にかかるリスクが数倍に高まることが知られています。「withコロナ」時代に入り、これは中国固有の問題ではなくなりました。
<持続可能な「風の谷」を創る>
・コンパクトシティは経済効率の良い「都市」を地方空間に持ち込むもので、コロナ前の時代では、たしかに間違った手法ではありませんでした。しかし、多くの密をつくり出す施策であり、「withコロナ」以降の世界で行き詰るのは目に見えてきています。ここでも大都市同様の個別空間の開疎化が必要だと考えられます。
<すべての学生にデジタル端末を無料貸与すべき>
・僕としては、小学生から大学生まですべての学生のいる家庭で通信帯域をすぐに整備し、高速デジタル端末を無料で貸与すべきだと、声を大にして言いたい。
<『野放図な資本主義への警告だ 長谷川眞理子』>
<人類はウイルスを撲滅できるか>
・(長谷川) 人類がウイルスを完全に撲滅し、勝利することはありえません。人間の抵抗力の進化よりもウイルスが変異する速度のほうが速いため、際限がないからです。今回の新型コロナウイルスが終息したとしても、また別のウイルスがいずれ出てきます。これは人間とウイルスの「終わりなき闘い」といえます。
・一方のウイルスは自分で細胞をもたず、大きさや仕組みが細菌と異なるため、抗生物質は効きません。インフルエンザやノロウイルスが定期的に流行するように、今回の新型コロナのようなウイルスを撲滅するのは容易ではありません。
<ウイルスが変質した可能性>
・変異の可能性については、遺伝子解析をすれば、かなりの精度で明らかになります。新型コロナは三種類の変異パターンに大別されるようです。中国・武漢のコウモリやセンザンコウから見つかったのがAタイプで、中国や日本でも確認され、米国やオーストラリアで感染者が多かった。韓国などの東アジアで広まったのが、Aが変異したBタイプ。そしてイギリスやイタリアなど欧州を襲ったのが、さらに変異したCタイプです。
ウイルスは変異するほど毒性が強まる傾向にあるので、Cタイプと推定される欧州で致死率が高かったのは不思議ではありません。
<進化生物学は優生主義とは別物>
・ウイルスは人間だけではなく、あらゆる生き物に感染していきます。そのとき、ウイルスが自分のゲノム(遺伝情報)を宿主である生物のゲノムに入れ込む場合がある。すると罹った宿主は、自分の遺伝子を複製するときにウイルスの遺伝子も複製してしまいます。そのゲノムが次世代に継承されていくわけです。
<現代は複雑化した囚人のジレンマ>
・それに現実の国際社会ではさまざまな事柄がからみあっているので、何をコストとし、何をベネフィットと捉えるのかが非常に複雑化している。米中のように価値観の異なる国同士だと、その判断はより困難になるでしょう。また、米国のトランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を標榜していますが、コスト・ベネフィットはどのスパンで見るのか、という問題もあります。「アメリカ・ファースト」は短期的な見方ですね。われわれはいま、高度に複雑化した社会的ジレンマに直面しているのです。
<政治判断と根拠とロジックを示せ>
・誰も命令していないのに自主規制が働くと、負のスパイラルに陥る場合があります。政府が「自粛」と言うと、個人は確かな理由をもっていないのに、周りに同調して行動する。政府は命令しているわけではないから、責任をとらない。そういった曖昧な動きが連鎖して、ずるずるとわけのわからない相互監視状況が生まれ、悪循環に向かう危険性を孕んでいます。戦前の村社会と同じだと思います。
<社会構造そのものが問われている>
・海外の事例に学び、備えのノウハウを蓄える必要があるでしょう。危機管理は感染症だけではなく、たとえば災害時にも必須です。日本は東日本大震災を経験していますから、それを自国で伝承していくのみならず、国際的にも重大な教訓として活かす余地があると思います。
<『コロナと大震災の二重苦に備えよ デービッド・アトキンソン』>
<企業支援の対象が間違っている>
・経済対策のうち真水(付加価値を直接増やす効果のある対策)の規模が小さいのは仕方がないと思います。国債と借入金などの残高を合計した日本の「借金」は、2019年末時点で約1110兆円であり、世界で突出して厳しい財政状況にあります。今回の給付は将来世代が返済する必要があるわけで、はたして最善の方策だったのか。国民は冷静にみなければなりません。コロナ危機が長引けば給付は一度では済まされず、ますます国の財政を圧迫するでしょう。
さらに最大の問題は、政府による企業支援策の対象が、生産性の低い小規模事業者に偏っていることです。
・日本企業のうち大企業はほんの一握りで、99.7%は中小企業です。また、報道ではよく大雑把に「中小企業」といわれますが、そのなかでも小規模事業者が85%、中堅企業が15%です。各々の定義は業態によって異なりますが、製造業であれば、従業員数300人以下が中堅企業、20人以下が小規模事業者になります。
・ところが、小規模事業者の雇用者数は全体の2割ほどにすぎず、46%の日本人は中堅企業で働いています。小規模事業者は法人の数こそ多いものの、1社に働く従業員数が少ないため、雇用の総数は多いとはいえない。また、小規模事業者の創出付加価値は全体の14%にすぎない。日本の雇用者全体を考えれば、小規模事業者ではなく、中堅企業が最も核になります。
今回の雇用調整助成金は企業の規模を無視した一律のもので、そのメリットを受けるのはほとんどが小規模事業者です。しかも助成の基準を最低賃金にしているので、その雇用比率が高い小規模事業者の恩恵が大きい。本来であれば中堅企業を守る政策を優先するべきにもかかわらず、小規模事業者を優遇している。いま本当に求められるのは、「多くの法人」に対してではなく、「多くの就業者」に対して支援を届けることなのです。
・日本の厳しい財政状況は、人口減少によって今後ますます加速します。GDPが増えていない状況で際限なく財源を使うことは、将来世代への負担を徒に増やすばかりです。
・財政出動だけでは特効薬になりません。産業構造の改善策がないままでは逆効果です。繰り返し強調しますが、次世代への負担を考えれば野放図な措置はとるべきではありません。現実問題として、財務省もその考えは採用しないでしょう。
忘れてはいけないのは、危機はコロナだけではないということ。もしも近い将来に大災害が起これば、その経済的打撃は計りしれない。経済被害と資産被害を合わせた額は首都直下型地震で778兆円、南海トラフ巨大地震で1410兆円に及ぶといいます。日本がコロナと震災の二重苦に直面したとき、放埓な財政政策のしわ寄せが未曽有の危機をもたらす事態は避けられません。
<コロナ危機でも断行すべき最低賃金の引き上げ>
・そもそも最低賃金を引き上げるべき理由は、日本の生産性を向上させるためです。日本がこの先、人口増加による経済成長を見込めない以上、国民1人ひとりが生み出す価値を高める必要がある。最低賃金で労働者を雇用する企業の多くは生産性の低い企業ですから、賃上げをすれば、生産性の確実な底上げが期待できる。さらに、最低賃金で働いている人は消費性向が高いため、経済効果に直結しやすいことがわかっています。今後デフレが懸念されるため、需要喚起はますます大事になってきます。
・たとえば英国では、1998年に最低賃金制度を導入し、その後20年間、段階的に2.2倍にまで引き上げました。その結果、生産性が1.7倍も改善しました。また失業率の上昇は見られず、実質賃金は向上した。最低賃金で労働者を雇っていた企業における雇用の悪影響はみられず、むしろ人件費の増加の対応策として生産性向上を試みたことが確認されています。失業率は大幅に低下しています。
第二次安倍政権以降、最低賃金が引き上げられている事実は評価すべきですが、いまだにその基準は都道府県ごとに設定されています。雇用調整助成金は全国一律なのに、最低賃金がそうなっていないのは矛盾している。早急に全国一律の賃上げへと舵を切るべきです。
<「中小企業が宝」との価値観から脱却を>
・それを踏まえて日本企業の趨勢を中長期的にみると、「倒産・休廃業する企業が増える=失業者が増える」という論理は成り立っていない点が重要です。きわめて短期的な数字は別として、じつは企業数と雇用者数には相関関係も因果関係もありません。日本では1999年以降、倒産や休廃業により約124万社の企業が減っています。一方、その間に全体の就業者数は増えている。倒産・休廃業した企業のほとんどは社員数が一桁の小規模事業者であり、中堅以上の企業がなくなるよりは、全体の雇用者への影響がきわめて少ないからです。その労働者は中堅企業と大企業に移転しています。
・「中小企業が宝」という日本特有の価値観からいますぐにでも脱却すべきです。
<高価格・高付加価値の観光戦略に転換せよ>
――新型コロナによる経済的影響は業種によって異なります。とりわけ宿泊業、飲食業、小売り業等は大打撃を受けています。
(アトキンソン) 自然災害の専門家はよく「災害はその国の弱点を攻める」といいます。今回の新型コロナも「天災」と捉えるならば、日本の産業構造の急所を突いているのかもしれない。この危機を契機に、日本経済を支える大本を強くする必要があります。政府は国の財政状況を見極めながら、産業構造の円滑な移行を進めるべきです。
・大きな転換点であると同時に、むしろチャンスだと捉えています。私はかねてより、日本は観光にもっと「稼ぐ」思考を取り入れ、高付加価値を生み出すべきだ、と主張してきました。先ほど述べたように、観光収入の半分を占める宿泊・飲食業は、ほとんどが小規模事業者です。これらの企業の生産性を上げなければ、インバウンド戦略の成功はありえない。
生産性向上のためには設備投資が欠かせません。それができずに長年衰退している観光業は、コロナ禍を機に変わる必要があります。
・高価格・高付加価値の事業を展開するべきでしょう。アジアのような近接した国から短期間の滞在で来る人だけではなく、欧米など遠方から来る人や、世界の富裕層に長期間滞在してもらう戦略です。現在の価格から段階的に単価を上げていくことも求められます。渡航については相手国との交渉次第ですが、まずはプライベートジェットで来るような富裕層、次にFIT(団体旅行やパッケージツアーを利用しない個人での海外旅行)の人たち、最後に団体旅行客、このような順に制限を緩和していく。観光業は薄利多売ではなく、もっと単価と付加価値が高い戦略に転換すべきです。
<日本のコロナ対応は奇蹟だったのか?>
・日本のコロナ対応の評価は高いと思いますが、死亡の認定方法や情報開示の基準が各国で異なり、現時点では十分なエビデンスが揃っていないため、客観的な評価は難しい。たとえば、ジョンズ・ホプキンズ大学がまとめた統計によると、人口10万人当たりの死者数は5月25日時点で、ベルギーが81.53人と、主要国のなかで最多です。その数は、スペインの57.43人、イタリアの54.4人、英国の55.64人、米国30.02人よりも多い。一方、日本は0.66人で、驚異的な低さにみえます。ただし、ベルギーは他の多くの国と違い、感染未確認の老人ホームでの死者も当初から集計している。死者の認定基準やその精度が異なる以上、単純に比較することはできない、といわざるをえないでしょう。
・「日本はPCR検査の数が少ない」と指摘されますが、私もこの批判に首肯します。検査の目的は医療崩壊を防ぐ以前に、分析に必要な数字を得るためです。日本でPCR検査が重視されてこなかったのは、社会全体のデータへの意識の低さを物語っているように思います。次なる危機がいつなんどき訪れるかわかりません。その際の備えとしても、データからできる限りの教訓を得る必要がありますし、日本はこの点でもコロナ禍を機に意識を変えなくてはいけません。
<『コロナ時代の米中対決 エドワード・ルトワック』>
<中国は「女優が死ぬ映画」を繰り返し観ている>
――(奥山) 新型コロナウイルスの感染拡大により感染者の追跡・監視技術に注目が集まった。5Gや監視技術の次に来るテクノロジーの進化はどのようなものと考えているか。
(ルトワック) 「汎用人工知能」であり、これはすでに存在している。すなわち「AIの実際の応用」だ。米海軍であれ保険会社であれ、ほとんどの機関や組織はこのテクノロジーから目を背け、まるで自分がみなければ消えるとでも思っている。しかし、それは間違いだ。AIは印刷技術のような過去のテクノロジーとは異なる代物である。
・ところが、現時点でAIを利用する欲望をもつ者は限定的だ。たとえば、アメリカの軍事関係者のほとんどはAIを正面からみていない。本来は自分たちの手法を変える必要があるし、現実に変わっていくというのに。
今日、われわれはあまりに素早いテクノロジーの進化に直面している。そのため、多くの個人や企業、国や制度機関は、技術的に「時代錯誤の立場」に置かれている。弓矢を持って走り回るあいだに、相手はすでに機関銃で狙いを定めている。
・――アメリカと中国は「新冷戦」ともいえる状況にある。新型コロナ禍はその対立を加速させるともいわれているが、どちらが勝つだろうか。
(ルトワック) じつに答えやすい質問だ。なぜならば北京は、歴史上の出来事を繰り返しているだけなのだから。私にいわせれば、中国人は同じ映画を何度も観返している人びとと同じだ。
<米中のどちらが勝つかといえば答えはわかりきっている>
・過去、いくつものランドパワー(大陸勢力)が海に出ようとしてシーパワー(海洋勢力)に行く手を阻まれた。シーパワーがランドパワーの隣国に働きかけて友人となるケースもある。もしあなたが隣国をもつランドパワーの国のリーダーならば、絶対に海に向かってはならない。
<マクロなイノベーションを起こせる集団とは>
・(ルトワック) いま中国で起きているのは、政府主導の技術開発だ。ところが開発を担当するのはほとんどが漢民族であり、国内の主要な三つか四つの大学を卒業した者ばかり。すなわち、彼らは極めて均質的で似通った思考をもっている。その事実が意味するのは、世界でもっともブレイクスルーを起こしにくい集団だということだ。
<アメリカの「防御力」は格段に上がった>
・アメリカはトランプ政権下で防御力を向上させている。もはやサイバー攻撃だけではテクノロジーの窃盗を行なえず、中国系研究者を使うことや共同研究も困難だ。3年前まではアメリカには対中国のハイテク戦略は存在しなかったが、ここ1年で中国との「窓」を次々と効果的に閉めていると評価できる。
<パンデミック下の競争の行方>
・では、パンデミック下において、米中間の競争でどちらが勝つのかといえば、基本的には「どちらが柔軟性をもっているか」という点に左右される。中国側のシステムはトップダウンの中央集権型であり、すべての大事な意志決定は一人の人間によって下される。そしてこれは過去3年ほどでわかったように、極めて「遅い」。
・たしかにバイオテクノロジーの分野では、彼らはいくらでもリスクある実験を行なえる。コウモリからネズミにタンパク質を移し替えるようなことを平気でやっている。もちろんこれは、今回の新型コロナウイルスとの関係を語るものではないが、私がいいたいのは、法的、科学的、そして倫理的な面での制約がないために、彼らはやりたい放題の状態にあるということだ。
・今回の新型コロナは、もちろんこうした実験の成果といいたいわけではない。しかし、彼らが遺伝子編集を行なっていることは事実である。
<日本への「警告」>
・要するにV字回復とU字回復の2パターンがあるわけだが、私がいまどうみているかといえば前者だ。すなわち、経済は急速に回復する。しかし思い出してほしいのは、今回、緊急事態宣言が発令される前の状況は、すべてが最高潮に達していたということだ。
・日本に対しては警告的なメッセージを発しておきたい。それは「大戦略」という言葉では物足りない「国家戦略」レベルの最重要課題だ。大戦略とは諸外国とどう「組む」かを考えるレベルだが、国家戦略とはそれ以上の重要性がある課題と認識してほしい。
これは過去数年にわたって話していることだが、日本の国家戦略は、日本人の母親が日本人の子供を産むことに尽きる。近代国家は、自らを支える納税者を育てなければならない。そしてそれを実現する唯一の方法は、子供を産むプロセスをできるだけ無料化することだけだ。日本は十分に豊かな国であり、より貧しい国が導入している政策をとれない道理はない。
<アフターコロナの世界>
・今回の新型コロナがもたらした唯一のメリットは、われわれにもっとも根本的なことについて考えさせてくれる機会を与えてくれた点だ。自分にとって何が重要で、何が重要ではないのか。重要なようにみえるが、じつはさほど重要ではないものは何か。
いま、アメリカではさまざまな結果がもたらされている。
<『コロナ後のグローバル化を見据えよ 戸堂康之』>
<コロナ前に進行していた米中経済の分断>
・新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大を防止するため、世界各地は出入国を厳しく制限し、世界経済の分断が続いている。WTOの予測によると、2020年の世界の貿易量は最大で32%減少するという。
感染が止まったあとの「コロナ後」の世界でも、国境を越えた貿易や投資が縮小したままグローバル化が衰退していくことは十分にありうる。
・まずコロナ前の世界をおさらいしよう。2008年のリーマン・ショック後、翌年の世界の貿易額は19%、対外直接投資額は46%減少した。しかも、その後も対GDP比ではリーマン以前の水準に戻っていない。
・時を同じくして、先進諸国では中国から安いモノが輸入され、競争が激化した製造業に従事する中間層の所得や雇用が減少した。
・その結果、アメリカの対中国輸出も中国の対米投資も激減している。コロナ前にも、米中経済の分断(デカップリング)が確実に進行していたのだ。
<中国依存の見直しが進む>
・この動きにコロナ・ショックは拍車をかけている。コロナ後には、次の三つの理由からグローバル化の衰退、とくに米中経済の分断がさらに進行する可能性が高い。
第一に、グローバル化の進行がパンデミックを引き起こしたことや、コロナの影響によって世界各国で生産が縮小し、海外からの部品の調達に支障が出ていることから、グローバル化の経済的なリスクが再認識されている。
・第二に、欧米では発生源の中国に対する不快感が強い。
・第三に、安全保障上の問題もある。従来アメリカは医薬品の供給の多くを中国に依存していた。たとえば、抗生物質の90%が中国からの輸入であった。
・このことは、医薬品のサプライチェーンにおける中国依存が安全保障上の脅威になっていることを浮き彫りにした。だから、今後ITだけではなく、さまざまな産業分野で安全保障面から中国依存の見直しが進むだろう。
貿易だけではない。現在、国有企業を含む中国企業が、株式が暴落している海外の先進国の企業を買収しようとする動きが活発化している。
<グローバル化を縮小させるな>
・このようなグローバル化の縮小、米中分断の流れのなか、日本はコロナ後の世界をどのように進んでいくべきだろうか。
まずはっきりしているのは、グローバル化に背を向けるべきではないことだ。
・近い将来の発生が予測される南海トラフ地震では、太平洋沿岸の日本の主要な産業集積地が大きな被害を受けるだろう。
・だから、コロナの被害に怯えてグローバル化を縮小させるのではなく、むしろグローバル化を拡大していくことが、コロナによる経済縮小からV字回復し、次の経済ショックに対応するために必要なのだ。
<多様なネットワークの構築を>
・とはいえ、コロナ後の世界ではこれまでどおりのグローバル化では問題があることもはっきりしている。
そもそも、コロナ前には日本はグローバル・サプライチェーンのなかで中国に依存しすぎていた。だからこそ、コロナ・ショック当初に中国で感染拡大が起きたときに、中国からの部品や素材の供給が途絶して日本国内の生産も大幅に縮小せざるをえなかったのだ。
・中国は欧米と活発な国際共同研究で海外の知識を吸収し、2019年の国際特許の申請数ではアメリカを抜いて世界一となった。
中国に比べると、日本は海外と多様なネットワークを構築できていない。それが、長期にわたって経済が停滞している要因なのだ。だから、行きすぎた中国依存を下げるのが必要だとしても、さらに大事なのは国内回帰せずにより多くの国とつながることだ。
・たとえば、米中の部品貿易総額は日米の3倍近い。米中の分断によって先細っていくだろうこの関係に割って入るのは不可能ではない。ただし、アメリカの雇用を奪う形では、アメリカの反感を買っている中国の二の舞になる。だから、アメリカでの生産拠点の設立や、生産管理技術や研究開発での連携ともセットで、日米のウィン・ウィンのつながりにしていくことが望ましい。
<信頼関係に基づく強いつながり>
・海外と重層的なネットワークを構築したほうがよいのは、相手とより強くつながれるからだ。
コロナ・ショックは、多様なつながりだけでは十分ではないことを明らかにした。世界中で生産が縮小しているときには、多様につながっていても不足した供給の代替先を見つけることは容易ではない。自国ファーストの流れのなかで、国内供給を優先して海外への供給をストップするといったケースも多々起きている。
・だからこそ、日本経済が今後さらにグローバル化していくときには、サプライチェーンだけではない重層的で強靭なネットワークの構築をめざすべきだ。
信頼関係に基づく強いつながりの構築には、相手が困っているときに助けることが前提となる。日本でもコロナの感染が拡大しているとはいえ、諸外国に比べるとその影響は比較的軽い。だから、コロナ後の世界を見据えて、いまこそ日本が感染拡大に苦しむ国々に支援をするべきではないだろうか。
<経済と安保を分けた国際ルールが必要>
・このように、日本は中国依存を減らし、より多様に強いつながりを先進諸国と構築していくべきだが、これは基本的には供給途絶のリスクを減らすためであり、日中経済を分断したほうがよいということでは決してない。
隣国であり、市場が大きく、生産力、技術力も高い中国との経済関係を切ってしまうのは、日本の経済的利益から考えてありえない選択だ。
とはいえ、冒頭で述べたように中国との貿易・投資関係には安全保障問題が絡んでおり、それにも対処せねばならない。そのためには、経済と安全保障を切り分けるための新しい国際ルールが必要だ。安全保障を理由として貿易を制限できることはWTOでも規定されているが、必ずしも明確なルールとなっていない。だから、交渉中の日中韓自由貿易協定に、どのような品目・業種については安全保障上の理由で貿易・投資を制限できるかを規定し、安全保障上の問題を緩和するべきだ。
・なお、これは対中国の問題だけではない。コロナ・ショックでは、医療・衛生物質の輸出禁止や外資の制限などが各国で見られた。これらはWTOなどの既存のルールの枠内とはいえ、濫用するのは避けるべきだ。だから、これらについてより詳細で具体的な国際ルールがより多くの国々の参加の下で規定されることが望まれる。日本はそれを主導すべきだろう。
また、日本と中国との関係には歴史や領土に関わる感情的な問題があり、経済や安全保障上の利害を超えて対立が激しくなりがちだ。その点については、社会交流を根気よく行なっていくことが肝要であろう。
・それは、日本だけではなく欧米諸国も同様だ。コロナ感染拡大初期の欧米でのアジア人に対する差別行為の横行は、残念ながら欧米人の本音を見た気がした。しかし、コロナ後にはそのような感情には蓋をして、あくまでも経済や安全保障上の利害を基にして冷静に中国との関係を考えてもらいたい。
・コロナ後の世界では、一部の国でグローバル化が縮小するかもしれない。しかし中国は違う。コロナを世界に先駆けて抑え込んだことで、これを機会にさまざまなグローバル・ネットワークにおいて中国の地位を強化しようとすでに積極的に活動を始めている。たとえば、感染被害の大きいイタリアに対して、感染症を予防するための「健康のシルクロード」を構築しようと呼びかけている。世界各国に大規模な医療支援を展開してもいる。だから、コロナ後の世界でも中国のグローバル化はさらに急速に拡大していくはずだ。
そのなかで、日本がグローバル化に背を向けてしまえば、経済面でも安全保障面でも日本の未来はない。官民は覚悟をもって世界で多様に強いつながりを拡大していってもらいたい。
『新型肺炎 感染爆発と中国の真実』
中国五千年の疫病史が物語るパンデミック
新型コロナウイルスはなぜ中国で発生し拡大したのか
<2020年1月末の春節から感染が拡大し続けている>
・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。
<新型コロナウイルス「COVID-19」が中国で発生、拡大した歴史背景とは>
・中国発パンデミックを警告し続けてきた著者が、疫病の発生・拡大を繰り返してきた中国五千年の社会・政治・民族的宿痾を解説。世界の歴史を動かしてきた中国疫病史をもとに、新型肺炎感染拡大の行方と影響を分析する。
・私は2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的流行を見せた際、『中国発SARSの恐怖』(光文社)という書籍を上梓し、中国の隠蔽体質や事実捏造を告発した。本書の執筆にあたり、17年前のこの著書を読み返したが、当時の中国政府の対応は驚くほど今回と酷似している。
・私は、今回の新型肺炎の世界的流行は、独裁国家が国際的な影響力を持つことのリスクが表面化した事態だと考えている。独裁国家にとって、情報統制は必要不可欠なものだ。為政者にとって都合の悪い情報は絶対に出てこない。
・だが、このような体質が、中国国内はもとより世界への感染拡大を招いている。中国人も世界の人々も、中国共産党の被害者なのだ。だが、情報統制をやめれば、それは一党独裁の終わりを意味する。中国共産党にとって、言論の自由は絶対に容認できない。いまなお1989年の天安門事件すら公には語ることができないという事実が、それを証明している。
・本書では、中国が歴史的につねに疫病の発生地であったこと、その感染拡大が世界の歴史を大きく動かしたことについても解説している。なぜ中国から拡散した疫病が厄介なのかということについても、歴史、民族性、文化、政治など、さまざまな観点から考察している。
<感染拡大が止まらない新型肺炎の脅威>
・そもそもウイルスとは、生物の細胞内でのみ増殖する感染性の病原体である。植物性ウイルス、動物性ウイルス、細菌ウイルスと感染する生物ごとの分類と同時に、遺伝情報である核酸によってDNAウイルスとRNAウイルスに分類される。
コロナウイルスは人や鳥などに感染する動物性で、冬の軽い鼻風邪の原因となるものなど、従来からいくつかの種類の存在が知られている。有名なところでは広東省で発生し、2003年にはアジア各国に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)や、2012年に中東で発生し、韓国にまで拡大したMERS(中東呼吸器症候群)などが挙げられる。
SARSのときは、野生動物を食べる習慣のある中国・広東省が発源地となった。ウイルスの起源として、当初はハクビシンが疑われていたが、その後の調査で、自然宿主はキクガシラコウモリだということが判明し、そのフンを媒介してほかの動物に伝染し、それが人間に感染したことが判明している。
一方、武漢肺炎では、武漢の華南海鮮卸売市場がウイルスの発生源とされた。この市場では、通常の加工肉のほか、鶏、ブタ、ヒツジなどに加えて、ロバ、ラクダ、キツネ、アナグマ、タケネズミ、ハリネズミ、ヘビといった動物が食用として生きたまま売られていたという。
<やはり中国は情報を隠蔽していた>
・しかし、武漢で最初に原因不明の肺炎患者が報告されたのは、2019年12月8日だったが、当局はそのことを公表せず、12月30日に内部文書がネットに流出したことで、ようやく新型の肺炎が拡大していることが噂にのぼるようになったのである。
しかも新型肺炎の情報を流したネットユーザー8人が、「デマを流した」ということで警察当局に逮捕されている。
<中国で疫病が発生、拡大する9つの理由>
・加えて、中国ならではの事情が、歴史的にかの国を疫病の発生源にし、また、世界中にパンデミックを拡散し、歴史を変えてきたといえる。その理由や原因については本書で述べていくが、項目をあげると以下のような点になる。
① 希薄な衛生観念
② 儒教からくる家族主義・自己中心主義
③ ニセモノ文化
④ 多すぎる人口
⑤ 何でも食べる食文化
⑥ 農村などでの人畜共棲
⑦ 秘密主義、情報隠蔽
⑧ 皇帝制度、一党独裁
⑨ 不完全な医療制度
・もちろん、ニセモノ業者がニセモノをつくるのは儲けるためであるから、そのニセモノによってどのような被害が出ようと知ったことではない。だからニセ薬による死者が多発するのだ。
水道水が飲めない中国では、ミネラルウォーターを購入する家も多いが、得体のしれない湧き水や川の水を汲んで入れただけのニセモノも多い。
・また、中国では人口増加を抑えるために、1979~2015年のあいだ、一人っ子政策を行ってきた。子供を二人以上もつと罰金や昇給・昇進の停止などといった罰則があるため、二人目の子どもが生まれても出生届けを出さなかったり、人身売買業者に売ったりしてしまうことが頻発した。
こういった子供は戸籍をもたない「黒孩子(闇っ子)」と呼ばれるが、当然ながら、医療は受けられない。中国政府はこうした黒孩子の数を1300万人と推定し、彼らに戸籍を与える制度を推進しているが、実際には把握できていない黒孩子の数も多いとされている。こうした黒孩子の存在も、疫病を拡大させる一因となっている。
・2003年にSARSが流行した際には、ウイルスの宿主であるキクガシラコウモリから感染したハクビシンが市場で売られ、それを食べた中国人が感染したと考えられている。
また、MERSもヒトコブラクダから人に感染したとされているが、中国の食品市場ではこうしたラクダも売られている。
・とくに現在において、中国共産党は「絶対無謬」の存在であり、憲法でもすべてを「党の指導に従う」と明記されている。その絶対無謬の共産党にとって、「疫病被害の拡大を防げなかった」という失態は、絶対にあってはならないし、あっても人民に知らせてはいけないことなのだ。だから実態は隠蔽しなくてはならない。それが中国の「国のかたち」なのである。
・そして、⑨についてだが、儒教の影響が現在も色濃い中国では、医師の社会的地位は非常に低い。たとえば、日本と台湾では、通常、成績がいい学生が大学の医学部へ進むが、中華の世界ではまったく逆で、成績の悪い学生が医師になる。だから、中国では現在も医者は軽んじられる存在なのだ。
・さらに、中国の医療保険制度はまだ未整備状態で、基本医療保険加入者は都市・農村合わせて8億7359万人(2017年末)であり、約5億人がまだ未加入である。
加入者にしても、たとえば北京市では診療費の自己負担率は45%と高い。とくに農村部の農民や都会で働く農民工は、掛け金を惜しんで加入していないケースがまだまだ多く、加入していても、前述のような自己負担率の高さから、病気になっても病院に行かないことが多い。そのため、疫病が拡大してしまうのだ。
以上のように、現代中国には「闇」の部分が数多く存在し、それが結果的に疫病の発生と拡大を招いているのである。
<各国の対応と遅すぎる日本の処置>
・訪日中国人も、2003年は44万9000人だったものが、2019年は959万4300人と、こちらも20倍以上に伸びている。
世界のグローバル化、そして中国人が豊かになるにつれ、中国人海外旅行者数は年々増加している。
<中国人の衛生環境>
・衛生管理がよくない地域からさまざまなウイルスが各都市へ運ばれて蔓延する危険性は、なにもいまに始まったことではない。
そのなかで、ウイルス感染の主因とされているのが、食用の野生動物である。
・2003年に流行したSARSの場合も、野生動物を好んで食べる習慣がある広東省から感染者第1号が出て拡散した。卸売市場には「家禽蛇獣総合市場」があり、50種を超える食用動物が生きたまま売られている。
それから17年後の2019年末に発生・拡散した新型肺炎も、感染源とされる華南海鮮卸売市場から新型コロナウイルスが多数検出されており、ここで売られていた野生動物から人へと拡散したことがほぼ裏付けられている。
・加えて、中国の公衆衛生において、大きな問題となってきたのがトイレである。中国式の公衆トイレといえば、扉も囲いもなく、隣でしゃがむ人と顔を合わせるため、「ニーハオ・トイレ」と呼ばれてきた。また、水洗ではなく、いわゆる「ボットン式」が多いことから、外国人には非常に不評であった。
上海では、1988年に約30万人がA型肝炎にかかったことがある。これはA型肝炎にかかった人のウイルスが排泄物とともに垂れ流され、それを食べた魚介類をさらに人間が食べたことで被害が拡大したといわれている。
・また2015年には、日常業務で人民元札を数えている銀行員が、手を洗わないままトイレに行ったことで、性病に感染するという事件もあった。露天の公衆トイレなどでは、手を洗う場所がないところも多く、紙幣を媒介にしてさまざまな菌が全国に運ばれていると考えられている。
とくに、農村部では人と家畜の排泄物の衛生問題が深刻化しており、農村部で発生する伝染病の8割が糞便や飲料水が原因とされている。
そこで習近平国家主席は2015年から国家観光局に指示し、観光都市にきれいなトイレを整備する「トイレ革命」を行ってきた。2015年から2017年にかけて16億4000万元を投じて、観光地などのトイレ7万カ所以上を新築・改修。さらに2019年には70億元を投入して全国3万の村で1000万世帯のトイレを改修する計画を打ち出した。
<台湾をWHOから排除する中国の姑息>
・もちろんWHOのこうした態度の裏には、台湾をあらゆる国際組織から追放することを公言している中国政府の力が働いている。中国は「あらゆる国際組織」、台湾が加盟するスポーツや文化に関する国際組織でも、台湾の名義を恣意的に改名させている。
・だが、前述したように、パンデミックは中国だけの問題ではない。むしろ政治的理由で感染国を国際機関から除外する姿勢こそが、感染を拡大させている元凶なのだ。
<言論統制の国としての歴史と実態>
・2003年のSARS隠蔽をめぐる世界の非難と共産党内部の力関係の変化もあり、新型肺炎の流行にあたって、あからさまな嘘だけはなくなった中国だが、それでも国民は政府の言うことを信用していない。
・そしてそれは、悲しいかな、中国を抜きがたい人間不信社会へと育ててきた。国民は政府も国内のマスコミも信用しない。政府も国民を信用しない。だから、政府に不利になるような報道はしない、させない。この悪循環が繰り返されている。中国ではネットですら指導者批判は禁じられていて、指導者支持の発言は、実は批判の裏返しだとさえいわれている。
<中国政府の情報隠蔽体質が絶対なおらない理由>
1、 銃以上に人心を掌握することが重要だが、この国の場合、その人心掌握と人間操縦をする手段が、情報統制によるマインドコントロールなのである。
2、 「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」というのが、孔子以来の伝統的な愚民政策である。
3、 中国人の思考様式のもっとも典型的なパターンが「戦略的」であること。
4、 中国は人間不信の社会であり、極端な場合は夫婦でも互いに信用しない。
5、 中国は軍事絶対優先の社会であり、教育も衛生も置き去りにされている。
6、 現体制の権力構造は、利益誘導型にして政策迎合型。かつての「大躍進」時代の数字捏造がいまでも続いている。
7、 中国の民族性のもっとも大きな特徴の一つは、「馬々虎々(マーマーフーフー)(でたらめ)」といわれるいい加減な性格で正確性が乏しく、しかも誇大あるいは夜郎自大の傾向があることだ。
以上、述べてきた七つの理由から、私は、中国の情報隠蔽の体質は、少なくとも21世紀中に改善されることは絶対にありえないと断言するのである。
<中華の中原は世界の疫病拡散地>
・中国における疫病の流行は、中華帝国の歴史よりも長い。有史以前あるいは信史(確実な歴史)以前から、中国には疫病が存在していたのである。
・これだけ長い疫病の歴史をもつ中国だが、医療衛生が制度化されたのは、なんと20世紀になってからのことである。清末、立憲君主制への移行を目指す変法派の官僚によって、義和団事変以後の1902年に天津に衛生総局が設立されたが、医療衛生制度化の始まりだった。
やはり、この当時も疫病が大流行しており、その対策のために医療が制度化されたのだ。このときはやっていたのはペストである。
・1918年秋、全世界でインフルエンザが猛威をふるった。通称「スぺイン風邪」と呼ばれたそれは、1917年に中国の南方で発生したものであり、最初は中国に駐在していたアメリカ人が感染し、ヨーロッパに従軍後に発病したことでフランス軍が感染し、その後ドイツ軍にも感染、そして全世界に拡散されたものであった。
感染者は5億人以上で、当時の地球の人口の20~40%にも達し、感染からわずか4カ月で2000万人が死亡した。最終的な死亡は5000万~1億人、死亡率は約2.5%であった。
・インフルエンザの病原菌は、1933年に確認されたものの、現在に至っても有効な治療薬はまだ開発されていない。
中国では、1930年に国際連盟の援助を受け、政府が各海港に設けていた検疫機構を接収し、検疫権を得て対外的な衛生管理を「制度化」した経緯がある。しかし、近代になっても、中国は疫病の拡散地のままでありつづけている。
国内で疫病を発生させては、周辺諸国、そして世界へと疫病をばらまいているのだ。19世紀末にはペストやコレラを、中華人民共和国成立後の1950年代にはアジアインフルエンザを、1960年代には香港インフルエンザをまき散らしてきた。
ことに香港インフルエンザは、世界的に大流行し、それによる死者は計400万人にものぼった(アジアインフルエンザでは死者約7万人)。そして2000年代に入ってからはSARS、鳥インフルエンザ、さらに新型肺炎の拡散である。これまで、中国がいったいどれだけ世界に伝染病を拡大してきたかは、人類の疫病史が如実に物語ってくれている。
<中国の疫病による死亡者数は「無算」>
・日本ではやった疫病の多くは、中国から渡ってきたものである。元寇の襲来以来、日本は中国からくる伝染病にしばしば悩まされたものだった。
<中世ヨーロッパを襲ったペストの伝染病は中国だった>
・ヨーロッパにとっても中国大陸にとっても、歴史上もっとも大きな悩みだったのは黒死病(ペスト)の蔓延だった。
・その後、ヨーロッパの人口は社会の成熟とともにだんだん増加していき、1300年には7300万人にまで膨れ上がった。中世ヨーロッパ社会は、これから迎えるべき大航海時代に向けて、すべてが順調にいっていたかのように見えた。
しかし、ここでヨーロッパの人口が激減する出来事が起こる。1348年のペストの大流行である。あっという間にヨーロッパを襲った恐るべき伝染病ペストは、1351年までの3年間で、人口の3分の1を死に至らしめたのである。
ヨーロッパに大打撃を与えたペストが、ヨーロッパに伝わった経路については諸説あり、北インドから伝わったという説もある。しかし、もっとも現実的で有力な説は、中国大陸から伝わったという説だ。
まず、中国の南宋王朝で流行し、それがモンゴル軍へと伝わった。
・近代に大流行したペストの発源地は、中国の雲南省がほとんどだった。1855年の雲南軍の反乱を征伐した清国軍は、ペストについてはまったく無知であったため、感染した状態で帰還した。
<海を渡って大陸から日本へやってきた大疫>
・どちらにしても、歴史を振り返れば、疫病は中国からやってくるものと考えていいだろう。その証拠に、古代日本では、中国や朝鮮との窓口になっていた福岡の大宰府が疫病の発源地だった。
<戦後の台湾を急襲した中国の「疫病神」>
・国府軍が入ってくる前から、台湾人はすでに日本統治時代を通じて衛生観念をもっていたが、野卑な中国人は衛生観念などという近代的なものはもちあわせていなかった。そんな中国人が台湾に入ってきたことから、疫病はいっきに全島に拡散したのである。
台湾ではすでに絶滅していたコレラ、天然痘、ペスト、チフス、マラリアなどといったあらゆる伝染病が、中国人と一緒に再び台湾に入り、爆発的に広まったのだ。このときは、国連の指導と救援で、なんとか疫病撲滅に成功したが、被害はじつに大きかった。
<水・旱・疫・蝗の循環が中国の歴史をつくった>
・日本の歴史上の大規模な自然災害といえば、地震か台風が多かった。天明の「大飢饉」のような飢饉が起こったこともあったが、その原因は火山の噴火によるもので、ごくまれな例である。
一方、中国や朝鮮半島では、飢饉が周期的に起こっており、中国ではそのつど数万から数百万、場合によっては1000万人以上の餓死者を出していた。
これは、島国である日本と大陸である中国との、自然条件の違いからくるものだろうか。もちろん、中国でも地震、雹、大雪といった天災もよく見られるが、それよりも頻繁で被害が大きいのは水害、旱魃、大疫、蝗害である。
この四つは周期的に、そして連鎖的に起こるものである。水害のあとは疫病が大流行し、旱魃に見舞われれば、蝗が異常繁殖して人に害を及ぼすというように、悪循環の繰り返しである。
・前1766~1937年までの3703年間のうち、中国で起こった水害、旱魃、蝗害、雹、台風、地震、大雪などの天災は、合計5258回もあっという。
これを平均すると、6カ月に1回の割合で何かしらの天災が起こっていることになる。旱魃だけでも、3703年間で1074回も起こっており、平均3年4カ月に1回の割合である。
<疫病史が語る中国歴代王朝衰亡の悲劇と惨状>
・世界史における文明衰亡の原因は、異常気象による自然災害の発生か、あるいは疫病の大流行ということが多い。ことに中国史では、「大飢」や「大疫」によって王朝が滅亡するという例が多い。
・そして、中華帝国の人口は、1200年には1億3000万人といわれているが、ペストの大流行によって、1331年の時点ではその3分の2が失われてしまった。さらに1393年には6000万人にまで減少し、最盛期の人口の約半分になっている。
たしかに、元来のユーラシア大陸では、全体的に異常気象が続き、大疫病と大飢饉が猛威をふるっていた。これらによる被害と食料危機が、元の衰亡を決定づけたのである。
・西ヨーロッパでペストが猛威をふり、4000万人の人々が倒れたのも、モンゴル帝国がペストに苦しんでいたころとほぼ同時期の14世紀であった。
<明王朝滅亡の原因は連年の大疫だった>
<孤立無援の皇帝に追い打ちをかけた疫病>
・明王朝の衰亡は、万歴の時代からそうなる運命だと決まっていたともいわれている。明王朝は、崇禎帝が嘆いていたような政治腐敗のほかに、「大疫」や「大飢」に間断なく襲われ、病死者や餓死者があふれていた。流民、流賊、流寇も暗躍していた。
このような社会背景があったからこそ、李自成は農民軍を引き連れ北京に入城することができたのである。
明王朝末期の万歴・崇禎の間(1573~1644年)、華北地方では疫病が猛威をふるい、少なくとも1000万人の死者が出た。ペストや天然痘、コレラが主だったという。明王朝は、この大疫によって倒れたのであり、清に滅ぼされたわけではなかった。
<中国を待つ大破局の悪夢>
・中国はいま、人口過密と過剰開発によって自然が崩壊しつつある。山河の崩壊ぶりは前世紀以上に加速度的なものであり、黄河の断流や長江をはじめとする各大水系の大洪水が頻繁に起こっている。
・清朝末期と多くの点で共通する中華人民共和国。新型コロナウイルスの出現は、中国崩壊の予兆となる可能性が大きい。
<疫病の猛威が突きつける中国の文明史的課題>
<中国発疫病への警告が現実に>
・著者は、2003年のSARS騒ぎの際にも、「今回のSARSをきっかけに中国人の衛生観念が改善されなければ、今後また同じことが繰り返されるだろう。これは、中華文明の大きな課題のひとつである」と書いたが、結局、新型肺炎というさらに強力な疫病の発生と拡大を招いてしまった。
<世界は中国を切り離しはじめた>
<あらためて確認されたチャイナリスク>
・すでに米中貿易戦争で進んでいた各国の脱中国が、さらに加速していくことは避けられない。
<外国企業にとっては中国撤退の好機となる可能性>
<中国経済の致命的な弱点が一挙に露呈>
・共産圏には絶対にないといわれた売春も、いまでは中国大陸のどこでも盛んであり、人民解放軍のなかにさえホステスや売春婦がいるという。
さすがの中国政府も汚職や不正行為の摘発に乗り出したが、いずれも一時的なもので終わっている。2012年に最高指導者に就任した習近平は、汚職追放運動を展開し、5年間で25万4000人の全国の公務員と、120人を超える閣僚級以上の幹部を汚職事件で立件したと強調している。
・習近平政権は、今後、感染拡大を防ぐ方策を講じると同時に、経済上の大打撃と政治的な失策について対処しなくてはならない。まさに国家存亡の危機を迎える可能性がある。
<悲鳴があがる観光業界>
・中国の場合、立派な観光施設ほど外資との合弁や借金に依存しての先行投資であるから、この騒動が長引けば長引くほどその損失は大きくなる。2015年に習近平が「トイレ革命」の大号令を発したのも、海外からの観光客を増やすためだった。
<欧米を恐怖に陥れる新型コロナウイルスという名の横禍>
・黄色人種の勃興で白色人種が禍害を被る……日清戦争が終わったあと、ドイツの皇帝・ヴィルヘルム2世が唱えた「黄禍論」。いわばアジア全体への差別的な感情で、以降も何度となく消えては表れてきた。
新型肺炎をめぐる欧米諸国の反応も、この意識とまったく無縁ではないようだ。
<軌道修正を迫られる中国>
・ここ十数年、軍事力も経済成長も、中国政府の正式発表では驚異的な伸び率を示していた。それが中国国民の誇りと国家の威信に直結していただけに、新型肺炎による精神的、経済的打撃は大きく、国際関係も従来の強気一本から軌道修正を迫られることは確実である。
・21世紀の感染症を語るキーワードとして、「エマージング感染症」がある。これは、環境や生態系の変化などにより、人や動物の集団に突如として表れた感染症、あるいは以前から存在していたものが急激に発生、増加、拡大する感染症であり、そのほとんどがウイルスによるものだ。
こうしたウイルスを「エマージングウイルス」というが、エボラ出血熱、ラッサ熱、SARS、MERS、そして今回の新型コロナウイルスもその一種ということになる。
また、エマージング感染症以外に人獣共通感染症というキーワードもある。人獣共通感染症は、もともと動物にある細菌ないしウイルスがなんらかのきっかけで人間にうつり、生物学的、政治経済学的に大きな被害を起こす感染症である。
エマージング感染症と人獣共通感染症の両者には概念のオーバーラップがあるが、前者は病気出現の速度と様相を重視したもので、後者は動物間種を超える感染症を強調したものである。
人獣共通感染症には古くから狂犬病、ペストなどがある。狂犬病、ペストは世界から絶滅したわけでなく、アジアでは日本、台湾など島嶼国のみが絶滅に成功しているが、インドや中国など大陸国では風土病として根づいており、WHOが引きつづき調査・監視している。
比較的新しい人獣共通感染症には、マールブルグ病、エボラ出血熱、ハンタウイルス肺症候群、鳥インフルエンザなどがある。
<「陰謀説」の裏側>
・軍関係施設からウイルスが流出したという説は、SARSのときにもあった。
・真実がわからないにしても、疑惑の火が消えないことは事実だ。では、それはどこからくるかといえば、中国人のBC兵器への関心の高さだろう。中国毒殺史から見るかぎり、毒盛りは中国の歴史と同様に古い。戦場や宮廷内部をはじめ、日常生活でも毒盛りが盛んだ。毒殺は中国文化の一大要素と言って過言ではない。
・日中戦争時、日本軍がもっとも悩まされたのは、中国軍がソ連軍から提供された細菌兵器による攻撃だった。当時の中国軍がもっとも常用していた生物兵器はコレラ菌、炭疽菌、腸チフス菌、パラチフス菌などである。もちろん、それらが使われるのは戦場だけではない。現在でも中国社会では、政敵、商敵、情敵に対する毒殺がはやっており、これによる死者は年間6万~7万人ともいわれている。ことに夫婦や三角関係の情敵に対する毒殺事件は多い。
・2002年9月には、南京の食堂で殺鼠剤中毒による死者40人を超える「南京大毒殺」が起こっている。この事件は当局の隠蔽工作もあり真相はよくわかっていないが、水道水にネコイラズが混入された疑いがあり、台湾では中毒被害者は1000人以上、死者も100人近く出たと報じられた。
疫病が起こるたびにもちあがる「BC兵器説」は、中国の「毒殺文化」の理解からくる疑惑であると言えないだろうか。
<疫病が出たら村ごと「清郷」>
・ところで、中国では瘟疫流行は日常的である。すでに史前からあり、甲骨文はその瘟疫の吉凶についての占いから生まれた神のお告げでもある。だいたいにおいて瘟疫はかわるがわるはやるので、もっとも手っ取り早い手段が「清郷(チンシャン)」だ。清郷は「村つぶし」として政治的解釈は多いが、疫病が発生する場合にも見られ、古代から現代まで続いている。
清郷は山西や陝西などの西北地方に多い。村に瘟疫が発生すると、まず政府は情報を封鎖する。そして、人民解放軍が村を包囲して焼き打ちをかけるほか、村自体を地下深く埋める場合もある。手荒な方法と思われるが、中国は社会安定が最優先の国であり、それは民族の生存権を守ることでもあるのだ。
<同じことは何度でも起こる>
・つまり、中国は情報公開ができないということだ。国内の情報管理によって、ようやく国家としての存在が守られているからだ。公開すれば、それだけでも「亡党亡国」の危機に陥る。現在の中国は、まさにこのようなジレンマのなかにある。
世界は、中国発の新型肺炎にどう対処して克服していくのか。その鍵は、まさに中国にこそある。
同時に、新型肺炎が終息しても、中国の抱える問題が解決されたわけではないことを、世界は肝に銘じるべきである。中国がこのままの体制であるかぎり、同じことは何度でも起こる。
「21世紀は人類が中国問題に直面する世紀となる」と私はつねづね主張してきたが、今後の世界は中国をめぐり、米中対立、香港・台湾問題、南シナ海・東シナ海問題、ウイグル人の人権問題などに加え、疫病問題のリスクにも備えなくてはならないことが明らかになったといえるだろう。
<疫病拡散の温床となる中国の社会風土>
<いまだに劣悪な中国の社会環境>
・一方、中国人の寿命が短いのは、医療制度の遅れと改善されない生活環境、人体に被害を及ぼすほどの自然破壊など、さまざまな人的要因が挙げられる。
<九大苦に蝕まれる中国農村社会の断末魔>
・多くの農民は、都市に出稼ぎに行っている子弟の送金でなんとか生活しているのが現状だ。中国の農民には「九大苦」があるとよくいわれ、その苦痛は世々代々続いていく。農村の九大苦とは次のとおりである。
一つめの苦痛(一苦)は、党の支配や、政府組織による搾取と略奪の構造だ。村役場に大量にあり余る党の役人を、農民が養わなければならない。
二苦は、教育を受けるのが難しいことだ。
三苦は、移動や移住が難しいことだ。
四苦は、社会保障がないことだ。
五苦は、時代や世界に関する観念が落後しており、変化についていけないことだ。
六苦は、資源の欠乏である。
七苦は、地域間あるいは同業間での意思疎通が難しいということだ。
八苦は、創業や貯金が難しいことである。
九苦は、つねに凌辱されているという悲哀だ。中国の農民は無学・無知であるがゆえに、優越意識をもつ都市住民によって差別され、蔑視されてきた。農民は、中国最下層の水呑百姓として凌辱されるべきで、不可触賤民として虫けらのように扱われているのだ。
政府は、中国が目下抱えている最大の問題は農業、農村、農民問題の改善だと認めていながら、それを解決する手段を見つけられないでいる。これだけ、問題が深刻化してしまうと、さすがの中国共産党も手も足も出ないのだ。
<死に神が手招きする「一窮二白」(すかんぴん)の中国農村>
<環境汚染がもたらす中国国民の自家中毒>
・中国人は5000年の歴史を通して、絶えず自然環境破壊を行ってきた。そして、近年の改革開放路線がそれに拍車をかけ、凄まじい勢いで環境破壊が進んでいることは、すでに世界の常識となっている。
北京では2000年代後半からPM2.5によって、昼でも真っ白なスモッグで視界不良となる日が年間を通して何日も続くようになった。
・大気汚染同様に中国社会で深刻化しているのが水質汚染や土壌汚染だ。こちらも工場排水が垂れ流されてきた結果だ。
<新型肺炎での暴動を恐れる中国政府>
・その実態は、日本人が想像しているようなものでは決してないということを、日本人もそろそろ認識したほうがいいだろう。中国の農村は牧歌的なものではなく、役人の腐敗はもちろん、窃盗や強盗が跋扈し、農村対農村の殺し合い「械闘(かいとう)」も頻発している。
<儲けのためなら死者が出ても構わないニセ食品の商人>
・中国では、「無奸不成商」という格言がある。「奸悪でなければ商人にはなれない」という意味だ。これは中国人の自称であるが、中国に進出している外資のビジネスパーソンたちの多くが抱いている、中国商人観でもある。
<とまらないニセ薬の被害>
・人命に関わる可能性のある薬品でさえ、中国ではニセモノがよく売られている。台湾の観光客はよくニセ薬を買って帰るが、健康被害などが頻発するため、台湾政府は繰り返し注意を呼びかけている。
<疫病輸出国としての中国脅威論と崩壊論>
・中国脅威論や中国解体論は、現時点では現実性がないように思えるかもしれないが、歴代の中華王朝が繰り返してきた衰亡の誘因が重なれば、社会主義中国の体制崩壊も例外ではなく現実のものとなるにちがいない。新型肺炎も、そのきっかけの一つとなる可能性がある。
<グローバリズムの終焉>
・感染拡大だけではなく、各方面への影響が収束するにはかなりの時間を要するだろう。
とくに中国経済の減速に拍車がかかることは避けられない。また、チャイナリスクを目の当たりにした世界は、中国離れを加速させていくだろう。
ただでさえ、米中貿易戦争の余波から、西側諸国は中国との関係見直しや中国からの企業撤退、サプライチェーンの再構築を進めようとしていた。その矢先の新型肺炎の感染爆発である。
『新型コロナウイルスは細菌兵器である!』
泉パウロ ヒカルランド 2020/4/30
<衝撃検証 狙いはどこにあるのか? >
・この世界的パンデミックは9.11同時多発テロ(2001年)と3.11東日本大震災(2011年)に引き続き、イルミナティカード(1995年発売)に完ぺきに予告されている「災厄」である!
・終わりの日に向かって着々と歩をすすめる者たち!その計画は『聖書』が下敷きであり【イルミナティカード】そのほかで律儀にも予告しながら実行されている!
・メディアは武器だ!矢継ぎ早に伝えられる事件劇場。この刺激の中で正常な思考を奪われて、われわれが連れていかれるその先は大惨事世界大戦である!沈黙の兵器の巨大体系の中に叩き込まれても魂を明け渡してはならない!自らの魂の輝きに焦点し、学び、備えよ!
・新型コロナウイルスのパンデミックは何年も、何十年も前から計画されていた。その狙いは? 私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、力、この暗闇の世界の支配者たち、また、天にいる諸々の悪霊に対するものです。
<コロナ騒動は、やはり予告通りに起こされていた!>
<ディーン・R・クーンツの小説『闇の目』(1981年)とは?“武漢―400”というウイルスが登場!>
・私は今心が騒いでいます。
またしても悪の闇組織イルミナティは自分たちの邪悪な計画に従って大罪を犯したからです。
人工的な新型コロナウイルスを研究所や化学工場爆破によって、中国武漢からばらまき、世界中を苦しめています。
多くの人は3・11東日本大震災、あの大国難が人工地震と意図的な複合災害であったことを今でも知らないのです。
今日もマスクをして道行く人々は、やがて時間とともにワクチン開発で終息するであろう今回の新型コロナウイルス騒動について、またしても気付いていない。
立ち止まって考えるべき重要なチャンスであるのに、全てを単なる陰謀論だと片付けてしまい、心に深く留めない。
聖書預言では、こんな陰謀が世の終わりまで延々と行われると書かれているのです。
・本書で数々の状況証拠を提示したい。結論から言うと、今回の新型コロナウイルス騒動説は、サウジアラビア人男性から採取したウイルスをオランダ、カナダ経由で中国の産業スパイ3人が盗み出し、武漢ウイルス研究所で培養して遺伝子組み換え技術により毒性をさらにパワーアップさせたものです。
・本物の化学兵器は、細菌もすぐに消えて感染源も証拠も残らないのです。新型コロナ騒動は予行演習で、本当の生物化学兵器が2030年までに撒かれ、世界人口を現在の数から3分の1に人口削減したいようです。実にその数も聖書を真似た通りの想定数です。
ゼカリヤ13:8「全地はこうなる。主の御告げ。その三分の二は絶たれ、死に絶え、三分の一がそこに残る。」
・中国は、世界初の量子衛星打ち上げに成功済で、世界中で使われている数字ベースの暗号化を打ち砕くことが理論的に可能な強力な量子コンピュータの構築方法を研究していて、量子通信衛星の実現による電子的スパイ活動がまもなく可能になるまで成長しています。世界の軍事力を無力化されるまであと1年くらいでした。ですから、急ぎで闇組織は30憶人大移動の春節時期に合わせて、大混乱を招くように新型コロナをばら撒いたのです。
<アングロサクソン・ショック>
・「イルミナティ地球支配計画の目撃者による証言」
これは新型コロナウイルスのパンデミックが15年以上前から計画されていた有力情報です。イギリス人で長年、英国軍に勤務し、退役後はロンドン市で非常に高い地位についていた人物が、2005年6月にロンドンのシティでの上級メイソンたち25~30人の集う会合に出席しました。
・「第三次世界大戦が計画されている。それは核兵器と生物兵器を用いた戦争となるであろう。それはまず初めにイスラエルがイランを攻撃することで戦争開始となる計画です。応酬として、イランまたは、中国のどちらかが、核で反撃するようにと仕向けられるでしょう。短期間での双方からの核攻撃の応酬のあと、停戦が持ち込まれるでしょう。世界中が恐怖と混乱の渦へと投げ込まれるでしょう。全てのことが彼らによって注意深く創出されるのです。緊張による極限状態が創り出され、全ての西側先進諸国で、厳しい社会統制、軍事統制を敷くことが正当化されるでしょう。そのための様々な準備計画が、すでに着々と各国で進行中です。核戦争の停戦中に、こっそりと中国で生物兵器をばら撒く作戦が計画されています。彼らは中国の国民を遺伝子的に標的にしたインフルエンザのようなウイルスを撒くつもりです。この生物兵器は初めは人種的に中国人をターゲットにばら撒かれるでしょう。これは山火事のように拡散するべく大量の中国人が罹患すべく計画されているのです」
・生物戦争はさらに広がっていくでしょう。西側諸国へと。拡散ルートは突然変異があるため予測不可能。そしてその結果、社会インフラは決定的に弱められるでしょう。これはほんの始まりにすぎません。このあと全面核戦争が引き起こされる可能性があります。つまり、第三次世界大戦です。破壊が広範囲に広がり、多くの命が失われるでしょう。以上のような事態の組み合わせにより計画されている人口削減は、現人口の50%減、とこの証言者は言いました。彼はこの数字が述べられるのをその会合で聞いたのです。まるでこの全てがまだ十分ではないかのように、この証言者は、「全ての準備は来る“地球物理学的できごと”を前提として配置されていっているようだ」と推測します。
・ホラーとサスペンス小説で名高い米国の人気小説家ディーン・R・クーンツ氏は、『ファントム』や『ファンハウス』など多くのベストセラーを発表しています。
1981年の作品『闇の目』(The Eyes of Darkness)では、「武漢-400」(Wuhan-400)というウイルスに言及しています。39年も前の小説であるにもかかわらず、現在進行形の武漢から蔓延した新型コロナウイルス、そしてこれによる肺炎。現実とそっくりです。小説内容を抜粋すると以下になります。
・「ちょうど、そのころ、リ・チェンという中国の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この十年の間の中国で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。中国側はこれを“武漢-400”と呼んでいます。開発されたところが武漢市の近郊のRNAとDNAの実験室だったものですから、そう名づけられました。
これはその武漢の研究室で作られた400番目の人工微生物の生存種なのです。武漢-400は完ぺきな兵器です。
・現在の低い死亡率や長い潜伏期間を持つ新型コロナウイルスと小説は違いますが、この細菌兵器の製造目的が以下の文章に表われています。
「武漢-400にはほとんど細菌兵器を上回る重要な利点が他にもいくつかあるんです。まず、ウイルスに感染してからわずか4時間後にはもう、他人にうつせるキャリアになっている。これは驚くほど短い潜伏期間です。
一度感染すると、24時間以上は生存できない。12時間で死亡するというケースも多い。殺人率は100パーセントです。だから生きのびることができない。
中国人たちは、いったいどのくらいの数の政治犯に試してみたことか。彼らはこれに対して有効な抗体も抗生物質も発見することができませんでした」
・この細菌兵器は「中国人たちの政治犯」を粛清するため開発され、実用化されてきたと書かれています。しかし、この小説の日本語翻訳版ではなんと、中国が「ソ連」と置き換えられて、武漢が「ゴーリーキー」と書き換えられています。
それにしても、偶然とは思えない。これと同様に他にも小説や映画に表れた新型コロナそっくりの内容がありますので、さらにご紹介します。
<ロス・イルミナドスが生物兵器開発に関与⁉ 「バイオハザード」のケース>
・2002年公開のアメリカ・イギリスの合作映画「バイオハザード」というホラー映画シリーズにも、一連の疫病騒動をテーマに順番通り犯行予告しています。
ピンポイントにあらすじをご紹介すると、製薬会社アンブレラ社で働いていた特殊工作員のアリスは地下研究施設を警備する任務でしたが、ウイルス兵器の研究が極秘に行われているのに気付き実態を暴こうとします。
ある日、ウイルスが漏れる500人の研究員が死亡したが、T-ウイルスにより生き返り、死者たちはゾンビ化します。
アンブレラ社の開発した生物兵器T-ウイルスの蔓延で街がゾンビ化した市民で溢れかえる異常事態のため、この巨大企業がラクーンシティという街全体を封鎖します。
また、映画の原作となったゲームシリーズの4作目「バイオハザード4」では、カルト集団「ロス・イルミナドス」がこの生物兵器開発に関与していたとされています。「ロス・イルミナドス Los Iluminados」の意味は「イルミナティ」をそのままスペイン語にした言葉です。
<イルミナティカードもパンデミックを予告!>
<ビル・ゲイツが深く関わっている⁉>
・ビル・ゲイツはネット動画配信のスピ―チで、「パニックになる必要はないがウイルス対策を始めるべきだ。なぜならもう時間がない」と言っています。
そして、実際にホワイトハウスを訪ねて当時の大統領顧問ボルトンにウイルス対策を取るべきと訴えていたようです。きっと、「もう時間がない」発言に込められた思いとは、近い将来の武漢発、新型コロナウイルスの感染拡大計画をよく知っていたのでしょう。
なぜなら同じ闇組織の一員だったから。極秘情報は内部で幹部同士で相談して決めて共有します。ビル・ゲイツは過去に事もあろうに「ワクチンで人口削減できる」とまで不謹慎にも明言しています。子宮頸がんワクチンが不妊ワクチンであることを暴露していたのです。
<イルミナティカードは彼らの計画の犯行予告!>
・その日のことを事前に犯行予告していたのが、この武漢商貿職業学院の上空にコウモリが多数飛びかい、地を行き交うモンスターたちが描かれた気持ち悪い絵のイルミナティカードなのです。
イルミナティカードは、闇組織によってつくられたカードゲームです。彼らは世界を卓にゲームして遊んでいる大富豪の連中です。富と時間を持て余すから、こんなことをしています。普通の精神ではないです。
普通なら仕事が忙しくて、こんな危ない犯罪計画をやってられないし、もっとやるべき自由で明るい自分たちの楽しい時間があるはずなのに、悪いことばかり考えている。少なくとも1995年のカード発表時点で2020年に武漢から疫病発生、やがて死者多数と知っていたなら、それだけでも25年後を考えて大変気になるし、秘密を守り続けるのも疲れるし、夜も寝られないはずです。それを耐えて長年待ち望むから異常な精神です。カードは500枚以上。どれだけたくさんの悪さを秘密裏に考えているのでしょうか?
ゲームには必ずルールがあるもので、彼らの定めた独自ルールは「今から自分たちのしようとしていることを人々に事前に知らせること」です。
<コウモリが感染源とする論文とカード>
・2020年2月15日、科学者向けのSNS「Research Gate」で一本の論文が公開されました。中国・華南理工大学のシャオ・ボタオ氏と同・武漢科技大学のシャオ・リーの連名で発表されたその短い論文は「The possible origins of 2019-nCoV coronavirus」と題されており、「武漢疾病予防管理センター(WCDC)」が、現在流行中の新型コロナウイルスの漏洩元ではないかと名指ししています。
・WCDCは、初期の感染者が集中していることから新型コロナウイルス感染の震源地と疑われている「武漢華南海鮮卸市場」と、わずか280メートルほどしか離れていません。
論文によれば、この研究所では病原体に感染した実験動物や野生動物が飼育されており、その中には605匹ものコウモリが含まれていたという。
これまでの研究で、新型コロナウイルスのゲノムは在来種のコウモリが保有しているコロナウイルスによく似ていることが指摘されています。研究所にコウモリが飼われているのは、ウイルスに特段強い動物のため、感染させることで長期保存や培養、各種の実験材料にふさわしいからのようです。
・また、WCDCは医療関係者への感染が最初に確認された病院にも隣接しているのです。
武漢ウイルス研究所では2003年頃に流行したSARSを研究しており、SARSコロナウイルスを人為的に改変したキメラウイルスの作成も行われていたという。著者らは、新型コロナウイルスがこれらの研究所から流出した可能性もあると指摘する。この論文は現在、「Research Gate」から削除されており、アーカイブだけが残っています。著者らに何があったのかは不明です。
<今回の目標3300万人の削減も失敗している!>
<研究所爆発のカードには武漢経済圏が描かれている!>
・忌まわしい悪の枢軸イルミナティカードは、彼らにとって闇のバイブル。このカードには英語でLab Explosion「研究所爆発」と書いています。そして地図は武漢経済圏です。
爆発の絵の中央部分、爆心の形は武漢と周囲に取り囲んだ隣接の街々を含んだ武漢経済圏の地図の縮図で形が同じです。探し物あてクイズのようですが、彼らはそうやって密かに楽しんでいます。
カードは武漢研究所から爆発するぞという意味です。武漢市だけでなく周囲の街々も全部含めた地図がカード爆心と同じ形です。
<コロナウイルスはエボラ、SARS、エイズなどの人工的混合でつくられた!>
・以前、私の1冊目の人工地震本を見たレオ・ザガミなる自称イルミナティ幹部に頼まれて、英語でやりとりしながらヒカルランド社で彼の本を出版するように、つないであげたことがありますが、彼は、「日本は150年来、いつも彼らの組織の計画の邪魔をしている」と言っていました。彼だけでなく、闇組織の多くが日本を憎んでいるのがよくわかりました。
ちなみに、私は普通のプロテスタント教会の牧師でメイソン・イルミナティ会員ではなく、闇組織に入れば有名な牧師となり、敵対者を巧妙に倒し、うまく金持ちになれる悪のルートまで縁あって知っていますが、今後も絶対に入りません。
悪魔から一時的に利益を得て自分の魂を売ったら、後は永遠の地獄に落ちるからです。肉の欲目の欲、暮らし向きの自慢を通じて誘惑する悪魔に完全勝利した罪なき神の子、救い主イエス・キリストをほめたたえます。
・闇の反対勢力の陰謀に打ち勝って、日本の富士フイルム富山化学の製品アビガンが一般普及することを祈り願います。
実はMERSやSARSの原因ウイルスは、今回蔓延中の「SARS-CoV-2」なる新型コロナウイルスと構造が似ています。
なぜなら、MERSやSARSを組み込んで最悪のウイルスを人工的に培養したからです。
タイ保健省は2日、新型コロナウイルスに感染した中国人女性に、インフルエンザとエイズウイルス(HIV)の治療に使われる抗ウイルス剤を混合して投与したところ、症状の劇的な改善が見られたと発表しました。新型コロナウイルス感染者の症状はエボラとSARSに似て、エボラとエイズの成分もハイブリッドしています。ですから、結論は、
新型コロナウイルス=MARS+インフルエンザ+エボラ+SARS+エ
イズ。
こうなると、あの武漢のカードに描かれた5色5種類のモンスターたちが成り立ちます。
<まだまだ出てくる! 新型コロナ・パンデミックの犯行予告‼ >
・1996年2月。上京後、定職にも就かず自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)は、ある日、金融業者の遠藤により、かつて自分が保証人になっていた借金を押し付けられ、法外な利息により385万円にまで膨らんでいることが知らされる。
遠藤に誘われるままカイジは1か月後、負債者に借金一括免除のチャンスを与えるという、フランス語で「希望」の名を冠すギャンブル船「エスポワール」に乗り込む。
・この映画のカジノ船エスポワール号も、漫画の表紙のカジノ船も、現実のダイヤモンド・プリンセス号にそっくりです。
<犯行予告するさらに6つの映画>
・さて、新型コロナ攻撃に対する犯行予告はイルミナティカードだけでなく、治外法権のカジノ船ダイヤモンド・プリンセス号を模した賭博映画『カイジ』、ゲーム「バイオハザード リベレーションズ」そして以下の6つの映画にも表れていて、実はこれらすべての映画をミックスした複合災害だったのです。
ちょうどかつての日本が東日本大震災のとき、地震以外に津波や放射能、爆発火災、風評被害、訪日客減少、汚染水、停電、食料難、株暴落、会社倒産などなど複合的に災害が襲ったようにです。
<「カサンドラ・クロス」>
・あらすじは、細菌を浴びた過激派がヨーロッパ大陸横断列車へ逃れた。車内には伝染病が広まり、機密の漏洩を恐れた軍は秘密裏に列車をポーランドへ運び隔離しようとした。
<「ザ・クレイジーズ」>
・あらすじは、街に防護服に身を包んだ兵士たちが現れ、伝染病の発生を理由に住人たちを強制的に連行し始めた、包囲された街の話。告知画像には「狂気が感染する――ここは細菌兵器に襲われた街。」と書いています。
<「復活の日」>
・あらすじは、猛毒の新型ウイルス「MM-88」が東ドイツの科学者によって持ち出されマフィアの手に渡る。マフィアの乗った小型飛行機は吹雪に遭ってアルプス山中に墜落し、ウイルス保管容器は砕け散る。やがてMM-88は大気中で増殖を始め、全世界に広まった。
<「ドゥームズデイ」>
・あらすじは、死のウイルスが数百万人の命を奪った2008年から27年後に、再び同じウイルスが蔓延。その直後、政府は27年前にウイルスを封じ込めるべく隔離した街に、いまだ生存者がいる事実を知る。治療薬の存在を確信した政府は、リーダー率いる一流のスペシャリスト・チームを隔離した街に送り込む。
<「コンテイジョン」>
・2011年のアメリカのスリラー映画。高い確率で死をもたらす感染症の脅威とパニックを描く。あらすじはこうです。香港への出張旅行を終えたベスが、空港で電話をしながら時折咳き込んでいました。風邪の引き始めのようにも見えるが、その2日後に突然はげしい痙攣を起こして意識不明に陥る。彼女の夫であるミッチは彼女を急いで病院に連れて行くが、未知の病気で劇症型脳炎を発症しており、そのまま死亡してしまう。
<「ミッション:インポッシブル2」>
・あらすじは、バイオサイト製薬会社の研究員である博士は、自身が開発した感染すれば20時間で治癒不可能となり死亡するキメラウイルスと、その治療薬であるベレロフォンを護衛のもとシドニーからアトランタへ旅客機で輸送するはずであったが、IMFメンバーに殺害され、強奪されてしまう。これに対しIMF本部はチームを組み盗り返す。キメラウイルスのキメラの語は、動物と人間が合体した偶像が多く出るギリシア神話に登場する生物「キマイラ」に由来する。
『日本と世界を知るためのファクト図鑑』
偏見や思い込みを排して世界を正しく解釈する!
佐藤優 監修 宝島社 2019/11/27
・(思い込み):現在、キリスト教国とイスラム教国が激しく対立していることから、両方の宗教はまったく異なる特質を持つ宗教なのだろう。)
・キリスト教とイスラム教にユダヤ教を加えた三つの宗教は、アブラハムの宗教といわれる。三つの宗教はともに中東に起源を持っており、預言者アブラハムを始祖と信じている宗教である。ユダヤ人はアブラハムの二人の息子の中のイサクの子孫であると主張する一方、イスラム教徒はもう一人の息子イシュマエルの子孫であると主張している。また、三つの宗教はともに旧約聖書を聖典の一つとしている。
(長年にわたる対立の歴史はいつ終わるのか?)
・イランをはじめとする多くのイスラム教国で、イスラム教以外の多くの布教活動は禁止されている一方で、キリスト教とユダヤ教は信仰を認められている。もちろん、そうした国ではイスラム教徒以外に選挙権がないなど、イスラム教徒と同様の権利を有していないが、特別待遇にある宗教だと述べることができる。
<死刑制度がある国は世界の約3割を占める>
(思い込み):(近年、日本では死刑廃止問題について活発な議論が行われている。また、EUは死刑の廃止を宣言しており、死刑がある国は遅れた国である。)
(検証):2018年現在、198の国と地域のうちで142の国が死刑制度を廃止・停止している。その割合は全体の7割を超える。だが、逆の側面から見れば、3割の国がいまだに死刑制度を廃止・停止していないという事実がある。さらに、通常の犯罪のみ死刑を廃止した8カ国と、制度として死刑はあるが過去10年の執行がない28カ国を、死刑存置国の56カ国・地域と合わせると92カ国となり、完全廃止した106カ国に迫る数字となるのだ。そのため、死刑廃止が世界の時流といい切ることはできない。
死刑廃止の是非は一概にいえない問題であるが、死刑を廃止しない国がこれほど多い理由を考えた場合、一つには宗教的な理由が多い。
(死刑を望む国民感情 死刑を巡る心情的な問題)
・死刑が犯罪の抑止力になるという主張がされているが、その実証性は低い。だが、犯罪によって肉親を失った家族が、犯人に対して死刑を望む感情は理解できるものがある。
<世界でもっとも民主主義指数が高い国はノルウェー>
(思い込み):(世界の国でもっとも民主主義指数が高い国は、やはりなんといっても民主主義の象徴といっても過言ではないアメリカ合衆国だろう。)
(検証):(子どもの頃から国ぐるみで民主主義への関心を育てる)
・そのランキングで長年1位に輝いているのは、民主主義の代名詞ともいえるアメリカではなく、実は北欧のノルウェーなのである。なお、2018年の結果ではアメリカは25位、日本は22位だ。
それでは、ノルウェーのどのような点が民主主義的なのだろうか。ノルウェーの人口はわずか533万人と国の規模は小さいが、民主主義への意識は比べものにならないくらい高い。たとえば、ノルウェーの教育現場では、小学校から民主主義の大切さを教えるだけでなく、各政党が子どものための政策をつくっているため、高学年の生徒は選挙小屋と呼ばれる施設を巡って質問をしたり、レポートをまとめたりする。
また、ノルウェーの8割以上の高校では、生徒会が政党の代表を招いて討論会を催すという。こうした子どもの頃から徹底した教育が、民主主義への関心の高さを支えているのだ。
(政治参加のしやすさは日本とは雲泥の差)
・ノルウェーは選挙運動もユニークだ。ノルウェーでは選挙期間中、前述の選挙小屋が通り沿いに建てられる。選挙小屋はカラフルでかわいらしいデザインの小屋で、子どもから大人まで気軽に訪れることができる。
・また、選挙権および被選挙権は18歳以上と規定され、立候補の際の供託金もいらないので、なんとオスロ市議会には女子高校生の市議会議員ばかりか、高校生の国会議員候補までいるという。
<先進国では就労後に学び直すリカレント教育が一般的だ>
(思い込み):社会人になってから大学に入学して教育を受けるのは、日本だけでなく海外でも特殊な例である。
(検証):(諸外国では一般的な社会人の大学入学)
・リカレント教育とは、スウェーデンの経済学者レーンが提唱した教育の概念で、生涯にわたって教育と就労を繰り返していく教育のことをいう。日本語では、「生涯教育」や「回帰教育」、「循環教育」などと呼ばれる。
・しかし、諸外国では日本人の想像以上にリカレント教育が普及しており、大学入学者の25歳以上の割合はOECD各国平均ですでに約2割に達している。一方、日本における社会人学生比率は1.9%に過ぎない。
(日本でリカレント教育が定着しない理由とは?)
・諸外国では、大学入学時の平均年齢も高い。アメリカでは大学入学年齢の平均は27歳で大学進学率は74%、ノルウェーに至っては大学入学年齢の平均が30歳で、進学率は76%となっている。18歳で大学に入学して22歳で卒業して就職するというのが常識となっている日本の大学入学年齢の平均は18歳(2017年)だという。
この歴然たる差は、大学というもののとらえ方の違いから来ている。北欧では、高校を卒業したら、まずは経済的に自立することが最優先される。就職して社会経験を積んでから、資格取得やキャリアアップ、知的好奇心の充足のために大学へ進むのが一般的なのだ。しかも、大学の学費は自国民も留学生も無料だというから驚きである。
・また、リカレント教育が盛んな理由の一つに、離職のしやすさがある。リカレント教育が特に盛んなフランス、ベルギー、イタリア、スウェーデンでは「有給教育訓練制度」がすでに立法化されており、教育や訓練を受ける目的で一定期間離職することが認められているのだ。
<アメリカは日本以上に学歴主義である>
・(思い込み):自由と独立精神を重視するアメリカ社会では、どのような人であろうとも、実力さえあればチャンスは平等に与えられている。
(検証):(アメリカの管理職のほとんどは高学歴)
・アメリカという国は実力主義の国であり、一人ひとりの人間が競争する社会であることは多く知られているが、実は日本以上の学歴社会である。個人の努力や実力以外の要素である学歴が人生における成功の鍵を握っているのだ。
・アメリカの大企業の部長の最終学歴を表す統計によれば、大学院修了の人事部長は61.6%、営業部長は45.6%、経理部長は43.9%、四年生大学卒ではそれぞれ、35.4%、43.5%、56.1%となっている。2012年の日本における従業員500人以上の会社での役員の割合は、大学院修了6.3%、大学卒67.8%となっている。管理職と役員の比較であるので正確に対応してはいないが、それでもアメリカ社会において学歴がいかに重要であるかが端的に理解できる資料である。
(ワスプから学歴重視へアメリカ社会秩序の変化)
・かつてアメリカでは、「ワスプ(WASP)」と呼ばれるアングロサクソン系の白人で、プロテスタントであることが社会的地位を築く上で、非常に重要なものとなっていた。その支配階級とも呼び得るワスプの師弟が通う学校が、ハーバード大、コロンビア大、プリンストン大などのアイビーリーグと呼ばれる名門校であった。
・このようにアメリカ社会では学歴が重んじられ、どこの大学のどの学科を卒業し、どこの大学院や博士号を取ったかが社会的に非常に重要なものとなっているのである。こうした状況は、アメリカ社会が平等な社会に見えて、実は保守的なシステムを持つ社会であると批判されている原因となっている。
<オーストラリアの国民の20人に1人は中国人だ>
・(思い込み):(オーストラリアは移民国家として知られているが、その多くが欧米諸国の出身者で占められているはずだ。)
・(検証):(オーストラリアに絶大な影響力を振るう中国)
・オーストラリアは、1970年代から、さまざまな文化を持つ人々が共存できる社会を目指す「多文化主義」の旗印の下で各国からの移民を積極的に受け入れてきた。2019年現在、オーストラリアの全人口の約29%が国外で生まれているという。その内訳を見ると、かつての宗主国のイギリスからの移住者ももちろん多いが、特筆すべきは中国からの移住者の割合である。
2018年に発表された統計データによれば、中国からの移住者は2018年までの5年間で平均して毎年約7~8万人増加しており、2019年現在、中国からの移住者の総数は130万人にも上ると推測されている。オーストラリアの人口は約2500万人なので、全人口のおよそ5%、20人に1人が中国人ということになるのだ。
(静かに侵食されているオーストラリア)
・ところが、中国人の移住者が増えることは、オーストラリアにとってメリットばかりではない。多くの中国人が投資を目的にオーストラリアの土地や不動産を購入したことで、国内の住宅価格が高騰し、オーストラリア人が住宅を買いにくくなるという現象が起きているのだ。
<アメリカにおける銃による死者は、独立戦争以降の戦死者を上回る>
(思い込み):(アメリカは大規模な戦争を経験しており、多数の戦死者を出している。その数はアメリカ国内の銃による死者とは比べものにならない)
(検証):(簡単に銃が買えるアメリカでは銃は自由の象徴の一つである)
・アメリカは銃社会である。自衛のための銃の所有を国民に認めている国はアメリカ以外にもあるが、西欧の先進国といわれる国で、国民が銃を所持できる国はアメリカだけだ。
アメリカにある政治発言の信憑性をチェックするサイトであるパンディットファクトの2015年の記事によると、アメリカの独立戦争以降の戦死者の数は約140万人であり、1968年から2015年の間にアメリカにおいて銃によって殺害された人の数は150万人を超えているという統計がある。この数字はアメリカがいかに銃社会であり、銃による犯罪が多発している国であるかということをはっきりと示すものである。
・また、かつてはアメリカ市民であればスーパーでも簡単に銃を買うことができたため、アメリカの4割の家庭が銃を所持しているという統計もある。
(銃規制を阻止する強力な圧力団体の存在とやまぬ銃犯罪)
・毎年驚くほどの銃による犠牲者が出ているのにもかかわらず、なぜ銃規制が進まないのかといえば、政治的・経済的・社会的に強大な影響を持つ全米ライフル協会(NRA)の存在があるからである。この協会の会員数は約500万人、多くの著名人が加入しており、莫大な資金力があるといわれている。NRAは銃規制に関する法案が提出されるとすぐにアメリカ全土の会員による署名運動を行い、反対運動を展開する。
<アメリカでもすべての子どもが学校に通っているわけではない>
・(思い込み):先進国は学校教育が基本。公立にしろ、私立にしろ、学校での教育が必要不可欠であり、それはアメリカでも変わらない。
(検証):(教育は学校以外でもできるという考え方)
・アメリカにおいては50州すべてで、学校に通わずに親が家庭で勉強を教えるホームスク-リングという制度が認められている。
アメリカ全土で2~3%、つまりは、50人に1人以上の子どもがこの制度の下で勉強しているという現状がある。
・また、アメリカの大学入試では単に学力だけが問題とはならないため、どのような教育をどのように学んできたのかという点も重視されるが、ホームスク-リングを受けてきた子どもたちが、学校教育を受けてきた子どもたちに比べて入試が不利になるわけではないという点も重要である。
(社会集団の中にいることで背負うリスクも存在する)
・アメリカにおいて学校教育よりもホームスク-リングを行う家庭が少なからず存在している理由の一つとして、銃問題がある。
・このようにアメリカの学校は絶対に安全な場所とはいえず、しばしば悲劇的な事件の舞台となっている。そのため、危険な学校よりも子どもたちを自分たちで守ることができる自宅で教育を行ったほうがよいと考える親がいるのも理解できるだろう。
・また、日本にも同様に存在している問題として、いじめを理由としたものがある。なんらかの形でいじめを受けている学校で教育を受けている子どもが、いじめを受けている学校で教育を受け続けるよりも家庭内で教育を受けたほうが、学力が伸び、精神的にもよい場合が多々存在する。そうした理由によってホームスク-リングが選択されることもあるのだ。
いずれにせよ、ホームスク-リングという制度がアメリカでは公的に認められており、そのことによって学力が伸びている子どもも間違いなくいることは事実である。
<2050年に世界人口の40%が深刻な水不足に陥る>
・(思い込み):温暖化で北極の水が溶け、海面水位が上がるほどなので、将来的に地球の水資源は豊かになるだろう。
(検証):(このまま行けば人類の4割以上が水不足に)
・我々は普段、水道から飲料として、または生活用水として当たり前のように水を得ている。水は、人間の生活にとっても、生命維持活動にとっても、絶対に必要不可欠な資源だといえる。しかし、その水が、将来的には地球規模で不足するかもしれない。
OECDの調査によれば、2000年時点で世界の水需要は約3600k㎥だったが、2000年から2050年までの間に製造業に使われる工業用水が+400%、発電用の水が+140%、生活用水が+30%ほど増加し、水需要全体で55%も増加すると見込まれており、その結果として2050年時点で深刻な水不足に陥る河川流域の人口が、世界人口の4割以上である39億人にも達する可能性があるというのだ。将来的に人類が水不足に見舞われるかもしれないという予測は、OECD以外にもユネスコやアジア開発銀行なども発表しており、信憑性が高い。
(安定的に水を供給できる体制づくりが急務)
・今後、地球上の多くの人々が水不足に陥ることになれば、それが紛争の火種になる可能性もある。実際に2010年からナイル川の水資源を巡ってエジプトとエチオピアが対立を続けている。人類は、今後数十年をかけて地球上のできる限り広い範囲に対して安定的に水を供給できる体制を整備する必要がある。
<研究開発費の対GDP比率がもっとも高い国はイスラエルだ>
・(思い込み):(研究開発費のGDPに対する割合がもっとも高い国は、もっとも研究開発費の高いアメリカだろう。)
・(検証):(研究開発に巨額を投じるイスラエルの真意)
・国の研究開発費の多さを比べた場合、アメリカが毎年計上している額は5400億ドル以上に上り、約4960億ドルの中国と差が縮んだものの首位となっている(ちなみに、日本は約1760億ドルで3位。いずれも2017年の統計データによる)。しかし、研究開発費の対GDP比となると、その順位は大きく様変わりする。なんと首位は、イスラエルなのだ。イスラエルは、これまで研究開発費のGDPに対する割合がもっとも高い国に何度も選ばれており、2015年のデータによれば、研究開発費が対GDPの4.27%に上っていたという。
研究開発費自体の規模は、2016年で130億ドル程度とアメリカや日本に比べればかなり少ないが、それでもイスラエルの人口がわずか902万人、国土面積は四国とほぼ同じ大きさしかないことを考えれば、イスラエルという国の予算がどれほど研究開発に傾斜しているかがわかる。
(世界中から研究者が集まる新規事業国家)
・また、イスラエルは「新規事業国家」としてもよく知られている。つまり、ゼロからイチを生み出すスタートアップ企業を多く生み出しているのだ。あまり知られていないが、私たちの身の回りには、イスラエルで生まれた技術が溢れている。たとえば、VR、自動運転車画像認識チップ、ZIP圧縮技術、CT診断装置、USBメモリ、ドローン、プチトマト、3Dプリンター、レーシックなどは、実はイスラエル発の技術なのだ。
そのため、イスラエルには世界中から優秀な技術者が集まっているだけでなく、多くのグローバル企業が最先端の技術を求めてイスラエルに研究拠点を置いており、今やシリコンバレーにも匹敵する技術力を誇っているといわれる。
イスラエルと周辺のアラブ諸国との間の緊張関係が続く限り、イスラエル国民は自分たちの国と民族を守るために、常に経済成長を続けて国力を維持しようと、小国ながらも人類の最先端を行く技術を生み出し続けていくのかもしれない。
<世界のCO2排出量は減っていない>
(思い込み):(国際会議の場でCO2削減問題が話し合われており、大気中のCO2量を減らすため、各国は最大限の努力をしている。)
・(検証):(急ピッチの工業化がCO2排出量を増やしている)
・世界のCO2排出量は増加し続けているが、その一例として気象庁が2018年に発表した岩手県大船渡市三陸町綾里における統計を展示しよう。綾里での1987年度のCO2量は351.4PPMであったものが、2018年には412.0PPMと過去最大の数値となっている。
さらに、ほかの観測場所においてもCO2量は増加し続け、過去最大の数値となっている。もちろん日本だけではなく、この状況は世界でも同様である。大気中のCO2は温室効果ガスとして作用し、温暖化現象や異常気象を引き起こす大きな要因である。
・では、なぜこのようにCO2量が増え続けているのだろうか。その原因の一つとして中国やインドといった国の急激な工業化を挙げることができる。先進国によるCO2排出量が規制によって少なくなっても、今まで多くのCO2を排出することがなかった国がCO2を大量に排出するようになり、世界全体では排出量が増えているのだ。この状況を打破するためには新興工業国のCO2排出量の削減が絶対的に必要となる。
(十分な対策を取らずにCO2を大量に排出している国がネック)
・EUなどの先進諸国は地球環境問題に真剣に取り組み、CO2排出量の削減を行っているが、アメリカはトランプが大統領になってから、CO2排出量削減対策を放棄する方向に向かっている。
さらに、中国、インド、ブラジルなどの新興工業国は急速な工業化のみを進め、環境問題を二の次にしている現状がある。
・だが、各国がエゴを押し通すことによってCO2排出量は確実に増加し、早急に世界的な対策を取らなければ取り返しのつかない状況に陥る一歩手前にあることを、我々はしっかりと理解しなければならない。
<2100年以降は、人口は増えない>
・(思い込み):(発展途上国がこのまま経済的に豊かになり続ければ、世界人口は際限なく増加するはずだ。)
(検証):(世界人口は2100年までに109億人まで増加)
・1927年には20億人だった世界人口は、その60年後の1987年には50億人に、2019年には77億人に達するというペースで急速に増え続けている。さらに国連は2019年に、世界の人口は2050年までに97億人、2100年までに109億人に増えるだろうという推計を発表した。この推計を聞くと、誰もが「増えた人口に耐え切れず、地球上の全資源は枯渇してしまう!」と一抹の不安を感じざるを得ないだろう。
ところが、上述の国連による推計では、次のように続く。サブサハラ・アフリカでは2050年まで人口が倍増するが、世界人口は2100年頃にはピークを迎え、少子高齢化などの影響によって人口増加率はゼロ成長となり、その先は減少するようになるというのだ。
ちなみに、その頃には、人口減の国や地域は約6割に上るようになるという。
将来的にある時点から世界人口が減少し始めるのは間違いなさそうだが、だからといって安心はできない。2050年までの人口の5割超を、インド、ナイジェリア、パキスタンなどの9カ国の人口が占めるという。特に人口増加が著しく、21世紀を通じて人口が増え続けると見込まれているのは、サブサハラ・アフリカである。
(人口の増減は国によって偏りが生じる)
・つまり、サブサハラ・アフリカのような後発開発途上国の多くの地域では急速な人口増加が続く一方で、先進国においては少子高齢化の影響によって次第に人口減に傾く国が増えていくことになる。
推計によると、2100年にはアフリカで人口が0.61%増加する一方、アジアは0.39%減、ヨーロッパで0.14%減となるという。その場合、人口が増え続ける途上国と、人口が減り続ける先進国との間の経済面や衛生面における格差をどうするのかという問題が浮上することになるのだ。
<電気を使えない人は全世界人口の約20%しかいない。>
(思い込み):(世界にまだ後進国も多く、いまだ電気を使えない人々が大勢いる。)
(検証):(電力消費量は一貫して伸び続けてきた)
・宇宙から夜の地球を眺めた写真を見たことがあるだろうか。夜の闇の中で、都市部や道路沿いが明るく輝いている映像だ。
・そんな写真を見たことがある人の多くが、世界にはいまだに電気を使えない人が大勢いるのだという感想を抱くかもしれない。しかし、実際には現時点で世界人口の約80%が電気を使うことができているのである。
(電気を使える地域にはいまだ偏りがある)
・世界の国や地域がどの程度「電力化」されているのかを見る電力化率はどうだろうか。
先進国全体ではすでに99.9%が電力化されており、無電化地域に暮している人の数は100万人程度である。それに対し、南米は電力化率が95%で無電化地域人口が2400万人、中東は電力化率が91%で無電化地域人口が1900万人、アジアの発展途上国は電力化率が83%で無電化地域人口が6億1500万人、アフリカの北アフリカは電力化率が95%で無電化地域人口が100万人と、極めて高い割合で電力化されているものの、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)は、電力化率はわずか32%、無電化地域人口は5億9900万人にもおよぶ。実に、サブサハラ・アフリカの68%の人口が電気のない暮らしを余儀なくされているのである。
・特にサブサハラ・アフリカにおける電力化率の改善は、同地域における人口増加率や水資源の不足などと合わせて、人類にとっての大きな政策課題の一つとなっている。
・(思い込み):(アメリカでは大統領の力が強大だ。そのため、有権者は大統領候補者を基準に政治政党を決めている。)
(検証):(二つの政党の経済政策の違いが投票行動に影響を与える)
・アメリカの二大政党の経済政策はまったく異なる特徴を持っている。民主党の経済政策は基本的に経済に国家が介入し、経済的流れを政府がコントロールし、企業よりも国民一人ひとりの利益を優先する。それに対して共和党は政府が経済に介入することをなるべく避け、企業の成功が国家の繁栄につながると考える。さらに、経済格差は当然と考え、企業への統制は行わない政策を取る。
・共和党は経済的自由主義を優先するため、国内の企業に対しても税率を低くし、経済発展を促そうとする。一方、民主党は税負担の公平を主張し、利益の上がっている企業はそれだけ多くの税を払い、貧しい国民はより少ない税で済むようにすべきであると考える。こうした違いは経済政策全般におよぶ。
・自由競争の勝者が個人として多くのモノを所有すべきであると考えるのが共和党の経済的自由主義政策である。それに対して民主党は自由よりも平等を優先するために、経済への国家介入を行って格差社会をなるべくなくそうとする。
つまりは、共和党と民主党の経済政策の違いは、自由を優先すべきか、それとも、平等を優先すべきかという民主主義の二つの根本原理のヘゲモニー問題という側面もあるのである。
<教育を受けられる子どもは増加している>
(思い込み):(発展途上国ではいまだ学校に通えない子どもが多く存在している。)
(検証):(国連が掲げた就学率向上という目標)
・2000年9月、ニューヨークの国際連合本部で開催された、189の国連加盟国が参加した国連ミレニアムサミットにおいて全会一致で「ミレニアム宣言」が採択された。人類が21世紀を迎えるにあたって「平和で繁栄した公正な世界をつくり出すこと」や「貧困をなくすこと」などを目標として、世界各国が団結して取り組んでいくことが宣言されたのである。
・「ミレニアム開発目標」では、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」などが定められた。その中で、教育に関して定められたことは、「2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする」というものだった。
1991年時点では、初等・中等教育への就学率は先進地域で96.3%、開発途上地域で79.8%、サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)地域で53.5%と、先進国と途上国との間には大きな隔たりがあったのだ。
(就学率は向上しているがいまだ課題も残る)
・しかし、国際的な努力の結果、世界の初等教育を受けられない児童数は着実に減っていき、2000年に1億人だった児童数は2012年までに5800万人に減少させることができた。開発途上地域全体の初等・中等教育への就学率は200年には83.5%だったものが、2012年には90.5%にまで上昇。約9割の子どもたちが初等・中等教育を受けられるようになった。
また、特に劇的に就学率が向上したのがサブサハラ・アフリカ地域で、2000年には60.3%の児童しか初等・中等教育を受けられなかったのが、2012年には77.9%にまで上昇している。
<世界は殺人犯罪に溢れていない>
<世界人口の7割以上が神を信じている>
<カンガルーはオーストラリアでは害獣として駆除されている>
<世界でもっともプレーされているスポーツはサッカーではない>
・日本バレーボール協会によれば、全世界でもっとも競技人口が多いのはバレーボールだという。
・競技人口1位はバレーボールの約5億人、2位がバスケットボールの約4億5000万人、3位は卓球の約3億人、4位はサッカーの約2億6000万人。
『未来の中国年表』
超高齢大国でこれから起こること
近藤大介 講談社 2018/6/20
<2018年 中国でも「人口減少時代」が始まった>
・長年にわたる「一人っ子」政策が、少子高齢化時代を大幅に早めてしまった。しかも日本と違って、国の社会保障制度が十分に整っていないまま少子高齢化へと突入することになる。
(出生数が1786万人から1723万人へ)
・少子高齢化が世界で一番進んでいるのは日本だが、中国は日本に遅れること約30年で、同じ道を歩んでいる。
・ところが、全面的な「二人っ子政策」元年とも言える2017年に出生数は増えるどころか、63万人も減少してしまったのである。
(「子育てする20代女性」が600万人も減っている!)
・出生数が減少した主な原因は、ひとえに一人目の子供の出生数が減少したためだ。
・それにしても、一人目の子供の出生数が、日本の3年分近くに相当する年間約250万人も減少するというのは、尋常な社会ではない。いったい中国で何が起こっているのか?
(人口激増を懸念した鄧小平)
・そして食糧を豊富にするためには、できるだけ多くの人々を、農作業に従事させる必要があった。古代から中国大陸において戦争が絶えなかったのは、一つは土地の争奪が原因だが、もう一つは人間の争奪戦だった。
・こうして中国は、憲法で家庭の出産数に制限を設けるという、世界でも稀有な国家となったのだった。
(日本の人口よりも多い「中国の一人っ子」)
・2010年の時点で、全人口13億3972万人中、一人っ子の数は、すでに1億4000万人に達していた。これは日本の総人口よりも多い数だ。
(親と祖父母が子供を徹底的に甘やかす)
・一般に、中国が日本を反面教師にしている事柄が二つあると言われる。一つは日本のバブル経済の崩壊で、もう一つが日本の少子高齢化である。
・特に、中国の人口規模は日本の11倍にあるので、近未来に人類が経験したことのない少子高齢化の巨大津波が襲ってくるリスクがあったのだ。
(激論!「二人っ子」は是か非か)
・こうして2016年元旦から、「人口及び計画出産法」が改正され、中国は全面的な「二人っ子政策」の時代を迎えたのだった。
(子供を生まなくなった3つの理由)
・①子育てコストの上昇、②公共サービスの欠如、③出産観念の変化(夫婦二人きりの生活を楽しみたい)
(病院の診察整理券を狙うダフ屋たち)
・私が北京に住んでいた頃は、病院の「挂号」(診察の順番を示す整理券)を確保するために夜明け前から並んだり、「挂号」を高く売りつける「黄牛」(ダフ屋)が病院内に跋扈したりということが起こっていた。
(貧富の格差が定着する)
・だが中国は、依然として世界最大の発展途上国であり、あらゆるものが未整備のまま、少子化に突入したのだ。
<2019年 首都・北京の人口もごっそり減る>
・自然減に加え、習近平政権の複雑な思惑と極端な政策により、この年から北京は大きく姿を変えていく。
(2万2000人の減少)
・21世紀に入って17年目にして、初めて北京市の人口が減少したのだ。
(北京の人口が減る本当の理由?)
・北京市の人口がマイナス成長に転じたことは、北京市の人口は発展の変動の趨勢にマッチしたもの。
(3億人の出稼ぎ労働者)
・「農民工」の都市部での悲惨な状況は、たびたび社会問題となってきた。
・彼ら全員に大都市の戸籍を与えていけば、大都市はすぐにパンクしてしまう。だがそうかといって、「現代版アパルトヘイト」と揶揄される中国の戸籍制度は、隣国の北朝鮮を除けば、世界に類を見ないものだ。
(「特大都市」「超大都市」への移転はより厳しく)
・北京市の戸籍改革計画では、「中心部6区の人口を、2020年までに2014年比で15%減らす」としている。
(自治体が住人を選抜する!)
・習近平政権による戸籍改革で、もう一つ興味深いのは、「積分落戸」と呼ばれる新制度の導入である。これは、「特大都市」及び「超大都市」の戸籍を取得したい中国人を点数づけして、自治体が選別するというものだ。
(「第二首都」誕生)
・一つめは、「第二首都」の建設である。
(「低端人口」の一掃が始まる)
・その出稼ぎ労働者たちのことを、「低端人口」(下層の人々)と呼んでいるのだ。
・「低端人口」は、北京市内に数百万人いるとも1000万人近くいるとも言われた。
(本地人と外地人の分断)
・「『低端人口』を追い出さないから、北京の街は汚いし、人騙しは跋扈するし、治安も悪い」
(「拆拆拆」される人々)
・これによって、合法と違法の間のような、道路に少し張り出した店舗やレストランなども、すべて撤去させられてしまった。中国語で「撤去する」という動詞は「拆(チャイ)」と言うが、「拆拆拆」という言葉が、たちまち北京で流行語になった。
(20年前にタイムスリップ)
・つまり、北京の街並みは、20年前にタイムスリップしたのである。
・「低端人口がいないと、ゴミの回収から宅配便の配達まで何もできなくなってしまうことが分かった。それが春節の後、彼らを黙認するようになった」
<2020年 適齢期の男性3000万人が「結婚難民」と化す>
・適齢期の男性が適齢期の女性よりも圧倒的に多い社会が到来する。「剰男」(余った男)たちが選ぶ3つの道とは?
(「一人っ子政策」最大の副作用)
・だが、そうした歪みの中でも看過できない「副作用」が、男女比率の歪みである。
(女性100人に男性118人)
・嬰児の性別の話に戻ろう。中国の農村部では、女児が生まれた場合、役場に出生届を出さなかったり、間引いてしまったり、業者に売りつけてしまったりということが横行した。何と言っても、欲しいのは跡取り息子なのである。
・世界の出生数を見ると、男子が女子より多いのは各国に共通な現象で、国連では「102から107の間」を正常な国家と定義づけている。
・だが、時すでに遅しだった。中国は2020年には、結婚適齢期とされる20歳から45歳までの人口で見ると、男性の数が女性の数よりも、3000万人も多い社会となってしまうのだ。
(「持ち家のない男」は話にならない)
・中国の女性は、マイホームを買えて、「家を成せる」男性と結婚したいのである。
(国策ドラマだった『裸婚時代』)
・2011年春、中国全土で『裸婚時代』というテレビドラマが大ヒットした。「裸婚」とは、何とも意味深な漢字だが、「裸一貫(無一文)で結婚する」という意味である。つまり、究極のジミ婚である。
(「お一人様の日」で大儲け)
・それは、「1」が4つ並ぶ11月11日を、「お一人様の日」と定めて、結婚できなかったり、彼女や彼氏がいない若者たちに、24時間限定の大規模なセールを行ったのである。
(「超男性社会」の近未来)
・重ねて言うが、2020年の中国には、20歳から45歳までの男性が、同年齢の女性より3000万人も多いという、人類未体験の「超男性社会」が到来する。
・将来は「アフリカ系中国人」という人々も、普通に目にするようになるかもしれない。
(同性愛大国への道)
・近未来の中国で起こるであろう二つ目の現象は、男性の同性愛者の増加である。
・「人民解放軍の若い兵士たちの中には、大量の同性愛者がいる」
・社会主義国の中国では、例えば、人民解放軍などの組織では同性愛は禁止しているが、それでもいまどきの若者たちは、意外にあっけらかんとしている。そもそも中国人は他人に無関心なこともあって、同性愛の青年たちは徐々に表に出始めてきているのである。
(「空巣青年」の「孤独経済」)
・第三の現象は、「空巣青年」の増加である。
・日本語の「空き巣」とは無関係で、親元を離れて大都市で一人暮らしをしている若者のことだ。
<2021年 中国共産党100周年で「貧困ゼロ」に>
・北京から農村に追放されて貧しい青少年時代を送った習近平は、農村の貧困層の支持を盤石にし、長期政権を実現させるため、ありとあらゆる手段を使って脱貧困を目指そうとする。
(中国の「中流」「貧困ライン」の基準)
・長い演説の中で、これでもかというほど「脱貧困」を力説したのだった。
(3000万人の「最貧困層」を3年でゼロにする)
・貧困家庭が政府から生活保護を受けるには、地元の役場へ行って、年収が2300元(約3万9000円)以下であるという「貧困証明書」を入手しないといけない。この年収2300元という基準は、胡錦涛時代の2011年に定めた。「貧困証明書」の様式は各地域によってまちまちで、個人がいかに生活が苦しいかを記述し、役所がそれにハンコを押す。
・習近平主席が言う「貧困を撲滅する」という意味は、「貧困証明を取る人をなくす」ということである。「貧困証明書」取得者は2017年末時点で、約3000万人いる。そこで、2018年から毎年1000万人ずつ減らしていき、2020年にゼロにしようという計画なのだ。
(習主席の「貧困」体験)
・「私は前世紀の1960年代末、まだ十何歳で、北京から陝西省延安市近郊にある梁家河という寒村に派遣され、そこで7年間、農民をやった。貧困に喘ぐ村民たちとともに穴倉で生活し、土坑の上で寝た。何ヵ月も、一切れの肉さえ食べられないありさまだった。私はその村の党支部の書記になり、中国の庶民たちが何を求めているのかを理解した」
(毒食品問題の深層)
・胡錦涛時代に政権幹部から、「中国は1割のヨーロッパと9割のアフリカだ」という話を聞いたことがあったが、まさに言い得て妙だった。
・数年前に日本で問題になった中国産毒食品の氾濫は、まさに貧困の為せるわざである。
(「貧困地区の大開発」を利用して利権づくり)
・ともあれ江沢民政権は、西部大開発の名のものに、西部地域を巻き込んだ大規模なインフラ事業などを推し進めていった。
(「鬼城」が全国あちこちに)
・中国全土に点在するこのような「鬼城」は、大きな社会問題になった。さらに問題なのは、それらの建設費用の一部が、地方幹部の懐にキックバックされたことだ。
(農村を一変させた通販サイト)
・習近平政権になってから始めた貧困撲滅の試みを、二つ紹介した。一つはアリババが始めた農村版の「農村淘宝」である。
(最貧困地域をITの牙城に)
・貴州省のような貧困地域でも、3分の2もの地区で深刻な腐敗があったこと自体驚きだが、ともかく腐敗が蔓延しない監視システムを作った。
その上でIT企業を誘致し、省の振興を図った。
(貧困を脱することができない村は潰す)
・脱貧困が可能と判断した村と、不可能と判断した村である。まず、不可能と判断した地域では、村人たちを早期に脱貧困が可能と思える地域まで引っ越しさせる。
(貧困層を養う5つの政策とは)
・第一に、インタ―ネット通販と農村を結びつける。第二に、1万の村の村民を100の都市の家政婦にする貧困層扶養計画。第三に、対外投資を行う企業に、農村の人々を海外に派遣する労働者として雇ってもらう。第四に多国籍企業に労働者として雇ってもらう。第五に、国境地域の貿易に貧困地域の人々を巻き込んでいくのだ。
<2022年 大卒が年間900万人を超え「大失業時代」到来>
・国が豊かになるにつれて大学生の数は今後も増え続ける。だが、高度経済成長が終わりつつある中、巨大な雇用を創出できなくなると…………。
(世界の大学生の2割は中国人)
・2017年9月現在、中国の現役大学生は3699万人に上り、世界の大学生の2割を占めるという。
(卒業生も日本の14倍)
・2022年に卒業生の数が990万人になれば、2017年時点の日本の16倍である。
・大卒者に対する社会の需要に対して、供給側の大卒者が不釣り合いに多いという意味だ。
(毎年1500万人の新規雇用が必要?)
・いくら中国が日本の25倍の国土を擁しているからといって、800万人もの卒業生に見合う職場など、あるはずもない。加えて、2017年には48万900人もの海外留学組が帰国している。さらに高卒や中卒を含めれば、毎年1500万人規模の職場が必要だ。これは東京都の人口よりも多い数である。
(新規就業者数1351万人のカラクリ)
・「2017年の都市部での新規就業者数は1300万人を超え、2017年12月の都市部の失業率は4.9%と、5%を下回った」
・一つは、「滴滴出行」という新興IT企業の存在である。別名「中国版ウーバー」だ。
(多すぎた運転手)
・そのため、大都市では戸籍を持たない運転手の進入を禁止した。この措置によって8割方の運転手が、再び失業してしまったのである。
(「1日に1万6600社が誕生」。だが、その大半は………)
・1日当たり1万6600社ということは、年間600万社!
・だがその一方で、100社創業すれば、そのうち90社から95社くらいは、いつのまにか雲散霧消しているのである。創業とは、死屍累々の残酷な世界なのだということを、深圳を視察して思いしった。
(「一流大卒」以外は結構厳しい)
・おそらく半数近くの大学卒業生が、自分が望むような職場を得ていないのではないか。
(エリートは国家公務員を目指す)
・当時は、学生たちに圧倒的人気だったのが国家公務員で、続いて国有企業だった。
(公務員「給与外所得」の実態)
・そもそも国家公務員が最も人気が高いのは、国有企業以上に安定性があるからだ。さらに、多額の「給与外所得」が見込めるということもあった。
(贈収賄で1日平均842人を処分)
・「この5年間で、154万5000件を立件し、153万7000人を処分した」
(究極の失業対策は「海外への人材輸出」か)
・今後も中国の大卒は増えていくことが見込まれるため、ますます「学歴通脹」(学歴のインフレ)が深刻になっていくのは自明の理だ。中国政府はこの問題を解決するため、海外への留学と海外での就業を奨励していくだろう。
<2023年 世界一の経済大国となり中間層4億人が「爆消費」>
・国際化やIT技術の普及によって、中国人が消費する金額・物量は驚異的な勢いで今後ますます膨らみ続ける。そしてそれは同時に、究極の監視社会にもつながるのか?
(1日で3兆円近くを売り上げるイベント)
(ユニクロもシャープも大儲け)
(悲願を達成した日)
・そして、2010年に日本を抜き去った中国が、次に見据えているのが、トップに君臨するアメリカなのである。
(その日は「2023年から2027年の間」)
(莫大な消費力――4億人の中間所得者層)
(「爆消費の時代」を予測する)
(中国人観光客の誘致は死活問題に)
(5年後の銀座の姿を知る方法)
・私が常々、念頭に置いているのは、「現在の韓国が、5年後の日本」ということである。
・つまり、5年後の銀座の様子を想像したければ、ソウルの明洞を見学しにいくとよいということだ。
(急成長を遂げる中国の「出前」ビジネス)
(クレジットカードは時代遅れ?)
(スマホ決済の履歴で個人に優劣がつけられる)
・ただ、一つだけ警告しておきたいのは、こうしたスマホ決済から応用されるサービスの進化は、国家が国民のプライバシーをすべて管理する社会に直結するということだ。
<2024年 年間1200万人離婚時代がやってくる>
・純粋な愛情の問題から財テク目的まで、中国でさまざまな形の離婚が横行している。このハイペースが続けば2024年には600万人組ものカップルが破綻し………。
(華燭の離婚式)
(「別れ」から生まれる「出会い」)
(世界最大の離婚大国)
(「女性主導型」が多い)
(理由なき決断)
・「中国式離婚」の特徴の二つめは、ある日突然、離婚に至るケースが多いことである。
(地縁よりもカネの縁)
(偽装離婚でもう1軒!)
<2025年 「中国製造2025」は労働力減少を補えるか>
・「世界一の科学技術強国の実現」という野望を実現させるべく、人工知能(AI)・量子科学・自動運転車・次世代通信ほか、あらゆる分野で凄まじい投資と開発競争が行われている。
(中国がこれから傾注する産業分野)
(「労働力不足大国」でもある)
・その結果、中国の製造業における「用工荒」(人手不足)は、日増しに深刻になる一方だ。
(ホワイトカラーよりも厚遇のブルーカラー)
(日系企業の深刻な悩み)
・「慢性的な人手不足で、それはオートメーション化で補っていくしかない」
(李克強首相の檄)
(「創業」プラス「創新」)
・もう一つの質問、IT企業と共産党政権との関係だが、中国政府の資金は潤沢で、多種多様な補助や優遇策を実施している。
(世界最強のAI大国への道を模索)
(巨額投資でAI強国化を目指す)
(量子科学・自動運転車・次世代通信……)
・中国の「IT社会主義」の成否は、もしかしたら21世紀前半の人類を左右する最大のテーマになるかもしれない。
<2035年 総人口が減少しインドの脅威にさらされる>
・「日本を完全に追い抜いた」と確信した中国は、次なる仮想敵国を東から西へ、すなわちインドに定めつつある。労働力人口では今後インドが優勢に立つ。はたして中国はどう出る?
(紀元前から人口調査を行ってきた国)
(中華人民共和国建国後の人口推移)
(中国総人口のピークは2035年?)
・2035年の15億7000万人がピーク
(隣国インドが世界一に)
・さらに2050年になると、インドの人口は16億5897万人に膨れ上がり、中国より約3億人も多くなるのだ。
・そして2100年になると、中国の人口は10億2066万人と、なんとか10億人ラインをキープしている水準だ。これに対し、インドの人口は15億1659万人となり、中国の1.5倍の規模を誇ることになる。
(巨象が昇り、巨竜が沈む)
・中国で20世紀初頭に起こったマンションブームやマイカーブームが、インドでいま本格化し始めたことを勘案すれば、将来インド経済が中国経済を追い越す可能性は、十分あると言える。
(日本を超え、アメリカを超える)
・「2020年から今世紀の半ばまでを、二つの段階に分ける。第一段階は、2020年から2035年までで、小康社会(そこそこ豊かな社会)の建設の基礎の上に、社会主義の現代化を基本的に実現する。第二段階は、2035年から今世紀半ばまでで、富強・民主・文明・和諧・美麗の社会主義現代化強国を建設する」
(「老いた金メダリスト」)
・その時、彼らが日本のことを「老いた金メダリスト」と呼んでいるのを聞いて、ショックを受けた。
(「中印戦争」の可能性は?)
・その意味でも、2035年までに中印が、アジアの覇権を賭けて軍事衝突――そんな悪夢のシナリオが起こらないとは言えないのである。
<2049年 建国100周年を祝うのは5億人の老人>
・日本とほぼ同じ速度で、日本の後を追うように急速な高齢化を迎える中国。ただし、日本と違って社会保障制度が整備されていないまま、しかも10倍の規模の超高齢化社会が誕生する。
(香港の完全返還で起こること)
・その2年前には、もう一つの祝賀行事が控えている。2047年7月1日をもって、特別行政区の香港が、完全に中国に組み込まれるのだ。
(「還暦以上が5億人!」)
・このまま進めば中国は2050年頃、人類が体験したことのない未曽有の高齢化社会を迎えるからだ。
(日本と同じ速度で高齢化)
・中国の高齢化は、日本に送れること30年ほどでやってくることを示している。
(日本の高齢化と異なる二つの点)
・ただし、中国社会の高齢化が、日本社会の高齢化と決定的に異なる点が、二つある。一つは、高齢化社会を迎えた時の「社会の状態」だ。
・65歳以上人口が14%を超える2028年まで、残り10年。中国で流行語になっている「未富先老」(豊かにならないうちに先に高齢化を迎える)、もしくは「未備先老」(制度が整備されないうちに先に高齢化を迎える)の状況が、近未来に確実に起こってくるのである。
・日本とのもう一つの違いは、中国の高齢社会の規模が、日本とは比較にならないほど巨大なことだ。
(「要介護人口」2億人?)
・実際、中国では、すでに高齢化問題が深刻化になり始めている。
(社会保障は一部でパンク寸前)
・それでは、中国の社会保障制度は、高齢者をきちんとカバーしているのか。結論から言えば、必ずしもそうなってはいない。
(正論を言って解任された財務相)
・このままでは中国の年金制度も、日本と同様、破綻に至るリスクは増していくだろう。それでも、「年金崩壊論」は、中国ではタブーになっている。
(「高齢化ビジネス」中国へ輸出のチャンス)
・ともあれ、2050年頃に、60歳以上の人口が5億人に達する中国は、大きな困難を強いられることは間違いない。製造業やサービス業の人手不足、税収不足、投資不足……。それらはまさに、現在の日本が直面している問題だ。
(人口不足を補うために台湾を併合?)
・だが、もし万が一、中台戦争が勃発して、長期の混乱に陥れば、「戦乱時に人口は減少する」という中国史が示している通り、逆に中国は大きな打撃を受けるだろう。
(2049年の中国社会を予測)
・それにしても、5億人の老人社会とは、いったいどんな社会だろうか?
・かつて「空巣青年」と呼ばれた自室でスマホばかりいじっていた青年たちは、「空巣老人」となる。この人たちは、生活にあまり変化はないのではないか。
・アメリカを追い越して、世界最強国家として君臨しているのか、それとも……。「2049年の中国」を、ぜひとも見届けたいものだ。