日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

国内に未だ、江戸時代のような身分制度が残っている戸籍アパルトヘイトのような低劣な内政を取り続ける中国は、当然、ひどい外交音痴なのです。(1)

 

 

『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』

川島博之   講談社     2017/10/20

 

 

 

経済で考えると中国の人口は4億

・中国の人口は13億人である。多くの人はそう思っていますが、それは少々間違っています。経済を語るとき、中国の人口は4億人と考えたほうがよいのです。13億人ではなく。

 中国には9億人もの農民がいます。そして、彼らは都市に住む人々よりも決定的に貧しい。ここで農民と表現しましたが、より正確にいえば、農民戸籍を持つ人々です。戸籍のことについては本文中で詳しく説明したいと思いますが、中国では農民と都市戸籍を持つ都市住民のあいだには明確な区別や差別があります。そして、経済的にも厳然とした格差が存在します。

 

そう、日本人は、都市に住む4億人程度の人々だけを見て、中国を知ったつもりになっていたのです。その結果、私たち日本人の中国に関する知識は、ずいぶん歪なものになってしまいました。

 

巨大な中国を考えるとき、目先の指標だけで今後を占うことはとても危険です。中国3000年の歴史のなかに、今日の中国を位置付ける作業を行ってこそ、中国の未来をしっかりと見通すことができるのです。

 

・本書では、農民戸籍と都市戸籍をキーワードにして、中国の近未来について語りたいと思います。現在、9億人もの農民がいることと中国の歴史を重ね合わせてみると、経済や軍事について、これまで見えなかったことが見えてきます。都市戸籍を持つ4億人が農村戸籍の9億人から搾取する「戸籍アパルトヘイト」のもとで達成した経済成長の限界も露呈します。そして、崩壊が目前まで迫っている2020年の中国の姿が、明確に浮かび上がってくるのです。

 

無人のマオタイ村を照らす照明>

・2016年の12月、中国南西部にある貴州省のマオタイ村を訪れました。貴州省は中国で最も貧しい省の一つとされており、その農村部を見たかったのです。また、マオタイ村には有名なマオタイ酒を造る工場があり、そこに多くの農民が働いていると聞いていたため、その実態を知りたかったということにもあります。

 

・風光明媚な場所に観光に行ったついでに、その地方の名酒を造っている工場を見学に行くことはあるでしょうが、お酒を造る工場を見学するために旅に出ることは、それほどないでしょう。マオタイ村は山間の農村地帯にあります。わざわざ空港を造っても、それほど観光客を集めることはできないのではないでしょうか。

 現に、私が訪れた際にも、ホテルや観光スポットはガラガラ………お節介なことかもしれませんが、映画祭によって街を盛り上げようとして失敗した北海道夕張市のようになってしまうのではないかと思いました。

 それにしても、観光客がほとんどいない冬に、なぜこのように街中をイルミネーションで煌々と飾り立てる必要があるのでしょうか—――。

 

習近平は、2017年秋の党大会で、陳敏爾(ちんびんじ)を一気に政治局常務委員に抜擢するつもりだと噂されていましたが、そのために陳敏爾は、実績を示さなければなりません。その実績とは、担当した地域を発展させること。最も分かり易い指標がGDPです。担当した地域のGDPを増やせば、実績を上げたことになるのです。

 そのことを知れば、集客が見込めない観光地に空港を造っていることや、冬で街が閑散としている時期でもマオタイ村全体を照明で煌々と照らしていることに納得がいきます。

 

・このように中国では、短期間の実績だけが重要なのです。それが、長期的には負債の増加につながり地方経済に悪影響を及ぼすとしても、陳敏爾には関係がありませんでした。

 

現在、中国のGDPは、このような施策によって嵩上げされているのです。中国政府が発表するGDPを、そのまま信じることはできません。そのような政策に持続性がないことも明らかでしょう。

 

<大物官僚ゆえの桁違いの無駄遣い>

・しかし、施設を維持するために、多額の費用が必要になります。そう考えれば、年に2ヵ月しか人が来ない海浜公園は、壮大な無駄遣いといってもよいでしょう。

 海浜公園の近くには、中国名物の「鬼城」(住む人のいないマンション)がありました。

 

市役所の幹部だけが買える物件

・ではなぜ、このような壮大な無駄遣いが行われたのでしょうか。この開発も、中国共産党の人事に関連しています。営口の開発を推し進めたのは、首相、李国強でした。

 

・営口の開発は、寒村を一大工業都市にしようとした野心的な計画でした。工業団地を造るために、広い土地も用意された。しかし、その頃から、中国では工業部門の過剰投資問題が話題になり始めました。その結果、工業用の土地を整備したにもかかわらず、営口に進出してくる工場はほとんどなかった。地元の人は、工業団地はガラ空きだといっていました。

 

・地方や農村を訪ねると、中国の経済発展の歪さがよく分かります。日本もバブル崩壊後に、無駄な公共投資によって経済を維持しようとしましたが、貴州省のマオタイ村や遼寧省の営口市で見た風景は、万里の長城を造り上げた国であるだけに、さすがにスケールが違うなと思ったものです。それは、今後、中国経済にとって、間違いなく重い足かせとなるでしょう。

 

<9億の農民から搾取する4億の都市住民>

未だに人口の7割は極貧生活

・中国政府は国民を5等分し、各層の平均所得を公表しています。ここで5等分といいましたが、実際には、10のグループに分けています。都市と農村に分けて、それぞれを5等分しているからです。

 

・しかし、日本に観光に来ることができるのは、中国人全体の1割程度でしかないのです。経済成長を遂げた現在でも、中国の国民の9割は、海外旅行に行くことができません。

 爆買いで日本を訪れる人々を見ていると、中国も豊かになったと思ってしまいがちですが、それは木を見て森を見ないのと同じ、いまでも大半の中国人にとって、海外旅行は、夢でしかないのです。

 

<観光客に見えるバブル崩壊の予兆>

・中国のバブル景気は最終局面を迎えています。日本の1990年代初頭に相当すると見ればよいでしょう。

 日本の株価は、1989年12月に最高値を記録し、翌年になると下落し始めました。

 

・中国からの観光客の1人あたり消費量が減少したことは、バブルの崩壊が近いことを示しています。すべての中国人がバブルの崩壊も実感すれば、日本に来る観光客の数も激減することになるでしょう。

 

<自動車販売台数に見る社会の分断>

・中国のバブルは崩壊し始めています。そうなると、今後、自動車の販売台数が現在の数字を超えることはないでしょう。こう考えると、人口の70%にも及ぶ農村戸籍の人々は、これからも自動車を持つことはないでしょう。

 何度も書きますが、中国を13億人の国と考えることはできません。都市戸籍も持つ4億人と、農村戸籍の9億人に分けて考える必要があるのです。

 

・そもそも、ほとんどの都市住民は、農民や農民工の境遇に関心がありません。このような無関心が、農民工という特殊な身分を作り上げました。習近平政権は、アメリカと中国で世界を担うから「G2」だ、などといっていますが、国内に未だ、江戸時代のような身分制度が残っているのです。

 

<コメ作と小麦作で違う民族性>

コメと小麦では、そこに育つ文明のあり方が、大きく異なります。その最大の原因は、灌漑の有無にあります

 コメを作るには、灌漑設備が必要です。一方、小麦では、灌漑は必要ありません。砂漠や乾燥地帯で小麦を作る場合にオアシスから水を引くことがありますが、これは例外といってよいでしょう。普通は雨水だけで育てます。

 

・そんな関係で、同じ面積の農地でも、コメは小麦より多く生産することができました。現在は優れた化学肥料や農薬が出現したため、コメと小麦の生産性はそれほど変わりませんが、近代的な農業が営まれる前まで、コメの収穫量は、小麦を圧倒していたのです。

 

・水田に水を引く水路は、城を守る堀の役目も果たしました。縦横に水路が張り巡らせた地帯で大軍を動かすことは難しいのです。よって、水田地帯は畑作地帯よりも、敵に攻め込まれにくいといえます。

 このようなことが重なって、水田でコメを作っている人の性格は温和になりました。そして島国である日本は、大陸にある水田地帯よりも、もっと安全でした。それが私たち日本人の気質を作ったのだと思います。

 

・近年、日本人を「平和ボケ」だなどと非難する人たちがいますが、平和ボケは、島国で約2000年もコメを作ってきたことで形成された性格です。だから、そう簡単には直らないと思います。

 

<中国では南北で気質が違うわけ>

・中国の黄河地域は小麦地帯です。そして、長江流域はコメ地帯です。そのため、中国文明を構成する人々は、南北でその気質は大きく異なっていました。

 

<中国の国際ルール無視は漢字のせい?>

・このような事情が、表意文字を使う中国大陸では、まったく異なっていました。現在でも、上海語や広東語は、その地方に住む人間にしか分からない言葉です。しかし、漢字が表意文字であるために、しゃべる言葉が異なっていても、意思の疎通が可能です。

 

・この漢字という表意文字を使っていたからこそ、巨大な人口が分裂することなく、一つの国であり続けた。もし漢字ではなく、表音文字が使われていれば、現在の中国大陸には、ヨーロッパのように小国が分立することになっていたでしょう。

 インドも人口大国ですが、表音文字の国でした。その結果、インド亜大陸には、歴史的に多くの国が分立しました。いまでもインドの北部と南部は、まったく別の国といってよいほど、言葉も習俗も異なります。

 

・現在、中国という国が大きくなり過ぎてしまったことは、国際社会と軋轢を起こす原因になっています。というのも、国際社会のルールの多くは、ウェストファリア条約が結ばれた17世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパ人が定めたものです。それは、人口が数百万から数千万人程度の国がたくさんあることを前提としています。19世紀の日本の人口も、ほぼそのスケールでしたから、そのルールを違和感なく受け入れることができました。

 しかし中国には、現在、13億人もの人間が住んでいます。その結果、中国は、この「中規模の国がたくさんあることを前提にして作られたルール」が気に入りません。歴史上、常に中国の人口は周辺に比べ巨大であったため、自分だけは特別だと思っています。

 

・中国人は、巨大な国に住んでいるため、世界の人々がどのような目で中国を見ているのかが分からないようです。しかし、尊大な態度は国益を損ないます。中国は、外交が得意な国ではありません。

 

万年豊作貧乏のような状態

中国もその例外ではありません。毛沢東大躍進政策を行った1960年頃は、政策の失敗で数千万人もの人々が餓死しましたが、その当時、中国では化学肥料はほとんど使われていませんでした。その結果、1ヘクタールの農地から収穫できる穀物は1トンほどでしかなかったのです。

 しかしその後、化学肥料が普及すると、中国の収穫量は急速に増加しました。

 

・現在、中国は、1ヘクタールの農地から5トン程度の穀物を収穫しています。農地面積を増やすことなく、収穫量を数倍にすることができたのです。その結果、レスター・ブラウン氏が指摘したような穀物輸入大国になることはありませんでした。

 しかし、穀物をあまりにも簡単に増産できたがために、食料価格は低迷し、その結果として農民が貧しくなってしまった………中国の農村は、いま、万年豊作貧乏のような状態になっています。

 

<不要な5.6憶人が都市に行くと>

・中国の現状は、日本の何年ぐらい前の状況に似ているのでしょうか?このことは、よく議論されます。いま深刻な不動産バブルが発生しているから、1990年頃だ。いや、まだ1人当たりのGDPが8000ドル程度だから、日本列島改造論に沸いた1970年頃だろう。そんな会話が交わされます。

 しかしそれは、4億人の都市部を見たときの議論でしょう。国全体の状況を知るうえでは、都市と農村の人口比を見ることが有効です。中国の都市と農村の人口比を見ると、現状は、日本の1950年頃に似ています。日本の人口の約半分が、未だ農村に住んでいた頃です。

 

・ですから、現在でも多くの人々が地方に住み、農業に従事しています。その数は6億人にも上ります。そのため、一戸の農家が有する農地面積が非常に狭くなっているのです。

 現在、アメリカでは、一戸の農家が有する農地は100から200ヘクタール。ヨーロッパでも数十ヘクタールですが、日本では規模拡大が叫ばれながら、未だ北海道で10ヘクタール、本州では数ヘクタール程度です。

 

・中国には、日本よりもはるかに多くの農民がいるので、農家が所有する農地面積は非常に少なくなっており、0.5ヘクタールから1ヘクタール程度です。昨今は、中国政府もこの事実に気づいて、規模拡大に着手しています。

 しかし、農家の規模拡大を行うためには、農民を都市に移住させなければなりません。規模拡大とは、すなわち、離農しなければならない農民をどこに就職させるかかの問題でもあります。

 

・ここで、1戸の農家が耕す面積を10ヘクタールにすることを考えましょう。中国の農地は1億ヘクタールですから、必要な農家の数は1000万戸になります。一家を4人とすると、人口は4000万人です。6億人いる農業従事者のうち、5.6憶人を都市に移住させなければなりません。

 現在、都市に住んでいる3憶人の農民工の生活水準を上げることもできていないのに、それに加えて5.6憶人もの農民が都市に来れば、都市はパニックを起こします。それは、中国共産党が最も怖れる事態です—―。

 中国における農業の規模拡大がいかに難しいか、理解できたのではないでしょうか。

 

<日本と中国で違う公共事業の場所>

・最近でこそ中国も地方で公共事業を始めましたが、その発展の途上では、公共事業は北京など沿岸部の大都市に集中していました。その工事をするために、地方から農民が移り住んだのです。

 

米価も農民工の賃金も上げぬ理由

・政府は最低賃金を決めることができますが、もし最低賃金を上げると、料理の価格も上げなければなりません。それでは、都市戸籍を持つ人々が困ります。戸籍アパルトヘイト国家の冷厳な真実です。

 

共産党が都市住民だけを恐れるわけ>

・農民は田舎に住んでいます。だから農民が反乱を起こしても、武装警官などによって鎮圧することができます。一方、都市の中産階級には、情報発信能力があります。また、彼らが都市でデモを行えば、それは直ちに海外のメディアの目に留まります。だからこそ共産党は、都市の中産階級が不満を持つことを、最も恐れているのです。

 

・その結果、共産党は、都市の中産階級の意向に沿った政策だけを取り続けています。都市住民は食料の消費者。コメの価格を日本のように無理に釣り上げれば、彼らは不満に思います。だから、コメの価格を上げないのです。

 そして、農民工最低賃金についても、その上昇を抑えています。農民工の賃金を上げれば、都市部のサービス価格が上昇するからです。

 また、工場労働者の給料が上がり国際競争力が落ちれば、工場で働く労働者だけでなく、北京や上海の本社ビルで働くホワイトカラーが困る。だからこそ、農民工最低賃金を上げないのです。

 農民の生活状況の改善は後回し、都市住民のことを真っ先に考える。これが共産党の基本方針です。

 

農民の犠牲で達成した経済成長

・しかし、農民が幸せな時代は長く続きませんでした。人が食べる野菜や果物の量には限りがあります。改革開放路線に舵を切って10年もすると、ほとんどの人は、十分な量の野菜や果物を食べることができるようになりました。その結果、それ以上に需要が伸びることがなくなってしまいました。

 

<日本の格差の原因は中国の農民工

グローバル化が進展するなかで、日本企業は、中国企業と戦わざるを得なくなりました。その影響を真っ先に受けたのは製造業です。まず日本の製造業では、業績が悪くなると工場労働者を正規職員から非正規の期間工にします。すると、同じ作業をしても、非正規職員の給与は少なくて済みます。そう、中国企業に対抗するため、日本企業も「農民工」を作ったのです。

 

・「日本は格差社会であり、その改善努力は不十分だ」―—そのような指摘があることは、もちろん十分に理解しているつもりです。しかし、それでも中国の農村を見てきた者としては、日本の格差社会など、甘っちょろいものに見えてしまいます。

 

外資撤退で賃金上昇も頭打ちに>

・しかし、沿岸部の「農民工」の賃金が3000元になると、それまで中国に進出していた外国企業がコスト上昇を嫌い、中国以外に工場を移転させるようになりました。これが、いわゆる「China+1」です。

 輸出が経済成長の生命線であった中国経済には大打撃でした。そのため、2015年頃から「農民工」の賃金をあげることをためらうようになりました。こうして現在、中国の「農民工」の賃金上昇は、緩やかになってしまいました。

 

<次の天安門事件が起こらない理由>

・約30年前に天安門事件を起こした大学生たちは、いま中国の保守層を代表する存在になっています。そして現在、彼らの息子・娘である中国版の団塊ジュニアが、どんどん大学生になっています。

 

・親の資力がなければ現在の生活を維持できないということは、彼らは超保守的な人々だというのです。そんな彼らが、新たな政治運動の原動力になることはありません。

 

鄧小平の「先富論」は誤りだった

ここまでお読みいただければ、中国の農民は絶対に豊かになれないことが、明快に分かったと思います。

 そのため、農民が少しでも豊かになりたければ、都市に出ていくしかありません。ただ、これまで都市部に出稼ぎに行った3憶人でさえ、本当の豊かさとはほど遠い状況に置かれています。

 にもかかわらず、中国の工業部門は過剰生産設備を抱えるようになってしまいました。もはや工業によって経済を発展させることはできない。そうであれば、農村から都市に出ていっても、働き口すら見つからない時代がやってきます。

 

豊かになった者(都市戸籍所有者)は、豊かになれなかった者(農民戸籍所有者)を踏み台にして豊かになった。その踏み台を外すわけにはいきません。

 踏み台は、永遠に必要なのです。それを外せば、自分たちのほうも貧しくなってしまいます。

 中国の農民は、絶望的な状況に置かれています。9億人にも及ぶ中国の農民戸籍所有者は、これからもずっと貧しくあり続けるのです。

 

<中国が穀物の大量輸入国にならなかった理由>

・中国が穀物の大量輸入国になるとしたレスター・ブラウン氏の予測がはずれた最大の理由は、大豆が家畜の餌に使用されるようになったためです。

 

・中国人は豚肉が大好きですが、豚肉を作るためには、大量のトウモロコシが必要になります。ただ大豆ケークを混ぜると、必要なトウモロコシの量を、大幅に減じることができる。その結果、レスター・ブラウン氏が予測したほど、トウモロコシの需要は増えませんでした。これが、彼の予測がはずれた最大の原因です。

 

・このことは、わが国における食料自給率に関する議論に、多くのことを投げかけています。いたずらに食料危機をあおり、無理をして食料自給率を上げようとすることは、補助金行政を助長することになる。それは、日本の衰退を早めることになるでしょう。

 

アメリカへの挑戦が早めた崩壊>

・先にも述べましたが、「先富論」では、先に豊かになった者が遅れた者を助けることになっていました。ならば、いまこそ政府は、都市戸籍を持つ者から多額の税金を徴収し、農民戸籍を持つ人々にばら撒くべきなのです。しかし、そのような政策を行えば、都市戸籍を持つ人々の共産党への支持は一気になくなってしまうでしょう。

 

そう、中国の対外膨張政策はアメリカとの対立を招き、そして敗れ去るのです—―。

 

「中国の夢」が招く中国崩壊

・中国のGDPが正しかったとして、約11兆ドル。それに対してアメリカは19兆ドル。中国のGDPは未だ、アメリカの6割程度なのです。そして、1人当たりのGDPは、アメリカの1割強しかありません。

 その段階で、習近平政権はG2などと言い出しました。中国の某将官に至っては、ある会議において、米中で太平洋を二分しようと提案したそうです。それをアメリカが快く思わないことは明らかでしょう。

 22世紀の歴史の教科書には、「習近平共産党総書記になると『中国の夢』と称し、国威発揚を図ったことから、アメリカと中国は太平洋をはさんで激しく対立するようになりました」などと書かれるでしょう。

 

<農民犠牲の成長モデルが逆回転を>

<空母の建造で崩壊を速めたソ連

<内政が低劣な中国の外交は>

・13億もの人口を擁することから、中国は、アメリカにとって容易ならざる挑戦者です。しかし、その争いは案外あっさり片が付くと考えています。結果はアメリカの勝利、中国の負けです。

 その最大の理由は何か?先に書きましたが、それは中国に国家戦略が皆無だからです。そして、どの国でも、外交は内政の延長ですが、中国では特にその傾向が著しい。戸籍アパルトヘイトのような低劣な内政を取り続ける中国は、当然、ひどい外交音痴なのです。

 

<外交を行う者の視線は国内に>

・どうやら中国の外交当局は、海外に敵を作ることこそが仕事だと考えているようです。

 ただ、その理由は明白です。外交を行う者の視線が、国内に向いているためです。中華思想に染まった保守派を満足させるためには、子どもっぽい外交を繰り返すしかないのです。

 この保守派は、世界の現状や外交のあり方などが理解できません。外交当局が相手を見下すような発言をしたりすると、何となく快感を得るのでしょう。まったくもって子どもじみています。

 このような国が、外交において、百戦錬磨のアングロサクソン国家に敵うはずがありません。これが、私が中国とアメリカの対立は意外に短い時間で決着がつくと考える、最大の理由です。

 

<若者の就職難が生み出す政変>

・留学生に聞くと、「都市部で月給5000元(約8万円)の仕事にありつければ御の字だ」といいます。しかし、北京や上海は住居代が高いので、親元から通勤しないのであれば、5000元では生活できないといいます。

 そのような状況に対し、学資を出した親世代も、心底ガッカリしています。中国は日本とは比べものにならないほどの「超」学歴社会なので、無理をして日本に留学させたのですが、元が取れない、というわけです。

 

現在までのところ、中国政府が積極的な財政出動を行うことでバブル崩壊は免れていますが、過剰生産設備が問題になるなか、息子や娘の就職先は、確実に失われ始めています。

これは今後、必ずや大きな政治問題に発展します。そして、政治の変革を促します。政治の変革は「自由」「平等」「博愛」などといった理念ではなく、経済、つまり「お金」がうまく回らなくなったときに起きるものです。

 バブルの崩壊で、中国は、極めて不安定な状況に推移することは間違いありません。

 

2049年の中国はどうなる>

・経済が順調に発展した過去20年間、中国の政治は安定していましたが、バブルが崩壊し経済が低迷する次の20年間、中国の政治は不安定化すると考えて間違いありません。

 社会主義市場経済というシステムは鵺のような存在であり、歴史的観点から見たとき、極めて不安定なのです。

 

2049年中華人民共和国は建国100周年を迎えますが、そのときまで現在と同じ権力構造が維持されることはありません。断言してもいいでしょう。

 

<中国がインドに追い抜かれる日>

・中国とインドの競争は、ウサギとカメの競走に似ています。中国は過去30年間にわたり、ウサギの勢いで急速に成長しました。民主主義がなかったから、この成長が可能だったのです。しかし、ここに来て、踏み台にしてきた9憶人の農民を豊かにしなければならなくなり、大きな壁にぶち当たってしまいました。

 

<中進国の罠にはまる中国>

・「中進国の罠」という言葉をご存知でしょうか。これは、開発途上国がある程度まで発展し、中進国と呼ばれる段階に達したあと、成長速度が著しく低下する現象を指します。現在、日本や欧米先進国の1人あたりのGDPは約4万ドルですが、中進国は1万ドル前後に留まります。

 中進国の罠にはまった国としては、メキシコ、ブラジル、トルコなどを挙げることができます。これらの国々は開発途上国のなかでも優等生でした。

 

・かたや中国の習近平政権は、独裁を強化することによって、中進国の罠から逃れようとしています。しかし、それは必ず失敗に終わります。なぜなら、独裁政権は道路や橋を造ることは得意でも、成長から取り残された人々の意見を聞くことが苦手だからです。

 

<3回目の黄金時代を迎える日本>

習近平の野望によって、日本を取り巻く環境が大きく好転したともいえるでしょう。日本は明治以降において、3回目の黄金時代を迎えようとしています。

 今後、日本はアメリカに協力する形で、中国の膨張を快く思っていないベトナムや、東南アジア諸国、あるいはインドと連帯し、新たな時代を切り開いていくべきでしょう。海外に飛躍する環境は整いました。

 一方、戸籍アパルトヘイトを止められない中国の失速は、目前に迫っています。

 

 

 

『米中戦争 そのとき日本は』

渡部悦和  講談社  2016/11/16

 

 

 

ライバルを必ず潰してきた米国

・日米関係について言えば、1970~90年代における米国の経済面での最大のライバルは日本であった。ハーバード大学エズラ・ヴォーゲル教授が1979年に書いた『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は有名だが、多くの米国人が日本に脅威を感じていた。とくに日本経済の黄金期であった1980年代の米国人は日本を最大の経済的脅威として認識し、日本に対してさまざまな戦いを仕掛けてきた。その典型例が日米半導体戦争である。半導体分野で首位から転落した米国のなりふり構わぬ日本叩きと熾烈な巻き返しは米国の真骨頂であった。こうした米国の仕掛けが成功するとともに、日本の自滅(バブルを発生させてしまった諸政策と、バブル崩壊後の不適切な対処)も重なり、バブルを崩壊後の失われた20年を経て日本は米国のはるか後方に置いて行かれたのである。そして今や中国が米国にとって最も手強い国家となっている。

 

<スコアカード・5つの提言>

ランド研究所では「紛争開始時の米軍の損害を減少させ、勝利を確実にする」ための、5つの提言を行っている。

  • バランス・オブ・パワーの変化は米国に不利なトレンドではあるが、戦争は北京にとっても大きなリスクであることを明確に認識させるべきである。
  • 兵器調達の優先順位においては、基地の抗堪性(余剰と残存性)、高烈度紛争に最適なスタンドオフ・システムで残存性の高い戦闘機及び爆撃機、潜水艦戦と対潜水艦戦、強力な宇宙・対宇宙能力を優先すべきである。
  • 米国の太平洋軍事作戦計画策定においては、アジアの戦略的縦深(地理的な縦深性、日本などの同盟国が米国の緩衝地帯を形成することに伴う縦深性)を活用する。米軍がこうむる当初の打撃を吸収し最終目標に向かっての反撃を可能にする(積極拒否戦略)を考慮すべきである。その結果、中国近傍の地域を静的に防護することは難しくなるであろう。
  • 米国の政治・軍事関係者は、太平洋の島嶼諸国及び南東アジア南部の諸国とも連携しなければならない。これは、米国により大きな戦略的縦深と、米軍により多くの選択肢を提供することになる。
  • 米国は戦略的安定・エスカレーション問題において、中国に関与する努力を続けなければならない。

 

<スコアカードに関する筆者の評価>

<日本の安全保障に与える影響>

  • 本報告書には日本防衛に影響を与える記述が随所にあり、その記述を詳細に分析する必要がある。例えば、「嘉手納基地に対する比較的少数の弾道ミサイル攻撃により、紛争初期は緊要な数日間基地が閉鎖、より集中的な攻撃の場合は数週間の閉鎖になる可能性がある。米国の対抗手段により、その脅威を減少させることができる」などといった記述である。

 とくに台湾危機シナリオは日本防衛に直結する。台湾の紛争が在日米軍基地への攻撃などの形が我が国に波及すれば、日本有事になる。南西諸島の防衛をいかにすべきか、在日米軍基地を含む日本の防衛態勢をいかにすべきかを真剣に考える契機とすべきである。台湾や南シナ海の危機は日本の危機でもあるのだ。

 

  • ランドの研究グループは、作戦構想としてのエア・シー・バトルを採用しているために、「アジアの戦略的縦深を活用し、米軍がこうむる当初の打撃を吸収し最終目標に向かっての反撃を可能にする「積極拒否戦略」を考慮すべきである。中国近傍の地域を静的に防護することは難しくなるであろう」と提言しているが、この提言は重要だ。要するにこれは、「危機当初は米空軍・海軍が中国軍の打撃を避けるために後方に退避し、反撃を準備してから攻勢に出る」という意味である。米国の同盟国である紛争当事国は米軍の反撃が開始されるまで中国軍の攻撃に耐えなければいけない—―「積極拒否戦略」にはそのような意味が込められている。
  • 我が国においても、ランド研究所のシミュレーションを上回る分析が必要であり、詳細かつ妥当な分析に基づく防衛力整備、防衛諸計画策定がなされていくことを期待する。

 

<キル・チェインとC4ISR能力>

弾道ミサイルなど、長射程兵器の「キル・チェイン」と、それを可能とする指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察{C4ISR}能力はきわめて重要である。キル・チェインとは、ほぼリアルタイムで目標を発見、捕捉、追跡、ターゲティング(目標指示)、交戦(射撃)の効果を判定する—―という、一連のプロセスを指す。

 

東日本大震災時に軍事偵察を活発化させた中国・ロシア>

筆者が最も恐れる最悪のシナリオは、同時に生起する複合事態である。2011年に発生した東日本大震災は複数の事態が同時に生起する複合事態であった。当時の自衛隊は、地震津波原子力発電所事故に同時に対処する必要に迫られた上、周辺諸国の情報偵察活動も続けなければならなかった。多くの日本人は知らない事実だが、当時、自衛隊が大震災対処で忙殺されている間に、その自衛隊の警戒態勢を試すかのように周辺諸国(とくに中国とロシア)が軍事偵察を活性化させた。その姿勢には強い憤りを感じたものだ。しかし、それが我が国周辺の厳しい安全保障環境であると改めて実感したことを思い出す。

 筆者が恐れる「同時に生起する複合事態」の一例は2020年に開催される東京オリンピック関連である。この大会に備えてテロやサイバー攻撃への対策が議論されているが、大会直前や開催中の首都直下地震の発生及び対処は考えられているだろうか。

 筆者がさらに恐れる同時複合事態は、首都直下地震(または南海トラフ大震災)の発生に連動した日本各地でのテロ活動、もしくは、尖閣諸島など日本領土の一部占領である。