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中国の政治体制と社会、さらに人々の人間関係の根幹には秘密結社的な要素が組み込まれている。むしろ私に言わせれば、秘密結社を知らないで、どうやって現代中国がわかるのかとすら思ってしまうほどだ。(1)

 

 

『現代中国の秘密結社』

マフィア、政党、カルトの興亡史

安田峰俊     中公新書ラクレ   2021/2/10

 

 

 

彼らは既知の常識とは異なった「世界の隠された真実」にアプローチしている特殊な人たちの集団

秘密結社

・――秘密結社。

胡乱(うろん)極まりのない、しかし魅力的な言葉である。

 世間に怪しい言葉はたくさんあるが、なかでも「秘密結社」はとびきり胡散臭い。なんといっても、彼らは組織の存在や結成の目的、具体的な活動内容やメンバーといったさまざまな情報を、外部に対して「秘密」にしているのである。

 

フリーメイソンスカル・アンド・ボーンズ等の活動内容は平和的で、結成目的も会員同士で友愛関係を結ぶことにあると思われるが、加入儀礼は非公開かつ神秘的であるという。ゆえに儀礼的秘密結社ともよばれる。

 

・白人至上主義をとなえたKKKや、独立を目指したイタリアのカルボナリ(炭焼党)、暗殺テロを行った日本の血盟団、民族独立を目指した朝鮮の卍党やフィリピンのカティプーナン、ケニアのマウマウ団等は、秘密結社的な組織だ。戦前の非合法活動時代の日本共産党や、1970年代以降の日本の革マル派中核派赤軍派といった極左セクトも、こうした政治的秘密結社に近い存在だ。

 もちろん、外部から組織構造が見えづらい各国のマフィアや暴力団組織も一種の秘密結社だ(犯罪的秘密結社)。さらにアメリカの人民寺院や日本のオウム真理教のような閉鎖性が強い破壊的カルトや、隠れキリシタンのようにその時代の社会のなかで弾圧されている宗教組織も、秘密結社に近い存在である(宗教的秘密結社)

 

・ゆえに中国人の世界もまた、秘密結社の活動が非常に活発なことで知られてきた。これは北米・南米や東南アジアに進出した海外華人も含めた傾向で、現在もなお中国人の社会の裏側には、さまざまな秘密結社がうごめいている(「秘密結社」という表現に胡散臭さを感じるなら、「公的ではない政治団体や結社組織(幇(ばん))、民間宗教」ぐらいに言い換えてもいい)

 

・私はかつて、大学・大学院と東洋史(中国史)を専攻していた。当時、私が強く魅せられたのが、清代以降に中国南方沿岸部の農村を中心に多発した「械闘(かいとう)」という集落同士の武力抗争だ。械闘の背景は意外と奥が深く、関連分野として華僑や宗族(漢民族の父系の血族集団)、民間信仰漢民族内部の方言集団、さらには秘密結社なども、自分の学問的な興味の対象だった。

 

中国の秘密結社の三パターン――①義兄弟の契りを交わす「会党」

東洋史研究の場では、中国の秘密結社はしばしば二つのパターンに大別される。すなわち、本来は構成員同士の助け合いなどの目的から結成された①「会党」(幇会)と、民間信仰の宗教的つながりをもとに信者たちの人間関係が結ばれた②「教門」だ。この伝統的な二パターンに加えて、清朝中国共産党の打倒といった政治目的を抱いて結成された組織を、⓷「政治結社」としてもうひとつのパターンに加えていいかもしれない。

 

・洪門(天地会・三合会)や哥老会・青幇などは、清朝後期から中華民国期にかけて活発に活動した会党たちだ。特に洪門系の組織は現代もなお、世界の華人社会で無視できない存在感を持っている

 彼らの一部は時代が下るにつれて、いわゆるチャイニーズ・マフィアになっていった。

 

・香港の洪門系組織には合法的な結社である「白洪」と、マフィアである「黒洪」の双方がいるという。根は同じくしつつも、現在の洪門は表社会(儀礼的秘密結社)と黒社会(犯罪的秘密結社)の双方にまたがった存在になっているようだ。

 

中国の秘密結社の三パターン――②指導者に帰依して救済を求める「教門」

・いっぽう、民間信仰をベースにした秘密結社である「教門」の代表選手は、元・明・清の各時代に信者がしばしば大反乱を起こした白蓮教だろう。この白蓮教は仏教の浄土思想と、光と闇の二元論をとなえた中央アジア系のマニ教の教えが混淆したとされる民間信仰だ。

 特に元末の白蓮教徒の反乱(紅巾の乱)では、反乱軍のなかから朱元璋が台頭し、やがて「明」という宗教性が漂う名称の新王朝を建てた。

 

・なお、中国共産党政権は建国当初、体制にとって不都合な教門系の秘密結社を「会道門」と呼んだが、1980年代からは「邪教」という表現を好むようになった。

 すなわち、気功集団の法輪功や、キリストが中国人女性に転生したという教義を信仰する全能神、韓国で生まれたプロテスタント系のカルトで中国にも広がっている新天地教会、台湾発祥のチベット密教道教が混淆した新宗教である真佛宗などは、いずれも中国共産党の基準では「邪教」だ。

 

中国の秘密結社の三パターン――⓷体制転覆をはかる「政治結社

・最後に⓷の「政治結社」については、たとえば辛亥革命前に孫文が組織した興中会や中国同盟会、さらに1914年に孫文が東京で結成した中華革命党(中国国民党の直接の前身)、政権奪取以前に地下活動に従事していた時期の中国共産党などが該当する。

 

秘密結社国家・中国

中国の秘密結社が、真偽定かならぬオカルトの話題でもなければ遠い昔の歴史の話でもないことはおわかりいただけただろうか。秘密結社に関係したニュースは、中国の台頭や香港デモ、かつて習近平の最大のライバルだった薄熙来の失脚、仮想通貨ブーム、新型コロナウイルスパンデミックといった、非常に現代的な話題のなかでも見つけることができる。

 そもそも中国では、かつて国家の覇権を争った中国国民党中国共産党も元来は秘密結社かそれに近い存在だった中国の政治体制と社会、さらに人々の人間関係の根幹には秘密結社的な要素が組み込まれている。むしろ私に言わせれば、秘密結社を知らないで、どうやって現代中国がわかるのかとすら思ってしまうほどだ。

 

サバイバル術としての秘密結社の結成

・そこで、この手の寄る辺なき者たちが発明したのが「会党」や「幇会」というシステムだった。すなわち、他人と“秘密”を共有することで義兄弟の契りを結び、生命を賭してでもお互いを助け合う家族のような人間関係を人為的に作り上げる。そうすれば宗族や同郷会のバックアップがなくても、なにかあったときに安心なのである。

 会堂のはしりは清代中期に福建省で生まれた洪門(天地会)だったとみられている。彼らが生まれた背景については、よりローカルな社会事情にも言及しておこう。

 すなわち18世紀以降、洪門発祥の地である福建省の南部では、宗族同士が銃火器を持ち出して争う大規模な民間武力抗争(械闘)が非常に盛んだった。

 

青幇、蒋介石を助け魔都を握る

中華民国期に入り、洪門のかわりに台頭したのが、長江上流域の哥老会をルーツとする「紅幇」と、長江中・下流域の水運労働者の組織を母体とした「青幇」である中華民国の統治が安定せず社会不安が増すなか、幇会(会党)の構成員たちは塩や武器・アヘンの密売に従事したり、緑林白波の土匪となって地方を支配したり、さらに軍閥勢力の兵力として抱え込まれたりすることとなった。

 なかでも青幇は急速に黒社会化し「魔都」上海を支配した。

 

狡兎死して走狗煮らる

・いっぽうでも青幇も時代に流れに呑み込まれた。

 日本軍の撤退後、青幇は再び上海に戻ってきたものの、大戦により各国の租界が消滅して治外法権的な世界が消えたことで、組織の影響力は大きく落ちた。狡兎死して走狗煮らると言うべきか、国民党も青幇を切り捨てる動きを見せ、1948年8月には杜月笙(と げつしょう)の三男が蒋介石の息子で国民党特務機関のボスだった蒋経国(しょうけいこく)により逮捕される大事件が起きる。やがて中国共産党の上海支配が確実になると、老齢の黄金栄は共産党に降伏し、杜月笙は香港に脱出。ただし杜月笙も1951年に失意のなかで死亡した。

 

「空虚な器」にはなんでも入る

・あらためて見てみると、中国近現代史における会党の影響はやはり大きい。

 孫文(洪門)、蒋介石(青幇)、鄧小平・朱徳・賀龍(哥老会)というそうそうたる面々が、すべて会党に加入するか深い関係者だった事実は衝撃的だ。中国の政治は常に秘密結社によって動かされてきた――。などと、陰謀論めいた歴史観を主張したい誘惑にも駆られる。だが、ここでもうひとつ忘れてはならない事実がある。

 それは孫文蒋介石中国共産党も、用済みになれば会党を切り捨ててきた点だ。

 

現代中国の洪門「中国致公党」>

チャン・ツィイーも入党した統戦工作機関

・――中国は中国共産党による一党独裁国家である。これは日本でしばしば語られる「常識」だが、実は半分までは正しいが残りの半分は間違っている。なぜなら、中国で執政党として権力を握るのは中国共産党ただ1党だが、実は他にも「民主党派」と称される8つの小政党が合法的に存在を認められているからだ。

 

洪門を吸収した中国共産党

中国致公党も、そうした民主党派のひとつである。彼らは伝統中国の秘密結社・洪門の一派が政党化し、紆余曲折を経た末に中国共産党に協力して民主党派として生き残ったという相当な変わり種だ。

 

・見方を変えれば、中国共産党は秘密結社・洪門を政権内に取り込み、建国以来70年以上も国家を運営してきたという驚くべき側面を持っているとも言えよう。

 

洪門、カナダの反日ムーブメントを動かす

・私が過去に取材したカナダ洪門をはじめ、いまや中国国内の致公党と積極的に交流している海外の洪門組織は、台湾の組織を含めて、ほぼすべて中国共産党を積極的に支持している。報道を観察する限り、近年になり中国政府の影響を特に強く受けているとみられるのは、北米・中南米オセアニア、フィリピンなどの洪門組織だ。

 

<香港>

洪門の対日協力組織が黒社会

・14Kの話が出たので、香港の黒社会「三合会」(トライアッズ)にも触れておこう。三合会は本来、天地会や三点会、小刀会などとともに洪門の会党組織のひとつとして知られていたが、戦後の香港では、洪門との関係の有無にかかわらず黒社会組織全体を指す言葉として使われている。日本のアウトロー社会でいえば、「三合会」は山口組や稲川会のような組織名ではなく「暴力団」という総称に該当する言葉になっているのだ。

 

・やや古い数字だが、2007年11月時点で活動が確認されている香港の三合会組織は13組織ある。なかでも活発なのは、潮州系の洪門とされる新義安、洪門系の14K、文化大革命期の中国大陸からの難民集団をルーツとする大圏仔、香港の地場組織である和勝和・和合桃・和合楽などである。他にも、同じく香港地場系の組織である聯英社をはじめとした「聯字頭」の各派が存在する。

 

・14Kは名前が特徴的なためか、香港マフィアを代表する存在として日本でも知名度が高い。ただ、彼らはヨコの人間関係は広くてもタテのつながりが弱い洪門の流れをくむだけに、組織の統一性が弱いことが弱点とされる。

 特に近年は分裂傾向が強まり、大別すれば前出の映画俳優・陳恵敏とほか二人の頭目による三巨頭の分権体制が敷かれているが、他にも分派が多数ある。

 

・それはそれとして、現在の香港の黒社会は新義安と14Kが二大勢力である。1997年の中国の返還後、香港の街からは急速に怪しさが薄れたが、飲食店や麻雀店、性産業など現在でも黒社会の影響が及ぶ店舗は少なからず存在している。

 事実、2017年に現地英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が報じたところでは、人口約730万人の香港において三合会の関係者は約10万人にのぼるという。

 

・香港の人口約300万人にうち10分の1が三合会関係者だと言われた1960年代と比べれば、大幅に数を減らしているものの、香港社会における三合会の影響力は、現在もなお軽視できないとみていいだろう。ちなみに香港警察によると、2018年に発生した三合会がらみの事件は1715件にのぼったそうである。

 

三合会が香港デモを襲撃

・最近、この三合会が日本国内でも大きくクローズアップされる出来事があった。

 香港デモが盛り上がっていた2019年7月21日、香港鉄路西鉄線の元朗駅で三合会の関係者だとされる白シャツ姿の男たち数百人が、デモ隊や市民を棒や藤鞭で襲撃する事件が起きたからだ(元朗721事件)。

 

 <法輪功

中国版サイキックブームが生み出した最大の反共組織

法輪功は宗教的な性質を持つ気功学習集団で、前世紀末から中国共産党のよって「邪教」であるとみなされ、目の敵にされている。対して法輪功共産党を深く憎み、いまや気功結社というより、全世界の華人社会で最大規模の反共組織と化している。

 

・日本の法輪功は、私の体験取材を受け入れてくれるくらいにはオープンな組織だ。しかし、中国国内における彼らは、まさに「秘密結社」的な存在に他ならない。

 

中国共産党は「邪悪な幽霊」

・この「発正念」は法輪功の法語である。「正念を発して邪悪の黒い手と卑しい鬼を根絶し、共産党という邪悪な幽霊のすべての要素を取り除く」言葉だ。

 

法輪功の修煉には、それぞれの型の「決めポーズ」を取る際に筋肉を数秒間突っ張らせ、それから脱力される李洪志のかけ声を聞きながら各動作をおこなっていくため、いっそう「ラジオ体操」的な感覚が強い。

 とはいえ、あくまでも気功である。続けるうちに「気」が集まるのか、なぜか両手に強い熱を帯びるような感覚を覚えて驚いた。身体もぽかぽかとしはじめ、入浴直後のように芯から温まる感じがある。

 法輪功をどう評価するか、政治的なイデオロギーをどう考えるかといった問題はさておき、明らかに健康にはよさそうだ。往年、中国で公称1億人が参加する大ブームが起きたのも納得できる。

 

サイキック・チャイナ

・気功集団の法輪功は世界最大の華人反共団体であり、日本を含む世界各国でその活動を観察できる巨大な(疑似)宗教団体だ。

 

・とはいえ気功は文革後にすぐ復活する。それを後押ししたのは、改革開放体制の初期にあたる1970年代末~80年代の中国を席巻したオカルトブームだ。なんと一時期は、体制側による積極的な後押しのもと、人体特異効能(超能力)が真面目な研究対象とみなされ、国内メディアでも肯定的に報じられたことすらある。

 

急成長するベンチャー気功集団

李洪志は1952年、吉林省公主嶺市で生まれた。幼少時から仏教の全覚大師、道教の八極真人や真道子といった道教・仏教の先達から教えを授けられ、8歳にして神通力を備えていた――と、法輪功側の資料はそう記す。

 

・1999年に中国共産党と決裂する直前までに、法輪功は中国国内だけで公称1億人の修煉者を集めるにいたった。設立わずか7年で、中功や香気功などの先輩格の流派を追い抜き、共産党に匹敵する規模の結社を作り上げたことになる。

 

九評共産党から新型コロナ・デマへ

・一連の騒動を経て海外に拠点を移した法輪功は、しばらく政治的な意思表明を控えめにしていた。

 

・事実、法輪功は2005年2月、中国共産党からの脱退を進める世界的サービスセンターである「全球退党服務中心」の設立を発表。同センターのホームページによると、本書執筆中の2020年末までに、全世界で述べ3億7000人以上が「三退」(中国共産党共産主義青年団、少年先鋒隊の体制三組織からの脱退)を果たしたと主張している。

 また、「九評共産党」の発表を契機に、法輪功は傘下の機関誌『大紀元』、テレビ局『新唐人電視台』、ラジオ局『希望之声』などの傘下メディアを通じて中国共産党批判の大論陣を張り、街頭デモやビラ配りを世界中で繰り返すようになった。

 

法輪功系のメディアは、中国のセンセーショナルな情報を多数報じることでも有名だ。ただ、これは中国国内に残った法輪功修煉者を通じて得た情報だと思われるのだが、たとえば2005年8月に四川省での「エボラ出血熱発生の疑い」を伝えるなど、誤報フェイクニュースもかなり多い。情報の正確性よりも中国共産党に打撃を与えることを重視する編集方針なのである。

 

こうした法輪功系メディアの特徴が悪い意味で世間に影響を与えたのが、2020年の新型コロナウイルス禍だった。

 新型コロナについて「ウイルスは人工的に合成された生物兵器」だとする非常に有名な陰謀論がある。これはもともと、統一教会アメリカで発行している『ワシントン・タイムズ』が2020年1月24日に言及したことがほぼ発端だ。その後も複数のロシア系フェイクニュース・サイトや亡命中国人の大富豪・郭文貴が運営するプロパガンダ・メディア『郭媒体』など、世界各国の怪しげな情報源を通じて唱えられ続けてきた。

 

・しかし、この陰謀論が日本で大きく広がる契機になったのは、日本語版サイトを持つ『新唐人』や『大紀元』が人工ウイルス説を紹介した同年2月半ば以降のことである法輪功メディアは一見、果敢にタブーに切り込んで客観的な中国情報を流している国際メディアのように見えるだけに、その情報が事実関係を無視したプロパガンダであることを知らず影響を受ける日本人が続出した。

 

・もちろん、新型コロナウイルスの起源については、2020年5月にアメリカのトランプ政権が武漢ウイルス研究所からの流出説を主張するなどしている。個人的には、この主張も決して妥当性が高いとは感じないのだが、さりとて流行の発端において中国当局になんらかの責任があった可能性はゼロとは言えまい。ただ、人民解放軍生物兵器目的で開発した人工ウイルスがバイオハザードを起こすことと、アメリカ政府の主張のように研究所内で保存されていた天然のコウモリ由来のウイルスが管理上の不備から外部に漏れることでは、話の内容に雲泥の差がある。

 

「中国のオウム」は事実か

・現在、法輪功の教えは世界50ヵ国以上に広がり、法輪功修煉者数は1億人以上いる(ともに公称)。

 

・中国政府の姿勢は、たとえば以下のような文書からも想像がつくだろう。

 

 「法輪功」とはいったい何か。一口で言えば、中国の「オウム真理教」です。その教祖は現在アメリカにいる李洪志という人物です。「法輪功」も「オウム真理教」も他のカルト集団と同様ですが、教義や教祖への絶対服従と絶対崇拝を要求し、信者にマインドコントロールを施すのです。

 

全能神

中国人女性に転生した?

・三人が信仰しているのは「全能神」という、中国発のキリスト教系の新宗教だ。ほかに東方閃電(イースタン・ライトニング)や実際神など複数の異名がある。キリストが1990年代に中国東北部のある中国人女性として受肉し、この世に再臨したとする特異な教義を掲げているのが特徴だ。

 中国における全能神は、この約四半世紀を通じて農村部を中心に拡大してきた。本来、中国のプロテスタント教会中国基督教三自愛国運動委員会と呼ばれる組織のもとで共産党体制に協力する形で統合されているのだが、これに属さずに民間の「家庭教会」(家の教会)で信仰を継続する信者も相当数いる。全能神はこうした家庭教会のなかから教義が変化して生まれ、主にプロテスタント信者たちを取り込む形で成長してきた。

 

中国の「邪教」筆頭へ

・もっとも、全能神は現在、中国国内でも有数の「邪教」として知られている。

 

・全能神の教義の特徴は、キリストが中国人女性として再臨したとする信仰に加えて、神が人類を救済するいとなみを「神三歩作工」と呼び、人類の歴史を律法・恩典・国度の三時代に分ける独自の世界観を持つことだ。

 すなわち、天地創生をおこなったエホバ(ヤハウェ)の時代が「律法の時代」、ナザレのイエスが布教活動をおこなって以降が「恩典の時代」、そして女性の形を取ったキリストが中国に復活してからが「国度の時代」で、やがて全能神である女基督(女キリスト)がサタンとの戦いに勝利して人類を救済するという歴史認識である。

 

2012年「世界滅亡」説を信じた人々

・ほかに全能神のファナティックな側面を示す話では「マヤの予言」が有名である。

 まずは背景を説明しておこう。中国では2012年に「マヤの予言」が大流行した。南米のマヤ文明の暦では同年の冬至ごろに世界が滅亡することになっている――、という都市伝説だ。

 もともと、この都市伝説は中国のみならず世界中で流行しており、アメリカでは映画『インデペンデンス・デイ』などの作品で知られるローランド・エメリッヒがこのテーマを題材に取って映画『2012』を制作。2009年に公開された同映画は、全世界の興行収入が7億ドルを超える大ヒットとなった。中国において「マヤの予言」の噂が広がった理由も、国内興行収入4.5億元を売り上げたこの映画の流行に影響を受けた面が大きい。

 そして、予言では「世界が滅びる」ことになっていた2012年12月ごろ、この話を信じた全能神の信者が中国全土でさまざまな騒動を起こした。

 

中国版隠れキリシタン神秘主義

社会主義国家である中国では、あらゆる宗教が中国共産党の管理下に置かれ、それに属さない宗教組織は取り締まりの対象となる。

 プロテスタントについても三自運動と呼ばれる反帝国主義的な中国人クリスチャンの愛国運動が、中華人民共和国の建国後に共産党体制に協力する形へと再編された。

 

仙人や女神を崇める宗教観

・中国の農村で神やキリストを自称する教祖たちが大量に出現する。宗教文化面の背景も考察しておこう。

 一般人が神や救世主(キリスト)になるという発想の根底に、人間が仙人になり天に昇る(成仙昇天)という道教の思想や、「神降ろし」をおこなう民間のシャーマニズム信仰、菩薩が生きた人間に生まれ変わり続けるとするチベット仏教の活仏信仰など、中国人がかつて伝統的に接してきた宗教観の強い影響があることはおそらく間違いない。

 

<「神なき国家」の宗教秘密結社>

・中国における宗教政策は、まず1978年に鄧小平が改革開放政策を採用したことで統制が大きく緩んだ。やがて江沢民政権下の1990年代後半から「邪教」の取り締まりが厳しくなったが、その後に胡錦濤政権下でいったん統制がかなりの程度まで緩められた。しかし、2013年の習近平政権の成立以降、「邪教」のみならず公認宗教に対してすらも再び厳しい姿勢が取られるようなった。

 

秘密結社の異常なまでの生命力

・こんにち、中国共産党が政治的に気に食わない対象を批判する際に用いるロジックは定型化されている。すなわち「外国勢力や台湾などの境外勢力と結託」し、「国家を分裂させ国家統一を破壊」することを試みているから悪いという理屈だ。さらにひどい場合は「国家政権や社会主義制度の転覆」や「武装反乱」を画策している、といったレッテルも貼られる。

 

秘密結社を使った「中国の壊し方」

・では、なぜ中国共産党は他の秘密結社とは違い、中華の大地を制覇できたのか。それは彼らが「西洋から伝わった思想」を掲げつつ、「海外勢力と結託」して「政権の転覆を画策」し、さらに「国家統一の破壊」を進めて「武装反乱」に踏み切るという、たいへん危ない行為をフルセットで徹底的に実践したからである。結果、天下は共産党のものとなった

 

・すなわち、現代中国の秘密結社として最大最強、かつ最も成功した存在である中国共産党は、何をどうやれば自国の体制を崩壊に追い込めるかという「中国の壊し方」について、過去の先輩たちの豊富な実例と、自身の実践を通じて体験的に理解している。

 

 

 

『洪門人による洪門正史』

-歴史、精神、儀式と組織―

安部英樹)(雅舎)2007/10/1

 

 

 

<洪門(ほんめん)の精神史>

<ギルド集団 墨家

・中国の秘密結社の思想は「墨子」を起源とします。墨子の本命は「墨てき」といい、彼とその弟子たちの思想をまとめた書物が「墨子」で、この思想を奉じる者たちを「墨家」と呼びます。少しややこしくなりますが、墨子は本の名前、「墨てき」はこの本の主人公、墨家は、墨子を奉じる人々の集団だと思ってください。

 

・洪門結社は、この墨家の思想の下流域で形成されたものです。ですから、洪門の精神を説明する第一歩として、まず「墨てき」がどのような人で、また墨子が何を説き、また墨家は如何なる集団だったのか、それについての話からはじめてみようと思います。

 

墨家については、もうひとつ説明しておかねばならないことがあります。それは墨家が築城のプロの集団だということです。単なる思想家の集まりではなく、城を造るという高度な技術を持った人々の集団だったのです。墨家は築城のギルド集団であると同時に城の攻守に長けた戦術家の集団でもあったともいえます。一枚岩の思想で団結し、かつ築城のギルド集団の親方と弟子の厳しい師弟関係で団結し、また築城は軍事集団ですから、互いに軍制の上下関係でより一層団結するといった、この墨家というのは、実に恐るべき団結力を持った集団だったのです。

 

・ところが、不思議なことに紀元206年、秦の始皇帝が天下を統一して集権国家を創立すると、ほぼ時期を同じくして、墨家の集団は歴史上からふっと消えてしまいます。後世の学者が色々と詮索していますが、私は、墨家が地下に潜って秘密結社化したのではないかと考えています。

 

<世界初の秘密結社、墨家

墨家フリーメーソン

・この墨家を思うときいつもフリーメーソンを思い出します。共に思想を持ち、またギルドの集団でもあったこの二つの結社は実によく似ているのです。

 

フリーメーソン

・世界の秘密結社の代表格は何と言ってもフリーメーソンです。フリーメーソンのフリーは「自由」で、メーソンは「石工」ですから、意味するところは、自由な石工の集まりといったところでしょう。

 

フリーメーソンによると初代のグランドマスター(石工の総頭領)はイスラエル王国のソロモン王ですから、その起源は約3千年前という事になります。墨子が活躍したのが、約2千5百年前ですので、この両者は創立された時期も似通っています。しかし、フリーメーソンの起源はあくまで伝承ですので、これは割り引いて考えるべきでしょう。もしかすると、世界初の秘密結社は墨家なのかもしれません。

 

・ですから、この時代のフリーメーソンは戦国時代の墨家集団と同じように堂々とした表の組織です。なぜこの表の組織が秘密結社と呼ばれるようになったのでしょうか。それは政府が危険分子と認定した人々が大量に入会したからに他なりません。この危険分子はテンプル騎士団の残党とユダヤ人です。

 

・まず、この崩壊したテンプル騎士団の残党がフリーメーソンに逃げ込みます。彼らは、いわば平家の落ち武者や豊臣の残党のようなものですから、自分の身分や本名を隠す必要がありますし、生きるためにはその日の飯も食べなくてはなりません。この点でヨーロッパ中にロッジと呼ばれる拠点を持ち、かつ仕事も提供してくれるフリーメーソンは、彼等にとっては格好の隠れ家となった。

 

・「洪門」という民間組織は、まさにこのような歴史の流れを汲んだ中国「任侠道」の正当な承継者なのである。

 

・宗教性が非常に薄い特徴を持つ「洪門結社」