『データで読み解く日本の真実』
識者が教える正しく世界を見る方法
エイ出版社編集部 2020/4/27
<政治>
・政治の世界ではポピュリズムの台頭が顕著になっていますが、日本は今後、国民にとって痛みを伴うような厳しい改革を推進していかねばならないという意見もあります。
『吉田徹が語る世界から見た日本の政治 吉田徹』
<国民の6割は政党や国会などを信頼していないという調査結果が ⁉>
(吉田) その中でも特筆すべき政治には「権力」が伴うことです。権力とは人が2人以上の人が集まり共同体を形成する上で、別の対象に有形無形の形で働きかけるときに発生する「力関係」「力のベクトル」のことを指し、それは人と人が集まる上で、さまざまな場所、共同体に偏在することになります。
<政治への信頼と格差問題は表裏一体の関係>
・日本は先進国の中でも政府や官僚、政党に対する不信が高いことが知られています。そうすると、例えば「税金は無駄なものに使われるかもしれない」という意識を生み出し、増税をしにくくなることで、今度は経済的支援が必要な人の所に届けられない、という問題も生まれてきます。
<悪くなり続ける景気と減らされる社会保障についての不安に集約される>
・具体的には、所得(=経済成長)がこれ以上増えないことを前提として、生活に必要なサービス(医療、介護、教育)については税で負担して、個人負担を少なくしていくことが必要となります。
・日本の社会的投資は、やはりOECDの中でも低い部類に入ります。日本の×GDPに対する税収もOECDの中でも低い部類に入りますが、これは逆に言うと、必要な公的サービスを個人が自助努力によって調達しないといけないということを意味します。
<長期安倍政権は外交において日本の国際社会での存在感を高めた>
<官僚制における専門性とこれに基づく自律性の創出>
・そのためにはリクルートメントの多様化や、流動性を高めることが必要だと考えます。
・長期的にみると、これまで当選回数に基づいた年功・皆勤型人事や派閥均衡型人事から、とりわけ小泉政権時代以降、徐々に専門知識・職業政治家型の内閣人事へと移行してきています(現内閣は、そこから後退)。「政治によって生きるのではなく、政治のために生きる」ような政治人材をいかに増やすのか、そのための企業・組織での休職制度や、供託金の引き下げなども勘案されるべきでしょう。
・しかし、長期政権となったことで、野党勢力の政権交代可能性が退化し、緊張感のある政治がなくなり、異なる選択肢が有権者に与えられなくなったことも大きな損失といえます。
<日本人は自分たちがどのような社会や国に生きたいのかという自己決定が低い>
・政党や政治勢力においては、名称は異なれども、派閥はどこの国のどの時代の政府にも存在してきました。ただ日本のように特定業界と結びついて、一政党内に強固な多元的な競争集団となった例は比較的珍しいといえます。
・確かに他国と比べても、日本人の政治認識・意識は余り高くないといえます。これは、高等教育までに政治・主権者教育の程度の低さや政治的論争を忌避する意識が高いからといえます。
・ただ、議会での法案修正が非常にしにくいため、実質的な審議がしにくい構造にあります。そのため、野党は法案の実質的審議によって法案修正することが難しく、結果的に与党の失点を追求するのが合理的となることに問題があります。
<日本人の投票率や若者の投票率が低いと言われているが、本当?>
・2019年の参院選で投票率は24年ぶりに50%を割り込みました。1990年代に大きく減ってからというもの、日本の投票率は低いまま推移しています。しかし、他国の投票率と比較した場合、日本の投票率は特段低いわけではありません。
<多い多いと言われている国会議員の数だが、世界的に見れば平均程度>
・もっとも、世界と比べてみた場合、日本の国会議員の数が多いわけでは決してありません。人口100万人あたりの数で比較してみると、日本の議員数はイギリスやフランス、イタリアなど他先進国よりもすでに少なくなっています。アメリカのように国会議員の数が日本の4分の1にすぎないような先進国の方が稀で、特にイギリスでは人口100万人あたり22.5人の国会議員がおり、日本の5.65人と比較して4倍近く多いことがわかります。
<日本国憲法は簡素であるがゆえに、解釈の余地があり、機能的>
・つまり、日本国憲法は理念的な内容が多く、個別的で具体的な規定を持たないため、解釈で運用する余地が非常に多くなっています。
・もっとも、解釈に応じて憲法を運用できるということは、憲法改正の必要性が余り多くないということになります。日本国憲法は古今東西、各国憲法の中でも、改正されていない期間が一番長いというのは、こうした背景も影響しています。
<日本の公務員の数が多いって本当 ⁉ 日本は実は小さくて弱い政府だった>
・もっとも、その公務員の数は、先進国で最も低い数にとどまっています。このわずか10%程度という公務員比率の低さから何が分かるかというと、日本はもう十分すぎるくらい「小さな政府」であるということです。
・また徴税能力を見たときにわかりますが、日本は先進国の中でも税基盤が非常に低いということです。そして、国民の税負担である租税負担率の割合も低いため、「小さくて弱い」政府であると言えます。
・これ以上税負担を軽くするという考えはあまり現実的な選択肢ではないというのが実際のところです。
<衆議院議員に占める女性の割合は世界193か国中110位>
・フランスやスウェーデンなどの国がジェンダーを考慮して、閣僚の半数を意図的に女性にするような状況をみれば、政治の場での女性の存在感の低さはさらに際だちます。
・イギリスでは労働党が「女性指定選挙区」を導入したり、フランスでは候補者数を男女均等しない場合に政党交付金を減額するなど、女性参画を制度的に保証している国もあります。
<日本人の政治への信頼度の低さはこんなにも数字に表れている!>
・日本人の政治への信頼度は低くあります。他の意識調査をみても、政党や国会、中央省庁を信頼できないとする有権者は7~8割にものぼっています。
<安心して生活するために、積極的な政治参加が不可欠>
・民意を反映しつつ、しかも腐敗の少ない、幸福度の高い政治。そんなより良い政治はCOVID-19で揺れる中、より強く求められることになるでしょう。
<経済>
『池戸万作に聞く 世界から見た日本の経済 池戸万作』
<財源は、本当はいくらでもあるんです。国はお金を刷ることができるから>
・(池戸) つまり、景気が良かったのは2013年度(アベノミクスの1年目)だけなんですね。翌年度には8兆円も落ちてしまっていますから。個人消費が伸びていないため、家計としては景気がよくなったという実感はなかったわけです。
<それはもう「大不況」と言えるレベルなのでしょうか?>
・そうなるともう「大恐慌」レベルではないでしょうか。世界は日本よりもコロナショックの影響が大きいですから、アメリカは、GDPが2~3割ほど落ちると予想しています。これは1930年代の世界大恐慌以来ですね。そのため世界各国は、かなり大きな規模の経済対策を取っていますが、日本の対策は不十分だと感じます。
・財源は、本当はいくらでもあるんですよ。ものすごく端的に言うと、国はお金を刷ることができますので、ただお金を発行すればいいわけです。その具体的な手段は、国債の発行になると思います。ただ、その新規国債の発行額が、今はどんどん減らされている状況なんです。
・つまり、政府の借金と国民の借金を一緒にしている時点でおかしいということなんです。実際は「政府が借金を増やすと国民の資産は増える」ということを理解しなくてはなりません。
<格差が広がったというよりも、国民一人ひとりの収入が下っただけ>
・いわゆる労働分配率は下がってきています。90年代後半には70%くらいまであったのが、現在では60%台前半まで落ちています。だからといって役員報酬もそこまで上がっていません。じゃあ、その分はどこへいってしまったかというと株主への配当金です。日本の場合ですと、株主への配当金が20年前と比べて約6倍になっています。
<やはり働いている人にお金が回っていなかったわけですね?>
・かなりの額が株主にいってしまって、問題ではないかと思います。しかも、バブル期に比べて、会社は基本的に黒字経営化していますので、経常赤字幅はどんどん減って、企業の貯蓄として「内部留保」に回っています。つまり、株主と企業の貯金に儲かったお金が流れていってしまっているわけですね。日本に限らず、世界的な傾向で労働者分配率は落ちてしまっています。
・私自身は格差が広がっているというよりも、全体的に所得が落ちているという見方をしています。
・こうやってみると労働者の年収は20年前から100~200万円ほど下っていることがわかります。
・20年前に比べて、日本社会全体で収入が落ちてしまっているのが現状なんですね。
・日本の場合、婚外子みたいなのは少ないですから、日本全体の収入の下落が少子化にすごくつながっていることがわかります。
・それは先ほど申し上げたように国がお金を刷って配ればいいだけなので、年金の心配はまったくないです。「お金を刷れるということ」を国が隠しているんですね。
<いわゆるベーシックインカムも不可能ではないと……。>
・一番のネックになるのはインフレ率です。それを鑑みても、月に5万円くらいはベーシックインカムとしてずっと配り続けることはできますよ。それでも高インフレにならないという試算結果も出ています。
<極端な言い方をすれば、「税金は罰金」消費税をなくした方が絶対に懸命!>
・この対策については、政府がどんどんお金を配るしかないと思います。つまり減税です。一番は消費税をなくすのがよいと思います。
<企業の内部留保を吐き出せという意見もあります>
・個人的には、企業に情状酌量の余地はあるだろうなと思っています。結局、内需がずっと縮小しているため、銀行からお金を借りて投資して儲かるという状況ではないですよね。儲からない以上、企業としてはリスクを冒す必要性はないので。そうすると、やはりお金を貯めておこうというのは必然だと思います。
<法人税や累進的な所得税を減税し消費税を増税するといった現在の税金の徴収のやり方>
<消費税とは消費する行為がいけないことだから罰金をとるようなもの>
・この政策は平成時代にはずっとやっていたんですが、個人的には「平成の大失策」のひとつだと考えています。内需を冷え込ませた一番の原因は消費税の増税ですので、消費税を増やして法人税や所得税を減税しても、結局、景気を冷やしてしまうんです。
・法人税を下げたのは、むしろ株主配当を増やすためでしょう。
・企業が儲からなければ、そこで働く従業員の給与も下がってしまうという意味ではそうですね。まさにデフレスパイラルです。給与が下がれば物も買えなくなってしまいすし。これを解決できるのは政府しかないんですよ。不景気なら、政府が「支出する」「減税する」「お金を配る」という当たり前のことをしてくれればいいんです。これは中学生でもわかることです(笑)。
<ここ20年間ほど席巻している新自由主義(自己責任を基本に、国家による福祉・公共サービスの縮小と市場原理主義の重きを置く経済思想)というものには何か問題点がある>
・新自由主義の最たる特徴は「小さな政府」を目指すことによる緊縮財政ですね。簡単に言うと「政府がお金を使わない」ということです。
・しかし、日本はこともあろうかデフレでやってしまった。これは低血圧の人に高血圧を抑制する薬である降圧剤を投与してしまったようなものです。
・しかし、経済政策の世界においては、中学生でもわかる経済政策ミスを犯した経済学者でも、一向に責任を取ることなく、未だに政府の諮問会議に参加しています。ヤブ医者ならぬ、ヤブ経済学者が政府に居座るうちは、デフレという病を完治することは出来ずに、さらに病気は悪化する一方でしょうね。
・そして、注目すべきは、消費税の累計徴収額である317.1兆円と法人税の累計徴収額の減少額である284.6兆円がほぼ同額であるという事実です。これはつまり、消費税の増税分で法人税の減少分をまかなったということになります。
・つまり消費税の9割程度は法人税の穴埋めに使われているわけですね。
<家計の支出は景気の影響と増税の影響を大きく受ける傾向がある>
<消費税の累計税収額と所得税の累計減少額もほぼ同じ>
・1991年から2016年までの消費税の累計税収と、所得税の累計税収の減少額もほぼ同じであることは興味深い事実です(こちらでは、地方の消費税と所得税のデータは除く)。
<新規の公債発行額は、この6年間で13.1兆円も減っていた>
・6年の間で年間13.1兆円も、国民にお金をばら撒かなくなったのであれば、それは不景気になるのも当然ではないでしょうか。
<先進国は2%以上のインフレ率を維持するなか、日本はかなり低迷>
・消費税を増税してデフレになってしまったという話はよく聞くかと思いますが、ならば消費税を減税、廃止にすればインフレ率が上がるのではないかというのが私の見解です。
<経済成長が著しい中国は政府支出を増やしてもインフレになっていない>
・それでは、なぜ他の国のインフレ率が日本と比べて高いのかというと、政府支出を増やしているからだとも言えます。
<情報>
・今となってはインターネット社会が当たり前の時代になっています。そのような環境の中でもっとも変わった行動様式の1つが情報の取得方法ではないでしょうか。(西村純)
<近年でも40代ではラジオが強く、60代では新聞が強い>
<インターネットの利用で加速する情報取得の個人差>
<ソーシャルメディア系のサービスに書き込む人はどれくらい?>
・ソーシャルメディア系のサービスは、情報の取得という側面だけではなく、情報が発信できるということも大きな特徴です。
現代社会において、情報の発信者になることは、とても気軽にできるようになっていて、情報を発信することで、さらに同じ領域の情報が集まりやすくなるということも起きています。
<より個人の趣向に沿うようになったIT事情>
・最近のインターネットにおける情報取得の大きな変化として、情報のパーソナライズ化があげられます。ニュースサイトでは、過去の行動履歴から興味のありそうなニュースが優先的に表示されるようになり、Eコマースサイトでは、過去に閲覧したり購入したものをもとに、その人が必要そうなアイテムをリコメンドするのは当たり前の光景になっています。
・こうした流れの行き着く先にどんな未来が待っているのか、ワクワクせずには要られませんね。
<社会>
<戦後日本における格差のメガトレンド>
・「格差社会」が流行語になったのは、2005年以降のことですが、実はその25年も前から格差拡大は始まっていたという事実は見逃せません。これによって日本社会は、大きく変質してしまったといえるでしょう。
<格差と貧困の国際比較>
・注目すべきは、ジニ係数が日本より大きいイギリスとニュージーランドの貧困率が日本よりずっと低いことです。これは日本ではヨーロッパ諸国と異なり、所得の低い人々の生活を支えるための社会保障があまり機能していないことを示すものであるといえます。
<資産税の導入を検討する余地もあり>
・所得の格差の拡大とともに、金融資産の格差も大きくなっています。ただし資産に関する包括的な統計はないため、その実態はつかみにくいものといえます。
<現代日本の階級構造と階級格差>
・アンダークラスは、40年間にもわたる格差の拡大によって日本の社会に生み出した新しい下層階級であり、格差社会の問題点を象徴する存在であるといえるのではないでしょうか。
<安倍政権を支える「新自由主義右翼」とは、いったいどんな人たちなのか>
・「新自由主義右翼」は全体の10.2%を占めるに過ぎない少数派ですが、その政治への影響力は非常に大きいものです。
・自民党の盤石の基盤であり、安倍政権の最大の応援団だといえるでしょう。
<防衛>
・日本を取り巻く安全保障の環境は、さまざまな課題が顕在化してきており、一層厳しさを増しています。こうした安全保障上の課題は、多様かつ広範であり、一国のみでは対応が困難なため、その対応に利益を共有する各国と地域・国際社会の安定のために協調しながら、積極的に対応する必要があります。 (桜林美佐)
<日本の自衛隊に対する印象はかなり良い数値を示している>
・内閣府が3年ごとに実施している世論調査で、平成27年1月のものでは国民の92.2%が自衛隊に好感を持っていることがわかります。
・また時事通信が行った2019年8月の世論調査では、「反対」が41.3%で、「賛成」の32.1%を上回る結果となり、「わからない」は26.7%でした。
<高いと言われる日本の軍事費だが実はあまり増えてはいない>
・2017年の世界の軍事費は、1位が米国、2位が中国、サウジアラビアと
ロシアが3位と4位を争う構図。インド、フランス、イギリスが続き、日本は約5兆円で8位という結果になっています。では、その5兆円が多いか少ないかということは、対GDP比で見るのが正確です。日本は、軍事費のGDPに占める割合は0.9%と世界で見ると100位以下といわれています。
・現在NATO諸国が、2024年までには各国の防衛費を対GDPで2%以上にするという目標を決めたこともあり、日本にも選択が迫られています。
・女性自衛官を増やす試みが始まりました。
現在、約1万6000人が従事し、全体の約7%となっていますが、2027年までに、全体の約9%を目標にして、採用を増やしています。
・ちなみにアメリカにおける女性兵士の割合は15%程度で、他の主要先進国では10%~15%程度となっています。
<有事の際に闘う意識が極端に低いのは、自衛隊任せの日本人の気質>
・約22万の実員しかいない自衛隊だけで、国防を完全に網羅することは困難であり、防衛力には国民の意識が欠かせません。しかし、有事の際に「自国のために戦う意思」を問うた調査では、世界全体では「戦う」が60.2%に対し日本人は10.6%と大変低い数字になっています。
・相対的に見れば、これはショッキングな調査結果であり、自分は何もせず、あとは自衛隊に任せてしまおうという日本人の国民意識の現れとも取れますが、ヨーロッパの国々は、その歴史からしっかりと「戦うこと」「有事のこと」がイメージできているといえます。だからこそ、軍の存在が「必要であるのか」「必要じゃない」を考えることができるのでしょう。
日本の場合でいえば、想像ができないから自衛隊に対しては好感を持っているけれど、なぜ必要なのか真の理解が得られていない。
<今後は採用年齢を引き上げることで自衛隊の人員を確保する予定>
・人口減と少子高齢化は、自衛隊においても喫緊の課題となっています。若年人口減少の影響は避け難く、自衛隊の入隊資格を持つ18~26才の国民数は平成6年約1700万人をピークに、平成29年にはついに1000万人を割り込みました。
・しかし、そもそも自衛隊は常に定員を満たしていないという問題を抱えています。自衛官の定員は24万7154人ですが、現員は22万6789人です。
<教育>
・教育は、誰しもが経験することであるため、客観視することが非常に難しいものであることは事実です。だからこそ、自身がうけた教育を客観視できるデータを見ることは、自身に新しい視点を与えてくれるはずです。
(相澤真一)
<高学歴化する先進国のなかで、低学歴社会になってきた日本>
・現在、日本の4年生大学進学率は概ね50%ですが、世界的に高学歴化が進んでおり、OECD平均の58%と比較しても高い数字とは言えなくなっています。
・日本では修士課程進学率は8%にとどまっていますが、OECD全体では24%です。働くことと大学に戻ることを往復して個々のスキルを高めることが先進諸国では当たり雨になってきています。
<親に頼らざるを得ない日本の教育費の現状>
・つまり、日韓米英では、公的に大学へ支出される額が少なく、逆に家計支出に頼る構造になっています。とりわけ、18歳で大学に通わなければならないという社会的圧力が強く、給付型奨学金の数が少ない日本では、学費を親に頼らざるを得ない構造になっています。
<日本国内ではとても大きな大学への進学率格差がある>
・学費を親に頼らざるを得ない日本では、地元に進学したい大学があるかが進学率に大きく影響しています。短大・大学への進学率を比較してみると、都道府県によって大きく異なっていることがわかります。
<国際的に見て、大きく立ち遅れている日本のICT教育>
・読解力の問題で、OECD平均と比べて日本の生徒の正答率が低かったのは、「必要な情報がどのWebサイトに記載されているか推測し探し出す」という「情報を探し出す」こと。
・この点に関連して、注視されているのが日本のICT教育への立ち遅れです。
<相対的な低学歴化・高齢化・情報化で世界から遅れていく危険性>
・「18歳で大学に進学する以外に成人が教育を受ける機会に乏しい日本のシステム」「進んでいく高齢化」「遅れている情報化の対処」の3点から見て、現状の教育システムは、伝統的な学校教育を達成する機関としては優れているものの、決して将来は楽観視できないと言えるでしょう。
<医療>
<森田洋之に聞く 世界から見た日本の医療 (森田洋之)>
<医学的な正解とは別に患者さんの「人生にとっての正解」がある>
・先生によってまちまちというのは、実は正確な表現ではないのですよ。医師という立場から「医学的な正解」を言うのであれば、実は答えはひとつなんです。例えば、ガンであれば、早いうちに見つかれば切除し、より進行していたら抗ガン剤や放射線治療をする。それも厳しくなってきたら緩和ケアを行う。こうしたガイドラインはガンについては決まっていて、あくまで「病気を治すことが医療の目的」になると思います。
・これまで医療というのは「治す」方向にしかベクトルがなかったんですね。その理由は平均寿命が非常に短かったからです。戦後くらいまでは日本人の平均寿命は50~60才くらいでした。ですから、その時代は治すのが当たり前だったんですね。だって、皆さん、若いわけですから。でも、高齢化社会を迎えるこれからは「患者さんの人生の質を高めて」最期を迎えてもらうという医療が必要になってくると思いますね。
<医師の数が少ないのではなく、医療の供給量が多すぎるのが問題!>
・だいたい医師は万遍なくいる環境にあると思います。ただ地方の方が医師の数が少ないのは事実ですね。人口あたりの医師数で言えば、東京などの都心部の方が多いです。でも、実は医師が一番少ないのが埼玉県なんです。
<医師数は世界各国と比較すると少ない方>
・世界各国と比較すると、日本の医師数は少ない方ですね。平均より少し下くらいです。その中で偏在してしまっているから(つまり都市部に多く、地方に少ない状態)、問題になってしまうんですね。そしてもっと問題なのは、医療の供給量(=需要量)がものすごい多いことなんです。例えば、病床数は約130万と世界一です。そして外来受診数も世界第2位なんです。医療は大きく分けると、「入院」と「外来」に分けることができますが、それが世界第1位と世界第2位なわけです。なのに医師数は少し少ないんです。となると、医師不足になるのは当たり前です。つまり少ない医師で大量の患者を回していることになります。
・でも、ヨーロッパの病院は、ほとんどが公営なんですよ。それは町のクリニックも含めてです。ですので、町のクリニックが交番のように各所に適正に配置されているわけです。そして、医療で儲けようという医師はまずいませんし、医療費がかからない方が病院が儲かる仕組みができあがっているため、外来や入院が少ない方が嬉しいというインセンティブが働いています。
・医師不足の原因は日本の医療が市場経済に乗ってしまっているからなんです。ヨーロッパでは病院を市場経済に乗せていません。日本だって警察と消防は乗せていないですよね。それとおなじように病院も公的存在だと思っていれば、今の日本のような状態にはならないのです。だから需要と供給がドンドン増えているわけですね。
<日本の医療制度のいいところ>
・やはり国民皆保険を確立しているところですよね。これは本当に素晴らしい制度だと思います。ただ、ヨーロッパ諸国と比べてしまうと、向こうはすべて税金で行なっているので無料なわけですが。しかし、アメリカと比べると、向こうにはそうした制度がないからいいということになりますね。
<日本の高齢化率は現在1位 世界のトップを走る日本の今後は?>
・2020年度の日本は高齢化率28.9%と世界のトップをひた走っています。しかもその高齢化率は年々上がると予想されており、2050年には38%台になると思われています。
・そしてこれからのトレンドは、100年かけて急速に減少していき、江戸時代と同じ人口である3000万人程度に落ち着くのではないかというのが、国土交通省の見通しとなっています。
<財政が厳しいなか、日本人は医療にいくら使っているのでしょうか?>
・平成26年度の国民医療費は40兆8071億円となっています。これは前年度の40兆610億円に比べて7461億円増加しています。
・医療費のGDPに対する比率は8.33%(前年度8.3%)、国民所得に対する比率は11.20%(前年度11.16%)となっています。 それに対して日本に入ってくる税収はおよそ50兆円ほどです。つまり、それと同じくらいの金額を医療に使っていることになります。
・日本のCT保有数は100万人あたり97.3台であり、G7平均の25.2台、OECD関連国の25.4台と比べても、断トツのトップであることがわかります。
また、日本の人口100万人あたりのMRI保有数は41.3台であり、G7の平均25.8台、OECD関連国の平均15.2台とCT同様、こちらも大きく上回っています。
・アメリカでもイギリスでも、このような高度な医療機器は専門病院や総合病院に行かないと検査してもらうことはできません。ただ、数があればいいとはいえず、日本は世界から見ても異質な状態といえます。
<日本は病床数、入院期間も世界1位をひた走る>
・日本における平均の入院日数は17.5日となっており、以前より短くなってきていますが、それでも入院すると、退院するまでに約半月ほどかかっているのが現状です。
・また人口100万人あたりの病床数においても他国と比較してもダントツの1位で、OECD各国平均の約3倍の病床を持っていることになります。上記の入院数を鑑みると、一度入院したら世界一長く入院させられてしまう国が、日本の真実であるといえます。
<日本の都道府県別の医療格差はどれくらい>
・日本では都道府県別の医療費が、その都道府県にある病床数ときれいに比例していることが読み取れます。つまり、病床数の多い都道府県ほど、一人あたりの入院費が高いということです。
・例えば、医療費が最も高い高知県は医療費の最も安い神奈川県の3倍の病床数があるために、このような事態を招いてしまっています。
<ジェンダー>
・ジェンダーとは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指します。世の中の男性と女性の役割の違いによって生まれる性別のことです。(川口遼)
<グローバルジェンダーギャップ指数に見る日本におけるジェンダー問題>
・「日本社会の男女格差の大きさは、153カ国中121位」。2019年末にそのような報道を目にした方も多いでしょう。
・最新の2019年調査では、前年の110位から順位を下げて153カ国中121位という低い結果となりました。これは2006年以来、最低の順位となります。それぞれの領域で見ると、経済は115位、教育は91位、健康は40位、政治は144位。ちなみに1位に輝いたのはアイスランドで、日本は世界平均やG7の平均よりもかなり悪い結果が出ているのがわかります。
・また、調査国中の日本の順位は悪化しています。これは調査団数が増えたことも影響していますが、それ以上に日本以外の国が男女格差改善のための取り組みを、積極的に行っているためです。
<政治領域におけるジェンダー問題>
・まず政治領域は下院議員(日本では衆議院)の男女比、元首の在任年数の男女比からスコアが算出されています。日本は前回調査からスコアを下げ、153カ国中144位、ワースト10位となってしまいました。
・市民の半分は女性であるにもかかわらず、国会では男性が8~9割を占めるというのは異常な状況です。日本でも強制力のあるクォータ制の導入が求められています。
<経済領域におけるジェンダー問題>
・次に経済領域は、労働参加率の男女比、同一労働同一賃金の度合い、平均勤労所得の男女比、役員・管理職の男女比、専門・技術職の男女比からスコアが算出されています。2019年調査のスコアは0.598で115位でした。5つの指標の中で最もスコアが低かったのは、役員・管理職の男女比です。
・例えば、大学入試における女性差別が問題となった医師の世界を見ると、女性医師比率はOECD平均48.1%に対し、日本は21.0%で最下位です。
・女性を管理職に登用することの重要性がここからもわかります。
<教育領域におけるジェンダー問題>
・教育領域は、識字率の男女比、初等教育の就学率の男女比、中等教育の就学率の男女比、高等教育の就学率の男女比から算出されています。
・積極的な取り組みを通じて、状況を改善していく諸外国に比べ、日本の取り組みは「too little, too late」(小さすぎるし、遅すぎる)と言わざるを得ません。クォータ制をはじめとする積極的な介入が求められています。
<世界で広がりを見せつつある同性婚や同性パートナーシップ>
・同性婚や同性パートナーシップなど、同性カップルの権利を保障する制度を持つ国や地域は、世界中で約20%に拡大しています。最も早かったのは、デンマークにおいて法制化された同性パートナーシップで1989年。それに続きオランダでは、2001年に同性婚を世界で初めて正式に認め、法律として施行しました。次にベルギー、スぺイン、カナダなどの先進国が続いています。
・2015年には国会で超党派によるLGBT議員連盟の活動が始まったのも、大きなうねりとなっています。日本でも早く同性婚の法制化を期待したいところです。
<宗教>
・現代日本の宗教状況について考えるとき、欠かせないことが少なくとも2点あります。1点は世界的な視点から見たときの日本の宗教状況の特徴です。もう1点は日本人の自覚的信仰とともに無自覚的信仰が重要な意味をもっている点です。この章では、日本人は世界と比較して、決して無宗教者が多いわけではなく、非常に特徴的な宗教環境の中に生活しているのだということを知ってもらうきっかけになればと思います。(井上順孝)
<世界の宗教人口>
・キリスト教徒31.2%、イスラム教徒24.1%、宗教なし16%、ヒンドゥー教徒15.1%、仏教徒6.9%、民俗信仰5.7%、その他0.8%、ユダヤ教徒0.2%。
・ヒンドゥー教徒が約15%に達するのは、人口13億人余のインドで約8割がヒンドゥー教徒だからです。
・日本ではキリスト教徒、イスラム教徒は少数派で、とりわけ日本人のイスラム教徒となると1万人余に過ぎません。他方で、大乗仏教に属する仏教の他に神道という日本独自の宗教があって、多くの日本人は、この両方に関わるというのが特徴です。
<過去20年における宗教の重要性の変化>
・日本はより重要になったと回答した割合が28%なので、全体として宗教の重要性を感じない方向に変化しています。
<学生が信仰をもつ割合>
・「現在、信仰をもっている」と回答した学生の割合は6%前後で推移し、かつ微増です。
<学生が初詣と墓参りをする割合>
・調査は毎回4月~6月に実施されたので、その年の初詣、及び前年の墓参りをしたかどうかを質問してあります。いずれも5割前後が行ったと回答しており、20年間にそれほど大きな変化はありません。
<神社や寺院における厄祓い>
・この調査では過半数が厄祓いをやったことがあり、回答者は信仰をもたない人が大半でしたが、厄祓いをしている人が過半数という結果になりました。