日本は津波による大きな被害をうけるだろう UFOアガルタのシャンバラ 

コンタクティやチャネラーの情報を集めています。森羅万象も!UFOは、人類の歴史が始まって以来、最も重要な現象といわれます。

実際、不動産業界ではずいぶん前から、「どんな商売であっても、土地を買って建物を建てて経営が成り立つ商売はほとんどない」と言われています。(2)

 

 

『経済危機はいつまで続くか』

コロナショックに揺れる世界と日本

永濱利廣  平凡社新書   2020/10/17

 

 

 

新型コロナウイルスパンデミック

新型コロナウイルスパンデミックによって、世界経済はリーマン・ショックを超える危機に見舞われている。大国アメリカが矢継ぎ早に大規模な経済対策を打ち出したことで、各国の経済が落ち着きを取り戻しつつある一方、日本では、消費増税に加え、オリンピックの延期で内需はより悪化しているのだ。コロナ禍によって落ち込んだ景気は、どのタイミングで回復するのか。

 

リーマン・ショック

・日本の場合は、個人消費が元に戻るまでに2年くらいかかっています。欧米の場合、特に金融政策については迅速に量的緩和政策を行ったのですが、日本はそれをやらなかったことによって極端な円高になってしまいました。結局、リーマン・ショックの時に最も成長率が落ち込んだのは日本だったのです。その要因としては、金融緩和が足りずに円高になってしまったことが大きかったといえるでしょう。

 

・たとえるなら家が火事になってしまい、とりあえず火を消さなければ何も始まらないという状況です。経済を立て直す前に感染症をある程度収束させなければなりませんので、より厄介なのです。

 

どれくらいのタイミングで特効薬やワクチンが普及するか。そして、どのくらいのタイミングで感染が収束(終息)するのか――。そういった医学的な難題がある程度解決するまでは、経済は元に戻りにくいでしょう。

 

・今回の世界の経済成長率は、特に欧米においては世界大恐慌というよりも戦争に近い状況だという有識者もいるほどです。ある意味、形を変えた第三次世界大戦ということです。敵は国ではなくてウイルスですが、有事ということでさまざまな対応がなされています。ですから当然、経済だけではなかなか見通しが立てにくく、先行きが読みにくいのです。

 

・私は、初期の段階では「三重苦」(米中貿易摩擦、消費増税、コロナ・ショック)といっていましたが、今回のコロナ・ショックによって、2020年の日本経済の数少ない起爆剤として期待されていた東京オリンピックが1年延期になってしまいました。オリンピックがなくなったということで、また一つ苦が増えて「四重苦」という状況に陥ってしまったのです。これはそうとう深刻だと思います。

 

新型コロナウイルス感染症がどのようなタイミングで収束(終息)に向かうかわかりませんので、今後の世界経済を見通すのはなかなか困難です。

 

アメリカファーストのゆくえ

コロナ・ショックに揺れるアメリ

・今回のコロナ・ショックによって、アメリカ経済はどのような影響を受けているのでしょうか。

 これを一言でいうと、まさに「戦争級の衝撃」ということになります

 

・それ以上に影響が出ているのが実物経済で、これは凄まじいといえます。毎週発表されるアメリカの新規失業保険申請者数のグラフをみてもわかるとおり、リーマン・ショック後の65万件という失業申請件数がこれまでのピークでした、

 平常時は、大体20万件くらいです。それが3倍にも増えたということで大変だといわれたわけです。しかし、コロナ・ショック後はそれをはるかに凌ぐ650万件以上になりました。アメリカは意図的に経済を止めるロックダウンをやったこともあって、リーマン・ショックの時の10倍にも膨らんだわけです。

 

岐路に立たされたトランプ大統領

・では、何が重要なのかというと、やはり実体経済、具体的には失業率です。再選に失敗したカーター大統領もブッシュ大統領も、いずれも直近1年間の失業率が上がっていました。逆に、再選を成功させた4人の場合、直近1年間の失業率は下がっています。となると、少なくとも経験則的には、直近1年間の失業率が非常に重要だということがいえると思います。

 

3兆ドル以上の財政出動と金融緩和

・100年に一度といわれたリーマン・ショック時の財政政策、財政支出というのは7000億ドル程度でした。その4倍くらいのことを実施しているわけです。

 

バイデンが大統領になったら政策はどうなるか

・一般的に、民主党は弱者に手を差し伸べるという傾向が強いため、バイデンはトランプと比べると再分配に配慮した税制改革をすることが予想されます。家計で考えると、富裕層は増税の一方で、中間層は負担軽減といった再分配政策を進める可能性があるでしょう。また、トランプが下げすぎた法人税は多少上げるのではと予想されます。

 

・また、バイデンが大統領になっても最も変わるのは、恐らく通商政策でしょう。トランプとは対極的な考えを持っているからです。

 

NYダウは市場最高値を再び目指すのか

・では、そういう中で、いったん大きく調整を迫られたアメリカの株価はどうなるのでしょうか。長い目でみれば、再び上昇基調に戻るのではないかと考えています。

 

・世界経済の4分の1はアメリカ経済です。アメリカ経済≒世界経済のようになっていますので、やはりアメリカの経済の影響は大きいわけです。

 

・確かにトレンドは少し弱まるかもしれませんが、人口は2050年にかけて右肩上がりで増えていく予想になっています。アメリカはそれなりに出生率があり移民の国ですから、全体として増加傾向は変わらないでしょう。

 これは、トランプが再選されてもバイデンが勝っても、長期トレンドでみれば人口も増えていくしGDPも上がっていくということです。ただ、リスクはあります。

 

溢れる緩和マネーと積み上がる債務は克服できるか

実体経済から上振れした株価というのは、金融緩和マネーが大量に溢れかえる中で実現してきました。

 さらにいうと、今回のコロナ・ショックで債務が積み上がっています。これは政府の債務だけではなく、学生ローンなどの借金も積み上がっているわけで、そこまで債務が膨れ上がって大丈夫なのかということが、一般的に心配されています。

 

金融引き締めは当面できない

・となると、金融引き締めをする環境になることは当面ないという話になってくるわけです。そもそも金融引き締めがしにくいというよりも、構造的に金融引き締めの必要性が下がってきている。そういう構造的な変化が出てきていると思います。

 

アメリカを静かに苦しめる学生ローンの爆弾

・そうした中で、最近アメリカで問題になっているのが、自動車ローンと学生ローンとクレジットカードという三つのローンです。その中でも学生ローンの負債が大きく増えています。

 

広がる格差社会の先にはなにが

・ですから次は、彼らと似たような志向の候補者が躍進して大統領に就任する可能性があります。そうなると、経済はどうなるか。中低所得者に所得が再分配されれば消費に回るというプラスの側面ももちろんありますが、金融市場や資本主義経済の側面から考えると、やはり増税やアンチビジネス政策(規制の厳格化)などが景気や株式市場の大きな下振れリスクになると思います。

 

人口減少と格差が広がる日本経済

明らかになったインバウンド・リスク

・しかもコロナ・ショック後は中国人だけでなく、ほかの外国人訪問客もいませんから、そうなると4.8兆円の需要の蒸発という以上に深刻な影響が出てきます。背景には、それまで日本のインバウンドが急激に増えていたことがあります。2014年からわずか数年で3倍近くも増えています。これには、世界的に海外旅行のニーズが増えていることに加えて、インバウンドに力を入れるという日本の政策も大きかったのです。

 

・日本が特別なのではなく、むしろ日本だけが遅れていたのを海外並みにしようということでやってきたわけです。

 このため、その政策自体は間違っていたとは思いません。その政策によって急激にインバウンドが増えたことで、特に地方では、インバウンドがなかったら廃業していたような企業や店舗が生き返ったわけです。

 

リーマン・ショックの時に最もダメージを受けたのは大企業の製造業でした。しかし世界的な大企業で体力もあったということで、あれだけ大きなダメージを受けても潰れなかったわけです。

 しかし、お金の流れが止まったことによって実体経済が遅れて悪くなったリーマン・ショックに対して、今回のコロナ・ショックの特徴というのは、感染を抑えるために直接的にヒトやモノの動きを止めざるを得なくなったことでした。そうなると、最も影響を受けるのは中小のサービス産業です。そういうところは大企業に比べて体力がありませんので、倒産や廃業、失業等が増加し、地方経済の足を引っ張る要因になりかねないわけです。

 

・中でも一番悪いのは百貨店です。百貨店は営業を止めていたことの影響が大きいからです。次が飲食関連となっており、夜の時間に営業できなかったことが大きいと思います。あとはやはり旅行・交通関連。次が衣料品専門店となります。

 

延期によるオリンピック景気のゆくえ

そもそも日本経済は、2018年11月からすでに景気後退に入っていました。そこに消費増税、コロナ・ショックときて、三重苦になったわけです。それに加えてオリンピックが延期されたことで、四重苦になりました。

 

・オリンピックは、サッカーのワールドカップと並んで世界の二大スポーツイベントです。開催国にとっては、スポーツ活動が活発化しますし、社会資本整備も進み、さらに開催地の知名度やイメージ向上が期待できます。加えて、市民がボランティアに参加したりして国際交流というところでもプラスに働くでしょう。

 産業の需要拡大も期待できますので、やはりどのようなかたちであれ開催されるにこしたことはないでしょう。経済というものは気持ちで動く部分も大きいですから。ただ、もちろん新型コロナウイルスの感染の状況次第ではありますが、中止という最悪のシナリオだけは、ぜひとも避けてもらいたいところです。

 

日本経済に大きな影響を与えかねない円高リスク

・今、コロナ・ショックで、世界恐慌以来の100年に一度の危機といわれているわりには、円高は進んでいません。日本経済にとって、私が警戒しているのが、先々の円高リスクです。

 では、なぜ円高が進んでいないかというと、世界的な危機になると、基軸通貨であるドルの需要が高まるからでしょう。

 

・そういう意味でも、このコロナ・ショックを克服するためには、これまで以上に政府と日銀の政策の協調的な動きというのが重要になってくると思います。

 それがないと、アメリカとの金利差だけではなくマネタリーベースの差も大きくなり、より円高に振れやすくなる可能性があるからです。

 財政政策のほうも、アメリカは2020年の4-6月期だけで、日本円に換算して320兆円も国債を発行しています。アメリカの経済規模は日本の4倍ですので、日本国債を80兆円も発行しているのと同等の規模ということになります。それに太刀打ちするためには、やはり政府と日銀の協調が重要だということです。

 

コロナ・ショックから回復しても内需は戻らない

・そう考えると、2014年の消費増税の時ですら個人消費がトレンドに戻るのに3年かかっているわけですので、今回も少なくとも3年程度はかかると覚悟しておいたほうがいいでしょう

 それに加えて人口が減りますので、さらに大変だという話になりますが、経済成長は必ずしも人口だけで決まってくるものではありません。

 

・ただし今回のコロナ・ショックによって、外国人労働者はこれまでほどは期待できなくなると思います。資本ストックでいうと、老朽化してきている社会インフラの更新・投資等によって成長を維持するということも考えられます。

 そもそも潜在成長率というのは、供給側の問題です。今回のコロナ・ショックで何が起きたかというと、供給能力が下がったわけではなく需要が消失してしまったわけです。このため、経済成長を維持するのに最も重要なことは、いかに需要を戻すかということなのです。そのために不可欠なのは感染リスクを下げることですから、やはりワクチンや特効薬の普及がカギとなります。

 

・さらに、プラスの金融・財政政策も重要でしょう。経済学の教科書では、需要喚起策は金融・財政政策になりますが、先に述べたとおり、金融政策はもうやれることはかなりやっています。

 このため、あとは財政政策がカギを握ることになります。具体的には、広い意味でのインフラや未来への投資ということだと思います

 

・国際的にみますと、コロナ・ショック以降、世界の政治・経済が不安定化してくる可能性が高まることで、安全保障が課題の一つになってくると思います。

 

・コロナ・ショックで格差が広がることが懸念されますので、貧困層への最低限の生活保障等、賢く財源を使う余地はいろいろあると思います。このため、そこを積極的にやっていく必要があります。

 

・たとえば、供給能力の高い最高技術の駐車場をつくっても、クルマが入ってこなければ需要は顕在化しません。このように、経済が正常化するまでは需要が重要なのです。供給が重要になってくるのは、もっと経済が過熱してきた時です。そういう時に供給力を上げればいいのです。

 

そういうことを考えますと、コロナ・ショックに対していかにニューノーマルな需要刺激策を打ち出せるかが、今後の経済成長を大きく左右すると思います

 

都市と地方の格差はさらに拡大する

・そうなるとコロナ・ショックが、各自治体が地方分権を進めるきっかけになるかもしれません。そういった意味では、地方交付税交付金を増やすことも財政政策の一つになり得ます。

 

多くの誤解がある財政規律と社会保障

・日本はむしろプライマリーバランスや財政規律を意識しすぎて、いつまで経ってもデフレから脱却できずにいます。財政規律を守りすぎたことが、これまでの日本経済の低迷につながっているともいえます。

 

・しかし、コロナ・ショックのような有事の時は、むしろ財政規律を棚上げにして、経済を正常化させるほうを優先させたほうがいいでしょう。つまり、順番ということです。経済が正常化してから財政規律を考えればいいのです。

 

・結局、今どういうことが起きているかというと、コロナ・ショックで需要が委縮しているため、企業も家計もこれまで以上にお金を貯め込むわけです。そして、金利というのはお金の需給で決まってきますので、そこで政府がお金を使わないと、お金が余ります。そうなると、結局、借り手がいないので、景気に中立的な金利水準が大幅なマイナスになってしまうわけです。

 

・今は有事で、どこの国でも経済が大きく傷ついていますので、借金を増やして財政出動をしています。となると、他国も日本と同じように財政出動をしているため、円だけ暴落することはあり得ません。むしろ先にも述べたように、経済が正常化したあとに金利差が要因で円高になってしまうリスクのほうが高いのです。

 

・経済が正常化する前に財政を締めてしまったため、なかなか正常化には向かわなかったのです。

 一方、社会保障費は今後も増えていきますので、社会保障を賄うための財政支出については野放図に出すのではなく、やはり考えなければいけません。ただ社会保障費についても、世間一般にいわれるほど状況が悪化しているわけではなて、じつは少しずつ効率化が進んでいるのです。

 

アベノミクスの最大の失敗は、消費税を5パーセントから8パーセントに上げた3回目の消費増税をやってしまったことではないかとする向きもあります。

 あの時、消費増税に伴う国民の負担増は8兆円強でしたが、同じタイミングで社会保障給付費が4.9兆円も抑制されていたわけですから、結局、家計に回るはずの約13兆円が抑制されたともいえます。異次元と呼ばれるほどの金融緩和をやって公共事業もそれなりに維持したのに、経済が正常化しなかったのは、やはり消費増税が足を引っ張ったのではないかと思われます。

 さらにいうと、社会保障の効率化では、特に医療費が重要です。2018年5月に公表された政府推計の見通しどおりに社会保障給付費が増えると仮定すると、その4割程度が医療費の増加で説明できます。

 

・このため、安易に増税するのではなく、医療費を中心とした社会保障の効率化を行うほうが重要でしょう。結局、増税したり過度に財政不安を煽りすぎると、余計に消費者の財布の紐は締まってしまいますので、かえって財政に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。年金についても、私たちが日ごろ払っている消費税が公的年金の原資になっていることは、一般にあまり浸透していません。

 

OECD加盟国の消費税の平均は19パーセントですので、将来的に経済が正常化すれば、日本も同程度に上げていく余地はあると思っています。

 

所得格差の固定化で少子化は加速する

・ある程度の競争環境に基づく適度な格差は、やはり経済成長に必要なのです。問題なのは、不合理で過度な格差が固定化してしまうことですから、格差が固定化して貧困状態から抜け出せないという状況に陥らないような社会の仕組みが必要なのでしょう。

 コロナ・ショックによって、そうした新しい社会の構築に対して注目が高まっていると考えています。

 

その先の世界経済と日本の未来

リターンからリスク回避へのシフトで経済は長期に停滞する

・すでに世界各国は、コロナ・ショックによってヘリマネ(ヘリコプター・マネー。空から紙幣をばら撒くように、中央銀行が大量の資金を市中に供給する政策)ともいうべき大胆で思い切った金融・財政政策を行っています。では、この先、世界と日本の経済はどうなっていくのでしょうか。

 端的にいえば、これまで述べてきたような大胆な金融・財政政策をやっても、急激に成長が戻るのは難しいのではないかと思います。

 

過剰貯蓄はさらに積み上がっていく

・そうなると、マクロ経済的には資金需要の緩み、つまりカネ余りが世界的に長期化するのではないかと思います。

 

コロナ・ショック後はインフレかデフレか

では、コロナ・ショック後はインフレになるのかデフレになるのか。これについての議論は分かれています。どちらの可能性もありますが、私はデフレの可能性が高いと考えています。

 

財政リスクは高まっていくのか

・一方、財政出動をいくらしても、民間部門がお金を貯め込むために成長が下がってしまうとなると、財政リスクについても考える必要が出てきます。

 

流動性の罠」によって金融緩和は効きにくくなる

・財政リスクで、もう一つカギを握るのは、金利の先行きです。財政リスクが高まると金利が上がりやすくなります。これについては、恐らく世界的に低金利が続くと思います。財政赤字は拡大しても民間の貯蓄超過がそれを上回るため、結果として資金需要である金利は上がりにくいということです。

 

・では、中立金利が下がると何が起きるのか。景気に対して中立的な金利よりも実際の金利を下げることにより、金融緩和的な環境を作って景気を刺激するというのが金融緩和です。しかしカネが余りすぎると、景気に対して中立的な金利がマイナスになってしまいます。そこで実際の金利をそれ以上に下げるとなると、金融機関の経営や年金運用などを含めて副作用が出てきます。このため、民間部門があまりにもお金を貯めすぎて中立金利が下がると、金融緩和が効きにくくなるのです。

 このことを経済学的には「流動性の罠」といいますが、世界的にそういう状況になりやすくなるでしょう。

 

・つまり、今の財政拡大の部分は、経済を元に戻すには不可欠ということになります。いい換えれば、経済が正常化する前の状況であれば財政赤字が拡大してもリスクは低いということです。

 

金融緩和によるひずみが次のリスクを招く

アメリカがリーマンショック後にいち早く大胆な量的緩和を実施したのかがわかると思います。次にユーロ圏が動き、一番最後に日本が2013年からアベノミクスを始めていることがわかります。2016年以降、アメリカは経済が元に戻り始めてきたこともあり、量的緩和を巻き戻す政策に転じました。ユーロ圏も2017年頃から増やすのを止め始め、日本も増加ペースを緩めてきました。しかし2020年は、いずれも再び拡大しています。

 

・コロナ・ショックでFRBはジャンク債や地方債を買う等、直接、民間非金融部門に資金を供給し始めています。ひと昔前では絶対にあり得なかった禁じ手でした。

 これをやりすぎると、本来、貸してはいけないような企業にまでお金がいく可能性があります。

 

バブルを形成するリスクはさらに高まっていく

・コロナ・ショック後は、政府債務が増える一方で、それ以上に民間の貯蓄が増えることによって金利は上がりにくくなるでしょう。かつ、経済も民間部門が委縮してしまいますので、正常化には時間がかかると先に述べてきました。

 では、そういう中で金融市場ではどのようなことが起こるのでしょうか。恐らくバブルが起きやすくなるのではないでしょうか。コロナ・ショック後に実体経済と株価が乖離しているのは、その一端を示していると思います。

 

・皮肉なことに、民間部門が今まで以上に収益性や成長性よりも安定性やリスク回避を重視しているにもかかわらず、その副作用として、金利の低位安定を通じて有り余ったお金が資産市場の暴発を抑え込むために、各国の金融当局による金融規制や監督の強化が進む可能性があると思います。

 

・日本も戻りはアメリカに比べて強くありません。アメリカでは、株は短期的に下振れしたとしてもトレンドはやはり上昇基調という、いわゆる株価神話があります。それに対して日本は、80年代後半のバブル崩壊以降、株価はトレンドとして上がるものという概念が崩れてしまっています。

 

「新しい生活様式」の核となる5Gの技術は加速する

・最後に、ミクロ的な側面からも考えてみましょう。マクロの視点からみると経済は低成長が続くことが予測されます。しかし、伸びる分野は必ずあります。それが5G(第5世代移動通信システム)です

 

・そういうスキルや技術、専門知識を持っている人は、テレワークの中でいろいろ掛け持ちするなどして働きやすくなると思います。

 一方、そうではない人たちにとっては、職業に就くことも含めて、ある程度の所得を得ることが難しくなってくる可能性があります。最も割りを食いそうなのが、デジタル化に対応できない中高年の正社員でしょう。今では終身雇用で守られてきたわけですが、2021年4月からの70歳定年制導入を控えて、すでに2019年から「黒字リストラ」といわれる早期退職などが加速しています。

 

・また、5Gによって非接触化が進むと、会社への出社が減ることで、男女の出会いの場も減りそうです。このため、ただでさえ上昇している未婚率がさらに上がり、少子化に拍車がかかる可能性もあるでしょう。

 

長期停滞が常態化する可能性

・では、日本はどうかというと、これまでのおさらいになるかもしれませんが、やはり人が移動することの警戒が強まって、長期停滞が常態化する可能性があるでしょう。2020年も2021年もかなりのデフレ圧力がかかるでしょう。そういう中でテレワークやデジタル化で対応せざるを得なくなっているわけです。

 これまでも低賃金・低インフレが構造的な問題でしたが、それがさらに深刻化する可能性があります。

 

・私は、労働力というのは知的労働と肉体労働と事務労働の三つに大きく分けられると思っています。この三つの中で、デジタル化が加速すると最も割りを食うのが、定型の業務を正確に行う事務労働でしょう。

 

・究極的なことをいえば、ドイツやスイス等では中学や高校程度で、知的労働で食べていくか、手に職をつけて食べていくかに教育が分かれるしくみになっています。シンガポールもそうです。このため、そうした教育に変わってくる可能性があるかもしれません。

 また、コロナ・ショックは少子化を加速させる可能性があると思います。

 

最後に、「ポスト・コロナ」の日本の未来は明るいのかどうかですが、明るくする余地はあると思っています。何もやらなければ落ちる一方ですが、まだ希望はあります。

 

 

 

『ポストコロナの経済学』

8つの構造変化のなかで日本人はどう生きるべきか?

熊谷享丸    日経BP  2020/7/2

 

 

 

テレワークが当たり前になり通勤ラッシュが「教科書に載る日」が来る

・人類の感染症との闘いは長期化することに加えて、ポストコロナの時代は、それ以前と全く異なる世の中に変わる。人間の既成概念とは、案外もろいものだ。1968年のメキシコオリンピックで、米国のディック・フォスベリー選手が最初に背面跳びを行った際、観客はその奇妙で非常識なフォームに驚いた、と伝えられている。筆者は、近い将来、テレワークや遠隔診療などが当たり前となり、かつて多くの会社員が、満員電車に揺られて職場に通勤していたことが、昭和・平成の日常の一コマとして教科書に載る日が来ると確信している。

 

「ポストコロナの時代は、どんな世の中になっているのだろうか?」

・「もう少し我慢して、新型コロナウイルス感染症が収束すれば、元の世界が戻ってくる」と、政治家は国民に呼びかける。だが、それは完全な幻想である。

 人類が撲滅できた感染症天然痘だけだと言われている。歴史的にみると、感染症の拡大とグローバリゼーションはセットであり、近年の地球環境破壊の深刻さなどを勘案すると、今後も人類は様々な感染症に悩まされ続けることになるだろう。

 筆者は、人類の感染症との闘いは長期化することに加えて、ポストコロナの時代は、それ以前と全く異なる世の中に変わると考えている。それは、本書で提示する「8つのグローバルな構造変化」が現実化した「新常態(ニューノーマル)と呼ばれる新しい世界である。

 

・実際、わが国では失業率と自殺者数との間に一定の相関が存在する。景気が極端に悪くなると、大変不幸なことに自殺される方が増えるという傾向がある。

 したがって、われわれは基本的な考え方として、感染症の拡大抑制と、社会活動・経済活動の持続可能性(サスティナビリティ)とのバランスの回復を目指す必要がある。

 

・最終的な目標として、われわれは感染症に対するレジリエンスがある(耐性の高い)社会を構築することを目指すべきだ。いわば、感染症を「制圧」するのではなく、感染症と「共存」するという発想だ。

 

・各章の概要は、以下の通りである。

「第1章 新型コロナウイルスにどう立ち向かうか?」では、今回の新型コロナショックは、2008年前後に起きたリーマン・ショックと比べてはるかに悪性の不況であり、日本経済・世界経済に第ニ次世界大戦後で最悪の打撃を与えると見られることを指摘する。その上で、主として感染症が収束するまでの政策対応に重点を置いて、新型コロナショックに対する政策対応のポイントを考察する。

 

・「第2章、ポストコロナ時代の8つのグローバルな構造変化」では、ポストコロナ時代に予想される8つのグローバルな構造変化について検証する。

 ポストコロナの時代には、次の8つのグローバルな構造変化が起きると予想される。すなわち、「新常態(ニューノーマル)」と呼ばれる全く新しい世界が始まるのだ。

 第一に、資本主義の全体像という視点では、2000年代に入り加速した、株主の近視眼的な利益だけを過度に重視する「新自由主義グローバル資本主義」は大きな転換点を迎え、より中長期的に持続可能性が高い、従業員や顧客、取引先、地域社会、地球環境、将来世代など様々な側面にバランスよく目配りをした「ステークホルダー(利害関係者)資本主義」が主流になるとみられる。そのなかで、SDGs(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ=国連が掲げる持続可能な開発目標)の重要性が増していく。

 

・第二に、感染症にかかった場合、高所得者層は高度医療の恩恵を受けて生命をとりとめるケースが多い一方で、貧困層の生命は容赦なく奪われかねない。こうした「パンデミックの逆進性」などを背景に、社会の分断・不安定化が加速する。この結果、1929年の世界大恐慌の後に起きたような、反グローバリズム、自国中心主義、ナショナリズムの台頭が危惧される。

 

第三に、米国と中国の対立は激しさを増す。これは、資本主義と共産主義との覇権争いであり、世界が2つの陣営に分断されるブロック経済化の進展が懸念される。政治面では、世界的に地政学リスクが増大する。

 第四に、グローバル・サプライチェーンの再構築が進む。ポストコロナの時代には、危機管理体制の強化やリスク分散の推進が求められるからだ。

 第五に、不良債権問題が深刻化し、潜在成長率が低下するリスクが高まる。現状、世界的に民間企業は借金漬けの状態であり、今後グローバルな過剰債務、過剰設備の調整が起きる可能性がある。最終的に金融機関に不良債権が積み上がり、リーマン・ショックのような金融システム危機が起きることが懸念される。

 

第六に、「大きな政府」が指向され、財政赤字問題が軒並み深刻化する。景気悪化で税収が低迷する一方で、感染症への対応で歳出が増えるからである。この結果、世界的にマクロ経済政策は手詰まりの状態に陥る。そして、財政政策と金融政策の役割分担が希薄化し、選挙という民主的な手段で選ばれたわけではない。中央銀行が司る金融政策が、民間の資源配分にまで乗り出す異例な事態となるだろう。

 第七に、感染症を避けるために、リモート社会(非接触社会)が指向されるなど、産業構造の激変が起きる。「ソサエティ5.0」と言われるテクノロジーを中心とする社会をつくり上げるべく、テレワーク、オンライン診療、オンライン授業、インターネット投票などの実現・拡充を期待する声が高まる。とりわけわが国では、岩盤規制などと言われる、医療や教育などの分野での規制緩和を断行することが喫緊の課題である。

 

第八に、長年人類が目指してきた、中央集権型の仕組みは、分散型ネットワークへと移行する。都市型の不動産価格は大きく下落し、わが国では地方創生の千載一遇のチャンスが生じるだろう。

 

・具体的に、本書では、日本政府、企業、個人が実行するべき、いわばトゥー・ドゥ・リストとして、①多様性や選択の自由を最大限尊重しつつも、有事の緊急事態法制の整備を急ぐ、②労働市場の機能不全を解消、労働生産性を向上、③「SDGs大国宣言」を行い、国際社会における立ち位置を明確化、④感染症へのレジリエンスのある社会を構築、⑤財政政策と金融政策の融合が進むなかで、財政規律を維持、⑥分散型ネットワークを構築し、地方創生に舵を切る、⑦企業は自らの存在意義を問い、抜本的な経営変革を行う、⑧個人はリベラルアーツや経済・金融を学ぶ、という8点を指摘している。

 

新型コロナショックにどう立ち向かうか?

・今回の新型コロナショックは、2008年前後に起きたリーマン・ショックと比べてはるかに悪性の不況であり、日本経済・世界経済に第ニ次世界大戦後で最悪の打撃を与えるとみられることを指摘する。

 

新型コロナショックは世界大恐慌以来の戦後最悪の不況

新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本経済にリーマン・ショック以上の打撃を与えるとみられる。

 

・この結果、大和総研では、2020年度のわが国の実質GDP成長率は、「短期収束シナリオ」で▲5.1%、「長期化シナリオ」では▲9.4%と予想している。

 

IMFによれば、2020~2021年の2年間で失われるGDPは9兆ドル(990兆円)に達するという。これは、驚くべきことに、日本とドイツの1年分のGDPに匹敵する金額である。

 

新型コロナショックとリーマン・ショックの比較

筆者は、新型コロナショックとリーマン・ショックを比較すると、今回のほうが質的にはるかに悪性の不況だと捉えている。

 まず、極めて単純化すると、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」という経済の3要素のなかで、リーマン・ショックでは「カネ」が新型コロナショックでは「ヒト」と「モノ」が止まった。

 リーマン・ショックの際には世界中の金融機関が打撃を受け、海外の景気が悪化し、その影響が日本に遅れて来たため、わが国の中小企業や国民の所得に悪影響が及ぶまでにある程度の時間がかかった。一方、今回の新型コロナショックは非常にスピードが速く、とりわけ観光、運輸、外食、イベント、レジャーなど特定の業種が壊滅的な打撃を受けている。

 

・しかしながら、新型コロナショックのほうが、リーマン・ショックよりも悪い点が4つある。

第一に、今回のほうが政策対応余地は小さい点が挙げられる

 

・第二に、サプライチェーンへの打撃から、局所的な「スタグフレーション(不況下の物価高)」のリスクが存在する。

 

・第三に、グローバルな企業の過剰債務問題が深刻である。

 

・第四に、言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症の拡大にいつ歯止めがかかるかは、生命科学の領域に属する話なので、正確に予測することが困難である。

 結論として、新型コロナショックは、リーマン・ショックと比べて、質的にはるかに悪性の不況であり、日本経済に戦後最悪の打撃を与える可能性があるだろう。