『日本をどのような国にするのか』
地球と世界の大問題
<日本の現在の立ち位置>
・食料の自給率について。これについては、ごく直近の2017年までの数字が出ています。これによると、カナダが264%、オーストラリアが223%、アメリカが130%、フランスが127%、ドイツが95%、イギリスが63%、イタリアが60%、スイスが50%で日本は39%。この数字は先進国で最低です。
・続いて、日本のエネルギーの自給率は8%(2016年)。92%を海外から化石燃料や資源を買うことによって賄っています。
・日本の国際競争力は137カ国中、9位で、2014年の6位から落ちています。男女格差については、2013年の世界105位から114位と過去最低。
・こういう数字を見ると、日本のメディアはともすると「ニッポン、スゴイ」と叫びがちですが、日本の立ち位置はわれわれ日本国民が思っているよりもずっと低くなっているのではないかという気がしてなりません。日本の力の順位が上がったものがあるかというと、見つけるのが難しい。
・異変が起きているのは世界だけではありません。この地球にも起きています。地球温暖化の影響なのか、2018年は「殺人的な暑さ」が連日続き、想定外の豪雨や台風が甚大な被害をもたらしました。こうした異常気象は人間のみならず、空と海の生態系にも影響を及ぼすでしょう。加えてグローバル化と開発による環境破壊が引き起こす病原体の拡散とその加速は、地球上の生命の脅威となっています。2018年は、さらに北海道でも巨大地震が起こりました。近い将来、南海トラフ地震が発生すると予測されています。
<ココムの再来>
・米中貿易摩擦はさらには一段と厳しい貿易戦争、新冷戦と呼ばれる段階にまでエスカレートしています。
・中国がアメリカを追い越すことは許さない、「中国製造2025」を“つぶせ”というトランプ大統領の考え方がよく現われています。
ここで思い起こされるのはココム(COCOM、対共産圏輸出統制委員会)です。米中貿易戦争の行きつく先はココムの再来となるのではないか。
・いずれにしても、アメリカは短期的には中国封じ込めに成功しても、長期的に見た場合、今回の措置でどこまで中国の台頭を抑え込めるか疑問です。
<インフレによる世界恐慌の恐怖>
・日本もアメリカとの間で過去に何度も貿易摩擦、通商交渉がありました。
・金融分野を見れば、中国はアメリカに現状では絶対に勝てません。中国はコテンパンにやられるでしょう。いま世界で人民元を欲しいという人はほとんどいません。世界中がドルを欲しがりドルの価値はどんどん上昇しています。これまでのアメリカはドルが強くなりすぎるのは問題があると考えていましたが、トランプ大統領は構わないという考えのようです。ドルがどんどん強くなると、世界的な通貨安が起きてインフレとなり、世界規模の金融恐慌になる可能性があります。
かつて経済問題で一番怖いのはインフレでした。しばらく世界が怖さを忘れていたインフレが再びやってくるかもしれません。
<中国の現状>
・王岐山は、最近わかったところでは150万人もの金と汚職にまみれた悪質な共産党員を粛清したといわれています。
<共産党優位の政治はいつまで続くか>
・次に、日本の池田勇人元首相が唱えたような、2010~20年の間に所得を倍増すると国民に約束しました。そしてその公約は達成確実な状況です。「パンはペンよりも強し」で、多くの国民が多少の不満はあっても、習近平万歳と言っているのにはこうした部分も大きい。
・大国たる中国は将来――たぶん各隣接省の貧富の格差が縮小する時代になれば、5~6の地域連合、各地域代議員数500~600名くらいに分権化し、集権と分権のバランスを保つ連合国家へと脱皮していかざるを得ないのではないかと、私は考えています。
<中国がアメリカに追いつけない理由>
・いったい、国民の幸せとは何でしょうか。私が考えるのは、国民の「心の自由」ということです。
・いくら政治が安定し、「パンはペンよりも強し」で、国民が食べられるようになったとしても、いつまでも恐怖政治が続くような国では世界の信頼は得られません。現在の中国がどうしてもアメリカに追いつけないもの、それは世界の信頼です。いくら人民元を世界の基軸通貨にしたいと思っても、いつ何時、それまで信じて従っていたこと・ものがひっくり返されるかもしれないような国では世界の信頼は得られません。
<官僚組織・企業経営者の問題点>
<官僚が絶対にやらないこと>
・官僚が絶対にやらないことが二つある。一つは法律違反。もう一つは前例を覆すこと。
官僚はこの二つは、自分の意思では絶対にやりません。私が中国大使になった時、官僚の先輩から、「法律違反と前例。この二つは、ものすごい壁があるんだ」と言われました。
<定義の曖昧さと日本社会>
・私の経験からいうと、経済界も同じです。「これは経産省の指示に基づいて適正に処理をしております」と言えば、実はきちんと処理していないんだけれど前例に従ってやっていますから問題ありません、という主張になるわけです。
<かえって膨れ上がる役員報酬>
・10人の役員の中で、たたき上げは一人だけで、あとは全員社外役員というような会社をアメリカから来た人が「これは素晴らしい会社だ」と、やたらと持ち上げる。逆に、社外役員が2名しかいない会社は海外からの評価が下がる、株価に影響する、という理由で、社外役員を増やすわけです。そうすると、今度は待ってましたとばかりに、海外のアナリストたちがランクを上げる。それをまた新聞が「半数が、社外役員」「ガバナンスが非常にしっかりしてきた」などと書き立てます。困ったものです。
<ゴーン氏逮捕に思う>
・事件の真相がまだよくわからない現時点で、軽々しくコメントすることは控えたいと思いますが、メディアはこの事件を一過性のスキャンダルと興味本位に取り上げるのではなく、日本と欧米との企業経営のあり方の違い、仕事に対する考え方、文化の違いといったところまで掘り下げたうえで、これからの日本の経営のあるべき姿を議論するきっかけにしてもらいたいと思います。
たとえば、①日本の経営は一人の経営者の力だけではなく、多くの社員の力の結集であることを根幹におく。②経営者はステークホルダーより一定期間、経営の委託を受けたものだということを自覚する。③会社の業績と経営者の報酬については、社員の仕事と経営者の仕事、それぞれの価値、貢献度は相対的なものであることを踏まえて報酬のルールを明確にする。④1時間当たりの経営者の報酬と社員の平均報酬(諸手当も含めた)を可能な限り公表する、といったことが考えられるでしょう。
・もう一つ、ゴーン氏の場合、20年近く、経営トップの座にいました。事件の真相はともかく、一般論としていえば、長くやればやるほど、権力は腐ります。公私混同しがちになるということも、もちろんありますが、その企業にとって最大の問題は後継者がいなくなってしまうということでしょう。
<地球と世界の大問題を考える――専門家との対話>
<地震予知・対策はどこまで可能か――対談・林春男 著書に『いのちを守る地震防災学』(岩波書店)>
・日本の国土は世界の0.28%ぐらいしかありませんが、地震エネルギーの放出量ということでいうと、10~20%を占めます。地震大国と言われているゆえんです。
<予知と長期予測>
・(林) 長期予測と言います。予知というのは、2~3日以内に地震が起こることをいうのだと、日本地震学会で決めています。その意味で地震は、予知できない。科学的には無理です。しかしながら、日本は地震国なので、今までの経験もありますし、科学的知見もあって、同じぐらいの規模のものが、同じ場所で周期的に起こるという規則性がある、ということを踏まえて、長期予測は成り立っています。
地震調査研究推進本部では、いろいろな情報を集めて、全国を対象に今後30年の長期予測を2年ごとに更新しています。これは、あえてお見せするのが、2010年1月に更新された時の長期予測です。
この中で30年以内に地震が起こる確率が一番高かった部分は、セグメントと呼びますが、宮城県の沖合です。90~99%で、これは確実に起こる。それを宮城県沖地震といって、マグニチュード8程度の地震を想定していました。宮城県沖が危ないねと言っていたら、翌年に起きた東日本大震災でが、その北の隣のセグメントも動きましたし、南の隣のセグメントも動いてしまった。結果として、マグニチュード9というものすごく大きな地震になりました。
・(林)そして、その支点になる高知市あたりの地盤は逆に沈下する。そのため、高知市の津波被害はすごく大きいと考えられているんです。
・(林)お話ししたように、ここは100年にいっぺんの周期だから、1割ぐらいの誤差があるとしたら10年です。2035プラスマイナス10のところにターゲットをセットしておけばということで、こうした背景で数字が生まれています。
(丹羽)トレランスがあるから、2025年から45年ということですね。
・(林)過去最大規模の地震による被害推定でいくと、2万4000人の犠牲者、81兆円の被害。それが今の最悪の場合の推定になると、犠牲者は32万人で、被害額は220兆円ということになります。
(丹羽)220兆円の被害となると国が潰れてしまうんではないですか?
(林)国家予算が、今、100兆ぐらいですから、厳しいです。
こういうことが2035年ぐらいに起こるだろうと考えられている。それくらいのことは申し上げられます。
私が属する防災科学技術研究所では、全国2100カ所に設けた地震・津波・火山の観測点のネットワークを陸海統合で運用しています。
(林) 海側で起きる地震を海溝型地震と言い、内陸で起きる地震を活断層タイプと言います。阪神淡路、熊本地震は活断層タイプですが、活断層タイプの地震の予測はなかなか難しい。海溝型地震に比べて繰り返しの周期が長く、規則性が見えにくいのです。
・関東平野には4つほど、いわゆる地震の巣(比較的微小地震がたくさん起こる場所)があると言われています。その中で、震源が浅いほうが、当然強い力が伝わります。そこに市街地があると被害が大きくなる。そうやって考えると、東京都の南部の直下のところが一番大きな被害が予想されるということで、都心南部を震源とした被害想定をしています。
・(林) 南海トラフ地震については、起きること自体は確実です。なにせ、684年の白鳳地震以来の記録があり、毎世紀起こってきていますから。活断層タイプの首都直下地震とは、まったく違うわけです。
・(林) 南海トラフ地震が起こる前の50年間は、西日本を中心にたくさん内陸地震が起こるといわれています。昭和の南海地震の時(1946年)は陣痛の始まりが、1891年の濃尾地震とされています。それから、1909年に琵琶湖の北のほうで姉川地震が起こり、但馬、北丹後、鳥取と続けて起こっています。その間、広島でも芸予地震が起こって、本番の南海地震が44年、46年に来た。その間に三河地震(1945年)が入って、最後は福井地震(1948年)で終わった。
(丹羽) 福井地震の時、私は小学生でしたが、けっこう大きかったですよ。立っていられなくて、地面にすがりつくと言ってもいいぐらいだったのを憶えています。
<どう対策するか>
・(林)今、与党も野党も含めて、勉強会でいろいろ議論していますが、国会議員の先生方にとっては、防災は票にならないので総じて関心が低いですね。だから、防災族議員というのはいないんですよ。
<時代によって変わる危機管理のイメージ>
・(丹羽) 危機管理センターは何のためにつくったんですか。
(林)おそらく戦争をイメージしていると理解しています。
(丹羽) 戦争用。
(林) はい。かなり地下深くにあり、つくったのは、防衛省系、警察系の人たちなので、情報が洩れることを心配して、インタ―ネットだとか、そういうものは極力排したものになっています。
<西日本豪雨の教訓>
・(林)2018年7月に起きた災害である西日本豪雨ですけれども、私の個人的な評価でいえば、一番落第点を付けられるべきは国だと思っています。
今回の西日本豪雨の特徴は、史上かつてない降雨量です。全部で11日間降り続きまして、最大で1800ミリメートル降ったのです。
(丹羽)日本の平均降雨量1年分ですね?
(林) 1年分以上です。記録された場所は高知県の馬路村という。
・ここで大事なのは、11府県同時被災ということは、11人の知事が一斉に助けてくれと、国に頼ってくる状況になるわけです。国の状況把握能力、調整能力が問われる事態です。
<防災対策にサイエンスを>
・(林)もっと言えば、日本ほどサイエンスの本質が理解されていない国は少ないです。
<日本の国是を考える>
<なぜ、日本の国是を問題にするか>
・最近、私はあちこちに出向いておりますけれども、このところ大変気になることがあります。一つは、いまの若者の現在の政権、政策に対する支持率の高さです。そして、それとは逆に、高齢者になるほど支持率が非常に低い。これはどうも逆じゃないかと思うわけです。
・株価が上がった、よくなった、と言われる日本経済ですが、足元を見ると必ずしも楽観できない。状況は危ういと言わざるを得ません。日銀やGPIFが巨額の株式の買い入れを進めた結果、いまや公的マネー、つまり政府が20%強の大企業の大株主、筆頭株主に近い存在になってしまっていると言います。またETFの80%は日銀の買い残高と言われています。前代未聞、本当でしょうか。
国債もそうです。日銀が大量に買い入れてしまったために、マーケットが小さくなってしまった。買う人がいない。買う人がいないということは、いったいどうなるのでしょう。
政府・日銀がやっていることは、全部、「出口なき戦略」といえます。
・「じゃあ、誰がそのリーダーになればいいんだ、誰もいないじゃないですか」というのが若い人たちから返ってくる答えですが、それについては、そのとおりかもしれません。
・そうすると、国民にとって国是と思われるものは何でしょうか。これはやはり、国民生活の安定でしょう。社会的にも、あるいは政治的にも、国民の生活が今日よりも明日は豊かになる。今日よりも明日のほうが平和で安心できる。こういう社会・国を目指すということだと思います。そして、日本としてはそれ以外に生きる道はないのだということです。
・そういう状況をつくり出していかない限り、いくら美辞麗句を連ねても、実行されそうになければ逆効果というものです。
<自然現象をめぐる問題と経済>
・まず、日本の未来を考える場合に最も大事なことは、「不都合な事実」ともいわれますが、自然現象をめぐる問題です。自然現象を変えることはできないし、非常に難しい。
・北から南まで、日本は地震大国です。大地震が起きれば、株価も不動産価格も、最悪の場合は国を滅ぼすほど(国家予算の2年分以上)のダメージを受けます。あるいは地球の温暖化も着々と進んでいます。
<氷河期の到来(?)温暖化>
・地球温暖化問題に関して、私にはかねてから気になっていたことがありました。私の記憶では1970年代頃は、むしろこれからの地球は寒冷化に向かう、ということが盛んに言われていたからです。
・この点について、私の取材に応じてくださった江守正多・国立環境研究所地球環境研究センター副センタ―長によれば、現在の科学では、次の氷河(氷河期)はあと数万年来ないことがわかっているようです。
<自然環境と安全保障>
・安全保障というと、すぐに軍備のことを連想しがちですが、ここで言っているのは国民生活を含めた安全保障です。国民の生活、将来への安定を保障する政策です。
・インフラの整備も含めて、相当予算を確保してやらなければいけません。たとえば水道やガス、下水道などのライフライン、いまから40~50年前に、いろいろな町とか市、県のインフラが圧倒的な勢いで日本中で整備されました。それが、いま更新の時期に入っています。何十兆円というお金が要ります。借金を抱えた日本はいま、軍備を大幅に増強していますが、国民の生活の安全、将来の安全のためのインフラの整備は、武力増強以上にこれから計画的に、真剣にやらないとけないことは、これまでの記述でおわかりいただけるだろうと思います。
<世界の人口増加がもたらすインパクト>
・今後ますます地球温暖化が進むとした場合、考えなければいけないのは食料や水をめぐる問題です。
・日本は人口が減少していますが、世界の人口はさらに増えて現在は76億人。どこまでいくのでしょうか。
国連等の科学者の調査によると100億~100億人ではないかと言われています。
・また、アジアの人口はまだまだどんどん増えますから、その時には国と国とで食料の奪い合いが起きないとは言えません。こういうリスクがあるのだということを頭に入れておく必要があります。
<水をめぐる問題>
・みなさんに覚えておいて欲しいのは、1キロの牛肉を作るのに、2万700倍の水が要るということです。従って日本は、形は牛肉でも実質、水を輸入していることになります。これを、ヴァーチャルウォーターと呼んでいます。豚肉は、6000倍ぐらいの水が要ります。小麦を作るのには2000倍くらいの水が要ります。輸入食料を水で計測すると1年で琵琶湖の2.5倍の水を消費していることになります。
・世界の農地は、ここ30年間で6~7%ぐらいしか増えておりません。なぜか。一つには、やはり雨量や地下水といった水の問題があります。
<平和と自由貿易>
・こうした世界情勢の下で日本の国是をどのように考えたらいいか。日本がどうしてもやらなければいけないことは、平和と自由貿易です。
・そのためにも戦争は絶対にしてはいけない、世界の平和を日本は率先して守らなければいけない、それが日本の宿命であり、最大の国是ということになります。
<田中角栄の言葉>
・田中角栄氏が偉いのは、そのことを正しく理解していたことです。彼は「世界の指導者から戦争体験者がいなくなった時が、一番怖いんだ」との言葉を遺しています。
・しかし、本当に戦争を体験した人たちは、そうではありません。戦争のイメージを完全に忘れ去ることは、実際に戦争を体験した人にはできません。「自殺した帰還兵のほうが、戦闘で死んだ米兵より多いというデータもある」
<憲法について>
・「日本も普通の国になって、アメリカと一緒に戦える国にしよう」と言いますが、先ほどから申し上げているように、普通の国になったら、日本の存在意義は小さくなるでしょう。
・しかしながら必要なことは、戦争に近づくな、戦争をやるなということです。その気持ちを持たないと、あっという間に戦争に近づくことになってしまうでしょう。その後ろ盾となっているのが、いまの憲法であることは言うまでもありません。
<アジアと世界の平和のために>
・繰り返しますが、日本の国是は平和と自由貿易です。これなくして、日本は本道を歩むことはできません。
・私は習近平に少なくとも十数回会っていますが、そのたびに彼が言ったことがあります。「日本と中国は、住所変更できません」。
<漁業権と資源の共同開発>
・しかしながら、やはり中国と、漁業権と資源の共同開発の話はきちんと進めておくべきでしょう。この二つの問題については、これまでの日中両首脳の政治声明の中にも触れられています。
<北朝鮮問題のゆくえ>
・日本は現在、北朝鮮にまったくルートがありません。しかし、繰り返し述べてきたように、アジアの平和があって世界の平和があります。
<日本外交の多元連立方程式>
・多元連立方程式と言ったのは、それぞれの方程式を成立させる答えはすべて同じ答えでなければいけないという意味です。そして、そのただ一つの答えというのは、やはり、「自由と平和」ということになるでしょう。
<ジャングルの掟>
・地球温暖化の影響が緩和されることはないと断言する専門家も多くなっています。生命線である食料・水に関して世界各地で問題が起こるようになれば、弱肉強食の「ジャングルの掟」が前面に出てくる可能性があります。
『未来を透視する』
(ソフトバンク・クリエイティブ)2006/12/21
<気象変動>
・来るべき気象変動により、2008年からこの台風の発生回数は増えていくと私は、予想している。とくに2011年は過去に例を見ない台風ラッシュとなり、大規模な暴風雨が吹き荒れる深刻な年になるとの透視結果が出ている。この台風ラッシュは、2012年にずれこむかもしれないが、可能性は低い。嵐の増加を促す地球の温暖化は、現在も急速に進行中だからである。
・2010年から2014年にかけて、また、2026年から2035年にかけて、平均降雨量は年々560~710ミリメートルずつ増加する。現在から2010年にかけて、また、2015年から2025年にかけては、380~530ミリメートルずつ減少する。現在から2010年にかけて、また、2015年から2025年にかけて、平均降雪量は300~550ミリメートルずつ増加する。
『未来を透視する』 ジョー・マクモニーグル
ソフトバンク・クリエイティブ 2006年12月26日
<日本の自然災害>
<2010年、長野で大きな地震が起きる>
・透視結果を見てもうろたえず、注意程度にとらえてほしい。ただし、最悪の事態に備えておいて、何も起こらないことを願おう。こと天災に関しては、透視は間違っているほうがありがたい。
<今後、日本で発生する大地震>
2008年 伊勢崎市 震度6弱
2018年 東京都 震度6弱
・噴火や地震にともなって海底では地盤の隆起や沈降が起きる。そして、膨大な量の海水が突然動きだし、衝撃波となって陸地の海外線へと進行する。
・遠洋ではあまり目立つ動きではないが、浅瀬に入ると、衝撃波は巨大な津波となって陸地を襲い、都市部などを徹底的に破壊してしまう(波の高さはときには30メートル以上になることもある)。
・内陸へと押し寄せる力がピークに達すると、今度は海に戻り始め、残された街の残骸を一切合財引きずりこんでいく。警告もなしに、突然襲ってくれば被害はとりわけ甚大となる。
・幸い日本には、優良な早期警戒システムがあるのだが、海底地震が発生して警報が発令されてから、津波が押し寄せる時間は、残念ながらどんどん短くなっている。
<日本を襲う津波>
2008年夏 11メートル
2010年晩夏 13メートル
2018年秋 11メートル
2025年夏 17メートル
2038年初夏 15メートル
2067年夏 21メートル
・日本は津波による大きな被害を受けるだろう(なお、波の高さが10メートル以上に及ぶものだけに限定している)。北海道の北部沿岸の都市部は特に津波に弱い。徳島市、和歌山市、浜松市、鈴鹿市、新潟市、石巻市も同様である。このほかにも津波に無防備な小都市は数多くある。
<土地>
・気象変動とともに、日本の土地問題は悪化しはじめる。沿岸部での海面上昇と、暴風雨の際に発生する大波によって、低地の村落と小都市の生活が脅かされるようになる。堤防や防壁といった手段は効力を発揮しないため、2012年から2015年のあたりまでに多くの人が転居を余儀なくされるだろう。
『日本の未来の大問題』
少子高齢化、ロボット社会は恐れるに足らず
丹羽宇一郎 PHP 2018/1/26
<若手官僚たちの訴え>
・日本はこのままではいけないという危機感は若者にこそあります。
経済産業省の20~30代の若い職員が、若者が高齢者を支える現在の社会保障制度の改善を提言した報告書「不安な個人、立ちすくむ国家」が話題になりました。
・日本では高齢者の年金と介護への政府支出がGDPの1割を超える一方で、保育所整備や児童手当などの現役世帯向けはGDPの2%未満、ひとり親家庭の子どもの貧困率は5割を超え、先進国で最悪の水準です。
報告書は、現役世代向けの支出は高齢者向けの5分の1以下にとどまっており、「既得権や固定観念が改革を阻んでいる」と分析。具体的には、年齢によって一律に年金を支給することをやめ、働く意欲や能力がある高齢者は仕事をして収入を確保すべきだ、としています。
・かつて「自民党をぶっ壊せ」と言い放った首相がいましたが、それにならって威勢よく言挙げするとすれば「日本をぶっ壊せ」。
毛沢東の言葉を引けば「不破不立」。破壊しなければ、新しいものは立ち上がりません。すなわち「創造的破壊」です。
<社長OBの給料を打ち切り>
・老人退場論を、もう少し具体的に考えていきたいと思います。
企業を例に挙げれば、65歳を過ぎた役員も一般社員も、いったんそこで「ご破算」にします。とりあえず役職を辞めてもらい、働く場合は、その後は給料なども前歴やそれまでの基準とはまったく関係なく働いてもらうのです。
社長を経験したことを勘案して、「相談役」などの仕事を与えてはいけません。例外をつくると例外だらけになってしまい、結局、それまでと大同小異となります。
・実力勝負のスポーツの世界では常識のことです。それが日本の企業では未だに受け入れられていません。いい加減に時代遅れの人事制度や労働法制を改めない限り、この国は沈没してしまいます。
実際に「70歳を過ぎたら、もう役員でも面倒は見ません。会社に来ないでください」という会社は増えてきています。
・お金に関わることは、できるだけ透明度を高くして対応する必要があります。もともと社長は現役時代に多額の給料をもらっています。私は現役を退いた社長や一部役員OBたちへの報酬の支払いを75歳で打ち切ることを決め、同時に社有車使用の一括廃止を宣言しました。
OBたちから猛反発を食らいました。
「報酬を撤廃などされては生活が立ち行かない。これからの人生設計も狂う」
予想された反応です。「あなたの実働の会社人生はもう終わっているんです」という言葉を呑み込んで、私は懇切丁寧に説明しました。
・何事も無理を押しては成るものも成りません。結局、5年間、撤廃を猶予することで表立った反発は収まりました。しかしOBたちは陰で私を批判していたと聞きました。社会、社員、株主が許せば、終身でもお支払いしたいがやむをえないことでした。
けれども、しばらくすると、特別顧問をしていた瀬島隆三さんをはじめ先輩諸氏たちは、「社長がそこまでおっしゃるなら私も遠慮します」と自ら辞退されました。
そすると、伊藤忠にならって他の大企業がOB役員への待遇を次々撤廃し始めました。
日本の企業のこうした「OB囲い込み」は、国家全体で見ると大きな損失を生み出しています。今でも正しい選択だったと私は思っています。
<世代を飛ばして若い社長をつくれ>
・私が社長に就任したのは58歳。大手商社の社長では歴代で最年少と言われました。社長になった翌年に実施した4千億円の不良資産の処理は「過去最高額の不良資産処理」として話題になりました。確かに誰も手掛けたことがないというのは事実です。
・その際、自分の給料を全額返上することにしたのも、決して得々と自慢するようなことではありません。1630億円の赤字を計上して無配となったうえ、今まで通り給料を得ようとすること自体、あさましいことです。
私は国内外のあらゆる拠点を巻き込んで、1年ほどかけて改革運動を進めました。
・私は社長就任時の公約通り、3期6年で社長を退きました。後任人事で私が公言していたのは「スキップ・ワン・ジェネレーション」、すなわち一世代若返る人事です。
・会社におけるワン・ジェネレーションは6年です。それでは足らず、さらにワン・ジェネレーション飛ばす。つまり12年ほど年下を選ぶのです。
これからの時代を切り盛りしていくためには、今の経営者とはものの考え方の異なる一世代若い人材を選べということです。
・そうでもしなければ、日本の企業風土の変革など百年河清を俟つに等しいでしょう。実際、欧米の政財界のトップは総じて若い。日本も若返りを図って欧米と対等に戦うべきです。
<人材育成の要は権限委譲>
・「社長は未熟者がやるものだ」と私は唱えてきました。というのも、戯画化して言えば、成熟した者が経営陣を占めれば、社員は未熟者しかいなくなるではないですか。
・経営陣が既得権を握って放さない組織では、優秀な人材は育ちません。人材育成の要は「権限の委譲」です。権限を与えられると、人は張り合いと活力を得ます。権限を移譲された人材が自ら考え、決断してゆくことで能力は磨かれるのです。