『創作者のためのファンタジー世界事典』
ゲームクリエイターがしっておきたい神話・幻獣・魔術・異世界のすべて
幻想世界探求倶楽部 Gakken 2018/4/17
<異世界>
<オリュンポスの宮殿>
・ギリシア神話では、聖山オリュンポスの山頂にある宮殿に神々が住むとされた。中でもゼウスはもっとも高い場所にいるという。
<アヴァロン>
・アヴァロンはアーサー王物語の最後の舞台で、恵みの楽園である。
・アヴァロンは、ブリテン島のどこかにあるとされる伝説の島である。
・この島では農夫による耕作なしに実りを得ることができ、刈り取られた草から自然に林檎の木が生えた。そのため「林檎の島」と訳されることが多い。時間の流れが外と異なり、この島の20年は、人間世界の200年に匹敵するという。
・イエス・キリストがブリテン島を訪れた際の上陸地とも考えられており、のちにイギリス最初の教会が成立したという伝説がある。
<エデンの園 アダムとイブが暮らした楽園>
・エデンの園は、旧約聖書に記されている楽園である。多くの樹が繁り、安らかで豊かな時間が流れていた。
・エデンの園とは、旧約聖書の『創世記』に登場する理想郷の名である。「パラダイス」や「地上の楽園」ともいわれる。実をつける樹が多く植えられており、人類の祖アダムとイブはその実を食べながら、善悪を知らずに安らかな日々をすごしていた。園の中央には、生命の樹と知恵の樹が植えられている。
・またダンテの『神曲』では、エデンの園は煉獄の頂上に置かれていて、天国にもっとも近い場所とされている。
・日本神話の高天原は、アマテラスをはじめとした天津神の住む場所であり、海に浮かぶ雲の中だったとされている。
・イザナギとイザナミが国土を創ったあとも、アマテラスをはじめとする天津神たちは、ここで暮らしていたとされる。機織りなども行われており、人間生活に近い営みがあったようである。
・世界の始まりにおいて、神々が生まれた場所。
<ギリシア神話の冥府 いくつもの川に取り巻かれた死者の国>
・ギリシア神話の死後の世界冥府は、暗い地下にあると考えられており、ハデスが治めている。人が死んだとき、英雄ならばヘルメスが、一般の人々ならばタナトスが、魂を冥府へと運ぶ。川に取り囲まれており二度と戻れない。
死者たちは冥府で裁判を受け、行い正しく特別に神に愛された者は、死後の楽園エリュシオンへ行ける、重い罪のない者は、そのままハデスのもとで暮らす。罪の重い者は、地底タルタロスへと送られる。
<タルタロス>
・冥府のさらに下のタルタロスには、オリュンポス神族に敗れたティターン神族が幽閉されている。
・ギリシア神話のタルタロスは、地底の暗黒の神のことであり、また、冥府の下方にある最下層の暗黒世界そのものである。
・最初は神々の王であったウラノスやクロノスが、ヘカトンケイルやキュクロプスといった異形の巨人たちを幽閉するのに使っていた。のちにゼウスたちがこの巨人たちを解放してティターン神族を打ち倒すと、今度はティターン神族が幽閉され、ヘカトンケイルたちがその牢番となった。詩人ホメロスは、クロノスがタルタロスの王になったと述べている。ほかにも怪物テュポンがここに閉じ込められたともいわれている。
<ヘルヘイム 北欧神話で描かれた地下の冥界>
・北欧神話の死者の国ヘルヘイムは地下にあり、ロキの娘ヘルが治める。
・世界樹ユグドラシルの中にある3層に分かれた世界で、最下層に位置し、神々や人間の世界から見ると地下にあることになる。
・ヘルヘイムは、老年や病によって亡くなったすべての死者が来る国とされており、本来、地獄のような刑罰の場所ではない。
しかしヘルヘイムの中には、殺人や姦淫を犯した者を罰するためのナーストレンドという場所がある。
・ちなみに、ヘルヘイムはしばしば、氷の国ニヴルヘイムと同一視される。
<黄泉の国/根の国>
・横泉の国は死者の住む地下の国であり、イザナギが亡きイザナミに会いにいく物語の舞台にもなっている。
・日本神話の黄泉の国とは、死後に魂が行くとされる、地下にある死者の国である。
<桃源郷 戦乱を避けた隠れ里>
・桃源郷とは、4世紀頃の詩人陶淵明が書いた『桃花源記』によって知られる、桃林の奥の平和で豊かな隠れ里である。探し求めてもたどり着けない場所とされる。
・桃の花が咲く隠れ里は、戦乱に苦しめられることのない平和な世界だった。しかし、もう一度訪れたいと思っても、その望みはかなわない。
・桃源郷の物語は、次のような内容である。あるとき、ひとりの漁師が森林に迷い込んだ。狭い穴を抜けると、美しい田畑と桑畑の広がる村があり、耕作する人々の服装はまるで異国の人のようだった。人々はその村で、戦乱を避けるため、外の社会と交わらないようにして暮らしたのである。村人たちは漁師を数日歓待したのち、帰ろうとする彼に、村の事を外の人間に話さないよう頼んだ。村を出た漁師は、約束を破って村の事を太守に伝えたが、誰がいくら探しても、村はもう見つからなかったという。
<北欧神話の世界観>
・(ユミル)世界の始まりに出現した巨人。氷塊が解けたしずくから生まれた。
(アウズンブラ)ユミルと同様しずくから生まれた牝牛。ユミルに乳を飲ませる。
(ブーリ)アウズンブラが舐めた岩の中から現れた、最初の神。
(アース神族)最高神オーディンに連なる神の一族。北欧神話の主役たち。
(ヴァン神族)アース神族と争った神の一族。ニョルズらを人質として送り和解。
(霜の巨人)ユミルの血を引くベルゲルミルの子孫。神々や人間と対立。
(ムスベル)炎の巨人族。その長スルトは、炎の剣で世界を焼き尽くす。
(山の巨人)霜の巨人やムスベルとは別の巨人の一族。丘の巨人とも。
(ユグドラシル)宇宙そのものとしての樹(世界樹)。3層9国を内包。
(アースガルズ)ユグドラシルの第1層(最上層)にある、アース神族の国。
(アルフヘイム)ユグドラシル第1層、光のエルフ(妖精)の国。
(ミズガルズ)ユグドラシルの第2層(中間層)、人間の国。
(ヨトゥンヘイム)ユグドラシル第2層、霜の巨人と山の巨人の国。
(ニザヴェッリル)ユグドラシル第2層、小人ドワーフたちの国。
(スヴァルトアルフヘイム)ユグドラシル第2層、黒い妖精の国。ニザヴェッリルと同じとも。
(ヘルヘイム)ユグドラシル第3層(最下層)、死の国。ロキの娘ヘルが統治。
(ニヴルヘイム)ユグドラシル第3層、氷の国。ヘルヘイムと同一視されることも。
(ムスペルヘイム)ユグドラシル第3層、炎の国。ムスペルたちが住む。
(ビフレスト)ユグドラシルの第1層と第2層を結ぶ虹の橋。
(ギンヌンガガップ)ニヴルヘイムとムスペルヘイムの間の大きな裂け目。
(フィンブルの冬)ラグナロクの前兆。3度の冬が続き、世界と人心が荒れ果てる。
(ラグナロク) 「神々の黄昏」。神々と巨人が戦う、世界最終戦争。
<オリュンポス12神 ② 第2世代、ゼウスの子どもたち>
・ゼウスの子どもにあたるオリュンポス第2世代にも、アテナやアポロンなど、非常に重要な神々が顔をそろえている。
<オリュンポス第2世代>
・オリュンポス第2世代は、ゼウスの子どもたちである。しかしゼウスは恋多き神なので、母親はみな同じではない。
知恵と技術の女神アテナは、ゼウスの最初の娘である。自分が妊娠させた知恵の女神メティスを呑み込んだゼウスの頭の中から、武装した姿で飛び出して生まれてきた。
アテナは有力な都市国家アテナイの守護神で、巧妙な策略によって英雄たちを助ける戦いの神でもある。
<個性豊かな神々>
・光と芸術の神アポロン、および狩猟の女神アルテミスは、ゼウスがウズラに変身して女神レトに近づき、孕ませた双子だ。
・鍛冶の神ヘパイストスはゼウスとヘラの長男であり、血なまぐさい戦いの神アレスは次男である。風よりも速く走る伝令の神ヘルメスは、ゼウスと女神マイアの息子で、泥棒と嘘の才能がある。美と愛の女神アフロディテはゼウスの養女で、じつは切断されたウラノスの男根の泡から生まれた。
ちなみに、ヘスティアの代わりに酒と酩酊の神ディオニュソスがオリュンポス12神に入られることもある。
ゼウス(第1世代) 最高神、天空 ローマ神話ではユピテル(ジュピター)
ポセイドン(第1世代) 海・地震 ネプトゥヌス(ネプチューン)
ヘラ(第1世代) 母性・結婚 ユーノー(ジュノー)
デメテル(第1世代) 農耕・大地 ケレス(セレス)
アテナ(第2世代) 知恵・技術 ミネルウァ (ミネルヴァ)
アポロン(第2世代) 光・芸術・予言 アポロー(アポロ)
アルテミス(第2世代) 狩猟・純潔 ディアーナ(ダイアナ)
ヘパイストス(第2世代) 鍛冶・灸 ウルカヌス(バルカン)
アレス(第2世代) 戦争・破壊 マールス(マーズ)
ヘルメス(第2世代) 伝令・盗賊 メルクリウス(マーキュリー)
<ハデス 地下を統治する冥府の王>
・ゼウスの兄ハデスは、地下にある死者の国冥府の王だが、悪魔のような存在ではない。死んだ人々の魂を裁く者であり、運命と正義の力をコントロールしている。地下に住んでいるため普通はオリュンポス12神に数えられないものの、それと同格の神であり、ゼウスとポセイドンに次ぐ実力者である。
<プロメテウス 人間に火を与えゼウスの怒りを買った神族>
・プロメテウスはティターン神族の血を引く神である。彼は、寒さや飢えに苦しむ人間を憐れんで、ゼウスが禁じていた火を人間に与えた。しかしそのことが、ゼウスの逆鱗にふれる。
・なお、家を建てることや言葉を文字に書き写すことを人間に教えてくれたのも、プロメテウスだったという説もある。
<ペルセウス 鏡の盾を手にゴルゴンを退治した英雄>
・ゼウスとアルゴスの王の娘ダナエの子ペルセウスは、生まれてすぐに祖父によって故郷を追われ、セリフォス島で育った。
<ヘラクレス 12の試練を乗り越えたギリシア神話最大の英雄>
・ゼウスの息子ヘラクレスは、贖罪のために12の試練に立ち向かい、ギリシア神話最大の英雄となった。
・最後はケンタウロスのネッソスの罠にかかり、猛毒に苦しみながら、不死身の命を自ら捨てた。
<イアソン 金羊毛を求めるアルゴー船の冒険者>
・イアソンは自分がつくべき王位を取り戻すため、アルゴー船に英雄たちを乗せ、金羊毛も探す旅に出た。
・イアソンは50人あまりの英雄たちとともに、彼にひと目ぼれしたコルキス王女メディアの助けを借りて、金羊毛を手に入れるのである。イアソンは金羊毛とともに、メデイアも故郷に連れ帰る。
<ギリシア神話の神と人々 神話の中で語り継がれるキャラクターたち>
(アスクレピオス)医学の神。死者をも生き返らせることができる。
(アドニス)美少年の代名詞的存在。女神たちに愛された。
(アトラス)ティターン神族の巨人。天を背負わされる。
(アネモイ)風の神たち。4人で東西南北をそれぞれ司る。
(アンティゴネ)ネイディプスの娘。兄を葬るため掟に背いた。
(アンドロメダ)エチオピアの王女。ペルセウスに助けられ、妻となる。
(エオス)暁の女神。すべての星々を産んだ母。
(カッサンドラ)トロイアの王女。予言能力をもっていた。
(セレネ)月の女神で絶世の美女。銀の馬車で夜空を駆ける。
(ダイダロス)クレタの工人。ミノス王のもと、さまざまなものを発明。
(タナトス)死の神。死にゆく人の魂を奪い去る。
(テイレシス)盲目の予言者。性の転換を経験したともいわれる。
(デウカリオン)プロメテウスの息子。箱舟で大洪水を生き延びる。
(ネメシス)義憤の女神。非礼を働く人間に罰を与える。
(パエトン)太陽神の息子。父の馬車を暴走させたせいで殺される。
(パン)山羊の角をもつ半獣神。羊飼いと羊の群れを監視。
(パンドラ)人類最初の女性。人間に災いをもたらすため神々が派遣。
(ヒュプノス)眠りの神。木の枝を人間の額に当てて眠らせる。
(ヘカテ)魔術や出産を司る女神。中世には魔女とされた。
(ミダス)ペシヌスの王。ふれたものすべてが黄金に変わった。
(ムーサ)文芸を司る女神たち。フランス語ではミューズ。
(モイラ)運命を司る三女神。人間の運命の糸を握る。
<ヘイムダル 虹の橋を守る光の神>
・ヘイムダルはアース神族の光の神で、神々が住む世界アースガルズと人間が住む世界ミズガルズを結ぶ虹の橋ビフレストの番人をしている。
・ギャラルホルンという角笛を持っており、神々と巨人族の最終戦争ラグナロクが始まるときにこれを吹き鳴らす。
また彼は、人類の祖とされることもある。世界を旅して3人の女性と交わり、生まれた3人の子どもがそれぞれ奴隷・自由農民・王侯になったといわれ、これが階級の始まりになったという。
・ロキは巨人族でありながらアース神族とともに暮らし、さまざまなトラブルを起こす。やがてオーディンらに敵対するようになり、最終戦争ラグナロクでは巨人族の先頭にたって神々の国アースガルズに攻め込む。
・(トリックスター)北欧神話の主役がオーディンだとすると、その相手役は巨人族のロキになるだろう。ロキは仇敵の巨人族でありながら、神々の国アースガルズに住み、オーディンと義兄弟の契りまで結んでいる。トールと仲がいい。
ロキはいたずら好きのトリックスター(秩序を乱し、新しい展開をもたらす者)だ。ずる賢くて嘘がうまく、変身術を得意とする。邪悪な性格のもち主でトラブルメイカーだが、神々のためにめざましい働きをすることも多い。
・(ロキの子どもたち)ロキは巨人族の女性アングルボザとの間に、蛇のヨルムンガンド、狼のフェンリル、半死人の姿の娘ヘルという3人の子どもをもうけている。人間の娘シギュンとの間にも、ヴァーリとナリというふたりの息子がいた。また、牝馬に変身して牡馬と交わり、名馬スレイプニルを自ら産んだこともある。
・(ロキの復讐とラグナロク)ロキが恨みを晴らすために立ち上がるのは、ラグナロクのときである。世界の終焉の日、フェンリルの子スコルとハティによって太陽と月が呑み込まれ、星が天から落ちて光が消滅する。するとすべての戒めが解け、ロキの体は自由になり、巨人族を引き連れてアースガルズに攻め込む。大蛇ヨルムンガンドや狼フェンリルも参戦。ついに最終戦争が始まるのだ。
神々と巨人族は最後まで死力を尽くして戦い、世界は滅亡することになる。ロキはヘイムダルと相討ちになり息絶える。
<ワルキューレ 天馬で戦場を駆け、戦死者の魂を探す乙女たち>
・武装した半神の乙女ワルキューレたちは、天馬に乗って戦場をめぐり、勝敗と死を決定していく。
・ワルキューレは半神であり、鎧兜と剣や槍で武装した乙女の姿をしている。彼女たちは、天馬に乗って戦場を駆けめぐり、戦死した勇者の魂を、グラズヘイムという場所にある宮殿ヴァルハラへと連れていく。オーディンの命を受け、最終戦争ラグナロクで味方となる戦士をスカウトしているのである。
・生命の女神ダヌを頂点とするダーナ神族は、ケルト人以前にアイルランドを支配していた人々をモデルとする神々である。
・ケルト神話には、ダーナ神族という神々が登場する。生命の女神ダヌを母とする神の一族である。ケルト人が上陸する以前にアイルランドを支配していた、実在の民族がモデルだという。
ダーナ神族がやってくる前は、フィル・ボルグ族がフォモール族を従えてアイルランドを支配していた。そこへ北方から黒い雲とともにダーナ神族が現れて、フォモール族と同盟を結んでフィル・ボルグ族と戦い、勝利する。そののち、ダーナ神族はフォモール族と争ってこれを打ち負かし、アイルランドを支配したのだった。
しかしそんな彼らも、のちに上陸してきたミレー族に追いやられ、地下に逃れて、妖精になったと伝えられている。
<オシーン 「常若の国」から300年後に帰還した。ケルト版「浦島太郎」>
・オシーンはフィン・マックールの息子で、フィアナ騎士団の一員だった。しかしある日、美貌の少女に魅せられて常若の国へ行くことになる。そこには金銀宝石で散りばめられ、誰も老いることも死ぬこともない理想郷だった。
そこで3年をすごしたのちオシーンが帰郷を望むと、少女は彼に白馬を与え、「この白馬から決して地面に降りてはいけません」と忠告する。帰還した故郷では、何と300年の歳月が経過しており、父も友人もみな死んでいた。そしてオシーンが思わず地面に降りた時、たちまち彼は白髪の老人となってしまうのだった。
<アーサー王 ヨーロッパに伝わる伝説の王>
・アーサー王は、6世紀にブリテン人を率いてサクソン人を撃退した、伝説の王である。ケルト神話には、彼の物語が多数含まれている。
・ユダヤ教・キリスト教・イスラム教は「アブラハムの宗教」と呼ばれる。唯一の神が信仰され、それらは同じ神だと考えられている。
・(同じ神を信じる)ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という3つの一神教は、「アブラハムの宗教」といわれ、ノアの洪水のあとに登場した最初の預言者アブラハムが、宗教的な始祖とされる。
<唯一の神>
・古代イスラエルのユダヤ人は、唯一神をヤハウェの名で呼んでいたと考えられるが、正確な発音は忘れさられた。そのほか「アドナイ」「エロヒム」など、さまざまな名や称号がある。悲しみ深いが、罰を下すにあたっては容赦のない、恐ろしい神である。
キリスト教の多くの教派では、神について三位一体説が採用された。神はひとつの実体でありながら、父・子(父なる神の言葉であるイエス・キリスト)・聖霊の3つの位格をもつという考え方である。
・(グノーシスの神学)たとえばキリスト教の中には、「ユダヤ教の神と、イエス・キリストの宣教した神は、別々の神である」とする考え方があった。1世紀に発生して2世紀に力をもったグノーシス主義である。
ギリシア語で「認識」を意味するグノーシスの思想によると、ユダヤ教・旧約聖書の創造神は低劣な神であり、その神に創られたこの世界も望ましくないものである。本当にすぐれた至高神は、悪しき世界から人間を救うため、キリストを地上に送った。そのことを「認識」してこの世界を脱し、至高神のもとに迎えられることが、魂の救済なのだという。
<イザナギとイザナミ 日本の国土と多数の神々を産んだ夫婦神>
・日本の国土と神々を産み出した夫婦神。また、死も彼らに由来する。
・(穢れを清める)黄泉の国を訪れることで死の穢れを身に帯びてしまったイザナギは、禊ぎをしなければならないと思い、清らかな水で体をすすいだ。
するとその汚れの中から、災いをもたらすマガツヒノカミや、その災いを直すナオビノカミなど、多くの神々が生まれた。
仕上げにイザナギは顔を洗った。左目を洗うと、太陽のようなアマテラスが生まれ、右目を洗うと、月のようなツクヨミが生まれた。そして鼻を洗うと、嵐のようなスサノオが生まれた。この3柱の神を三貴子という。
三貴子の誕生に、イザナギはとても喜んだ。彼はアマテラスには神々の暮らす高天原を、ツクヨミには夜の世界(夜之食国)を、スサノオには海原を治めさせることにしたのだ。
・日本神話には2種類の神が登場する。天空の高天原の神々は天津神と呼ばれ、地上に土着していた神々は国津神という。ただ、高天原から地上に降りたスサノオは国津神とされ、その子孫のオオクニヌシは国津神の主宰神となる。
<ニニギ 高天原から地上に降り、その地を統治>
・ニニギは、アマテラスの孫にあたる神である。その名は、天地が豊かににぎわうこと、稲穂が豊かに実ることを意味する。
彼はアマテラスから、葦原中国を治めるように命じられた。三種の神器を持ち、神々を引き連れたニニギは、高天原から地上へと降りていく。途中で、国津神のサルタヒコが現れ、道案内をした。やがてニニギは、筑紫の日向の高千穂(九州)に降り立った。これを天孫降臨という。
<おしら様>
・おしら様は、東北地方、特に岩手県や青森県で信仰されている家の神であり、蚕や農業の神ともされている。
桑の木の棒の先に人間や馬の顔を彫り、何枚もの服を着せたものがご神体になることが多い。普通、家の神棚や床の間に祀られる。
<キジムナ>
・キジムナは沖縄に伝承される妖怪で、ガジュマルの古木の精霊とも伝えられている。
体がまっ赤で赤い髪に赤い顔の子どもの姿で現れる。性別もあり、結婚して家庭も作る。人間と結婚することもあるという。
彼らは人間と共存し、一緒に漁に出たときは、必ず大漁になる。
『現代オタクの基礎知識』
2次元世界に強くなる
ライブ カンゼン 2017/7/13
<2次元コンテンツ>
・小説、マンガ、ゲーム、アニメ、ライトノベルなど、いわゆるクールジャパンを担う日本の2次元コンテンツは趣向が特殊である。
見た目には萌え系といわれるようなタイプが主流であるし、その世界観をして「中二病的」などと揶揄されることもある。しかしちゃんと作品を鑑賞すると、そうした娯楽的な見た目の裏側で、多種多様なジャンルからネタ元を引っ張り出し、熟知したうえで物語が構築されていることが分かる。
・そこで本書は、現代の2次元世界が好きな人なら最低限知っておいて損はない、「少しマニアック」なジャンルや専門用語を多岐にわたって紹介する。
<巨大な樹に住む人々の暮らしとその終末>
・ゲームの題名をはじめ創作でよく見かける名前である「ラグナロク」。これは、北欧神話で語られている、神々と巨人たちの間に起こる最終戦争の名前だ。
北欧神話の世界は「ユグドラシル」と呼ばれる巨大な樹に9つの世界が存在し、神もそれに敵対する巨人族も人間も、はたまた冥界もウグドラシルに内包されている。人間はミズカルズという世界に住み、基本的にほかの世界を行き来することはできないが、神々や巨人は比較的自由に移動できるようで、神々が人間に干渉してくることもある。
・ラグナロクは巫女の予言によって語られる「未来の出来事」だ。最高神オーディンが率いるアース神族は元々敵対していたヴァン神族と同盟を組み、巨人族との戦いに備える。予言では、怪物を率いる巨人族とオーディンたちの間で発生し、ヴィーグリーズという広い野原を戦場に、あらかじめ決められた者同士で対決する。
・ラグナロクの神々の運命はすでに決まっており、オーディンをはじめ多くの神が死に、最後はスルトという炎の巨人が持つ炎の剣によって、世界樹ユグドラシルが燃やされ世界が滅びを迎える。ただし、その後も一部の神や人間が生き残り、世界を再興していくのである。
<北欧神話の主な神々>
(トール)神々の中で最強といわれる。
(テュール)隻腕の軍神。戦いの勝敗を決める神。
(バルドル)オーディンとフリッグの間に生まれた息子でホズの兄。神々の中で最も賢明。ラグナロクののちに復活する。
(ヴィーザル)オーディンの息子。慎ましく、「沈黙の神」とよばれるが、その実力はトールに次ぐほどのもの。
(ヘイムダル)視覚や聴覚が鋭敏な神々の番人。アースガルズとミズガルズを繋ぐ虹の橋ビフレストの脇で見張り役をつとめ、ラグナロクでは角笛を鳴らして神々を召集する。
(ブラギ)「長ヒゲの神」とも呼ばれるオーディンの息子。頭脳明晰、かつ雄弁な詩人の神。
(ホズ)オーディンの息子でバルドルの弟。盲目だったことからロキの奸計に利用され、はからずもバルドウを殺してしまう。
(フリッグ)フェンリサルという豪奢な宮殿に住むオーディンの妻で、バルドルの母。アース神族の女神を束ねる女王でもある。
(イズン)イドゥン、もしくはイズーナとも呼ばれる。詩人の神ブラギの妻で、神々が若さをたもつために必要な魔力をもつリンゴを管理している。
(ニョルズ)ヴァン神族の神で、フレイとフレイヤの父。アース神族とヴァン神族が戦争をした際、講和のときに人質としてアースガルズにやってきた。
(フレイ)ニョルズの息子でありフレイヤの兄。豊穣を司るヴァン神族の神で、神々の中で最も美しいといわれる。
(フレイヤ)2匹のネコが引く戦車に乗ったヴァン神族の女神。ニョルズの娘であり、フレイの妹。兄と同じく豊穣を司るほか、愛にも関係している。
(ロキ)オーディンと義兄弟になってアース神族に迎えられた巨人。美しい外見とは裏腹に性根が曲がっており、しばしば神々に難儀をもたらした。フェンリルやヨルムンガルドの父。
(スルト)ムスベルヘイムに住むムスベルたちの長で、炎の巨人といわれる。燃える剣を手に国境を守っており、ラグナロクではフレイを倒したのちに世界を焼き尽くしたという。
(ウィドフニル)ユグドラシルの頂上にとまり、世界を照らしているという輝く鳥。
<第1層:天上の平面>
(ヴァナヘイム)ヴァン神族の世界で、ニョルズやフレイ、フレイヤ兄妹の故郷。詳細は知られておらず、謎に包まれた地である。
(アースガルス)オーディンをはじめとするアース神族が住む世界。ビフレストを渡るか空を飛ぶ以外、侵入する方法はない。ミズガルズの中心にあるという説もある。
(アールヴヘイム)妖精たちの世界。神に似た姿をした美しい妖精が住んでいるといわれ、これが現在のエルフとして知られる存在のもとになっている。
<第2層:地上の平面>
(ビフレスト)アースガルズとミズガルズを繋ぐ虹の橋。アースガルズ側にはヘイムダルの館があり、橋を渡る者を見張っている。
(ミズガルズ)周囲が海で囲まれた人間の世界。同じ平面には巨人が住むヨトゥンヘイムがあり、神がつくった囲いで隔てられている。
(ヨトゥンヘイム)ミズガルズの北方、または東方にあるという巨人の世界。巨人ミーミルが管理する泉があり、飲むと知識を授かることができるという。
(ムスペルヘイム)最も古くからあったといわれる世界。炎に包まれた灼熱の世界で、炎の巨人スルトがいるという以外は不明な点が多い。
(スヴァルトアールヴヘイム)ドゥウェルグと呼ばれる小人たちが住む世界。彼らは優れた職人として知られており、さまざまな魔法の道具をつくりだした。
<第3層:地下の平面>
(ヘルヘイム)ロキの娘ヘルが統治する死者の世界。ニヴルヘイムと同一視されることもある。戦場以外で死んだ人間や亡くなった神々がここに来る。
(ニヴルヘイム)天地創造以前からあるといわれる氷の世界。世界樹の根をかじっているというニーズヘッグをはじめ、多くの蛇が住んでいるといおう。