『想起する帝国』
ナチス・ドイツ「記憶」の文化史
溝井裕一、細川裕史、齋藤公輔 勉誠出版 2016/12/31
・ナチスは、ふたたび「帰ってくる」。第2次世界大戦後も、ヒトラー一党は映画や大衆文学などで執拗に「想起」され、残酷で滑稽ながらも魅力的な存在として活躍しつづけている。
<人間・ヒトラーの登場—―『ヒトラー ―—最後の12日間』>
<「最後の12日間」の衝撃>
・ドイツ映画の中で、近年もっとも注目を浴びた映画のひとつに『ヒトラー最期の12日間』(2004)がある。戦後ドイツでは数多くヒトラー映画が作られてきたが、この映画はそれらとは一線を画すというだけでなく、戦後ドイツのありかたそのものにも関わるとして、映画界を超えて大論争を起こした問題作である。というのも、『最期の12日間』に描かれたヒトラーはユダヤ人絶滅を主導した極悪非道な独裁者という従来のヒトラーイメージではなく、ひとりの人間として描かれたからである。たとえば、子供や女性秘書に優しく接するヒトラーや信頼する部下に裏切られ涙を流すヒトラー、ベルリン陥落を目前に精神崩壊を起こしかけているようなヒトラー、多くの部下や秘書たちの眼前で妻に口づけするヒトラーなど、もはやそこに悪魔的な姿を見つけることはできない。「脱悪魔化」したヒトラー像がドイツから誕生したことに世界が驚き、そしてそれ以上に、ドイツ国内でも人間・ヒトラーに強い衝撃が走ったのである。
たしかに、戦後ドイツにおける戦争責任へのとり組みは一貫して評価されてきた。たとえば、ウィリー・ブラント首相(当時)が、ユダヤ人ゲットー石碑の前で跪いて謝罪の意を表し、リヒャルト・ヴァイツゼッカー大統領(当時)が演説『過ぎ去ろうとしない過去』のなかで、過去を直視しつづける必要があることを訴えたことなど、戦後ドイツ史の重要な1コマは、ナチスの罪への謝罪であったといっても過言でない。
<「最期の12日間」の受容と論争>
・『最期の12日間』は、ドイツ人歴史家ヨアヒム・フェストの同名の著書『ヒトラー —―最期の12日間』と、元ヒトラー秘書トラウデル・ユングの自伝『私はヒトラーの秘書だった』を原作とするものである。
・本映画は、2004年9月16日にドイツで封切られる前からドイツ全土で話題になり、公開から3日後には、およそ45万人の観客が押し寄せ、約3か月後の2004年12月31日までには、およそ450万人がヒトラーの最期の「目撃者」になった。ドイツの人口が約8000万人であることを考えると、たった3か月のあいだに、のべ数ながらじつに20人に1人以上のドイツ人が、映画館に足を運んだことになる。
<月面に蟠踞するドイツ第四帝国のリアリティ —―反ナチス映画としての『アイアン・スカイ』>
<『アイアン・スカイ』とは>
・2006年から連載が開始された、大和田秀樹による麻雀マンガ『ムダヅモ無き改革』(竹書房、2006~)は、日本の首相小泉ジョンイチローが世界各国の要人と麻雀で戦うことで国際外交をおこない。北朝鮮の「金将軍」とも干戈をまじえて世界を救うという、荒唐無稽な国際政治パロディの人気麻雀マンガであるが、「勃発!“神々の黄昏”大戦」シリーズ(単行本2~6巻、2009~11)では、地球の首脳たちが月面で第四帝国を築いていたアドルフ・ヒトラーおよびその配下と麻雀で激闘は、地球の首脳たちが月面で第四帝国を築いていたアドルフ・ヒトラーおよびその配下と麻雀で激闘を演じる物語となっている。
おそらく、このシリーズの物語の枠組みに借用されているのが、2012年に日本でも公開されたティモ・ヴオレンソラ監督の『アイアン・スカイ』というフィンランドのインディーズSF映画であるのはまちがいないだろう。
・ときに2018年、黒人モデルが操縦するアメリカの有人探査船が46年ぶりに月面着陸に成功する。これはアメリカの女性大統領による再選のための一大選挙キャンペーンであったが、宇宙飛行士が月の裏側で発見したのは、ハーケンクロイツの形状を模したナチス・ドイツの巨大秘密基地であった。大戦末期に宇宙船を秘密裡に開発していたナチスは月面へ逃れ、第四帝国を建設し、地球侵略の軍備を整えていたのだ。今度こそ世界を手中におさめるために、ナチスの宇宙艦隊が侵攻を開始し、地球に飛来する。
<パロディとアイロニーのあいだ>
・『アイアン・スカイ』が上映された2012年に、ドイツでベストセラーとなったティムール・ヴェルメシュの『帰ってきたヒトラー』は、2011年に突如、ベルリンに出現したヒトラーが従来のナチズムを主張しつづけるうちにコメディアンとなって、現代ドイツ社会の批判者として支持されていくというブラックユーモア満載の長編小説であるが。ヒトラーやナチスをダークな笑いの素材にする点で『アイアン・スカイ』と軌を一にしている。
・反ファシズム映画の古典であるチャップリンの『独裁者』のシーンをさらなるカリカチュアに転用し、物語の重要な展開の契機とする一方で、人間ヒトラーを描くことで賛否を呼んだ『最後の12日間』のMADをパロディとして挿入する『アイアン・スカイ』は反ナチズム映画としての側面を維持しながら、最先端のメディアで拡散されたナチス・サブカルチャーというべき要素も包括した結果、SFコメディとしてのみならず、00年代に誕生したナチス映画としての新味を獲得することに成功している。
すなわち、ナチスやヒトラーをめぐるサブカルチャー全般を硬軟かまわず貪欲に併呑する『アイアン・スカイ』は、ネットワークやMAD動画という21世紀のメディアによって創造されたサブカルチャーコンテンツをも受容して、ひとつのエンターテイメントとして成立させている映画なのである。
<ナチスという話題性>
・また、この映画の話題性のひとつはインターネットによって製作資金を募集したことにある。製作者スタッフたちは2008年に公式サイトを設立し、ティーザー映像を公開することで世界中の映画ファンに寄付を呼びかけた。おそらくこのサイトで公開されたプロットが冒頭で紹介した麻雀マンガのソースになったと思われるのだが、総製作費750万ユーロ(約10億5000万円)のうち、100万ユーロ(約1億4000万円)を個人の出資によって集めることで、4年がかりで完成を見たのだった。
<ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン>
<SFとオカルト>
・月面にナチスの残党がUFOや宇宙船を建造しているという物語設定があまりにセンセーショナルに映る『アイアン・スカイ』であるが、このストーリーの枠組みはじつは完全なオリジナルだとはいえない。たとえば、『夏への扉』や『宇宙の戦士』で知られるアメリカSF小説界の巨匠ロバート・A・ハインラインの『宇宙船ガリレオ号』(創元SF文庫、1992)は戦後まもない1947年に出版された最初の長編だが、高校の物理クラブに所属する3人の高校生が原子物理学者とロケットを建造して月へ向かうというジュブナイルである。この物語後半では、到着した月面で秘密基地を建設していたナチスの残党と高校生たちが戦うという驚愕の物語が展開する。第2次世界大戦から2年後にすでにこのような物語がアメリカSFの大家によって書かれていたのである。月面のナチスというテーマでは、『アイアン・スカイ』を先取りしている。
そしてUFOとナチスの関連とともに、そのカルト性に興味をいだく人びとにとっては、『アイアン・スカイ』の世界設定に取りこまれた「都市伝説」やオカルティックな部分も見逃せないはずである。
・というのも、オカルトに強い関心をもつヒトラーやナチスが古代理想郷シャンバラ、聖杯、イエスの血を吸ったロンギヌスの槍などを探求していたという「伝説」や、ドイツ軍が大戦中にジェット戦闘機を実用化していた事実があるからである。現在でもコンビニエンスストアの本棚には、その種のことがらをまことしやかに書き立てた本がワンコインで購入可能なシリーズとして並んでいる。武田知弘の『ナチスの発明—―特別編集版』(彩図社、2008)には、マルティン・ボルマン生存説、ナチスのUFO開発説、ナチス残党の国「エスタンシア」などについて紹介されている。
<ナチスをめぐるスキャンダル>
・とりわけ本章にとって、ナチス関連の事件で興味深いのは、カナダ在住のドイツ人エルンスト・ズンデルがインターネットによってホロコースト否定説を展開した事件である。1995年に開設された『ズンデルサイト』(運営はカリフォルニア在住のイングリッド・リムランドによる)に対して、ドイツ・テレコムは子会社を用いることでこのサイトへのアクセスを禁止したところ、言論の自由を主張し規制に反対する人びとがそのミラーサイトを作成して抵抗するという騒動が発生した。その後、ドイツ政府の要請によって、EUはネオナチ・サイトの検閲強化を通達した。90年代のインターネットの普及とこれによる表現規制の新たな問題の生起を象徴する事件でもあったといえよう。
ネオナチ指定を受けたエルンスト・ズンデルであるが、それ以前からすでに思想的行動をおこなっていた。1939年ドイツ生まれの彼は1951年にカナダに移住、1977年にネオナチ思想普及のための自費出版社を設立した。ヒトラー礼賛やホロコースト否定説をパンフレットの配布によって1984年にカナダ当局に逮捕されたズンデルは、さらに多くの事件によって2005年にドイツへ強制送還されたあと、有罪判決を受けて収監されたが、2014年に出所している。
・このズンデルには、もうひとつの顔があった。UFOはナチスが開発したという説をウェブ上に立ちあげていた人物としてかつて知られていたのである。第2次大戦末期にドイツ軍はUFO開発に成功し、ヒトラーはこれに搭乗して、南極に逃れた(!)と、ズンデルは主張している。ズンデルはナチスによるUFO開発説を巷間に拡散させるのに大きく寄与していたが、それはUFOやヒトラー生存説というセンセーショナルな話題でネオナチ思想を普及させるための寄せ餌でしかなかったようだ。
・ちなみに、このエルンスト・ズンデルの影響が1980年には日本へ波及していたことにも触れておきたい。集英社の『週刊プレイボーイ』1980年8月19日号から11月4日号までの12週にわたる連載終了後まもなく単行本化されたのが、落合信彦の『20世紀最後の真実』(1980)である。南米にある「エスタンシア」というナチス残党が住む町、ナチス残党の逃亡を援助する組織オデッサの暗躍、アウシュヴィッツ虐殺の虚構性、ヒトラーの影武者、ナチスのUFO開発、UFOによるヒトラーの南米逃亡説、ナチス残党の潜伏など、ズンデルがこの書物で語るナチス伝説の数々はすさまじい。
・本書の冒頭、南米の奥深く位置する「エスタンシア」というナチス残党が住む町を捜索するさいに、生粋のナチス党員の生き残りに同行を頼もうとすると、彼の組織の責任者に了解が必要とされて、落合はその責任者「ウィルヘルム・フリードリッヒ」に会うのだが、その影武者として登場したのが「エルンスト・ジーグラー」、すなわちエルンスト・ズンデルなのである。これだけでも、この著作がいかなる内容なのかが看取されるだろう。
一方で、「ノンフィクション」とはひとことも明言してはいない。また、彼は前述の1983年に逮捕されたクラウス・バルビーの評伝の翻訳も出版している。
・ズンデルによって踊らされたマスコミ関係者としては、ほかに日本テレビのディレクター矢追純一がいる。『ナチスがUFOを造っていた』(KAWADE夢文庫、1994)という著作や、日本テレビ系で《矢追純一UFOスぺシャル》などのUFO番組を手がけている。落合信彦とおなじく、ソースはやはりエルンスト・ズンデルである。
いずれにせよ、前世紀の80年代からヨーロッパを騒がせつづけたエルンスト・ズンデルによる「ナチスがUFOを開発、実用化した」という説を、『アイアン・スカイ』は物語設定の要素として流用している。本章冒頭で言及した音楽担当のライバッハも含めて、いかがわしい都市伝説、ナチス報道のセンセーショナリズム、これによる誤情報の拡散などのナチカルチャーともいうべき広範さをもった現象そのものを物語の核として胚胎していることがこのSF映画の特質なのである。
『アメリカ大陸のナチ文学』
ロベルト・ボラーニョ 白水社 2015/6/4
<エデルミラ・トンプソン・デ・メンディルセ 1894年ブエノスアイレス生まれー1993年ブエノスアイレス没>
・15歳のときに処女詩集『パパへ』を出版、これによりブエノスアイレスの上流社会の並み居る女流詩人のなかでささやかな地位を得た。以後、20世紀初頭のラプラタ河両岸において抒情詩と趣味の良さで他の追従を許さなかったヒメナ・サンディエゴとスサナ・レスカノ=ラフィヌールがそれぞれ率いるサロンの常連となった。最初の詩集は、当然予想されるように、親への思い、宗教的省察、庭について詠ったものである。修道女になろうという考えを抱く。乗馬を習う。
・1917年、20歳年上の農場主で実業家のセバスティアン・メンディルセと知り合う。数か月後に結婚したときは誰もが驚いた。当時の証言によれば、メンディルセは文学一般、ことに詩を蔑み、(ときおりオペラに行くことはあったものの)芸術的感性に欠け、会話の内容と言えば自分の雇う農夫や労働者並みだった。長身で精力的だったが、美男というには程遠かった。唯一の取り柄として知られていたのは、無尽蔵の資産である。エデルミラ・トンプソンの友人たちは打算的な結婚だと口々に言ったが、実際は恋愛結婚だった。
・1921年、最初の散文作品『わが生涯のすべて』を出版する。これは起伏がないというのでなければ牧歌的な自伝で、ゴシップは語られず、風景描写や詩的省察に富んではいるが、作者の期待に反し、特に反響を呼ぶでもなく、ブエノスアイレスの書店のウィンドウから姿を消した。落胆したエデルミラは二人の幼い子供と二人の女中とともに、20以上のスーツケースを携え、ヨーロッパに旅立つ。
・1926年は多くの取り巻きを従え、イタリアを旅行して過ごす。1927年、メンディルセが合流。1928年、ベルリンで長女ルス・メンディルセが生まれる。体重4千5百グラムの健康な子供だった。ドイツの哲学者ハウスホーファーが代父となり、洗礼式にはアルゼンチンおよびドイツの名だたる知識人が参列した。パーティーは3日3晩続き、ラーテノーに近い小さな森で終わったが、その折、メンディルセ夫妻はハウスホーファーのために作曲家でティンパニの名手ティト・バスケスが自作の曲を独奏するコンサートを催し、当時大評判となった。
・1929年、世界大恐慌によってセバスティアン・メンディルセはアルゼンチンへの帰国を余儀なくされる一方、エデルミラと子供たちはアドルフ・ヒトラーに紹介され、ヒトラーは幼いルスを抱き上げて、「確かに素晴らしい子である」と述べる。全員で写真に納まる。未来の第三帝国総統はアルゼンチンの女流詩人に強い印象を残す。別れ際、エデルミラが自分の詩集を何冊かと『マルティン・フィエロ』の豪華本を贈ると、ヒトラーは熱烈な謝辞を述べ、その場で詩の一節をドイツ語に翻訳するよう求めたが、エデルミラとカロッツォーネはなんとかその場を切り抜ける。ヒトラーは満足した様子を見せる。きっぱりとした、未来志向の詩だ。エデルミラは喜び、上の二人の子供に最もふさわしい学校はどこかと助言を求める。ヒトラーはスイスの寄宿学校を勧めるが、最良の学校は人生であると付け加える。会見の終わりには、エデルミラもカロッツォーネも心底ヒトラー崇拝者になっている。
・1940年、セバスティアン・メンディルセが亡くなる。エデルミラはヨーロッパ行きを望むが、戦争によって阻まれる。
・1945年~46年にかけては、彼女の敵対者たちによれば、誰もいない海岸や人目につかない入江を頻繁に訪れ、デーニッツ提督の艦隊の残存した潜水艦に乗って到着する密航者をアルゼンチンにようこそと歓迎したという。また、雑誌「アルゼンチン第四帝国」、その後は同名の出版社にエデルミラが出資していたとも言われている。
<雑誌『ムー』(14 9月号)によると>
・「アルゼンチンは戦中・戦後の軍事独裁政権がいずれも親ナチス派だったため、第2次世界大戦にナチスの残党を大量に受け入れて匿った国だ。一説にはアルゼンチンだけで5000人、南米全体では9000人のナチス残党の戦争犯罪者が亡命した」とされている。じつはヒトラーもそのひとりだったという新味はあまりなさそうな新説が、今年1月、証拠写真数枚とともに発表されたばかりだ。
発表者はブラジルの女流ノンフィクション作家シモーニ・ゲレイロ・ディアスで、当人もユダヤ系ブラジル人という。
ほかのヒトラー生存説と同様、自殺したのはやはり替え玉で、ヒトラー本人は南米を転々として最後はブラジル奥地のマットグロッソに落ち着き、アドルフ・ライプツィッヒと名乗って肌の黒い愛人と暮らしていたが、1984年に95歳でひっそりと世を去った。
シモーニはこの調査結果を『ブラジルのヒトラー:その生と死』と題する本にまとめて発表し、「墓を掘り返して、ぜひDNA鑑定にかけてほしい」と自信満々に主張している」
『図解 第三帝国』
森瀬 繚 / 司 史生 新紀元社 2008/5/8
<ヒトラーは生きている?>
・生存神話は歴史的に名高い人間につきものだが、各国の猜疑心が助長したアドルフ・ヒトラーの生存説は半ば都市伝説となっている。
<アドルフ・ヒトラー生存説>
・敗北を目の前にしたアドルフ・ヒトラーが、妻となったエヴァ・ブラウンと共に命を絶ったのは1945年4月30日午後3時30分とされている。官邸地下の防空壕に最後まで残った部下達と無言で握手して回り、エヴァを伴って自室に入った後のことだった。運び出された遺体はその日の内に官邸の裏庭で焼却された。
・ヒトラー自殺の現場であるこの官邸を最初に占領したソ連軍が、ヨシフ・スターリンの緘口令によって長らくヒトラーの死についての詳細を公表しなかったことと、わずかに公表された内容が連合軍の調査と大きく食い違っていたことから、ヒトラーが今もどこかで生き延びているのではないかという噂がその後、長い間に渡って一人歩きしていくことになる。
・これは、ヒトラーの自殺を信じなかったソ連指導部の猜疑心によるもので、ソ連軍司令官のゲオルギー・ジェーコフ将軍による、大英帝国がヒトラーを匿っているという1945年8月の非難もそうしたソ連側の困惑を反映したものだった。第三帝国の高官達がUボートで南米や南極に逃亡したという噂は、アルゼンチンの港にUボートが実際に浮上した数件の事例によって疑惑に高まり、ハンブルクから出港した潜水艦にエヴァ・ブラウンと見られる女性が乗っていたなどの出所の不確かな様々な噂が飛び交い、世界各国の情報機関は1950年頃までの間、血眼になってヒトラーの行方を追っていたと言われている。
・具体的な逃亡説としては、1945年4月30日にテンペルホーフ空港にてどこかに出発しようとしているヒトラーを見たという目撃談があり、これを裏付けるような報道がアメリカやチリの新聞に掲載されたことがある。また、警察に協力して捜査活動にあたったこともあるオランダの自称透視能力者ピーター・フルコスは、自著の中で1961年に生きているヒトラーを目撃したと書いている。
<Uボートによる逃亡説の一例>
・1945年4月30日(テンペルホーフ空港にて逃亡前のヒトラーが目撃される。
・デンマークに脱出。(アメリカ『ニューヨーク・タイムズ』紙)
・ノルウェーに移動。(チリ『ジグザグ』紙)
・Uボートに搭乗。(『ナショナル・ポリス・ギャゼット』紙)
・1945年7月19日 南米へ上陸、アルゼンチンへ?
<南極のヒトラー>
・南極圏のどこかに第三帝国の秘密基地があるという伝説は、ヒトラーが生存しているという伝説と共に戦後、世界中に広まっていた。
<南極大陸の秘密基地>
・ソビエト連邦がヒトラーの死を長らく隠しつづけたため、彼の逃亡についての噂話が独り歩きすることになった。総統がUボートで南極の秘密基地へと逃亡したという伝説も、そうした噂の一つである。ドイツ降伏後の1945年7月、オットー・ヴェルムート艦長の指揮する潜水艦U-530がアルゼンチンの港に浮上し、8月にはハインツ・シェッファー艦長のU-977が同じくアルゼンチンのマルデルプラタに入港した。
U-530の乗員だったヴィルヘルム・ベルンハルトは、艦の任務が第三帝国の遺産を南極大陸のミューリッヒ・ホフマン山脈にある秘密基地へと運搬することだったと著書『ヒトラーと聖槍』に書いている。南太平洋、それも南極大陸周辺におけるUボートの活動については、フランス国営通信により1946年9月に報道されたこともある。
・ヒトラーの南極への関心は、アルフレート・リッチャーによる1938年の南極探検に遡る。リッチャーの調査した区域を、空母「シュワーベンラント」からとって「ノイエ・シュワーベンラント」と名づけたヒトラーは、この地に軍事拠点の建設を命じたという。第211基地が実際に稼働を始めたのは1942年頃で、敗戦の際に第三帝国の高官やユダヤ人から没収した財産を運搬し、友好的関係にある南米諸国との連携のもと再起を図るためのものと考えられた。
・合衆国のリチャード・E・バード少将は、1947年に南極探検作戦「オペレーション・ハイジャンプ」を実行しているが、この探検はこうした秘密基地の偵察を目的としていたという説がある。この探検が地球空洞説の証明のためのものだったと主張する者もおり、どちらにせよ鵜呑みにすることは難しい。カナダの歴史修正主義者のエルンスト・ズンデルは自説を広めるためにこの伝説を喧伝し、南極のUFO基地の見学に行くツアーを企画した。
<オデッサ機関>
・フレデリック・フォーサイスの小説『オデッサ・ファイル』によってその名が世界に知れ渡った、第三帝国の逃亡支援組織。
<南米への逃亡ルート>
・第三帝国の落日が目に見えて迫る頃になると、総統アドルフ・ヒトラーを筆頭に、国家社会主義ドイツ労働者党の高官や親衛隊、国防軍将校らをスペインや南米ボリビアなどの国へと脱出させるためのプランが練られ始め、逃亡支援のためのグループが幾つも組織された。
・Organisation der ehemaligenSS-Angeőrigen(元SS隊員のための組織)の頭文字から名前を取られたオデッサ機関もその一つである。オデッサ機関は1948年、グラーゼンバッハ捕虜収容所にいたパウル・ハウザーSS上級大将を首班に結成された「蜘蛛」を母体とする。戦後の欧州全体に親衛隊同志のための蜘蛛の巣のようなネットワークをはりめぐらせた「蜘蛛」は、退役軍人のための相互扶助組織を偽装しながらオーストリアとイタリアを経由してアドルフ・アイヒマンを含む数多くの戦犯を南米へと脱出させた。
・親ヒトラーの王族が主宰する「無言の支援」協会などの資金源を得て、空軍の英雄で戦後はアルゼンチンの航空産業界に食い込んでいたハンス・ウルリッヒ・ルーテルの「友愛会」といった同種の団体と協力関係を構築しながら営々とその規模を拡大したが、首脳部の対立により組織は分裂。この時、「蜘蛛」から分派したのがオデッサ機関で、パラグアイに根を張るこの組織は瞬く間に欧州全体に膨張。オットー・スコルツェニーが指導者だと噂された。
・オデッサ機関以外にも逃亡ルートは存在する。戦後行方をくらましたハインリヒ・ミューラーとその配下のゲシュタポが作り上げたとされる「水門」はマルチン・ボルマン逃亡に寄与したと噂され、親独の法王ピオ12世の支持のもと大司教アロイス・フーダルが主導したカトリック教会支援による修道院ルートと呼ばれる強固なラインもあった。
<ナチハンターたち>
・マルチン・ボルマンを筆頭に「人道上の罪」に問われるべき多くの第三帝国高官が終戦時に行方を晦ましたことが知れ渡ると、正義感や名誉欲に駆られたジャーナリスト達が戦争の記憶が生々しい欧州を駆け回って彼らの消息を追跡した。ジャーナリストから小説家に転身したフレデリック・フォーサイスは、潜伏中の「リガの虐殺者」、強制収容所所長エドゥアルト・ロシュマンを告発する目的で1972年に『オデッサ・ファイル』を発表した。
・こうした残党狩りの主役になったのはユダヤ人であり、復讐を求めた彼らの闘いは終戦間際には早くも始まっている。1944年、ユダヤ自治区の度重なる要請に折れた連合国はユダヤ人旅団の編成を認めた。ローマで終戦を迎え、ドイツ入りした彼らは手配中の戦犯に関するリストを連合軍勤務のユダヤ人同胞から入手し、イスラエル・カルミ大佐を首班とする処刑部隊を組織した。彼らが処刑したドイツ人は50名以上にのぼると見られている。
・戦後はモサドなどイスラエルの情報機関やプライベートのナチハンター達が、ボルマンをはじめゲシュタポ長官ハインリヒ・ミューラー、アウシュヴィッツ強制収容所で非人道的な実験を行ったヨーゼフ・メンゲレらの追跡に従事した。
<第三帝国のUFO>
・「ナチスがUFOを作っていた!」ブラウン管を通して日本のお茶の間をも騒がせた「新事実」は、歴史修正主義者のアドバルーンだった。
<空飛ぶ円盤>
・第三帝国が「空飛ぶ円盤」を開発していたと主張する人々が存在する。この珍説は1980年代に日本のジャーナリストによって紹介され、1994年には日本テレビ系列の特番に取り上げられた。以下は彼らの主張である。ヒトラー政権が成立した1933年、党の黒幕であるトゥーレ協会やヴリル協会などの神秘主義結社の後ろ盾のもと、ミュンヘン工科大学のW・O・シューマン博士らにより円盤型航空機RFZ-1が開発された。この研究はその後、親衛隊技術部門のE-IV部隊へと移管され、彼らの言う「電磁重力駆動機関」を利用した円盤型航空機が開発されたが、戦闘には不向きであったため実戦に投入されることはなかった。
・インターネットなどを媒介してUFO説の敷衍に努めているのは、ヒトラー政権下でのユダヤ人虐殺を否定する「歴史修正主義者」と呼ばれるグループである。その彼らの中心的人物であるカナダ在住のエルンスト・ズンデルが1985年に裁判をかけられた際、彼の弁護士はこの説がホロコースト否定論を広める客集めのでっちあげだと証言している。
<ルーン文字の呪力>
・親衛隊国家長官のハインリヒ・ヒムラーは、オーディンの創造した24種類のルーン文字にゲルマン民族の呪力が宿っていると信じていた。
<ゲルマン神話の遺産>
・ゲルマン人が言語表記に用いたルーン文字は、1世紀頃に考案されたものらしい。「神秘」を意味するゴート語が語源とされ、中国の甲骨文字と同じく呪術的な目的で用いられた。ゲルマン人は紀元前4世紀頃からスカンジナビア半島南部と、ライン河とウェーゼル河に挟まれた中央ヨーロッパの平原に居住するインド=ヨーロッパ族の民族で、その伝説は部分的にギリシアやローマ、東方のそれと共通している。
・ゲルマン神話の原典とも言える叙事詩『古エッダ』によれば、ルーン文字を創造したのはゲルマン神話の主神オーディンとされているが、『古エッダ』は9世紀以降に成立したもので、最初からオーディンと結び付けられていたかどうかはわからない。
・ルーン文字こそは古代の北極圏にあったゲルマン民族の故郷で使用されていた文字であり、中国やバビロニアの文字の原型になったと信じるヒトラーは、祖国遺産協会などの親衛隊の研究機関に散逸した記録の収集を命じている。
<ラインハルト・ゲーレン>
・1902年4月生まれ。第2次欧州大戦中に国防軍参謀本部の東方外国軍課長を務め、カナリス、シェレンベルクらと共にドイツの情報活動を担った。戦後、スタッフと共にアメリカ軍に投降し、アレン・W・ダレスの協力で、ゲーレン機関と呼ばれる私的な対ソ諜報組織を設立。マスコミからは「幻の人」「顔のない男」と称された。共産主義との闘争を何よりも優先し、逃亡中のSD・ゲシュタポ出身者を数多くスタッフとして雇用した。ゲーレン機関は1955年にドイツ連邦情報局(BND)に改組され、ゲーレンが初代長官に就任した。
『NASAアポロ疑惑の超真相』
人類史上最大の詐欺に挑む
山口敏太郎&アトランティア編集部 徳間書店 2009/9/9
<グレイの発進母星は「レチクル座ゼータ2」>
・筆者が最近知った事実によると次のようになる。
・私たち銀河系には無数の超文明が存在するが、大別すると哺乳類系と爬虫類系文明とに分けられ、地球に飛来するUFO(ET)の多くは爬虫類系である。
・哺乳類系生命と爬虫類系生命は文明的に交流できず、常に対峙した状況にある。
・爬虫類系生命の感覚器は哺乳類型(人間)とは根本から異質(たとえば聴覚が存在しない)で、善悪の基準さえ逆転しているようだ。
・爬虫類系より哺乳類系(人類)のほうが生物学的に優れており、彼ら(爬虫類系ET)は劣等感を抱いている。
・私たちの銀河系には1000億の恒星(太陽)が存在するが、ある学者の試算では最小限に見積もっても100万の知的文明が存在するという。こうした渦状銀河が宇宙に1500億(ハッブル宇宙望遠鏡で観測される範囲)も存在するというから、宇宙の広大さは想像を絶している。
・問題は、異星人グレイはバイオロボットで、背後の真の生命体は爬虫類系だということだ。
<トールホワイトと呼ばれる異星人>
・編集;今の話をまとめるとアメリカは戦前からグレイと接触をし、今またトールホワイトの力を借りて敵対するグレイ対策に利用して宇宙計画を進めている。つまり宇宙人は完全に実在するものということですね。
竹本;実はアメリカの研究グループにはトールホワイト(Tall White)と呼ばれる者たちがいるんです。文字通り背の高い白人ですが、実はこれが宇宙人なんです。この連中はアメリカ軍部とつきあっています。米軍の大将クラスの者だけですが、自分たちの月面基地まで連れて行くんです。明け方5時、6時ごろに、さあ集まってくださいとみんなを呼んで彼らの宇宙船で月へ行くんです。ひゅーっとね。そして午前中にはもう帰ってくる。そういうことをしているんです。
・トールホワイトは基本的に地球人を馬鹿にしているんです。なので、月に連れて行ったりと協力はするけれど態度はとても冷たいそうです。それでもアメリカは彼らをうまく活用して月面基地を造りたい。グレイに邪魔されるわけですから。かって火星探査のロケットが全部事故に遭ったでしょう。月に基地を持っているし、仲が悪いんです。そこで、基本的に嫌なやつでもトールホワイトにバックアップしてもらえばいい、それで月面基地ができるのなら、というのが今度の計画なんです。
ところで、月に来て地球人と接触している宇宙人は57種類あるんです。人類と接触している宇宙人は57種類いて、アメリカ政府も認知していると暴露しています。57種類というのは、地球人みたいに同じ星でも人種が違う場合もあるし、同じ種類で違う星にいる場合も含めてのようです。いずれにしろ、相当な数の宇宙人がすでに来て、月にいるというわけです。
・グレイとかリトルグレイとか呼んでいる宇宙人は地球を監視したり調査したりしている。そのための基地として一番簡単なのは月なんです。